2024年10月の思いつき


何も決まらないし決められない

先週1週間かけて織り込んできた選挙結果を、ほぼ織り込み通りの結果が出たことで一旦買い戻している月曜日です。

後は、支持基盤が更に弱体化した石破政権が、ばら撒き型の政策に転換せざるを得ないという思惑も、株高に繋がっているのでしょう。

海外勢からみれば、政治体制が固まらないことは不安材料ではあるものの、何も決められない政権となることがむしろ足元で流れている民需の勢いに水を差すこともない、という意味においてプラス判断となるかもしれません。

何れにしても市場の興味は、オオタニ君の怪我、ではなくて、米国の大統領選挙に移っています。どのような選挙結果が出たとしてもその後一波乱ありそうな様相を呈しており、市場のボラティリティは上がりそうです。

短期的な思惑でポジションを取る時期てはありません。

寺本名保美

(2024.10.28)



スマート社会における政府

アマゾンやマイクロソフトに続いて、グーグルも原子力発電の利用を発表しました。

大手テック各社はこれまで再生エネルギーの活用を、サプライチェーン内で推奨するなど、この数年の再エネ化の推進役を担ってきました。政府主導では、中々進まなかった脱石化発電も、世界的なサプライチェーンのTOPに君臨するメガテックの力によって、川上から川下まで幅広い産業において再エネの活用が推進されてきました。

そのメガテックが原子力発電を容認する姿勢を明確化したことで、今後各国における原子力発電回帰の方向性がより明確化していくことになるでしょう。

7-8年位前、スマート社会の説明の中で、スマート社会においてのルールメーカーは政府から民間に移行し、政府の役割は「監視と調整」に変化していくだろう、という話を聞いたことを思いだしています。

国家としての最適解を求める政府と、個としての最適解を求める一企業と、今現在において見えている将来図に大きなズレはないのかもしれませんが、こらからこの将来図が一致しなくなったとき政府とメガテックがどのように共存していくのかは未知数です。

技術発展と経済成長が、国家の弱体化と社会の分断を進めている、という現在社会は、100年後の歴史の教科書でどのように分析されていくのか、見てみたい気がしています。

寺本名保美

寺本名保美

(2024.10.17)



セミナ―お礼

今週水曜日に、弊社の35回目になる資産運用セミナーを無事開催することができました。大変お足元の悪い中、ご来場いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。弊社セミナ―最大の自慢は、お申込をいただいた中での当日ご来席率が毎回略略95%以上ととにかく出席率が高いことです。皆さまのご高配の元で回を重ねてくることができていることとつくづく実感し、心から感謝しております。

今回は基調講演としてアダムスストリートパートナーズの崔様から、プライベートエクイティ市場全般についての、大変に解り易く示唆に富んだ解説をいただき、後半の私のセッションでは未公開市場が急拡大している構造的背景と、その裏で拡大している構造的なリスクについてお話をさせていただきました。

プライベート市場は今後とも拡大をする魅力的な市場である一方で、未成熟で潜在リスクの高い市場であることもまた事実です。PEファームが巨大なコングロマリット化していくことで、システミックリスクの起点となる可能性も否定できず、今後様々な規制や監視の対象となっていくことも想定されます。

アセットオーナーも、間に立つディストリビューターも、成長とリスクのバランスをよく見計らいつつ、長く付き合っていかれる体制を整えながら、慎重な投資判断をしていって欲しいと思っています。

寺本名保美

(2024.10.11)



鈍感力から共感力へ

岸田首相から石破首相に替わり、最も大きな変化は政策ではなく、政権運営の手法なのではないかと感じています。

首相就任記者会見で石破首相が協調した「納得と共感」という言葉は、確かに前政権において最も欠如していたファクターだったかもしれません。

岸田政権が、納得と共感は後からついてくる、という姿勢で議論よりも実行を重視した政策運営をしてきたことは、過渡期の日本を前進させることに大きく貢献した一方で、国民の多くは置き去りにされたという印象を残すことになりました。

そして後を継いだ石破政権が、政策の大筋は前政権を引き継ぎつつも、この置き去りにされた国民の共感を議論によって取り戻しに行くというのは極自然な流れだといえそうです。

一方で、議論を重視した政権運営に推進力はありません。インパクトのある新しい政策を打ち出すというよりも、岸田政権で端緒をつけた政策をいかに頓挫させることなく、国民の理解を深めていくことができるかが、今回の石破政権に与えられたミッションになりそうです。

昨日の首相の記者会見で「守る」という言葉を多用したことが、海外にはやや「ディフェンシブー保守的や消極的」という印象を与えてしまった懸念はあります。石破首相が納得と共感を醸成しなければいけない相手は国内だけではありません。

鈍感力から共感力へ。読書大好きな石破首相が言葉の力で、どれだけ世間の納得を引き出すことができるのか、期待して見ていきたいと思います。

寺本名保美

(2024.10.02)


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