2024年09月の思いつき


ハトはカナリア

当面の金融市場にとって最大の注目点が、米国のソフトランディングの実現性であるとするなら、今回FRBドットの示したややタカ派的なシナリオは、景気後退を織り込み過ぎないむしろ心地よい内容だったのかもしれません。

パウエル議長がハト派的な発言をしたと市場では言われていますが、FRBドットの内容はむしろ逆で、FOMC参加者が年内に想定する利下げ幅は0.25%にすぎず、長期の均衡金利については回を追うごとに上方修正されとうとう全体の半数が3%以上を想定するという、ハト派とは程遠い内容でした。

今後最も警戒すべきシナリオは米国の利下げスピードの緩慢さではなく、スピード感のある利下げをせざるを得ないような景況感の悪化です。つまり今後の金融政策においてハトは平和の象徴ではなく、炭鉱のカナリアだと理解すべきです。

その後の日銀総裁の記者会見においても、植田総裁が米国の景況感を非常に気にしていたことが気になります。

とりあえず、炭鉱から鳩が飛び出てきても驚かない程度の準備はしておきたいと思っています。

寺本名保美

(2024.09.24)



成長トレンド

NVIDIAに司法省の反トラスト調査が入ったことに市場は大きく反応しています。

このところのAI関連企業に対する市場の評価は安定して来ているという印象があります。

昨年までみられたAIの経済的効果に対する懐疑的なトーンが薄くなり、AIの社会的実装がより現実のものとして認知されて来たように思います。

一方で、だからこそ、従来のITプラットフォームビジネスの一部として組み込まれたAI関連ビジネスが、先行するプラットフォーマーと同様に、社会インフラの一翼を担うものとして、政府機関の指揮監督の影響を強く受けるようになったことは、当然の帰結であったということができます。

ビジネスが社会インフラ化する事によって、ビジネスのサスティナビリティは増すものの、成長角度は鈍化していくことになります。

暫く聞こえてこなかったGoogleの分社化議論も、また耳にするようになってきました。

イノベーションの方向性は変わらず、企業そのものの成長シナリオも変わらないとしても、先行きの角度の変化が、株式市場のバリエーションに与える影響は小さくはありません。

株式市場のトレンドに少しずつ変化の兆しが出てきているのかもしれません。

(2024.09.04)


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