誰にとっての心地よさなのか
「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」が成立しました。
岸田政権が出した法案の中で、最も早く意外性を持って、打ち出された法案です。
メディア等では既存原発の稼働年数の長期化を大きく取り上げていますが、私が驚愕をもって受け止めたのはそこではなく、「次世代革新炉の開発と建設」について明示し、エネルギー基本計画に定められている2030年度電源構成に占める「原子力比率 20~22%の確実な達成」を謳っているところにあります。
我が国の産業エネルギーコストは依然として高く、化石燃料比率も中身が天然ガスに置き換わっただけで殆ど変わりません。日本企業に投資をするという視点で見た時、産業エネルギーコストの高さと供給の不安定さは、海外投資家にとって大きな障害の一つでした。
現在の岸田政権の政策は、この法案に代表されるように、国内の人々からの注目をほとんど浴びることのないまま、大きな方向転換のきっかけとなるものが多くあります。その中には海外投資家にとっては心地よく、国内世論にとってはあまり心地よくないものも多く混じっています。
海外投資家にとって心地よい日本が、我々の未来にとって心地よいものであるのかは、定かではありません。
国会もメディアも、なんどかんだと的外れなところで批判ばかりをしていないで、今起きていることを冷静に分析してみる必要があるように思うのですが。
寺本名保美
(2023.05.31)
今年はキャッシュコントロール
本日より在宅で仕事復帰をしています。
国の指針ではもう外出しての業務も可能ではありますが、私自身の感覚では、もう少し大人しくしていようかと思います。
まぁ、何事も人それぞれ。自分の身体の声を聴きながら、ゆるりゆるりと再開していきます。
夢に出てきそうだった米国の債務上限問題もそうですが、コロナ禍での大判振る舞いの後始末は始まったばかりです。
とりあえず昨年一年かけての金利水準の修正過程は一巡し、今年は支出削減と増税によるキャッシュコントロールが主題となります。
そしてこのキャッシュコントロールによる景気へのダメージが深刻化した時に効果が最大化するように、金利の発射台はできるだけ高くしておくことがベストでしょう。
今のところの米国は、一応このシナリオに則った道筋を歩けているように見えます。
さて、日本。株高と不動産高と円安、という最高のコンディションではあるものの、国内に資産効果の高揚感は全く感じられません。金利の発射台は相変わらずの水面下でもあり、キャッシュコントロールの議論ができるのは、まだ当面先の話になりそうです。
寺本名保美
(2023.05.29)
熱にうなされてリフレイン
周回遅れでコロナとお友達になりました。
4月から、思いっきり普通に生活していたら、、、マスクはしてましたが、、、普通にコロナに罹りました。
たまたま先週はWEBでの四半期報告会のラッシュで、あまり出社していなかったので、会社ベースは私だけで済んでいると、思います。
普通に生活すると普通に罹るんだ、と言うフレーズが、熱でボケた頭の中でリフレインしています。
ということで、今週一杯はこのコラムもお休みします。
インフルエンザも季節外れの流行をしているそうです。
皆様お気をつけてお過ごしくださいませ。
寺本名保美
(2023.05.23)
追い風に乗れてますか
G7が無事に閉幕しました。
この時代に、これだけの要人を抱え、何事も無く終えることができたことは、それだけで日本の国力を世界に十二分にアピールすることができたと思います。
最後は良くも悪くもシタタカなゼレンスキー大統領に持っていかれた感はありますが、岸田首相にとっても高評価な週末だったでしょう。
今、海外投資家が日本株を大量に買い越しています。また、未上場株投資を行う大型PEファンドの進出も伝えられています。
また海外投資家による不動産投資も活発で、東京の住宅地のマンションや一戸建て価格は90年の不動産バブルの水準を超えたと言われています。
単純に東証のPBR改革で、株式市場に資金が流入している、というよりも、企業そのものや土地といったよりストックに近い日本買いが始まりつつあるようにも感じます。
少なくても今回のG7は世界の投資家に対する「日本アピール」の一助にはなったのかもしれません。
今のところ、海外投資家が日本の何を再評価しているのか、当の日本人はまだよく理解していません。久々に吹いてきた追い風の恩恵を海外投資家だけに享受させることに、いつもながら歯がゆさを感じています。
寺本名保美
(2023.05.21)
泡の中
TPOIXが1990年8月以来の高値を付けたと話題になっています。
1990年8月というのは、日経平均でいえば前年末に39000円の高値を付け、年明けから価格調整が始まり、3月に不動産の総量規制で3万円を割り、9月の湾岸戦争で2万円を割るという、史上類を見ない大暴落の通過点となった時期を指します。
逆に、途中ブラックマンデーを挟みながらも、1987年のNTT祭りと同時に始まった日本株バブルの最終局面が始まったのも、ちょうど今のTOPIX位の水準でした。
つまり、ここから先の株式市場は、過去は泡の中だったということです。
とはいえ、この33年、微々たるものではありますが、日本経済はそれなり成長してきているので、弊社が計算する実体経済と株式市場との乖離でみれば、今は割高ではあるもの、当時程のバブル感はまだありません。
フワフワとした泡の中は、心地良いものの、視界の見通しは悪くなります。
もし日本株がこのまま泡に突入するとしたならば、理解し難い上昇と、突発的な急落の、両方に対応できる体制が必要です。
逆らわず、策に溺れず、冷静に。
市場の方向性判断だけでなく、個別銘柄においても重要なことです。
寺本名保美
(2023.05.17)
ギャップが埋まる時
日本の物価。
住宅価格は上がっていても、家賃相場は上がらない。
人手不足は深刻でバイト時給は上がっていても、給与所得は上がらない。
ストックの需給が、フローの改善にリンクしない。
このギャップが、どちらの方向で埋まるかで、当面の日本の景気が決まってくる。
バブル崩壊を経験している世代は、どうしてもストックの調整と価格崩壊を意識してしまう、悲しいサガを抱えていて、強気になりきれないでいます。
さて。。。
寺本名保美
(2023.05.15)
中途半端が呼ぶ失敗
マイナンバーを巡る幾つかの問題。
ある程度は想定されたことではあるものの、健保との紐付けが手作業だった、というのはそれなりにショックです。
年金番号の誤入力問題に連想が行ってしまうのは、世論動向からみてもマイナス影響が大きいです。
マイナンバー制度というものが、省庁横断的に一括管理されるものではなく、それぞれの制度が個別に「利用する」という建付けになっていて、利用する側がそれぞれのシステム上で個別に処理していることの弱点が出てきているようにも感じます。
結局この制度の強制化ができずに、表面上「任意」の形をとる中途半端なシステムになっている以上、今後もこうした問題は続いていくような気もします。
国民の反応を見ながら徐々に既成事実化しようとする従前のこの国の制度設計が、今回は大きく足を引っ張ることになるかもしれません。
寺本名保美
(2023.05.12)
地味だからこそ
岸田首相の訪韓とシャトル外交の復活は、両国首脳の言葉を聞いている限りにおいては、歴史的な成功裏に終わったように思います。
岸田首相のキャラクターなのか、狙いなのか、は別として、今回の訪韓について、日本国内での関心度は事前事後に関わらず極めて低いものでした。
この温度の低さが、むしろ今回の対韓外交にとってはプラスに働いたのではないかと感じています。
もし、これが安倍首相のようなパフォーマンス型のTOPで、その成果を国内外に声高にアピールしたとするななら、韓国国内の反発はもっと激しいものとなり、成果を上げることは難しかったかもしれません。
何を考えているのかよくわからないと評される岸田政権ではありますが、地味だからこその成果というものあるのではないかと思っています。
寺本名保美
(2023.05.10)
政治不信
連休中、連休明けと、日本各地で大きな自然災害が発生しています。
被害地域の皆様に、心よりお見舞い申し上げます。
連休中、米国や欧州では淡々と利上げが続き、金融機関を巡る波乱も淡々と処理が進み、雇用環境は堅調で、懸念されていた米国大手IT企業の決算にもサプライズはなし。
一方で、最大の懸念材料である米国債務上限問題に進展は見られず、イエレン財務長官の怒り心頭な発言が、市場の不安心理を増幅させています。
市場やメディアでは、既に債務上限問題が解消されない場合の具体的な処方箋についての議論も始まっているものの、とはいえ今はまだ米国政治の良識を信じている人の方が多そうです。
今回の債務上限を巡る攻防は、従前の攻防と比較して、問題が複雑化しているとの指摘もあり予断を許さないのも事実です。
コロナ禍による経済の混乱から漸く立ち直りつつある中、今度は金融が混乱し、その渦中に政治が足を引っ張るようなことがあれば、既存政治への不信感だけが後を引く、大統領選挙前としては最悪の結果となるでしょう。
世界的に政治の信頼が加速度的に低下している昨今、米国政治には範を示して欲しいものです。
寺本名保美
(2023.05.08)
本日お休みをいただきます。
本日はシステムメンテナンスのため休業とさせていただきます。
お急ぎの件がございましたら、メールにてご連絡いただきますようお願い申し上げます。
お天気も市場も穏やかな1週間となりますように。
寺本名保美
(2023.05.02)