制度規制とバブル崩壊
米国でファンド税制強化をめぐる議論が活発化しているようです。
パートナーシップ制の上場ファンドについての課税を一般事業法人並に引上げる法案と、ファンドマネージャーの成功報酬をキャピタルゲイン課税ではなく所得税として認識させる法案の二つです。
ファンドが儲かりすぎているからという理由だけではなく、ファンド資本主義を言われるほど実体経済に与えるファンドの影響力が強くなり、金融政策も効かない、という無政府状態に懸念を持つ政治家が出てきているのも一因です。
但し、ここでファンドを制度として規制するような流れができると、崩壊するのはターゲットとする買収ファンドだけには収まりません。最近のREIT市場の下落にも、心理的に影響を与えていると考えられます。
どこか、総量融資規制で不動産市場を崩壊させた90年の日本を連想する事象です。
(2007.06.29)
安かろう・悪かろうの化けの皮
添加物の規制に違反していた中国製の歯磨粉の問題が出てきた時、100円ショップはこれから大変だろう、という話を周囲の人達としていました。
全ての廉価製品が悪いというわけでは当然ないのですが、安いものには安い理由があるというのは、以前も指摘したとおりです。
( 過去の思いつき)
米国では単純労働を伴う製造業は姿を消しつつあると、高名な経済学者は胸を張って言います。日本もそうあるべきだとも言います。
しかし、先進各国で、こうした製品の質の問題がクローズアップされていく傾向が続くのであれば、質のよい労働力や、質のよい生産物、の値段は、今後むしろグローバルに均一化され、海外生産をするメリットは次第に薄れていくのではないかと感じています。
安かろう、悪かろうに支えられているビジネスモデルや、生産性は、そろそろ化けの皮がはがれてきても、おかしくはありません。
(2007.06.28)
世の中バラ色
このところの、経済・金融市場の弛緩の仕方は、想像を絶します。
お菓子の家に出会った子供や、バラ風呂シャンパンの大人と、イイ勝負という感じです。
1-2週間という短期で5-10%程度下落している市場は、実は沢山あるのです。長期金利、中国株式、REIT、銅先物、欧州株…
だからといって、一時期のようにそれが何かに連鎖するということもなく、取り立てて悲壮感もなく。ファンドなどに状況を確認にいっても、特に状況に変化はなく、問題はないという返事ばかり。
金融だけでなく、経済見通しも、まさにバラ色。
リスクシナリオは?と聞いても、聞かれても、上手く言葉が出てこない。
満開のバラの花が、散った花びらとなって舞い降りてこないかと、杞憂半分、空を眺める毎日です。
(2007.06.27)
我・我
住民税が上がったというニュースを見て、自分の給与明細を確認してみたら、確かに…。
所得税が下がったのは1月らしいのですが、気付きませんでした。そんなものです。
それはそうと、最近ニュースなどで、「我々庶民が、」とか「我々弱者が、」とかいう言葉を、一般の主婦やサラリーマンらしき人が平気で口にしているのを聞くのは、少し耳に障ります。
「我々」という言葉の対角線上には誰がいるの?と聞きたくなるのです。
「我々」が「我と我」ではなく、「我が我が」になってしまっているようにも聞こえます。
(2007.06.26)
金融中核都市と人材
証券取引等監視委員会が全ファンドを検査対象とする、という日経新聞の記事の中で、こんなコメントがありました。
「東京を世界の金融中核都市に育てるには日本に集まった資金が逃げないよう、検査先選びや検査項目にメリハリをつけることも重要になる。」
誰が言っているのか知りませんが、検査項目にメリハリつけるような行政を、外人が評価するとは思えませんし、そもそも検査されて困るようなファンドはトットと帰っていただいて結構です。
大切なことは、事前障壁を下げて参入者を増やし、監督を厳格化して不良品を機動的に排除すること。
そのためには、監視委員会のスタッフの数と質を大幅に上げるしかありません。
当然そのためにはお金がかかる。
金融というのは、インフラ半分人材半分です。人材に充分なお金を使えないような国には、金融中核都市は"絶対に"育ちません。
(2007.06.25)
「大きいことは良いこと」とはかぎらない
米国の大手証券会社系のヘッジファンドチームが、不動産証券化市場で多大な損失を出しファンド存続が危ぶまれています。
昨年のアマランスも同様ですが、ヘッジファンド業界において、「ファンドが大きい」とか、「有名である」とか、「業界内でのシェアが高い」とかいう美辞麗句がいかに意味のないものであるかを、痛感します。
また、市場に過熱感があればあるほど、シェアの高いファンドの破綻が、その他大勢に与える被害は大きくなります。幸いにもアマランスの破綻は市場が吸収してくれました。
さて、今回の騒動をMBS市場が吸収しきれるかどうか、やや心配です。
(2007.06.22)
季節ボケ
東京は、今日も快晴です。
梅雨はどこへいったのか?
海外との時差には極めて強く時差ぼけ経験のない私ですが、季節感のない気候には極めて弱いらしく、季節ボケ絶不調です。
ダムの貯水率は全国的にかなり危険水位です。四国の一部では既に取水制限が始まっています。そして、沖縄は梅雨明け…
(2007.06.21)
為替の泡はシャボン玉
為替市場は短期的にはテーマで動くことの多い市場です。
この一年を振り返っても、為替のテーマは、円のキャリートレードとその巻き戻し、各国の外貨準備の分散とユーロ高ドル安、そしてここ直近では資源国通貨高、が取引のテーマとなっています。
為替市場は所詮デリバティブ市場なので、レバレッジもかけやすいし値動きも荒い。ですから面白いテーマがあればすぐにバブルができます。
その一方で、こうした短期的テーマは数ヶ月単位で変わるため、為替のバブルはシャボン玉のように非常に簡単にはじけます。
短期的なバブルとその破裂を繰り返しながら、中長期的な均衡点を探すのが為替市場です。
年金のような長期の投資家は、短期のバブルには係わり合いにならない方が賢明です。
(2007.06.20)
投資一任会社
最近、少しずつですが、日本での投資一任免許を取ろうとする海外の運用会社がヘッジファンド系も含め増えてきたように感じています。
とてもありがたい傾向だと思っています。
おそらく理由は幾つかあって、一つはバーゼルⅡの施行により銀行がヘッジファンドやPEの保有をすることが難しくなったことで、投資家としての「年金」の存在感が増したこと。
もう一つは、中東やロシアなど資源国の投資資金がファンドに大量に流入する中、将来的なファンド資金の安定性に不可欠な「投資家の(資金の出しての)分散」として、「日本」の存在感が増したこと。
せっかく、来訪希望者が増えているのだから、米国で一任免許を持っていれば日本での免許取得が優位になる、というような優遇政策でも掲げて、優秀なファンドを積極的に日本に取り込む努力を国も早急に行って欲しいと思っています。
(2007.06.19)
元気な経済と"やまいだれ"の政治
今年度前半の金融経済環境について、現象面からだけみればほぼ予想通りの進行状況ということができます。
海外をみれば、景気環境はすこぶるよく、金利は上昇過程にあり、中国経済は過熱感からの乱高下はあるもののクラッシュにはならず、上がりすぎた不動産はやや調整。
国内は、製造業の生産調整は進む一方、個人消費は持ち直し。会計がらみの新興企業不信が株価の頭を押さえ、金利差拡大下の円安は継続。
問題は、やや市場の乱高下が激しくなっていること。懸念材料の多くが経済要因ではなく、政情や経済システムの問題であること。
なによりも、各国の政権のハンドリングが弱くなっていること。
あまりにも元気な経済を、"やまいだれ"の政治がコントロールできなくなっているようにも見えます。
(2007.06.18)
バイアウトと株価
公開企業を買収して未公開化させるいわゆるバイアウトファンドに大量の資金が滞留している中、上場株式市場に異変が起きているのではないかと、危惧しています。
規模がさほど大きくなく優良な割安株はファンドに買収されて、市場から撤退するという状況が今後も続くなら、上場市場には規模が大きすぎて買収の対象とならない企業か、中身が悪いか割高すぎて買収対象にならない企業しか残らない、ということになります。
既に米国株式ではその傾向は顕著になってきており、大きすぎる銘柄の株価の相対的な出遅れが目につくとの意見も増えています。
買収対象企業の株価に注目が集まる環境下で、買収に否定的な日本企業の株価が冴えないのは、しかたのないことです。
だからといって株価が上がらないから、買収防衛策はよくない、というのも、やや極端な論調のようにも聞こえます。
いずれにせよ、異常な膨らみを持っているバイアウト資金にあまり振り回されるのは、企業経営者としても投資家としても、できれば避けたいものです。
(2007.06.15)
あっ、そうなんだ
昨日、急に円が売られたので、材料を探したもののそれらしいものが見当たりませんでした。しばらくして、グリーンスパン氏が「アジアのエマージング市場」への懸念を表明したことが材料視されたと言われました。
あっ、日本ってアジアのエマージングなんだ…
「昨年の通貨戦略は"円のキャリートレード"の影響で失敗しました」という海外のファンドの話をよく聞いてみると、「日本の個人投資家が国内の低金利を嫌って外債投資を増加させたこと」をキャリートレードと表現していることがわかりました。
あっ、円のキャリートレードって外人がするものではないんだ…
自分のことは自分が一番知らない、のかもしれません。
(2007.06.14)
ロシアのお金持ち
プーチンさんが強気です。
米ソ、ではなく、米ロで、ミサイル削減交渉が…などという話を聞くと、1980年代にタイムスリップしたのかと思います。
強気な理由は、石油などの資源。
この時代、モノを持っている方が、お金を持っているより強いということです。
でも、しかし。
今、ロンドンの不動産を買い漁っているロシアマネー。その多くはプーチン政権を嫌った、ロシアからの逃避資金だと言われています。
自国の金持ちに見放されているプーチンさんの率いる大国の将来は、本当に安泰なのか、他人事ながら心配です。
(2007.06.13)
今更、なに?
学校の給食費を払わない親の問題がテレビなどで最近よく取り上げられるようになりました。
この問題がではじめた2004年ごろというのは、年金の"不"払いや、高速道路の踏み倒しなど、気に入らない制度には協力しない、という風潮が変に高まっていた時期です。
当時のマスコミは、そうした風潮を、ある意味増幅させていたようにも見えました。
過去の思いつき
そして、3年が経過し、事態は悪化しています。
今更騒いでも、遅い。
(2007.06.12)
利用する側、される側
日本の不動産市場が低迷している時、国は不動産証券化事業をカンフル剤として利用しました。
唐突に決定した介護保険の受け皿として、国はそこにビジネスチャンスを見出したコムスンを利用しました。
利用している最中、行政の管理は傍からみていても、極めて甘く、多少の不正は見て見ぬ振りをしていたように見えます。
そして、物事が軌道に乗り始めると、調子に乗った業者を一機に叩きにいく、ように私には見えます。
まぁ、とは言っても、調子に乗るほうが明らかに悪い。
次のターゲットが金融商品絡みにならなければよいのですが。
(2007.06.11)
金利の上昇
世界の金利の連動性が高まっています。
欧州が活発な経済を背景に利上げを続けているのは、予想の範囲としても、5月の半ば以降の米国の長期金利の上昇ピッチの速さには、やや意外感があります。
この数年、米国の利上げが先行し、米国利上げが一段落した時期に欧州の利上げが本格化する、というある意味良い循環が起きていた金利市場ですが、ここにきて日米欧の方向性が一致してしまったようです。
今の過剰流動性は、もはや金利水準によってもたらされたものではなく、原油を始め、資産価格の上昇によって膨張しているものなので、金利上昇そのものが、金融資産全体の大幅な調整に直接結びつくリスクは少なくなっていると思われます。
とはいうものの、何かのトリガーにならないかどうか、注視しておかなければなりません。
(2007.06.08)
客観的な合理性の認められる定性判断
厚労省によるコムスンの指定取り消しという大きなニュースに隠れてしまいましたが、大和都市管財の巨額損失に対し登録業者として認めていた監督官庁の管理責任を認めた判決もまた、認可登録業務に対する行政の関わり方を考える上で、重大なニュースといえます。
客観的な必要要件さえ満たしていればよいという、ある種定量的な判断項目に頼っている許認可業務のあり方を問われる判決に、当の監督官庁だけでなく、監督される側からもやや戸惑いの声が聞こえてきます。
定量項目を厳しくしすぎると新規参入障壁となり、業界の活性を阻害します。
一方で、モニタリングにおいて定性判断を付加すると、監督官庁の裁量権が強くなりすぎます。
定性判断という裁量権を強化するためには、監督官庁と業界、そして国民との間の信頼関係の構築が不可欠です。
「客観的な合理性の認められる定性判断」という、極めて困難なオペレーションを遂行するにはどうしたらよいのか。答えは見えてきません。
(2007.06.07)
内向きのすすめ
極端な言い方をお許しいただけるなら、日本は当面「内に篭もった」方がよいのではないかと思っています。
現在のグローバルな資金フローには、完全に取り残されてしまった以上、今更世界に出て行くことは、ババを掴みにいくようなものです。
自分で出て行くのではなく、人が来てくれるのを待つ。
外資に買われるのが嫌なら、国内企業内での業界再編をスピードアップする。
相対的に日本が劣後している金融を含めたサービス産業は、参入障壁を下げて、積極的に取り入れる。
やや怪しげではあるものの、食や衣の世界では上々のニッポン・アジア人気を利用して、観光客を呼び込む。
今あるお金を無駄に使わず、高値掴みをせず、今の世界の泡が消えた後の、次のチャンスをじっと窺う。
外に向けるエネルギーを、当面なかに集中させれば、きっと日本はもっと良い国になれると、私は思います。
(2007.06.06)
ご無沙汰いたしました。
10日ぶりに出社です。
ヘッジファンドなど運用会社のプレゼンには、ポイントが二つあります。
一つは、いかにして儲けるか。
もう一つは、いかにして損失を限定するか。
顧客資金を預かっているという意識の強い会社であればあるほど、損失管理の説明に費やす時間が長く、具体的になります。
バランスとしては、儲け話が3割、リスク管理が7割、といった感じでしょうか。
日本での金融商品の販売においても、この3対7の比率は見習って欲しいと思います。
(2007.06.05)
ニューヨーク日記(3)
アメリカの景気に不安を抱いている人は少なく、日本の今、そして未来に興味を持っている人は少ない。
とても頭のよい人の話は大変に判りやすく、とても偉い人の腰は大変に低い。
これから東京に帰ります。色々なお話はまた後ほど…
(2007.06.03)