2022年10月の思いつき


スポーツ大会の違和感

スケートのグランプリシリーズを観ていて、どこか締まらない試合だなぁと思い、そういえばロシア勢が不参加だったことに気づきました。

アナウンサーも解説者も特にそれについて多くを語ることもなく、世界大会の順位が淡々と決まっていく様子に、今の世界がおかれている現実を改めて認識しています。

冷戦時には、「冷戦」だったので、オリンピックのボイコットとかはあったものの、国際社会から特定の国が完全に排除されるようなアプローチにはなっていなかったと記憶しています。

今回、戦後初めの大国による「熱戦」に対し、国際社会からの排除という形で応戦している異常で危険な現実を、スケートだけでなく各種の国際大会で我々は今後も目の当たりにしていくことになります。

金融市場は、何時まで続くかわからないこの異常で危険な現実を、どこまで織り込んでいるのかと、ふと不安になっています。

寺本名保美

(2022.10.31)



イギリスから学ぶ

英国の新首相がスナク氏に決まりました。

空白期間が最小限に抑えられた迅速な新政権の樹立は、金融市場にとっては、安心材料となります。

それはそれとして、今回、私が一番印象に残ったことは、スナク氏の政治経験が7年しかないと報じられたことです。

政治の世界に身を投じて10年掛からずに首相をすることができるなら、優秀な若者達が自らのキャリアパスとして政治家を志すことは、十分にあり得る選択肢の一つとなるでしょう。

それに対し、日本の政治の世界の当選回数という年功序列は、どういう理由で存在しているのかと思います。
日本において、政治の世界が一般的なキャリアパスの選択肢にならない理由は、この訳の分からない年初序列の風習に寄るところが大きいように思えます。

同じ議会制民主主義を掲げるイギリスと日本であるのなら、日本において政治経験の長さとは関係のない首相が現れることは可能なはずです。

優秀な若者が、政治の世界にトライできるための政治改革が、今の日本再生には不可欠です。

寺本名保美

(2022.10.25)



歴史は繰り返す?

中国共産党大会が終わり、新執行部の人事が話題になっています。

多様性のない社会は衰退する。

世代・価値観・ジェンダーが均一な執行部の未来は、足元の安泰を未来の波乱で買ったようにも見えます。

中国という歴史は、常に国民の圧倒的な多様性と抑えきれない程の活力という強力なエンジンと、それをコントロールしようとする指導層との葛藤の歴史でもあります。

今の習近平政権において絶対的な指導層の確立を模索している背景には、それだけ現在の中国において自発的なエネルギーが溢れているということを意味しているのかもしれません。

往々にしてコントロールが強すぎで衰退を招いてきた過去の歴史から、習近平新執行部は何を学んでいくのか。

世界の政治経済にとって、新たな不安材料がまた一つ増えました。

寺本名保美

(2022.10.24)



弱いから弱い

日本の通貨が弱いのは、日本の国が弱いからです。

日本の国内消費が強ければ日銀はとっくに金利を引き上げていたでしょうし、日本の輸出産業が強ければ今の円安環境で海外市場を席巻し他国から円安修正を求められたでしょう。

株式市場が魅力的であるのなら、円建換算で更に割安になった国内株式には海外投資家からの資金が大量に流入し、ベンチャー企業に投資妙味があるならば、未だに未投資残高を大量に抱えるグローバルファンドが大挙して押し寄せてくるでしょう。

日本の政府日銀が、金融通貨政策に対し強かであると市場が思っているのなら、日銀総裁が国会質問に呼ばれている当日に、円安が加速することはありません。

弱い国の通貨は弱くなることで、国際競争力を維持します。
今の弱いままの日本において、通貨だけが強くなってしまったら、それこそ日本は壊滅します。

円安を本当に止めたいのなら、まずは政治も企業も個人も、もっと強くなることです。

寺本名保美

(2022.10.20)



厄介な政治

其処ここ、政治由来の市場変動が大きくて厄介です。

イギリスは、市場の反乱で今回の大型減税が撤回されたことそのものよりも、この国の政策は市場で売り仕掛けをすれば撤回されると、市場に変な自信を持たせてしまったことが後々の禍根とならなければよいと思っています。

バイデン大統領のドル高歓迎発言は、今の米国にとってインフレ抑制が何よりも優先されることを内外に宣言するという意味で大きなインパクトを持った発言です。つまりは、今回の米国金利上昇やドル高が周辺国に対しマイナスの影響を与えたとしても、米国としては関知せずという宣言でもあります。

中国の共産党大会が終わり、習近平国家主席の演説において台湾統一にあたっての武力行使を排除しないと発言したことで、日本を含む東アジアの平和と安定への懸念が世界の投資家に改めて共有されることになりました。

そして迷走するロシア。プーチン大統領の一挙手一投足が厄介です。

全てにおいて受け身の日本。貰い事故も度重なると致命傷になります。

寺本名保美

(2022.10.18)



喜寿が挑む二十歳との戦い

ソニーとホンダ。1946年、終戦の翌年、時を同じくして立ち上がった、戦後日本を代表する唯一無二のベンチャー企業が、タッグを組んで、EVの盟主となったテスラのお膝元に勝負を仕掛けに行く、というストーリーは、そのヘッドラインだけでも無条件に私をワクワクさせます。

まぁ、相手は19歳、こちらは76歳。喜寿を前にした高齢者が二十歳を前にした青年に挑む戦いの結末に期待する一方で、この半世紀以上に及ぶ年齢差を埋める企業がなかったという現実に改めて我が国の置かれた苦境を感じずにはいられません。

そして、このソニーホンダという組み合わせが、何故日本では無く、米国での生産を選択したのかについても、考えさせられるものがあります。

兎に角、まずは、日本の製造業の未来が凝縮しているようなこのプロジェクトが、成功してくれることを祈るだけではあります。

寺本名保美

(2022.10.13)



混沌と混乱

ウクライナ-ロシア情勢が、再びステージを変えてしまいました。

ウクライナ大橋の爆破が、プーチン大統領のプライドを刺激し、ウクライナだけでなく、その敵意が、対立国全体に拡散する気配があります。

それ以前から、ガスパイプラインの爆発もあり、欧州域を巻き込んだ展開が懸念され始めていただけに、今回の対立激化は少々厄介な事態を招きそうな気がしています。

一方で日本政府は、引き続きサハリンプロジェクトの維持に強い意欲を示しています。

ロシアの在留邦人に退避を促しながらロシアプロジェクトを推進することの矛盾と、今後の見通しについて、政府は国民に説明する必要があるでしょう。

世界情勢も、我が国のエネルギー政策も益々混沌としてきています。

寺本名保美

(2022.10.11)



SNS時代のシステミックリスク

スイスの金融機関が、SNS経由の根拠のない噂によって混乱していると、WSJなどの海外メディアが報じています。

米国の利上げの影響は、米国市場にとっては、終盤に近いかもしれないと思っていますが、それにより生じたドル高やドル金利の上昇が、周辺市場や金融機関の健全性に与える影響については、まだ顕在化していません。

市場参加者はどこに地雷があるのか疑心暗鬼になっていて、少しでも可能性がある企業や市場には、過度な反応をする可能性があります。

今回金融システムは、SNSが情報共有ツールとして確立して以降初めて強いストレスを受けることになり、管理できない情報の嵐をどう凌ぐことができるのかが問われることになります。

ビッグデータ化したSNSに、システマティックに反応するAIが超高速でポジションを振り回す状況は、想像しただけで恐ろしくなります。

利上げ一巡後の各国金融当局には、さらに厄介な課題が待ち受けているのかもしれません。

寺本名保美

(2022.10.06)



マクロから切り離す

岸田政権の経済対策に危うさを感じています。

円安や相対的な低インフレといったマクロ環境に乗じた政策は、短期的な効果は大きいものの、一歩間違えば日本経済を根本的に破壊する可能性があります。

今しなければならないことは、円安メリットの活用ではなく為替変動の影響を受け難い経済構造の構築であり、日本の相対的な低コストに依存した製造業の国内回帰ではなく国内経済活動の付加価値を上げることで正しいインフレサイクルを作ることです。

産業構造が円安とディスインフレに依存してしまえば、日銀の金融政策の柔軟性は益々失われます。

そもそもの円安についても、早晩海外が引き締めによりインフレが沈静化すれば、今度は急激な円高が待っているかもしれません。そうなった時、円安依存型の経済は一溜りもないでしょう。

日本の産業構造は、グローバルな景気感応度が高く、元々外的なマクロ要因の影響を受けやすいという特徴があります。だからこそ、為替やインフレといったマクロ環境にコミットするような政策は控えるべきなのです。

政治が短期的な視野に陥ってしまっては、この大変動時代の世界経済て日本が生き残っていくことは難しいのではないかと危惧しています。

寺本名保美

(2022.10.02)


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