本年も大変お世話になりました。

国内では能登の震災と羽田の事故と急激な円安から始まり、グローバルにはAIと金融政策と政治崩壊に振り回された2024年が終わります。

2025年は昭和100年。
因みに、明治158年・大正114年で、平成37年。

昭和が終わってもう37年も経つのかと思ったり、ちょんまげ帯刀の江戸時代が終わってまだ158年しか経っていないのか、と思ったり、人生100年と言われている中でこの数字を眺めていると、歴史の彼方の人物や事象が直ぐ手に届くそこにあるような不思議な感覚になります。

100年に一度、200年に一度、と言われる規模の変革期の真只中にある現代社会。
新しいモノへの期待と変化への恐怖。創造による成長と破壊による痛み。単純な勝者・敗者ではない、複雑な二極化構造を、国家間・産業間・そして一般社会において抱えつつ、それでも全体でみれば経済は拡大していくことになるのでしょう。

大きめの振幅を前提とした右肩上がり市場環境において最も重要なことは、大きな下振れに遭っても運用を途切らさせることなく継続するための、リスク管理と組織内におけるコンセンサス作りだと考えます。

楽観的な市場環境だからこそ、リスク管理が重要になる、というこを肝に銘じて、新しい年を迎えたいと思っています。

本年の営業は本日が最終となります。新年は6日から通常営業となります。

皆様のご支援に心から感謝いたしますと共に、2025年のご多幸をお祈り申し上げます。

寺本名保美 

(2024.12.27)



均衡金利の切り上がり

昨晩の米国FOMCの結果を見てみると、来年、再来年の着地予想は、略2回前の6月水準に戻っただけなので、それほどインパクトのあるものではありません。どちらかというと来年4回の利下げを見込んでいた9月のFOMCが少し緩和的すぎたのかもしれません。

むしろ注目すべきことは、長期の均衡点に関する見通しでしょう。

FOMCの度に徐々に切り上がってきた長期見通しですが、これまでFRBが意図してきた「2.25~2.75」の幅に入っているドットは4人だけとなり、9月の8人、6月の10人から、大幅に減少しています。

FRBとして、インフレ目標2%についての議論は、まだ公には行われていないようですが、ドットチャートを見る限りこの議論が表に出てくるのは時間の問題であるように思います。

年末を控え、ポジション調整が続く株式市場はやや過剰に反応しましたが、この半年クレジットや米国株式においては米国金利の高止まりを前提とした戦略も目に付くようになりました。

米国においては3.0~3.5%程度の政策金利と、3.5%~4.5%程度の長期金利を前提とした、投資戦略を考えるのが、来年のアロケーション上の一つのテーマなのかもしれません。

寺本名保美

(2024.12.19)



想定内と想定外

今年政治経済界を一言でいうなら、「想定内の事象」が「想定外の規模」で起きた一年、というところでしょうか。

インフレによって社会の2極化が進み政治不信が加速する中、どこの国においても現政権の脆弱化と波乱の選挙は想定済だったとしても、ここまで雪崩のように世界各地の現政権が崩れ落ちるとは想定していませんでした。

2022年11月にリリースされたChatGTPから始まったAI技術が、2023年のNVIDIAの半導体ブームを引き起こすところまでは想定できたとしても、僅か2年でAIビジネスを前提としたデータセンターや電力施設等のインフラビジネスが各国の経済政策の根幹になるスピード感は想定以上のものとなりました。

国内ではこの数年各国で広がっていたM&Aを使った事業成長戦略が日本でも伸びていくであろうことは想定していたものの、日本製鉄のUSスチール買収や、セブンアンドアイの被買収案件、そしてホンダと日産の統合の可能性までの規模感に拡大することは想定を遥かに超えています。

政治の国境を越えた連鎖、技術革新と社会変革のスピード、企業の統廃合による資本の集中、という今年の大きなトレンドは、社会にとって必要な変化でもありつつも、行き過ぎれば取り返しのつかない破壊のきっかけともなり得る諸刃の剣です。

眩しいばかりの高揚の先にあるものが荒廃ではないことを祈るばかりです。

寺本名保美

(2024.12.18)



ふてほど

今年の流行語が「ふてほど」に決まったというのを見て、妙に納得しています。

2024年は米国の大統領選挙に限らずですが、この10年の間で環境や倫理や道徳的価値観に振れた振り子の揺り戻しが目につく一年となりました。

サスティナビリティやモラルを否定するわけではなく、ましてやハラスメントを肯定するわけではないものの、優先順位が微妙に低下してきている気がします。

多くの家計においてはインフレによって劇的に変化した生活コストへの不安解消が何よりも大切で、企業にとっては事業環境の変化や技術展開のスピードの速さに対応することが死活問題で、政治家は正論を主張しても埋没するばかり。

モラルも環境も大事ではあるけれど、今はそれどころではない!という叫びのようなものが、そこかしこから聞こえてきます

もちろん、持続性より目先の利益を、モラルよりも実益を、と言ってはばからなかった時代に完全に戻ってしまうとは思っていませんが、行き過ぎた振り子の逆戻しは郷愁も込めて当面の間続くかもしれません。

寺本名保美

(2024.12.02)



どちらを切り捨てる?

トランプ次期大統領が、政府効率化省(DOGE)を設立し、イーロン・マスク氏が新省を統括すると言っているらしいです。

政府を効率化し、無駄な支出を減らし、連邦政府機関を再構築するとのことで、イーロンマスク氏は業務の効率化等により、連邦予算の2兆ドルを削減することができる、と発言しています。

現実に目を向けると、米国の非農業雇用者数約1億4千万人のうち約15%に当たる2200万人程度が政府系機関の職員となります。イーロンマスク氏が新しいテックを駆使し、政府業務の効率化を推進することは可能であるような気もしますが、それによって2200万の安定雇用のどの程度が影響を受けるのかが気になります。

メディケアやメディケイドといった低所得者用の医療サービスも削減のターゲットとなるとの観測も含め、マスク氏にとって「無駄なこと」が、今回トランプ氏を支持した多くの国民を切り捨てることになる可能性も否定できません。

トランプ氏を次期大統領としたことは、大手企業とその雇用者にとっては経済合理的な選択であったと思う一方で、消費者目線で見た場合はあまり良い選択肢ではなかったような気がしています。

今後トランプ氏から国民の気持ちが離れてきた時、切り捨てられるのはマスク氏か、はたまた国民か。

両極を抱え込んだトランプ氏、八方塞がりになるリスクも少し考えておきたいと思います。

(2024.11.13)



奇才2人

イーロンマスク氏と組んだトランプ氏が大統領選の勝者となったようです。

ある意味、今の時代を象徴する選挙だったのかもしれません。

彼がトランプ氏の支援者なのか?トランプ氏が彼の支援者なのか?同床異夢の奇才達が、これから世界をどう動かしていこうとしているのか、だれも予測がつきません。

国境意識が薄いまま宇宙空間のプラットフォームを握りつつあるマスク氏を、曲がりなりにも米国政権に囲いこめたということが、今回の選挙結果でもっとも評価すべきプラスポイントであるような気がしています。

いずれにしても、これからの金融市場もまた、制御不能のジャイアン2人にf振り回される日々となりそうです。

寺本名保美

(2024.11.06)



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