どこにいても同じ
テレワークを始めて1か月。
毎週初、役員は出社して、解消のタイミングを検討するものの、状況はさっぱり好転せず、今に至ります。
今回金融機関の中でも資産運用系のテレワーク対応が速かったのは、この仕事が如何に代替の効かない属人的な作業に依存しているかの表れでもあります。
極論すれば、金融決済業務はバックグラウンドでのシステム管理さえ盤石であれば、表面的なマンパワーは必要はありません。
法人向けの証券業務は特定の一社が機能しなくても、他社に注文を出すことができます。
個人向けの証券取引は、大方ネットで代替できそうです。
でも、顧客財産の投資に責任を持つ資産運用会社の場合、何があっても投資判断を止めるわけにはいかないのです。売買しない、という判断であったとしても、それは一つの投資判断になります。
だからこそ、世界の資産運用会社の多くは、会社であろうと自宅であろうと、何があろうと投資判断が止まらないような体制構築を準備しておく必要があり、今回不幸にもそれが実証されてしまった形になりました。
今後どれだけ続くかはまだわからないテレワークではありますが、世界中の資産運用に関わる人々は、どこにいても緊張感をもってお客様の資産の保全に努力していくであろうことを信じています。
寺本名保美
(2020.03.31)
産油国の良識
原油先物が20ドルを割れました。
今回の原油安のきっかけとなったサウジアラビアとロシアにおいても、コロナウイルス問題が深刻さを増してきています。
実際のところはわかりませんが、米国のシェールオイル対策で始めたと言われている今回の増産騒ぎが起きた時は、コロナ問題は中国問題に過ぎず、両国にとっては中国での景気後退に伴う原油需要の減少が唯一最大の懸念材料だったはずです。
そして今、状況は完全に変わっています。
原油需要の回復は全く見通せず、20ドル割れで増産をすれば全ての産油国は赤字です。
体力のより弱い産油国を守るためにも、ロシアとサウジの良識が復活することを願います。
寺本名保美
(2020.03.30)
もう少し我慢
3月11日に書いた損失の連鎖。
合わせ切り⇨ストップロス⇨ボラティリティコントロール⇨レバレッジの追証⇨ファンド精算
というレベル感で見てみると、かなり早いスピードでレバレッジの追証あたりまで進捗しているようです。
ここから先が、1番深く怖いところではありますが、時間の経過が早めに動いていることは、今後の展開にとっては悪いことではありません。
あとは、中途半端な値頃感での買いによる二次損失組がどれだけ出てくるかによって、2番底の深さが決まってきます。
戻りを買いたくなる気持ちはあるものの、後々の被害の拡大を抑えるためには、投資行動ももう少し自粛しておきましょうか。
寺本名保美
(2020.03.27)
楽観的な景気対策
景気対策として話題になっている「旅行券」「和牛券」「魚介券」。
なんというか、政治から国民が信用されていないような気がして、少し不愉快です。
問題なく移動ができるようになり、制限なく外食ができるようになれば、我慢してきた国民は何もなくても旅行をするし外食もします。
でもその時に消費者の就業先が確保されていなかったり、所得が大幅に減少していたら、旅行や外食どころではありません。
特定業種や特定の生活層に焦点を絞った景気対策の話をしている程度の、危機意識しかないのかともいえそうで、この楽観論が当たるに越したことはないのですが。
寺本名保美
(2020.03.26)
結局ネット
今回の急落後の反騰も、結局ネット関連銘柄主体の反発になりました。
2018年以降度々繰り返してきた値幅を伴う調整後は、全てネット関連株の反転から反発しています。
政治経済共に不透明感が如何に強かろうと、デジタル革命による成長エンジンへの信頼度が極めて高いことが、今回も変わらず証明されている形です。
もちろん、今回はGAFA全体が戻るというわけにはいかず、マイクロソフトやアマゾンなど、ソフトサービス中心の反転で、アップルのような完成品依存の高い銘柄は厳しい環境が続いています。
このまま2番底なく市場が戻るとは到底思っていませんが、とはいえ過去4年の株高の根底にある成長シナリオのベースがまだ崩れていないように見えることは、一縷の希望でもあります。
寺本名保美
(2020.03.25)
潜在的な売り手
ソフトバンクが、海外資産を大量に売却し、自社株という国内資産を大量に購入すると発表すれば、当然海外市場は売られて国内市場は買われ、為替は円高気味に反応します。これが昨日から今日までの金融市場。
FRBの量的緩和無制限発表は、孫さんの爆弾発表に打ち消されてしまいました。
コロナ問題に関わらず、今年海外の景況感が大幅に悪化する局面があれば、ソフトバンクが資産の流動化に走るリスクは、金融市場で十分に認識されていたことで、意外感はありません。
あと懸念される流動化リスクは、ロシアを含む産油国による資産売却です。
何時来るかと身構えるよりも、実弾が見えてきた方が対処はしやすいともいえます。
まだまだ遠く、またまだ大きな波乱はあるでしょうが、少しずつ出口は見えてくるかもしれません。
寺本名保美
(2020.03.24)
春の先取り
人は現実的な映像に反応します。それは当たり前のことです。
今回世界の株式市場の調整が劇的であった理由は、今後の市場予測をするまでもなく、実際に出社できなくなり、目の前の街の光景が現実に変わったからです。
リーマンショックの時、資金が止まり、物流が止まる、と言われていたものの、それが具体的に何を招くのかは、実際にリストラや倒産が起きるまでは想像の範囲でしかありませんでした。
今、欧米において経済が止まっていることを理解するには、想像力は必要ありません。
問題は日本です。日本における足元のリアルは「サービス業」の停止です。サービス業が止まることによる経済被害については想像力を必要としません。
けれども、本当に怖いのは、停止がサービス業から製造業に拡大することである、ということについてを理解するには、まだまだ想像力が必要とされています。
昨日までの3連休。自粛疲れも判ります。飲食や興行従事者の生活を守らなければならないことも判ります。でも、それによって欧米各国のような工場の生産ラインの全面停止という状況が発生することになってしまえば、飲食や興行に行く人の生活までもが棄損され、お店が開いても客は居なくなります。
4月から来るはずだった日本の春を、この3連休が先取りしてしまったのでなければいいのですが。
寺本名保美
(2020.03.23)
パニックの連鎖
政権のパニックが社会不安に繋がり、社会の不安心理が金融市場心理を悪化させ、金融市場心理の悪化が中央銀行の危機感を醸成し、中央銀行の金融政策が常道を外れることで、先行きの不透明感が増す。
今の欧州を見ているとこうした負の連鎖が見えてきます。
日本の政権のように、木で鼻を括ったような対応にも賛否はあるでしょうが、今のような局面においてはポーカーフェイスも一つの戦略なのではないかと思います。
今はまだ金融市場がパニックの中心ではありません。TOPが落ち着き社会が落ち着けば、金融も自ずと落ち着きます。
金融市場がパニックの中心になってしまうと、問題は更に厄介度を増します。
落ち着け落ち着け落ち着け。
寺本名保美
(2020.03.19)
次のステージ
英国のローラアシュレイが経営破綻と報じられています。
また、米国ボーイング社の資金繰りについて、米国政府が支援を行うという報道もあります。
ローラアシュレイについてはアマゾンエフェクトや、若者離れの影響もあり、業績が悪化している中においてのコロナ問題による消費停滞。
ボーイングについては、事故の続いた737MAXの製造停止問題を抱える中で起きたエアライン業界の深刻な不況。
元々脆弱性を抱えている企業において、信用リスクが陰を落とし始め、世界のあちらこちらで大規模な信用破綻の足音が大きくなってきました。
米国を始めとする金融当局の視線の先にあるのは、株式市場でも景気でもなく、企業や国家で高まるクレジットリスクをどう抑え込むかの一点です。
そう考えると、やはり日銀の株式買い取り拡大、というのはどうもピントがずれているように思えてならないのですが。
寺本名保美
(2020.03.18)
リスタート
昨晩の下落で、米国はトランプ大統領就任後の株価上昇をほぼ失い、日本はアベノミクス発動後の株価上昇を失いました。
すぐに戻るというつもりはありませんが、いずれの国もその間に起きていたはずの経済成長までもが、なかったことになる水準まで株価は調整したことになります。
ここから先、それぞれの国において、過去の株高のどこまでが幻想で、どこまでが現実であったのかが評価されることになります。
基礎的な成長シナリオが描ける市場には資金が戻り、そもそも成長シナリオが描けない市場は経済の痛みを乗り越えることができず更なる減速が待っているかもしれません。
足元の割安度だけみれば魅力的に見える日本市場ではありますが、それだけ資金を引き寄せることができるのか、やや疑問ではあります。
寺本名保美
(2020.03.17)
今こそ役に立ってください
朝方のFRBの1%利下げの直後に前倒し開催を発表した日銀の政策決定会合ですが、開催から2時間経っても音沙汰がありません。
グローバルな問題としてはドル調達の円滑化。
国内問題としては3月末越え資金の安定化。
金融市場的には株式ETFの買入強化、というあたりが期待されているのでしょうが、個人的には長期金利を下げるオペレーションをして欲しい。
3月に入って、日本とフランスの国債は、投資家の利益確定売りに押されて金利が急騰しています。ポートフォリオのバランスとして一番役に立って欲しいこの時期に、国内債券の収益率がマイナス1%超えというのは許容範囲を超えます。
我々がマイナス金利であっても国内債券を持ち続けてきたのは、今のような非常時に役に立つと思うからこそです。
最近あまり興味のなかった日銀の政策決定会合ですが、今回ばかりは多いに期待しています。
寺本名保美
⇨追伸
ガッカリだ。
ガッカリなのが私だけなら良いのですが。これからの欧州米国市場でどう評価されるか。
国内の特殊事情だけに目が行っているように思うのは気のせいだろうか。
(2020.03.16)
基本にもどる。
今回の下げ幅が大きくなっている理由の一つは、多くの投資家にとって昨晩までの株価の水準が含み益になっていたことも大きかったと思います。
昨晩の下げで債券の売りも出ていたというのも、債券は今でもほとんどの投資家にとっては含み益になっているからです。
2016年のトランプ相場が始まって以降、低金利とネット相場に支えられて、金融市場は株も債券も共に右肩上がりの市場環境が続いてきました。
一方で米中摩擦やブレグジット、中東問題に朝鮮半島と、政治リスクには事欠かない環境下での株高債券高が多くの投資家にとって居心地があまり良くなかったのもまた事実です。
東京市場は今日の日中でトランプ相場のスタート次点に戻ってしまいました。
過去3年半の市場の牽引力は金融緩和であり、また、ネット社会に向かってのイノベーションです。
金融緩和とイノベーションについては、今回のコロナ騒動によってむしろ加速しているともいえるでしょう。
含み益が一掃された今、ここから先の売りは投機的な色彩も強くなってきます。
まだ買い場です、とは言い難いものの、少なくても売り場ではありません。
パニックが収まるのを少し待ちたいと思います。
寺本名保美
(2020.03.13)
我慢のしどころ
WHOのパンデミック宣言と、トランプ大統領によるEUからの渡航禁止措置とによって、今日も金融市場は混乱しています。
パンデミック(新しい感染症が世界的に大流行する状態)とは、感染症の「重症度」ではなく「地理的な拡大」が考慮された定義であり、既に南極大陸を除く全大陸での感染が認められている中においては、意外性は無いというコメントも多く見られます。
ただ、地理的な拡大が宣言されたことにより、人的な移動は今後更に制限されていく可能性が高く、まさにトランプ大統領が行ったような渡航禁止が、あらゆる国家間で順繰りに発動されていくことになるのでしょう。
中国の山が2月とするなら、日本と韓国が3月、イタリアが4月で、米国が5月、、、といったように感染のピークが各国・各地域を順番に通過していくとするならば、世界全体を巡り終わるまでにはやはり年単位の月日が必要になるのかもしれません。
月日の経過による経験値の蓄積と特効薬の確定が、医療脆弱性のある国々での感染拡大期に間に合うかどうかが、世界規模で見た時の最大の課題です。
感染地域としては先頭集団を走っている日本が、中国ほどの極端な経済封鎖を行わずして、無事に山を超えられれば、世界全体にとっても一抹の光明となるでしょう。
相場も社会も、ここは我慢のしどころです。
寺本名保美
(2020.03.12)
損失の連鎖
何かの資産価格が大きく下落した時、次に来るのは損の連鎖です。
株式の損失を債券の売却益で埋めようとすれば、本来は上昇するはずの市場価格が一緒に下落することになります。
年間の損失限度額が決まっているファンドでは、一時的な急落でストップロス基準に抵触すれば現金化しなければなりません。
特定の資産の価格変動率が上昇すれば、リスクパリティ型の戦略は保有資産を満遍なく売却する可能性があります。
デリバティブ市場での証拠金差し入れ担保資産の価値が減価することで、デリバティブポジションの解消売りがでます。
このようなことが複合的に重なることで、投資家全体のリスク許容度が萎縮して、リスクの高いファンドの解約が始まります。
ここから先の投資判断には、損失の連鎖のどこまでが進行しているのかを見極めることが重要になってきます。
バリエーションだけでの投資判断は少々危険かもしれません。
寺本名保美
(2020.03.11)
つまらない駆け引きをしている場合か
ロシアとサウジによる「暴挙」の結果で大混乱をした昨晩の金融市場をみていて、この2大国にはまだコロナウイルス問題の深刻度が伝わっていないのだろうと思っています。
実際、ロシアの感染者数は17、サウジは15、でお互い死亡者数はゼロ、と感染度合いは世界でみても低位にいるわけで、世界の混乱に乗じて何やら企んでみたくなったのかもしれません。
米国のシェールの採算ライン割れを狙ったという勘ぐりも出ていますが、それで破綻するのは米国では単なる一民間企業で、本当に苦しくなるのはサウジ以外の産油国の方です。
世界経済全体がコロナウイルス問題を受け基礎体力が落ちている中、つまらない駆け引きはトットと止めないと、色々な意味での火の粉が結局我が身にかかることになります。
寺本名保美
(2020.03.10)
サウジの開き直り
今日の東京市場の波乱は、コロナウイルス問題というよりは原油の急落が引鉄です。
2014年2015年の原油急落の際、ロシアを含めた産油国合意した協調減産の枠組みが破綻しました。
ロシアは1バーレル50ドル割れの水準では財政赤字になると2015年に宣言しており、中国での需要減退が長引くことが想定される中において、値段より量で絶対収入の確保を選択したということです。
だからといってサウジ自らが増産宣言をすることは、市場にとって激震以外の何物でもなく、瞬間20ドル台まで急落した原油価格をみて、市場は完全にリスクオフに突入してしまいました。
産油国にとって原油価格が低迷することは誰の得にもなりないことは自明であり、さすがに増産発言は撤回されるのではないかと期待はしています。
寺本名保美
追伸
弊社のテレワーク体制については、当面の間継続させていただきます。正常化のタイミングについては改めてご連絡させていただきます。
(2020.03.09)
正に、大統領選挙とSNS
米国の大統領選挙の最中において大規模集会が禁止されるかもしれない、という歴史的な有事が米国で起きようとしています。
野次馬的にみるならば、大規模集会がない大統領選挙というものが、どのように展開されるのか、ということに大きな興味があります。
テレビなどのメディア討論やそれこそSNSでの選挙活動ということになるのなら、むしろトランプ陣営にとって有利な展開になるのでしょうか。
今回の米国大統領選がもしデジタル化するようなことがあれば、足元で進んできた社会構造変化がコロナウイルス問題により一気に加速する象徴的な事象になるかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2020.03.06)
それぞれの事情
習近平国家主席の国賓来日の延期が正式に発表されました。
それとは別に、中国と韓国からの来日自粛要請及び来日後2週間の隔離が発表されると一部メディアが報じています。
それとは別に、とは書きましたが、前項が正式決定したからこそ次項の決定ができるようになったというのは、明らかなように思われます。
オリンピックの年でなければ、もっと違う対応があったのかもしれないとか、習近平国家主席の来日が予定されていなければ、とか勘ぐればきりがありません。
今回のような世界規模での感染症において、各国が各国の事情を抱えながら、独自に正しく判断をしていくのは、現実には相当に無理があるような気がしています。
今後の教訓として、もう少しWHOが主導権を持って、世界全体の足並みを揃えるような仕組みを作っていかなければならないのではないかと思っています。
寺本名保美
(2020.03.05)
目が覚める利下げ
米国FRBによる突然の利下げは、0.5%という幅のインパクトも含め、市場にとってはかなりのサプライズになりました。
このサプライズは、何処かで対岸の火事だった米国の株式市場に対し、コロナ問題が他人事ではないらしいという認識を与えるには充分すぎる効果があったようです。
先月末からの下落を経験したあとでもなお、所詮短期的なバリエーション調整という意見が大勢だった米国株式参加者が、このタイミングでの大幅利下げの意味する世界景気への深刻な懸念を織り込みに行ったのが、昨晩の700ドルを超える急落だったのかもしれません。
この先の急落局面では、日本や欧州の金融緩和が確実である中、大きく売りから取ることは難しくなってはいます。
投資家ポジションの整理がついてくるまで、もう暫く乱高下が続くことになります。
寺本名保美
(2020.03.04)
鎮静効果
米国の大統領予備選がスーパーチューズデーを前に動きました。
民主党のブティジェッジ氏の突然の撤退表明により、民主党候補が左派のサンダース氏か中道のバイデン氏(もしくはブルムバーグ氏)の2択になりつつあります。
金融市場的に言えば、サンダース氏以外であれば、トランプ氏でもバイデン氏でもどちらでも良く、議会との捻じれが起きない可能性が高いバイデン氏の方がより好意的に受け止められる可能性があります。
今の金融市場にとっては各国中銀による協調介入よりも米国に安定感のある大統領が登場することのほうが、より鎮静効果があるかもしれません。
寺本名保美
(2020.03.03)
第一波の次ぎに備える
先週末のパウエルFRB議長による緊急声明に続き、日本でも黒田日銀総裁が緊急単独声明を発表したことを受け、パニックによる市場の動揺は小休止となりました。
これで世界の株式市場の急落は一休みになるとして、次の潜在リスクは国内外でのデフォルトの増加と50ドル割れの原油価格が産油国に与える影響でしょうか。
株式市場の価格調整よりも遅れて発生する、こうした他市場での影響が、一旦落ち着いたように見える株式市場をもう一度揺らす可能性があります。
大きな市場の調整局面においてしてはいけないことは、急落後の小反発に乗じて2番天井を買うことです。
ここはあわてずに状況の波及度合いを冷静に見極める必要があります。
寺本名保美
(2020.03.02)