2020年11月の思いつき


トップからビリに

じわじわと円高が進んでいます。

リーマンショックを受け、各国が徹底した金融緩和と、意図的な自国通貨安に走るなか、当初相対的に金融危機の影響が軽微であると思われた日本における金融緩和のスピードが緩慢で、且つ、出来たばかりで政治的掛けひきの経験の乏しい民主党政権下において通貨安を否定したことも重なり、国内経済は深刻な円高に苦しむことになりました。

どこか同じような構造が今の日本にあるのではないかと危惧します。

相対的にコロナ禍がの影響が軽微に見え、金融緩和緩和のスピード緩慢で、出来たばかりの菅内閣は視点が国内に集中しており国際金融での駆け引きができる状態ではなさそうです。

リーマンショック後の経済立ち直りは、その後の不幸な東日本大震災の影響もあり、当初楽観しされていた日本が一番遅いという結果となりました。

同じ轍を踏まないように、視野の広い政治をお願いしたいと切に思います。

寺本名保美

(2020.11.30)



流れ弾にあたると、、、

このところのハイテク相場と呼ばれる展開において、米国と日本の決定的な相違は、日本が小型株相場となり、米国が大型株相場となったことです。

これは今回に限ったことではなく、日本においてイノベーションが注目される時は、いつも小型の新興企業に投資が集中し、それが市場全体に広がる前にバリエーション崩壊を起こして終わってしまいます。

今の米国のハイテク相場の強さは、そうした企業が米国経済全体を牽引することができるだけの実体経済における市場規模をもっているところにあります。

もし、懸念されているように、今の株式市場がバブル下にあり、早晩それが弾けたとしても、米国では株価が弾けるだけで企業が弾けることは無さそうに思えますが、米国の流れ弾で日本の株式市場が弾けた時は、その中心にいた新興企業も無傷とはいかないかもしれません。

相対的に割安であると言われる日本株式ですが、株式市場と実体経済の乖離だけでみるなら、日本の方がリスクは高いともいえそうです。

寺本名保美

(2020.11.27)



足踏みは頭によい

この一年の弊社のHPを見返してみると、
2月25日に試験的にテレワークを導入し、
4月の緊急事態宣言の発令を受け完全テレワークに移行し、
7月から一部出社制限を緩めたものの、
8月に事務所近隣での感染報告を受けて完全テレワークに戻り、
9月に出社制限を緩めてみたものの、
今週から再び完全テレワークに舞い戻っています。

WEB経由での四半期報告会も今回で3回目となり、我々を含めデジタルなノウハウも段々と蓄積されてきました。

弊社としての問題は、3月と9月に行ってきたセミナーができていないことですが、これについても12月を目途にした配信を計画しています。

1歩進んで2歩下がるというようなコロナ環境の出口は中々見えてきませんが、足踏みをしているようでも、この間のノウハウやアイディアは決して無駄にはなっていないと思っています。

行き止まりの多い道のりではありますが、進める方向を見つけて歩いていきたいと思います。

寺本名保美

(2020.11.26)



シンプルイズベスト

政府が導入を検討していると報じられたEV購入補助金の増額。
現行の40万円が80万円になるものの、その条件が自宅等での電気契約を再生エネ由来の契約に切り替えた上で、自宅に充電設備を設置すること、だそうです。

消費税とキャッシュレス決済とか、景気対策のポイントとマイナンバーカードとか、どうして似て非なるものを無理やり合体させた仕組みを導入するのでしょう。

キャッシュレスは促進されたかもしれませんが、消費税増税に伴う中小商店の支援にはならなかったように、仕組み複雑化すると本来の目的から結果がどんどん離れていってしまいます。

今回のEV政策に関しても、EVの購入に再生エネ電源の導入を組み合わせたことで却ってEV購入へのハードルが高くなり、自動車メーカーがEV生産に舵を切るための販売戦略にとっては却ってマイナスになる印象があります。

目的と目標を明確にした上で、環境変化に機動性を持たせた、シンプルな仕組みを作ること。

これは資産運用を成功させるための基本でもあるのですが。

寺本名保美

(2020.11.25)



ハト派がハトとは限らない

米国の財務長官がイエレン前FRB議長となることが報じられています。

イエレン氏がFRB議長となったころ、FRBにおける最大の課題は「雇用の質」問題でした。

リーマンショック後の景気回復において失業率は大きく低下したものの、一方で潜在労働者数が減少しているなど、労働の質の低下が懸念されていました。失業率だけをみて量的緩和を終了させてよいものかどうかの判断を任せれたのがバーナンキショック後を引き継いだイエレン議長でした。

そして今回。米国において最大の課題が雇用問題である中において、財政政策の長としてイエレン前議長が登板したことは、決して偶然ではないと思われます。

雇用の専門家であるイエレン新長官の就任により、米国の財政支出はより雇用者視点での政策となっていくことが期待されます。

金融市場に精通したハト派の財務長官の登場を好感する反応もありますが、企業や金融市場とっては意外と厳しい財務長官となるかもしれません。

寺本名保美

(2020.11.24)



政治の言葉の軽さ

3月にも書きましたが、この国の政治家の言葉の軽さがとても気になります。

トランプ大統領の言葉が軽いと言われますが、あちらは後先考えない自己中なだけで言葉としての重さはあります。

でも危機に直面した時のこの国の政治家の発言は、砂を噛んでいるような無味で薄くて軽い。

安倍首相も国民に語りかけることができていないと散々言われてきましたが、今の菅内閣は語りかけるそぶりすらない。

人出が欲しい飲食サービスの方たちも、感染拡大が心配な人たちも、それそれの立場において不安が高まっている中で、政治だけが別世界に居るように見えます。

実際には政治も行政も必死に考え、動いているのだと思います。でもそれが国民にメッセージとして伝わらない。

危機の時代にTOPの声が聞こえてこない組織は、崩壊します。

寺本名保美

(2020.11.20)



損切るもの、利喰うもの

海外ヘッジファンドの多くが決算を迎える11月。

ファイザーショック以降の株式市場の乱高下だけでなく、個別銘柄ごとの変動幅も拡大し、ファンド間の収益格差も拡大しています。

大手クオンツファンドの巨額損失が紙面を賑わすようになり、水面下ではもっと多くのファンドが傷んでいることが推測されます。

損失ファンドからの資金の引き上げや、ファンドの解散、ポジションの縮小などが、金融市場全体にどのようなインパクトを与えるか、予断を許さない状況となっています。

コロナショック以降にコツコツ稼いだ収益を今のうちに確定してしまいたいと思う個人も少なくないでしょう。

コロナで始まった2020年の金融市場。安泰な年末を迎えることができるのか、雲行きは怪しくなっています。

(2020.11.18)



ホストも参加者です

元々、東京オリンピック開催を楽しみしていた私でも、このところの開催ありきの政治行動に、気持ちがついていけません。


観客を入れてのオリンピック開催によって、大量の海外からの渡航者を受け入れることになれば、来年の日本の秋冬はコロナワクチンの実証実験効果の最大級のサンプルを提供することになるでしょう。

オリンピックの誘致においては、ホスト都市の人々の受け入れ意欲が重視されると聞いています。

今回の東京オリンピックの開催において、ホストである東京都民が心から来訪者を歓迎することができるのか、今の私には正直言って自信がありません。

選手も観客もそしてホストとなる我々も、皆が心から楽しむことができるオリンピックとなるために、都民が納得することができるような丁寧な説明をお願いしたいと心から願います。

寺本名保美

(2020.11.17)



違和感満載

土曜日の新聞に、学校法人の運用について国が半額を出資した10兆円のファンドを設定する案が浮上しているとの記事が掲載されていました。

大学の資金運用の拡大は必要だと思っていますが、記事を読む限りは何とも理解に苦しむ内容ではあります。

そもそも学校債の発行とパッケージで記述されていることが違和感の第一です。つまりは借金をして運用をしろと言っているように見えます。

次にに、ハーバード等の米国の大学の様な、という使い古された枕詞が使われていることが第二の違和感。米国の大学基金の原資は卒業生や企業からの寄付金が主なもので、学納金や借入金でリスクの高い運用をしているわけではありません。そもそも日本の大学法人の寄付金である第三号基本金を全部足し合わせたとして10兆円の何分の1にもならないでしょう。

最後に、リスクを取った運用をしても50年経てば収支はプラスになるというところ。50年経たないと黒字化しない運用とは何を指すのか、さっぱりわかりません。

いずれにしても、官民合同ファンドの成功事例は限りなく少ないことを鑑み、学校法人の資産運用の改善については何か別の方法論に進んだ方が良いのではないかと思うのですが。

寺本名保美

(2020.11.16)



新たな懸念

米国では、6月から議論が続いていた中国軍需産業関連企業株への投資規制に関わる大統領令が公布されました。

通信大手や情報関連など幅広い企業がリストされているようです。

米国投資家は、来年1月から新規投資が禁止されるほか、来年11月までの間に保有銘柄の売却も行わなければならないと報じられています。

個別株だけでなく、ファンド内での保有も制限の対象となるので、ETFなどのインデックスファンドでの取り扱いがどうなるかも含めて懸念されています。

対中規制がトランプ政権独自のものではなく、バイデン政権になればより強化されるとも言われている中、今回の金融市場における本格的な制裁条項が来年1月に本当に施行されるのかどうかが、バイデン政権の対中政策を占う上での試金石ともなるでしょう。

今年の年末が再び年末波乱にならなければいいのですが。

寺本名保美

(2020.11.13)



陰の極?

過去の経験から、株式市場にバブル的な資金フローが集中してくると、あらゆる種類の定量モデルにおいて深刻なマイナスが発生します。

9月までの市場環境においては、PBRや低ボラなど一部ファクターにおいての劣後が目立ったものの、定量モデル全体でのロスは比較的穏当なものに収まっていた印象がありました。

それが10月に入り混迷の度合いが拡大し始め、足元での銘柄の乱高下によってトレンドフォロー的なファクターにも被害が及ぶに至り、世の中の定量モデルが底に向かって走り始めたような気がしています。

過去のケースでいえば、鋭角に発生したファクターの歪みは長くても3ヵ月程度で底を打ちます。

10月からカウントするなら年末年始当たりが、陰の極かもしれません。

今定量モデルの運用者にできることは、リスクを落として身を潜め、顧客の損失を如何に最小化するかと、顧客の信頼を如何に繋ぎ止める説明ができるかでしょう。

運用者もスポンサーも我慢の四半期になりそうです。

寺本名保美

(2020.11.12)



行き当たりばったりのインフラ構築

コロナ禍に紛れてしまっていますが、2020年は新世代通信網である5Gが本格サービスを始めた5G元年のはずでした。

実際に新型iPhoneを始め、デバイス各社は5G対応スマホの販売を始めていますが、肝心の5G基地局の進展がどうなっているのか、全く見えてきません。

電波距離の短い5Gに対応するため、当初から基地局を信号機に搭載する、いやいや電信柱だ、という話が出たり入ったりしていましたが、今後は自動販売機に搭載する計画発表されています。

各事業所の自助努力とアイディアが出てくることはよいことなのかもしれませんが、今後の社会インフラの基礎になるであろう5G基地局の設置に対し、国の明確なシナリオがないことがとても気になります。

今年1月に総務省総合通信基盤局が作成した「5Gの普及展開に向けた取組」というプレゼンを読んでみても、基地局設置に関する方法論についての示唆はありません。

このまま各社が行き当たりばったり的なインフラ構築を進めていくのかと思うと、日本のデジタル社会の先行きには、予期せぬリスクが潜んでいそうです。

寺本名保美

(2020.11.11)



ファイザーショック

ファイザーショックと名付けられる様な金融市場です。

ファイザーの開発したワクチンの治験結果が発表された直後から、第二波に苦しむ欧州株式が急騰し、その流れが米国株式市場で増幅しました。

原油も上がり、為替もドル高で、金利も上昇するなど、典型的なリスクオンの展開に見えるものの、これまで市場を牽引してきたハイテクグロース株の急落という、予期せぬおまけもつきました。

昨夜からのいわゆるリターンリバーサル相場が本物であるかどうかは、ワクチン開発の進展次第というところもあり、まだまだ不透明ではあるものの、今のハイテクグロース相場への一方的な傾斜には一旦打ち止め感が出たかもしれません。

昨晩の展開が、グロースが市場を牽引し、市場に実体経済が追いつく過程でバリューが復活して相場全体を底上げする、という理想的なシナリオが現実化する端緒となるのか、ハイテクグロース相場の終焉の始まりとなるのか、まだまだ方向を決めてかかるには時期尚早である様にも思います。

寺本名保美

(2020.11.10)



あるところからないところへ

バイデン政権になることで米国の政策は本来の目指すべき路線に向かって寄り道することなく進んでいくのだろうと思っています。

トランプ政権においてよけいな雑音や脱線が混じっていた部分が無くなることで、政策の視界は良好となります。

但し、それが株式市場にとってプラスになるかどうかについては別の問題です。

コロナ禍による財政拡大や金融緩和が上場企業を中心とした大企業に対し恩恵が大きかったことは、今の株式市場を見れば明らかです。

ここから先は、大企業や株式上昇によって恩恵を受けたセクターから如何に資金を回収し、ここまで恩恵を受け切れていない個人やサービスセクターに再配分するかが政権の最大の課題となります。

国の財政余力はありません。1000万人の失業者や廃業せざるを得ないサービスセクターを再構築するための財源は、今堅調なセクターから調達するしかないのです。

議会の捻じれがあるから、バイデン政権の増税政策は加速しないとの見方もありますが、財源がないことには始まりません。

今堅調な金融市場から、実需に向けて資金の逆流が起きることを、頭の片隅においた対応を考えていきたいと思っています。

寺本名保美

(2020.11.09)



リスクオフ下の株高

足下の金融市場をリスクオンと説明する人も、リスクオフという人もいます。

株式市場の上昇だけを見ればリスクオンですが、原油は下落しドルは安く長期金利が低下しているという金融市場全体を指すのであればリスクオフとなります。

大統領選で意識から飛んでいるようですが、コロナ第二波が起きているのは欧州だけではなく、米国も同様です。

大統領選の混乱が、クリスマス商戦に与える影響も気になります。

株式市場以外が今のリスクオフと反応していることは、ある意味投資家全体が冷静さを保っていることの表れでもあります。

リスクオフ下の株高。

ボラティリティが高い相場が続きそうです。

寺本名保美

(2020.11.06)



狂騒曲の始まり

米国の大統領選挙については、当初から確率が最も高いとされていた最悪シナリオが現実になっています。

僅差の結果を受け、どちらかの陣営が司法判断に持ち込み、結論が最低でも1ヵ月先になり、一歩間違うと年を越してしまうこと。

議会が民主と共和で分れ、大統領との捻じれが残ること。

当初、トランプ大統領の再選を望んでいた株式市場は、バイデン候補優勢の情勢を受け、議会との捻じれのないバイデン圧勝、つまりブルーウェイブへの期待に舵を切りました。

直前になりトランプ大統領の巻き返しを見て、投票日前日の市場ではトランプ大統領再選を期待した上昇相場を演じました。

結果、ブルーウェイブでもなく、トランプ再選も難しそうな情勢となると、今度はバイデン民主党が主張する大規模増税は遠のくとの思惑が楽観論の中心になり、最後は大統領選挙の混乱をみて低下した長期金利を囃した買いが足元の上昇を支えています。

後付けの材料で、ひたすら上値を追う展開に、上昇相場の最終局面の匂いを感じます。

何度も言っていますが、上昇相場の最終局面で絶対にしてはいけないことは二つあります。

追いかけること。そして逆らうことです。

狂騒曲は高見で見物しておくことが一番です。

寺本名保美

(2020.11.05)



今日が始まり

全く結果が見えない大統領選挙を前に急騰する株式市場を見て、その勇気に感服しています。

願うべくは、どのような結果になろうと、昨日・今日の買い物を投げ捨てるようなことをしないことだけを、心から祈ります。

今のところ接戦。

接戦の先にあるのは控訴合戦。

喜ぶのも悲しむのも、買うのも売るのも、今日ではありません。

寺本名保美

(2020.11.04)



クレジット市場の日本化

市場では以前から指摘されていましたが、米国におけるローン市場の回収率が著しく低下していると、ブルームバーグが報じています。

米国での企業債務のデフォルトの多くは、財産価値のある内に早めの債務整理を行い事業更生を目指すことを目的としています。

従って会社更生法申請後の債権における残余価値は、平均で額面の6割程度残されており、それを前提にデフォルトした債権は額面の4割程度で売買が成立します。

ところが、コロナショック後のデフォルト事例では、この残余価値がゼロに近いケースが散見されるようになりました。

原因として指摘されているのは、FRBの徹底した信用供与が、デフォルトのタイミングを遅らせ、いわゆるゾンビ企業が増えているのではないかということです。

言い換えれば、追い込まれて破産する、日本型のデフォルトが増えているということです。

FRBを始め各中銀によるセイフティネットにより、デフォルト率そのものは低位で推移している裏側で、無価値になってしまっている企業群が控えていることを、クレジット商品を買う側も売る側も認識できているのか、少し心配になっています。

寺本名保美

(2020.11.02)


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