2007年02月の思いつき


壊れる音

昨日、市場が壊れる音がした。

音はしたのだが、原因がよく見えずにいた。
色々と音源をさがしてはみたのだが、結局未だによくわからない。

3月5日のNPC(全国人民代表大会)で、違法な株取引を取り締まる法律を強化するといった株式規制が発動される可能性がある。
米国のサブプライムと呼ばれる低所得者層向けの住宅ローンの回収率が悪化しサブプライム専業の金融機関株が急落している。

一つ一つの材料は、たいした物ではない。
原因を特定できない下落は性質が悪い。
しばらくはおとなしくしていた方がよさそうだ、と思う投資家が増えると、リスク資産からの回避傾向は当面高まるかもしれない。


(2007.02.28)



クレジット市場のソフトランディング

この数年、壊れそうで壊れないクレジット市場ですが、最近は圧倒的にソフトランディングシナリオを書く人が増えてきたように感じます。

もちろん過剰流動性の存在も大きいのですが、それよりもCDSと呼ばれるクレジットのヘッジ手法の層が厚くなったことの影響も大きいようです。
クレジットを利用したヘッジファンドにおいても、CDSを利用したクレジットショートだけではなく、以前は不可能と言われていたクレジット債券の空売りをするファンドも増えてきました。詳細は省きますが空売りができるようになったのもCDSの発展とは無関係ではありません。

クレジットにショート戦略が加わったことで、クレジット市場が「買い一方」だった時代と比べ効率化され、リスクプレミアムが減少した結果、クレジットスプレッドの縮小が続いていると説明することもできそうです。

もちろんだからといって、今の過剰流動性がスクイズした時のダメージとクレジット市場が無関係ではないのは、いうまでもないことです。

(2007.02.27)



長生きリスク対応?

75歳で約1400万円程度一括で預けると、その年から90万円ずつ一生もらえます、という終身年金の案内を家族が金融機関からもらいました。
但し、万が一10年以内に死亡した場合は、家族が10年間は受取れるので900万円が最低保証になる、とのこと。

「平均寿命一か八か年金?」と名づけてしまいたくなるような、仕組みです。

もちろん、手前で支払が生じているので単純計算ではないのですが、イメージとしては平均寿命までなら金融機関の勝ち、それ以降は加入者の勝ち、といった商品性には、正直驚きました。

ちなみに、この商品結構売れているそうです。
わかるような、わからないような、かなり不思議な気分になる金融商品です。

(2007.02.26)



不良債権処理はこれから?

日本の不良債権処理って、本当に終わっていたのでしたっけ?

日航、オリコ、三洋。。。
大手小売、大手証券、地方の金融。。。

何も変わっていないように見えるのは気のせいですか?

メガバンクの体力が回復し、土地の値段が上がり、システム不安がなくなったことで、先延ばしする痛みを感じにくくなっていただけではないかとも思えます。

日本の不良債権処理はこれからが本番です。

(2007.02.23)



外需はよいよい、内需はこわい…

企業経営者の方々とお目にかかると、株価や景気の先行きについてのご質問よりも、為替水準についてのご質問が圧倒的に多くなっている傾向があります。

今の"クリスマスとお正月が同時に来た"かのような対ドル・対ユーロでの"円安"は、いつまで続くのか、ということに、目下最大の興味があるようです。

こうした経営者の方のセンチメントを反映してか、来年度の株式のリスク要因として"円高"を上げる運用機関も多くなっています。

日本の利上げより、米国の物価の方が材料になる為替市場において、円は順調に?安値を更新し、それを好感した株式市場も堅調です。

円安の恩恵を受ける外需やキャッシュリッチな大型優良株と、内需中心で金利感応度の高い小型株との格差が再び拡大することが懸念されます。

(2007.02.22)



雪がない…

先日ある会合で、新潟県の方から、今年のお米が心配だというお話をうかがいました。

新潟県の水田の多くは、雪解け水を利用しているそうです。
これだけ雪が降らないと、水不足は避けられないと。

また、地面の温度が下がらないと土壌の雑菌が死なないため、他の農作物にも影響がでるかもしれないとも言っていらっしゃいました。

雪不足でスキー場や除雪業者に緊急支援の話がでていますが、問題は冬が終わった後も続くということです。

東京の今日の気温は15度です。暖かい日差しとは裏腹に、背筋は寒くなる一方の異常気象が続いています。

(2007.02.21)



危ない会社

投資先や委託先で、『危なそうな』会社を見分ける一つの方法。

ホームページや営業案内でこれみよがしに、
顧問弁護士や公認会計士名を表示してある会社。
監督官庁や業界団体へのリンクを貼ってある会社。

業務案内にやたら法律用語がちりばめられている会社。
資本系列やその移動について明示していない会社。
トップの職歴を明示していない会社。

このうち2つ以上あてはまる会社には近づかないことです。

今時、上場しているからといって、危なくないとは限りませんので。

(2007.02.20)



安い労働力

アジアや南米そして旧東欧諸国における、「安い労働力」に頼ったコストダウンというものは、いつまで続けることができるのだろうか、と最近疑問に思うようになりました。

そもそも彼らの労働力は何故安いのか、ということをこれまであまり疑問に思ったことはなかったのですが、テレビで塩素系薬品の満たされた池に素足で浸かって輸出用綿布を漂白しているインドの労働者の映像を観たりするにつれ、「安い労働力」というものの対価が気になり始めました。

何も、古典的な「搾取-非搾取」という構造議論をするつもりではなく、「安くない」労働力市場では当たり前の何かをギブアップした結果としての「安さ」と、その「安さ」を基盤としている世界景気の好況さに、言いようのない不安定さを感じているだけです。

ギブアップしているのは、労働者の環境だけではなく、消費者の安全性であったり、地球環境であったりしているということは、消費者自身も薄々は気付き初めていることでもあります。

昨今の世界経済の異常ともいえる低インフレ環境は、そう長くは続かないないのではないかと、思ったりしています。

(2007.02.19)



拝啓、日本銀行 様

もし今日本銀行が利上げをして、円高株安になったとしても、責任を感じる必要はありません。そもそも企業は今の為替水準が続くと思っていませんし、円安だけを材料に日本株を買い上げた方が悪いのです。

もし今日本銀行が利上げをして、回復途中にあるといわれている地方景気が腰折れしてしまったとしても、責任を感じる必要はありません。1%以下の金利でさえ負担になるような景気状況を回復途中というほうが間違っているのです。

もし今日本銀行が利上げをして、安倍内閣の支持率が急落したとしても、責任を感じる必要はありません。日銀がなにもしなくても勝手に下がっているだけです。

このGDPという神風に乗らないと、絶好調の米国FRBにまた先を越されますよ。

(2007.02.16)



J-REITの夜明け

J-REIT会社であるダビンチ・セレクトに証券取引等監視委員会が処分勧告を出しました。親会社である不動産私募ファンドとの間の利益相反の存在が、初めて公に認知されたということです。

この問題について、このコラムで噛み付いて?いたのは、2年も前のことです(バックナンバー 2005年2月9日2005年10月14日)。

日本のREIT市場が抱える構造問題を今まで黙認してきたことは、既にREITに投資していた投資家の利益だけでなく、構造問題があるがために投資することを見合わせざるを得なかった投資家の投資機会もまた侵害してきたということを、監督当局は認識して欲しいと思います。

これを期に、J-REITが世界基準からみて恥ずかしくない市場になることを、心の底から願っています。

(2007.02.15)



カタカナ言葉

金融関連業務以外から年金部門に着任された方々は、あまりのカタカナ言葉の多さに驚かれます。

金融機関の中で年金担当になったばかりの方々は、あまりにもカタカナ言葉が通用しないことに驚かれます。

資産運用業務の概念が、基本的に海外からの輸入品であるために、どうしてもカタカナ言葉が多くなってしまうのですが、年金事務局や役員の方には「格好つけて」わざと難しい言葉で話していると、映ることもあるようです。

「ポートフォリオ」のように日本語に概念がない言葉もありますが、できるだけカタカナを使わないようにすると、自分の言葉の理解のあやふやさが、かえって確認できるという副産物もあるものです。

スポンサーとのコミュニケーションの向上だけでなく、自分の言葉の定義を整理する意味でも、カタカナを極力使わない運用報告というものにトライしてみるのも良いかもしれません。

(2007.02.14)



眠りの記憶

今朝、大学受験に向かう集団と一緒になりました。懐かしいようなほろ苦いような、季節柄ビターチョコレートのような感慨に浸りました。

当時の記憶は、とにかく眠かったことだけです。罪悪感を感じることなく思う存分眠れる日がくることを、ただひたすら夢見ていました。

今でも、暇さえあれば眠ってしまうのは、きっとその時のトラウマに違いない。

以上、この三連休、背中が痛くなるまで爆睡したことへの言訳でした。zzz…

(2007.02.13)



元気がない?

今回の四半期報告会を通して、運用機関全般に元気がないように感じます。
市場の収益率がマイナスであるならともあれ、市場環境がそれほど悪くもないにもかかわらず覇気がないのは、やや気になります。

所詮日本株がスッキリしなければ、元気がでない、ということなのかもしれませんし、マクロの経済見通しが当たっていない中の「結果オーライ」が、説明者の口を重くしているのかもしれません。

右肩上がりの個人向け投信や、海外投資家からの日本株投資ビジネスの勢いに気圧されて、年金担当者が社内で縮こまっているのでなければいいのですが。

(2007.02.09)



円の過小評価?

三角合併の解禁で、もし本当に外資が日本の企業を買収しようとするのなら、「円」は安い方がお買い得です。

もし、今の日本企業が潜在力はあるにもかかわらず、それが為替に反映されていないだけであるのなら、円が弱い内に優良企業を丸ごと買ってしまうという選択肢は、大変魅力的に思えます。

日本企業が強く、円も強かった時は、日本製品を排除することでしか自国産業を守ることができなかった欧米諸国にとって、病上りでまだ体力も整わず通貨も過小評価されている日本企業を丸ごと取り込んでしまう絶好のチャンスが到来しているともいえます。

だから、G7では本気で円安を議論することはないのではないか、などど思ってしまうのは、やや週刊誌的発想でしょうか?

(2007.02.08)



『期待』収益率

毎年この時期になると、各運用機関からの来年度の市場予測と期待収益率が聞こえてきます。

さて、過去10年で主要四資産が全てプラス収益となったのは、2004年度の1年だけです。もう少し遡っても1995年にあったのが最後です。
今年度は1月末まででみると、かろうじて全資産プラスという状況になっています。10年に一度あるかないかのオールプラスになることができるかどうか、あと2ヶ月微妙な環境です。

各社の来年度の期待収益率が、相変わらず全資産プラスで表示されているところが目に付きます。「10年に一度の奇跡」に期待する、それこそ『期待』収益率ということでしょうか?

(2007.02.07)



ゴミは焼却

詐欺だの、不正だの、疑惑だの、お金がらみの事件が多すぎませんか?
件数だけでなく、金額の大きさや関わる企業や人物も段々派手になっていくようです。

バブル崩壊後のリクルート事件や尾上ヌイ事件ではないですが、風船を膨らますのをやめて一年ぐらい経つと、空気と一緒に色々なものが吐き出されてくるものです。

2003年から始まった景気の上り坂でさんざん溜め込んだゴミが、逆流を始めたように見えます。

幸いなことに、絶好調な海外景気が日本の株式市場の底を支えてくれています。今のうちに、過去のゴミはせっせと焼却しておきましょう。

(2007.02.06)



変化を求め始めたアメリカ

クリントン政権の副大統領であり、ブッシュ氏と大統領選で僅差で敗れた、ゴア氏が再び注目を集めてきています。

昨年公開された「不都合な果実」に代表されるように、ゴア氏は地球温暖化の論客として有名です。京都議定書の素案作りにも大きな影響を与えた人物だとも言われています。

一方、情報ハイウェイなど、ゴア氏とそのブレーンによる経済施策案こそが米国産業の方向性を決定してきたと、言われているほど力のある人物でもあります。

そのゴア氏が、地球温暖化を旗印として再び表舞台に出てきたということは、「地球温暖化」が米国においてようやく政治の争点になりつつあると言うことを意味しているだけでなく、「地球温暖化」対策が、「ビジネスになる」可能性を意味しているとも言えそうです。

よくも悪くも世界を巻き込む米国で起きつつある大きな変化に、少し期待したいと思います。

(2007.02.05)



石油連動相場?

原油価格が反発すると、金融市場全体が活況になるという循環が続いています。

ニューヨーク連銀の調査によると、原油価格上昇の恩恵で増加したと見られる、いわゆるオイルマネーの内、約半分が国際金融市場での資産の購入にあてられたと見られているそうです。

2006年度に産油国が手にした石油収入はおよそ116兆円と、2002年度の約3倍となっているといわれ、金融資産の購入以外は、石油輸入国からの製品輸入で消費されたと調査では分析しています。

つまり、原油価格上昇で膨れ上がったオイルマネーが、金融資産価格だけでなく、実体経済をも押し上げている可能性が高いということになります。

今年の市場は原油次第、という言葉が、現実味を帯びてきています。

(2007.02.02)



持株会社の闇

2002年に大問題となった米国のタイコインターナショナルなどの例を取り出すまでもなく、持株会社やコングロマリットという組織形態は、企業の実態を把握することがとても難しいものです。
2002年の反省も踏まえ、株式のファンドマネージャーの中には、コングロマリット方式の組織をとる企業には投資しないと明言している方もいます。

今日本で問題となっている金融持株会社にしても、子会社の資本関係は複雑で、外部から読み解くのにはかなり苦労します。

2002年の米国での会計不信では、デリバティブで利益を水増ししていた企業が実態をわかりにくくするために、わざと組織を複雑化していたという側面も指摘されていました。

昨今、日本でも拡大している持株会社方式が日本の会計不信を増幅させているのでなければいいのですが。

(2007.02.01)


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