今度は中国
中国で起きている白紙革命について、株式市場も反応し始めています。
これが天安門事件の二の舞になると思っている人はまだ余り居ないかもしれませんが、米国の一部の投資家の間では、今の習近平政権を文化大革命への逆行だと指摘する声は以前からあったわけで、暴動があまり過激化するようであれば、政権もまた過激化するリスクもないとは言えません。
もちろんそれは最悪のパターンなわけで、そうならないシナリオにおいても、ただでさえ再度のロックダウンによってアップルの生産に支障が出るという話が再燃する中で、暴動の長期化が重なれば、単なる中国国内での景気後退の話しでは収まらなくなります。
ゼロコロナ政策で窒息しかけている中国の若者達にとって、今回の暴動がある種のガス抜きになると中央政府が判断すれば、それ程強硬な措置には出ることなく、自然消滅を狙っていくかもしれませんが、余り楽観視するのも危険なような気がしています。
今の投資環境、火の粉が何処から飛んでくるのか、全く検討がつきません。
寺本名保美
(2022.11.28)
行動倫理とスポーツ
サッカーのワールドカップが始まりましたが、開催国カタールへの抗議活動もあり、これまでの世界最大のスポーツの祭典とは、やや趣きが異なっているようです。
カタールに対する欧州の反応は、もちろんカタールの抱える社会課題がベースにあるのですが、欧州各国が様々な場面において総じて行動倫理に敏感になっているという側面もあるのではないかと思っています。
自動車の電装化から始まり、発電の非石化、企業モラルの厳格化やステークホルダーへの回帰など、この10年で急速に進展した社会活動の行動倫理規範の多くで、欧州は主導的役割を果たしています。
場合によってはやや性急過ぎる印象もあり、エネルギー政策に見られるように国民生活を一時的な混乱に陥れているケースも見られるものの、こうした方向性の大枠について政府、企業、国民感情の間に、大きな齟齬は発生していないように思います。
欧州が行動倫理に回帰している背景には、米国、そして中国が主導する技術優先の社会改革が急激に展開される中、新たな社会構造における倫理的なリーダーシップを担うことでによって、自らの存在意義を国際社会において主張するという意味合いもあるのかもしれません。
いずれにせよ、ロシアを国際的なスポーツ大会から締め出したことも含めて、スポーツが国際的な政治主張と切り離すことが難しくなってしまったことは間違いありません。
金融取引においても行動倫理の厳格化や政治対立の影響が大きな影響を与えてきています。
主張をすることの苦手な日本にとっては、立ち回りが難しい世の中になっていきそうです。
寺本名保美
(2022.11.23)
反面教師
今、FTX関連で起きていることは、仮想通貨市場に参加していない投資家にとって、金融システムに大きなストレスが掛かった時に起きる事を客観的にシュミレートしてみるに最適なイベントとなりそうです。
取引市場のどこかで、参加者の信用を損ねる事象が発生し、それに関連していると思われる組織に信用不安が起き、市場全体からの資金引き上げが始まることで市場価格が急落し、市場価格の下落が信用不安先の財務内容を悪化させ、取り付け騒ぎが起きて企業破綻が発生。
破綻企業が発生した事で、当該市場全体からの資金引き出しが加速し、市場の流動性が急速に悪化する中、レバレッジの解消に伴う強制清算も重なり、現金化のための取引価格は本来の公示価格から極端にディスカウントされて執行される。
この状態は、当該市場に関わる全てのレバレッジと未決済取引残が解消するまで続き、その間の破綻の連鎖をどこで止めることができるか、そしてその連鎖が全く別の市場に飛び火させずに収めることができるかが、金融当局の最大の使命となる。
取引が継続された日本のFTXで、1ドル90円台でドル決済が行われたと報じられているので、今のところは大幅なディスカウントで決済が行われている最中のようです。
我々にとっての最大の関心ごとは、破綻の連鎖がこの市場の外に広がることなく終息するかどうかです。
色々な意味で、今後の経緯に注目しています。
寺本名保美
(2022.11.15)
忘れたころにやってくる
良くも悪くも、市場の反応が大きすぎる展開が続いています。
米国の大統領選挙で民主党対トランプという構図ができてしまったことでむしろ民主党が善戦するであろう、という予測は事前に共有されていたことです。
昨日のCPIの7.7%という数値について、このところ全く当たっていない市場予想値を下回ったことと、絶対値としての7.7%という水準と、どちらが重要な意味を持っているのかを、考えてみた方が良いと思います。
とにかく、無駄に市場を上下動させることは、投資家のリスク許容度を低下させ、中長期の金融市場の安定性にとってはマイナスにしかなりません。
それでなくても、乱高下をしている仮想通貨市場では、大規模な混乱に繋がるかもしれないイベントが発生しています。
インフレと金利上昇そのものを材料とした金融市場は終盤戦に入り、次はここまでの市場の混乱によってもたらされた亀裂の場所と規模の問題になりつつあります。
主要市場が戻ったあとに本当の怖さがやってきます。油断禁物です。
寺本名保美
(2022.11.11)
2年後の火種
米国の中間選挙の結果、
共和党が大勝したとして、
それを受けてトランプ氏が次期大統領選挙への再出馬を表明したとして、
そして2年後にトランプ政権が復活したとして、
困るのは米国国民ではなくて、その時破綻危機の入口に差し掛かっている、財政リスクの高い企業や国といった、周辺にいる人々になることでしょう。
過去を見る限り、米国の利上げとドル高が、ドル建て負債の保有者達に与えるダメージが明確化されるには、利上げの停止から一年から二年のタイムラグがあります。
今回の利上げのピークが来年前半にあるとすれば、その影響が出てくる頃に、次の大統領選挙の結果が出ていることになります。
ただでさえ、米国は他国経済に配慮して自国の政策を変更することはしない国である上、そこにトランプ大統領の自国至上主義が重なる中で、何らかの財政破綻が起きた時、世界の金融経済はかなり厄介な状況を迎える可能性があります。
今回の中間選挙の結果は、2年後の投資環境を占うには、意外に大きな意味を持つことになるのかもしれません。
寺本名保美
(2022.11.09)
リストラとインフレ
イーロンマスク氏に買収されたTwitterや、メタバース事業が軌道に乗らないメタといった、ネット大手が、大幅な人員整理を発表したことで、米国の雇用環境が緩むのではないかという、ある種の期待が高まっています。
今の米国のインフレにとって、雇用環境が緩み賃金インフレが収束することは、望ましい方向性であるからです。
一方で、マイクロソフト社が当初想定通りにメタバース市場でのフロントランナーとなりきれていないのは、必要な人材確保に失敗したからであると指摘する記事もみられます。
所詮今起きていることは、大手ネット企業内での淘汰であり、負け組ネット企業から排出された人材が、勝ち組に吸収されるのなら、雇用環境の緩みは一時的なものに過ぎないということになります。
そもそも、米国での労働力不足は、出遅れた小売や飲食にまで拡大している中、ネット企業のリストラが小売や飲食の人手不足に寄与するとも思えません。
ネット企業のリストラが、インフレ抑制のきっかけになることは、あまり期待しない方がいいような気がしています。
寺本名保美
(2022.11.07)
金利5%の世界
今年に入ってからのFOMCが気持ち悪いのは、FOMCの度に政策金利の最終到達点の水準が1%に近い幅で切りあがっていくことです。
これはFRB理事達の出す将来的見通しも市場参加者の見通しも同様に切りあがっています。
中銀当局者や市場の金利のプロ達の出す予想が、3か月で全くの賞味期限切れとなる中、株式市場を始めとする周辺の金融市場は、織り込むべき金利水準がわからず振り回されています。
この次の問題は、今はまだ2.5%近辺で均衡している、長期的な政策金利見通しに動きが出ることですが、この議論をするのはまだ1年以上先の話です。
因みに政策金利5%の世界。普通預金に15年預けるだけで元本は倍になる世界。それはそれで羨ましい世界でもあります。
寺本名保美
(2022.11.04)