金融リテラシーとは何なのでしょう
米国のFRBが4月に出しているFinancial Stability Reportの中に以下のような記述があります。
企業の債務返済能力は好調な収益と「過去の低い借り入れコストの恩恵」から引き続き堅調である。
家計債務の多くは「過去の低い住宅ローン」を借り、サラリーが安定している優良債務者に集中している。
こういった分析は他の資料にも共通してみられるものですが、つまり米国企業は今回の金利上昇以前の低金利環境下において長期借入を増やしており、家計もまた金利上昇以前に短期変動ではなく長期固定の住宅ローンを手当てしていたことで、足元の金利上昇による影響をあまり受けていないと言っているわけです。
本来の金融リテラシーの有無というものは、その時の金融環境において経済的合理性に従った判断を下すために必要な金融の基礎知識が企業や国民にあるかどうかを問われているのであって、投資や運用に積極的であるかどうかを問うものではありません。
今の米国の経済が想定以上に強いことの一端が金融リテラシーの結果にあるとするならば、今の日本の金融リテラシーが招く未来は今のところ暗澹としています。
寺本名保美
(2024.05.27)
AIの社会インフラ化
NVIDIAの決算を前に、市場は息を殺して時を待っています。
昨年の5月から3か月毎にNVIDIAの決算が市場の方向性を大きく揺るがす状況が続いています。株式のアクティブファンドにとってはある意味鬼門となってきた決算です。
生成AIが産業構造に与える影響について、まだ机上の空論だという人がいる一方で、マイクロソフトのように生成AIはPCという概念を根底から覆すものとして既にビジネスモデルそのものを転換しようとしている企業もあります。
折りしもEU主導でのAI規制法が昨日成立したことは、AI技術が社会インフラとして政府機関に正式に認知されたことの裏返しでもあります。
株式市場がNVIDIAへの一極集中となる状況はそろそろピークアウトしそうではありますが、生成AIを核としたイノベーションはこれからが本番なのかもしれません。
寺本名保美
(2024.05.22)
外交からみえること
今の国内政治で最も注目されることは、本当に政治資金規正法なんだろうかと、ニュースを見るたびに思います。
4月の米国に続き、フランス・パラグアイ・ブラジルと続く首相の歴訪は、どれも経済・情報を含めた安全保障政策に大きな意味を持つ国へのTOP外交です。
国内では経済安保情報保護法が成立しました。
こうした政府の動きが間違っているというつもりはなく、岸田外交が歴史に名を遺すものなるだろうというポジティブな評価がついてきていることについて特に否定する必要もないと思っています。
それでも、こうした流れが、社会に特に意識されることなく、音もなく流れていくことに対する違和感ぐらいは、やはり持っていなければいけないのではないかとも思うのです。
まぁ単に国際社会全体がベルリンの壁崩壊以前の緊張感に戻っていくのだと思えばいいだけなのかもしれませんが。
寺本名保美
(2024.05.13)