2020年04月の思いつき


守って守って一気に壊す

突然出てきた、9月新学期の恒久化案。

公的書面からの印鑑廃止も現実味を帯びてきました。

異常事態に直面した時に顕在化したボトルネックを、一気に撤廃する機運が盛り上がることは、悪いことではないと思うものの、何か制度に不具合が起きた時、その運用や適用に工夫を求めず、制度そのものをなかったことにしてしまうのは、この国の悪いところでもあります。

一旦決めてしまったことの微調整や変更については、異常な労力を要する割に、捨てる時はあっさり捨てる。

建造物をすぐ壊すカルチャーにもどこか共通の感覚があります。

日本のという国は、守って守って、一気に壊す。ということを繰り返しながら、生き抜いてきたのだと改めて実感しています。

寺本名保美

(2020.04.28)



大企業中心の金融システム

中小企業金融がはぼ間接金融(金融機関貸付)に限らている日本において、現在の中小企業が直面する苦境に対し中央銀行として直接的にできることは殆ど何もありません。

CP等の大量買入れにより大企業の直接金融コストを低下させることで、大企業の川下にある企業に間接的な影響を与えることができるかもしれませんが、その効果は限定的でしょう。

地方金融機関に対し、地元企業への金融支援を促進させる政策も含まれていますが、ただでさえ体力がない地方金融機関に多くを期待することはできません。

結局のところ、国債の買い取りに上限を設けないことで、政府による財政政策を日銀が無制限にファイナンスをすることを約束することが、今の日銀にとって出来得る最大の中小企業支援策であるということになります。

日本経済が中小企業に支えられていると言われつつ、金融システムは大企業や上場企業にしか対応できていないという矛盾が露呈しています。

寺本名保美

(2020.04.27)



前哨戦

在宅でのネット速度が、日々遅くなっているように思えます。

こう感じているのは私だけではないようで、巣籠りによる通信回線への負荷が増しているからかもしれません。

本格的なデジタル社会に、インフラが対応する前に、巣籠りよるプレデジタル化が起きたことで、これまで推測でしかなかったデジタル社会構築への物理的な障害を、認識することができているともいえそうです。

別の事例では、マスクのネット販売を始めた電機メーカーのサイトが、マスク販売へのアクセスオーバーにより、メーカーのサービスサイト全体が落ちてしまったという事例も出てきました。

どこかの極地的な負荷が、ネット社会全体に想定外のダメージを与えることにはならないかということは、今後の社会構築において非常に重要なリスクファクターでもあります。

期せずして訪れた、デジタル社会への前哨戦。
この機会を有効に活用していかなければならないとも思います。

寺本名保美

(2020.04.24)



第三波の気配

弊社のアナリストが新型コロナ感染者数が2倍になる日数を計算したところ、上位に来たのがバングラデシュ・サウジ・ペルー・シンガポール・メキシコ・ロシア・カタール・ベラルーシ・パキスタン・インド・UAE。

気になるキーワードは「イスラム圏」「産油国」「多人口」。

イスラム圏については今日からラマダンが始まります。

産油国については、急激な原油価格の下落で国家財政が急激に悪化しています。

人口の多い国は、医療崩壊リスクが高くなります。

中国アジアが第一波とするなら、欧米先進国が第二波。ここから先の第三波は恐らく規模が桁違いに大きくなります。

改善の兆しが欲しくて、数値を眺めてみているものの、どうも気が重くなる結果しかでてきません。

寺本名保美

(2020.04.23)



ルールが変わるリスク

サブプライムショックの際、金融市場の被害が拡大した理由の一つが、政府が資本市場に直接介入したことで、金融取引における契約が一部政府によって無効化されたり、返済順位が逆転させられたりしたことで、金融取引そのものの継続性に疑義が発生してしまったことにあります。

足元の私の最大の懸念は、不動産の賃貸契約や住宅ローン契約に対する政府の介入が、世界のREIT市場や不動産証券化市場に与える影響です。

証券化に伴う金融機関借入には、賃料の延滞等に対する取り決めが定めされています。

政府が一律賃料の延滞の強制するような局面になった場合、金融取引上の解釈に混乱が発生する可能性があります。

金融市場は厳格なルールを共有することによって成り立っています。ルールの破壊は市場の破壊に繋がります。

今の各国政府には、証券化商品に配慮する余裕など全くないでしょう。

起きてみないと理解されないリスクほど厄介なものはありません。

寺本名保美

(2020.04.22)



未だ想定内

コロナ災禍に関わる経済的イベントとして一巡目に想定されていたのは、需要減少による原油価格の急落とエアライン等の大型デフォルトです。

このようなイベントは、規模の大小は兎も角として、避けられない事態であると考えているので、事態の進行は厳しいながらも出口に向かっての前進でもあります。

想定されているイベントである限りにおいては、各国中銀を始め金融市場においても、ある程度の準備は出来ています。

気を付けなければならないことは、イベント発生による亀裂が想定した範囲を超えて拡大をすることです。

原油については、産油国による金融資産の切り売りリスクに加え原油関連のデフォルトがどこまで拡大するかが重要ですし、一般企業のデフォルトについては金融機関のバランスシートへの波及を気にしておく必要があるでしょう。

こうした動きは、コロナ感染の終息とは無関係に今後広がっていきます。

今のところ、想定内ですが、展開には十分注意が必要です。

寺本名保美

(2020.04.21)



あるデータ

アップルによる行動推移統計によれば(https://www.apple.com/covid19/mobility)
1月13日を100とした場合、4月17日の各都市の行動比率は、以下の通りです。

徒歩:東京77:大阪56:NY24:ワシントンDC42:パリ10
自動車:東京76:大阪69:NY46:ワシントンDC54:パリ16
駅乗降数:東京57:大阪52:NY12:ワシントンDC16:パリ9

この数字をどう見るかは人それぞれです。個人的には、以前のテロ被害の際と同様に、人権重視と言われているフランスが危機時には人権よりも人命で統率されて、社会主義的と言われてきた日本が人命よりも人権を重視しているように見えることが印象的です。

このデータは日々更新されています。ビッグデータ系の投資戦略において、こうしたデータもまた収益機会の一つとなるでしょう。

もし私がこのデータで売買をするとするならば、日本株を買う気にはなりませんが。

寺本名保美

(2020.04.20)



危機時だからこそのサスティナブル

昨晩のNY株式市場では、アマゾンとネットフリックスが史上最高値を更新しました。

アップルは新製品の販売開始をアナウンスしています。

市場の混乱は、企業間の体力格差を如実に表します。

もちろんビジネスモデルが巣籠需要に適合しているということもありますが、それでも日本よりも厳しいロックダウンをしている米国において史上最高値を更新したり新製品を導入できている事実はやはり驚愕に値します。

当面は足元の業績ではなくて、ビジネスモデルの継続性に対する信頼性が、株価形成にとって大きな意味を持ってくるということでしょう。

日本の株式市場における、アマゾンやアップルはどこになるのか。視野を広くして探していきたいと思います。

寺本名保美

(2020.04.17)



もしこれが5年前だったとしたら

もし、今回のコロナ感染が5年前に起きていたら、恐らくどこの国においてもテレワークなどできていないでしょう。

3年前に起きていたら、中国や韓国で封じ込めに効果的であったと言われている、顔認証システムによる行動履歴確認は出来ていませんし、ビッグデータによる動的把握もできないでしょう。

1年前に起きていたら、できるだけ現金は触らずに電子決済で支払いましょう、などという話も日本においては出来ません。

今回の災禍が5年前、10年前に起きていたとして、我々は、社会は、どう対応できていたのかを考えるとゾッとします。

コロナ後の社会においてデジタル化が進みすぎる弊害を懸念する論調も増えてきていますが、とりあえず足元においてデジタル技術が社会を救っていることは、間違いのない事実ではあります。

寺本名保美

(2020.04.16)



政治家の真価

ここにきて、米国の大統領がプロの政治家でないことのリスクが表面化してきたように思います。

トランプ氏が政治的経験がないことについて、平時においてはむしろプラスに働く部分もあったのでしょうが、いざ有事における対応の稚拙さが、米国だけでなく世界中の人命に関わるリスクファクターになりつつあります。

ここにきて、国民の人気投票でTOPになった大統領や首相達の言動が、深刻なトラブルを招きつつあります。

一方でメルケル首相のような、これまで国民の人気があまりなかったプロの政治家の評価が上昇しているようです。

政治というものは有事においてその真価が問われるのであれば、ここまでのところトランプ大統領にとってはかなり厳しい評価が下されることになるでしょう。

それがわかっているからこその焦りが、米国だけでなく世界全体の災いの種にならなければよいのですが。

寺本名保美

(2020.04.15)



買ってはいけない。

敢えて言います。

ここからもしかすると数か月単位で、国内外問わず株式市場もクレジット市場も戻るかもしれません。

でも、この戻りを買ってはいけない。

今回の世界的な経済のシャットダウンが、経済の根本に与えた影響を見極めるのはまだ早すぎます。

リーマンショックで経済が止まった時、一番大きな損失を被ったのは、急落後の一時的な反発局面で買った2次損失組です。

大きなイベントが発生した時、株式市場は経済の反応を過剰に先取りします。今はその過剰な先取り分を取り戻しているだけです。株式市場の後に来る、本当の経済損失がどれほどの規模になるのかは、まだ誰も、どの国も、計算すらできないでしょう。

そもそも、この災いが本当に一巡後に終息するのかどうかすら、誰も判っていません。

もう一度言います。
この戻りは買ってはいけない。

寺本名保美

(2020.04.14)



リート市場の見えていないリスク

3月以降大きく下落した後やや反発しているREIT市場ですが、今後の特に国内市場に対して、やや懸念をもって眺めています。

REITの価格特性は、リスク資産として株価に近い変動部分と、配当利回りを重視した債券に近い部分と、更に負債比率が高いハイイールド債券に近い部分との3つのリスクファクターが併存しています。

株価に近い部分については、リスクオフでの株価急落時に引っ張られるボラティリティリスクです。

配当利回りについては、債券金利との比較優位の他、配当率の持続性の確実さによって変動する経済リスクです。

負債部分の調達コストの変動リスクであるハイイールド債券に近い部分は信用リスクになります。

ボラティリティリスクの織り込みは一旦終了し、今は信用リスクを熟している最中ですが、この後の経済リスクに関わる部分については、過去に経験のない経済環境において、先行きを予見することはまだ不可能に近いと思っています。

賃料の延滞が続いたらどうなるのか。万が一国がテナントへの賃料減免を求めるような局面になった場合誰の負担になるのか。テナントの廃業が続いて保証金の支払いが一時期に発生した場合のキャッシュフローは保全されているのか。

まだこうした状況についてREIT会社からの説明は出てきていません。

状況次第では、借入部分のデフォルト事象に抵触するケースも出てくるリスクもあるのではないかとも思います。

足元ののバリエーションだけで投資判断をするには、不透明要素が多すぎるように思えてなりません。

寺本名保美

(2020.04.13)



経済を止めない国、止める国

2週間ほど前の、パウエル議長の発言の中に次のようなフレーズがありました。

「FRBが過去数週間に打ち出した無制限の量的緩和(QE)や大規模な流動性対策については、経済に十分な休息を与えつつ国民の安全を確保することが目的である」

経済に十分な休息=経済は止める ということです。
経済を止めることにより起きうる様々な障害については、政府は現金給付で生活者の命を繋ぎ、中央銀行は無制限の資金供給と信用許与で企業の命を繋ぎます。

コロナの為に景気が悪くなる、のではなく、コロナの為に経済を止める、のです。

日本については、経済を止めていません。そこまでの覚悟がないのか、そこまでの限界点に達していないのか、どちらかでしょう。

今のところは、日本は奇跡的に限界点に達することなく時間を掛けて終息に向かうというのが政府のメインシナリオで、だからこそ経済を止めないことを選択している。

でも、奇跡的に、、、ですが。

当初被害が少ないために対策が後追いになった、という過ちは、リーマンショック時にもありました。

過去の経験が生きていればよいのですが。

寺本名保美

(2020.04.10)



大統領選、とりあえず、決着

昨晩の米国市場はサンダーズ候補の大統領選撤退を受け、トランプ大統領VSバイデン候補という構図が確定したことへの安心感から、株式市場は上昇しました。

バイデン候補の具体的な政策についてはこれからになりますが、今のところ現実的な自由貿易推進主義者という評価で一致しているようです。

つまり保護主義か自由貿易主義かという枠組みにおいてはトランプ大統領の対局にあるものの、オバマ前大統領ほど理念優先ではない、ということで、金融市場的にはバランスが取れ、見通しがつきやすい、という意味で歓迎されそうです。

一方で、トランプ大統領やオバマ前大統領ほどの、強いインパクトを与える主張がないことが、選挙においてはマイナスに働きそうで、「中道」であることが最大の弱点であるともいえるでしょう。

いずれにしても、金融市場としては、懸念されていたサンダーズ候補の可能性が消えたことは一安心であることは間違いなく、正直あとはどちらでも良い、という感じかもしれません。

寺本名保美

(2020.04.09)



判っちゃいるけど

今朝の日経新聞に、個人向けのバランス型投信に解約が出ているとの記事がありました。

という記事を読んで初めて認識しましたが、これまでのバランス型投信の売れ筋は、レバレッジ型だったり、一定の損失におけるノックダウン型だったりしたらしい。

国が個人に対しバランス型の分散投資を推進した意味を完全に無視した組成や販売により、再び個人の投資信託に対するイメージが悪化することとなったようです。

バランス型の良いところは、基準価格の変動率を低位に抑えることで、短期的な株価変動に一喜一憂せず長期に資産運用を継続できる点にあります。

そのバランス型にレバレッジを掛けて変動率を引き上げてしまったり、一定の損失でファンドが償還してしまったら、何のための分散投資なのかさっぱりわかりません。

そもそも、記事中にある、「預金の代わりに購入した個人」という表現が未だに出てくること自体、脱力してしまいます。

ここに書いたことなど、ファンドを組成する運用会社も販売会社の企画部門も百も承知です。

それでも止められない業界の悪癖が一掃される日は、いつ来るのでしょうか。

寺本名保美

(2020.04.08)



緊急事態宣言に対応した業務体制について

弊社では本日より緊急事態宣言に対応し、原則として完全テレワーク体制に移行します。

業務につきましては、全てメールでの対応をお願いいたします。
(担当者が不明のご用件につきましては、info@ttassetdesign.co.jp までご連絡ください。

市場についての見解は、このコラムの他、お客様には個別に情報提供を継続いたします。

また郵送物は午前9時より11時までの受け取りに限定して対応いたします。

お客様並びに、運用機関の皆様にはご不便をお掛け致しますが、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。


株式会社トータルアセットデザイン
代表取締役 寺本名保美

(2020.04.07)



人恋しい

今日、弊社の役員会をビデオ通話で行いました。

内容としてはメールや通話だけでもできる内容ではあったものの、やはり顔を見ながら話しができるのは、意思疎通としては大きいと感じます。

お客様のお顔を見られなくなって1ヵ月以上が経ちます。これからあと1ヵ月ぐらいは、この環境は続くことでしょう。

人と人との直接的な接触を介さずに、サービスや販売ができる体制が急速に整いつつあります。一方で、人と人との直接的なコミュニケーションが如何に重要であったかを、肌身で感じるよい機会にもなっています。

コロナ後の世界が、デジタルに支配された無機質な世界に変わってしまうことを危惧していたのですが、一方で人間臭いアナログが見直されることもあり得そうに思えてきました

寺本名保美

(2020.04.06)



久々の明るい話題

ようやく原油の減産がテーブルに乗ってきました。

今回のリスクオフのきっかけの一つが解消に向かえば、市場センチメントは多少なりとも落ち着いてくることが期待できます。

協調減産の仲介者として米国を担ぎだせたことは、ロシアやサウジにとってはある意味で目論見通りの展開と言えそうで、これで米国のシェールオイルもまた、何等かの減産に協力せざるを得なくなるでしょう。

とはいえ、20ドルそこそこの原油価格では、幾ら2015年の急落時に経営効率化が進んだシェールといえども採算ラインにはほど遠く、トランプ大統領の介入がなかったとしても各企業自ら減産していたとみられるわけで、米国が既存産油国に協力をするふりをして恩を売るには絶好のタイミングだったといえそうです。

一難去っても、まだ十難ぐらいが控えていそうですが、それでも久しぶりの明るい話題が現実化することを期待しています。

寺本名保美

(2020.04.03)



終わった後の話

今回、意図せざる理由で、社会のデジタル化が急速に普及していく中において、その障害や問題点も洗い出されてきました。

特に日本のようなデジタル途上国においては、事ここに至って初めて直面する問題が山積みすぎて、スピードが求められる環境に全く対応できていない現状も明らかになりつつあります。

デジタル化が良いとか悪いとか言っている場合ではなく、とにかく進めなければならない、という状況が発生したことは、中国や米国に比べて周回遅れだった日本のデジタル化を国際標準に近づけるには、絶好の環境でもあります。

問題は、コロナ騒ぎが終わり平時に戻った時、様変わりしてしまった社会を、我々が受け入れることができるかという点には、それはそれで新たな難題となるのでしょう。

終わった後の話をするのは、まだ時期尚早ではありますが。

寺本名保美

(2020.04.02)



問題は今年度

大波乱の2019年度が終わりました。

年金という枠でみると、12月までの貯金を1-3月で喰いつぶして、少しおつりが残った人と、少しマイナスになった人と半々ぐらいでしょうか。

1月から新年度になっている海外勢に比べると、3月決算というタイミングは今回に限りプラスに貢献したと言えそうです。

1-3月の株式市場を見て、また年金が大損か?と心配している方々にとっては、恐らく今回の決算は少し胸をなでおろす結果になっているかもしれません。

さて問題はこれからです。

年度前半の2番底。12月末に向けての急反発。来年1-3月で水準調整。年度締めてちょっとプラス。

というのが理想的な展開ですが。さて。

寺本名保美

(2020.04.01)


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