誘引爆発
市場に何かショックが起きた時、第一に考えなければいけないのは、それが「誘引爆発」を引き起こすかどうか、です。
例えばドバイの問題が中東地域だけ、もしくはエマージング市場だけに限られたダメージなのであれば、大きな問題はありません。
更にいうのなら、それが先進国を含めた株式市場だけで収まるものであれば、それでもたいした問題ではありません。
問題は、このイベントがただでさえ軋んでいる、為替市場や各国国債市場などに過度な変動をもたらし、そこから生じる損失が他の市場に玉突きを起す可能性がどれほどあるかです。
特に為替や国債市場はデリバティブを利用した実質レバレッジの高いマーケットです。逆戻しのインパクトが想定以上に膨らむ可能性が高いのは言うまでもないことです。
誘引爆発の可能性があるかないかは、まだしばらく様子を見ないと判りません。
(2009.11.30)
ドバイショック
世界一高級なリゾートホテルなどで有名な中東のドバイで起きた、政府系ファンドの破綻懸念騒動は、昨日の欧州株式市場を直撃しました。
今後の懸念材料をランダムにメモ書き。
同ファンドが保有している欧米英等諸外国の不動産や株式などへの売り圧力の如何。
同ファンドへ投資しているインフラファンドなどの収益ダメージ。
そもそも金融立国となろうとしていたドバイという国そのものやドバイの金融機関の信用力の低下が、世界の金融システム全体に与える影響。
中東との関連の深い欧州・英国の金融機関への影響。
他のSWFへの監視強化によるリスク資産回避の流れ。
とりあえず、リスクを落として様子をみましょう…
(2009.11.27)
ひと稼ぎ?
毎年この時期になると、年末までもうひと稼ぎのお金が、弱そうな市場に向かいます。
弱そうというのは、値段が下がりそう、という意味ではなく、ちょっと蹴飛ばすとすぐ穴が開く市場、とか、軽く風を送ると吹き飛ぶ市場とかいう意味で、要するに値動きが軽い市場のことを指します。
とうことで今回の円高ドル安。
円高風を吹かせて、日本株を空売りする、などという綺麗なストラテジーが出来ているかどうかは定かではありませんが、少なくても今の円高はとても仕掛けやすい市場であるのは間違いないでしょう。
しばらく要注意です。
(2009.11.26)
期待値バイアス
A)パフォーマンスが悪くて説明が上手い。
B)パフォーマンスが普通で説明が下手。
A)毎月+-3%を繰り返して結局年間ではゼロリターン。
B)毎月0.3%程度をコツコツ稼いで年間3%リターン。
こうして文章にしてみると、当然いずれもBのファンドを選ぶべきだということが判るのですが、実際のファンド選択ではこの逆を選択することが圧倒的に多いのが現実です。
いわゆる「期待値へのバイアス」による悪戯です。
説明が上手ければ何時か良くなるだろうと期待をし、収益の振れ幅が大きければ何時か大儲けをするだろうと期待をします。
わかってはいても、実際この呪縛から抜けるのは、なかなか難しいもののようですね…
(2009.11.25)
上場企業経営者
今の日本の底力のなさはどこから来るのでしょう?
米国で伝統的なボトムアップの株式マネージャーと、企業経営は経営TOPによって変化するか?という会話をしたことがあります。
中堅以下の規模の企業であればともあれ、年商兆円単位の企業において、経営者のキャラクターというものがどれほど企業経営、ひいては株価に影響を与えるものなのか、ということに疑問を持ったからです。その時の答えはどれほどの大企業であっても明確に影響を与える、というものでした。
最近日本の株式市場や、経済運営を見ていて、企業経営者の顔が全く見えてこないことに気がつきます。2年後・3年後の利益ではなく、自分の会社が、自分の業界が、そして日本の企業というものが、将来どうあるべきなのか、というビジョンが企業から発信されなくなって既に十数年が経っているかもしれません。
戦後創業者の理念も、高度成長期の利益も、そして人材も、全てのストックを食いつぶし、道を彷徨う経営者の集合体が今の上場株式市場なのであれば、投資家離れもしかたのないことです。
(2009.11.24)
デフレ宣言
政府が宣言しなくても、現在の日本がデフレであることは皆肌身で感じているはずです。
一方で日本銀行が目指している、といわれている出口戦略は、あくまでも昨年度の異常な金融危機対応の解除の話です。
金融危機対応の金融緩和は、金融機関自身の資金調達に関わる話であり、デフレ対応の金融緩和は金融機関から民間への資金フローに関わる話です。
政府が日本銀行の出口戦略を牽制するために、あえて今ここでデフレ宣言をしたとするのなら、それは趣旨を履き違えているのではないかと思います。
海外投資家からみて、ただでさえ成長余力の乏しい日本株が、政府の不用意なデフレ発言でさらに停滞しなければよいかと危惧しています。
(2009.11.20)
再更新
すみません。時差ぼけで、更新忘れました…。後から書きます!
改めまして…
日本個人投資家の42%が年収300万円未満、500万円未満を含めると約7割に達するという、日証協の調査結果がでています。
だから、証券への軽減税制は金持ち優遇策ではない、という協会長のコメントはなにか的が外れているようにも思いますが、この数字はかなり驚きです。
家庭の主婦がヘソクリで為替先物をするのと共通する「パチンコの延長線上にある」証券投資か、そうでなければ退職金投資のいずれかが主体であると見られます。
いずれにせよ、潜在的なリスク余力の小さいゾーンであることは変わりなく、純粋な株式の長期投資家にはなりにくい層です。
いわゆる働き盛りの中間層は貯蓄のほとんどは住宅ローンに化しているのでこの分布は仕方ないとするのなら、日本の株式市場に厚みをもたせるには、どうにかして持ち家信仰から脱却するしかありません。
まぁとは言いつつ、株をとるか、持ち家をとるかと聞かれたら、私でも持ち家をとりますが…
(2009.11.19)
金融機関の自覚
金融株などの増資懸念で日本株式が売られている、という説明が正しいとして、では何故彼らが増資に走るのか、新BIS規制対応であるにしてもそれが何故日本でだけ材料にされるのか、ということに明確な説明が行われません。
金融機関サイドもこの増資の目的や最終目標について説明義務が果たされているようにも見えません。
証券市場に最も近い証券や銀行が我先にと増資をするからには、来年度の市場環境によほど悪材料があるに違いない、などという余分な勘繰りまで与えています。
これでは本当に銀行株が安いのか、後から何か材料が出てくるのか、判断することすら難しいです。
昨年傷んだ金融市場を回復させるべき張本人達の自覚のなさが、今の日本株式低迷の一因であることは間違いないでしょう。
(2009.11.18)
日本がいない!
今日までシカゴです。
APEC関連のニュースに日本の首脳の映像が一つも取り上げられません。
アメリカはこれから輸出に力を入れると宣言しています。購買余力が減少し続けている日本への興味が本当に減少しているのでしょう。
鳩山政権が描くアジア経済圏構想が仮に実現したとしても、そこの中心に日本は居ないかもしれない、という恐怖に似た感覚を覚えています。
明日の思いつきはお休みです。また水曜日!
(2009.11.16)
シカゴより
突然ですがシカゴにいます。
米国の年金事情と日本の年金事情との情報交換です。
米国でも昨年の株式市場の下落と、会計制度変更との影響により、株式配分への低下圧力が強くなっているようです。
プライベートエクイティ投資についても、これまでの実現主義から時価主義への変更圧力が強く、長期保有を前提としたオルタナティブ資産としての位置づけが怪しくなってきているそうです。
上場・非上場を問わず、株式投資への配分が趨勢的に減少する中、資産配分に占めるヘッジファンド型投資の比率は今後高まるだろう、というのが大方の見方のようです。
数十年前、ドラッカー氏が予見し現実となった、年金資金による株式市場支配は、2007年をピークとしてすでに終息に向かいはじめているように思われます。
次の株式市場を支える主体が誰になるのか明確になるまで、株式市場はボラティリティの高い状況が続くのかもしれません。
(2009.11.13)
ゴルフと性格
先週末、弊社恒例の社員旅行がありました。
かなりやり応えのありそうなパターゴルフ場があり、ゴルフ未経験者半分まじえてのパターゴルフ大会となりました。
本当のゴルフもそうですが、ゴルフは本当に性格の出るもので、たかがパターゴルフでも、十人十色。
何事も気合の人、あきらめの早い人、同じ道をなぜか行き来する人。理科に強そうなアナリスト氏はパターも物理の振り子運動。そしてやっぱり勝負にこだわるおじさんゴルフは健在です。
ファンドマネージャーを一同に会したパターゴルフ大会、一度見てみたいものです(笑)
(2009.11.12)
国債市場のマグマ
クレジット市場、株式市場、実体経済、と順番に押し潰してきたマグマが、国債市場に到達しつつあります。
マグマは市場を波立たせ、波を好むサーファーにはかつてなく豊富な収益機会と、何時来るかもしれない高波への恐怖を与えています。
この一週間の日本の長期金利の上昇や、昨日のイギリス格下げ懸念など、金利が上がるという兆候もあれば、デフレスパイラルのような金利低下の兆候もあります。
グローバルマクロなど国債市場で高収益を上げているファンドが増えています。くれぐれも遭難しないようにと願うばかりです。
(2009.11.11)
財政頼み
出口戦略、つまり金融経済危機対応の超緩和政策と財政出動の解消、が今回のG20で当面遠のいたという判断で、海外の株式市場は大幅高となりました。
また国内では経団連が、大企業向け金融支援を継続して欲しいという、異例とも思える要望を出しています。
金融危機対応を継続するということは、現在の経済状況の深刻さを国や企業自身が認めるということです。
経済環境的には売り材料であれ、買い材料にはなりません。
それでも株式市場が大きく反発するということは、いかに今の株式市場が財政支出頼みで展開しているかという表れでもあります。
市場が上がるのは良いことですが、やや歪んだ相場形成であるということは認識しておいた方がよいかもしれません。
(2009.11.10)
本を読む
本が売れないと言われて久しく時が立ちました。最近はマンガまで売れなくなったらしいです。
本を読むというのは、知識を得る、ということ以上に、他人の考えや人生のストーリーを疑似体験したり、次の展開を予想することなどによって、想像力を養う効果があります。
我々のような市場性のある仕事では、こうした想像力やストーリーの構成能力というのはとても重要な資質です。
難しい学術書やハウツー物ではなく、くだらなそうな小説の方が意外と投資には有益なのです。
本を読まない世代が増えることは、我が国の投資業界の将来の発展にも暗雲となりかねません。
(2009.11.09)
株式冬眠
日本株のファンドマネージャーに元気がありません。
株式担当者というのは夢追い人の多い職種です。
債券出身者からみると、脳天気と思えるほど良い材料を探すことが得意です。
その株式担当者ですら、今の日本経済の夢を探せなくなっています。
景気がよくなるか、企業業績が回復するか、ということではなく、日本を動かす原動力のようなものが見えてこない、ということなのかもしれません。
バラマキの次の政策を、方向性だけでもよいから、そろそろ示してあげないと、日本株式は本当に冬眠してしまいそうです。
(2009.11.06)
ファンドの対象外?
11月に入り、そろそろファンド決算が意識される季節になってきました。上がった物は売られ、下がったものは買い戻されるという流れがでるころです。
ちなみに今年1月から見ると、日本のTOPIXは全く変化なしです。他の市場が二桁上昇しているのと比べ情けない限りですが、その分このところの日中の変動幅も海外市場の半分程度であるのは唯一の救いです。
このまま忘れられてしまわなければいいのですが…
(2009.11.05)
明るい変化?
「アメリカ経済の将来に賭けた勝負」だそうです。
米国最大の投資家ウォーレンバフェット氏が米国の鉄道大手企業の買収を発表しました。
「米国の将来の繁栄は、効率的でよく管理された鉄道システムを持てるかどうかに掛かっている」とも言っています。
2007年にゴア元副大統領が、地球温暖化対策を掲げ、その後急速に温暖化ビジネスが脚光を浴びたように、お金は時折社会システムを大きく動かすことがあります。( 変化を求め始めたアメリカ)
ここ一年、壊れかけた金融システムの救済にお金をつぎ込んできたバフェット氏、そしてオバマ政権共に、いよいよ前向きな投資に切り替えが始まったのかもしれません。
(2009.11.04)
七掛け経済、七掛け財政
今回の四半期報告。現状の経済の不確実性をそのまま表わしたものとなりました。個別銘柄も、マクロ見通しも、政府の財政支出頼みです。
一方で、リスクシナリオは各国の財政赤字と長期金利の上昇。
当たり前の帰結であるだけに、むしろ怖さを感じます。
最近、7割経済、6割経済、といぅ表現が定着してきましたが、民間の生産規模が七掛けであるということは、自ずと税収も七掛け近くに落ちるということです。
生産規模の減少が一時的な調整であるのなら、政府支出の増大は許容できますが、今言われているように中長期的な規模の縮小が前提であるのなら、政府の借金は返せる見込みが立ちません。
七掛け経済に見合う財政支出というものを考え始めなければいけない時期がきているのかもしれません。
(2009.11.02)