経験値が物を言う
FRBのパウエル議長が新型コロナウイルスの経済的影響を示唆したことで、市場は再び米国を筆頭にした金融緩和の再開と過剰流動性相場の復活を期待し始めたようです。
昨晩WHOが緊急事態宣言を行ったことが、利下げ期待を高める結果となりました。
金融当局が利下げ判断をしなければいけない程、景況感が悪化するのであれば、当然ですが株式を買っている場合ではありません。
昨今の売買プログラムにおいては、景気の先行き不安⇒金利低下⇒株の買い、というフローが組み込まれているように見えますが、2019年までの金利低下パターンと今回の金利低下は意味が異なります。
想定外の事象にはAIよりも人間の経験が物を言います。
機械的な判断ではない対処が必要です。
寺本名保美
(2020.01.31)
回避する先が問題です。
足下の市場の潜在リスクは株式市場より、クレジット市場にあるような気がしてならないです。
今の経済環境であれば、株価の調整そのものはそれほど怖くはない。
怖いのは株価の調整や経済の想定外の変調が、企業の財務リスクをヒットすることです。
今リスクを取りすぎているのは、投資家ではなく、企業です。
株式のリスクは変動率。債券のリスクはデフォルト。
本質的なリスクはどちらの方が大きいのか。
リスク回避したはずが、地雷を踏むことにならない様にしなければいけません。
寺本名保美
(2020.01.30)
テックバブル?
昨晩、日本での人人感染報道で、円高株安の兆候が再来したものの、アップルの決算が、悪い流れをとりあえず断ち切ってくれました。
相変わらず、困った時のアップル頼みは健在です。
12月から1月の米国株式市場を見ていると、テクノロジー銘柄の独歩高が目につきます。FANG相場だの、GAFA相場だのと言われても、これまでの米国株式は彼らが牽引役となり市場全体をほぼ満遍なく引き上げてきたのですが、この1ヶ月はテック一色の上昇相場でした。
コロナウィルス騒動が、少し市場を冷やしてはいますが、戻りの主役がアップルでは、元の木阿弥です。
2000年のテックバブルとは異なる市場だと思ってきましたが、少し様相が変わってきたかもしれません。
色々な意味で慎重に見ていきたいと思っています。
寺本名保美
(2020.01.29)
非日常への備え
非日常のリスクが発生する可能性がみえた時、大切なことはそれが現実になる前に対処をすることです。
非日常であるということは、それが現実になった時、大なり小なりのパニックが起きるということです。
一旦パニックが起きてしまったら、できることは何もなく、ましてやパニックの最中にリスク資産を売ることほど非合理的な投資行動はありません。
今できることは、万が一のリスクシナリオにおいて、自分の取っている今のリスクが維持可能な水準であるのかを確認することです。
もし、リスクが過剰であると思うなら、市場が平穏であるうちに処理をしておくべきです。
何もなければそれでいい。何か起きた時、下値で叩き売る事を回避する事だけを考えたいと思います。
寺本名保美
(2020.01.28)
少し深くなるかも
高値警戒感がある中でのストレスシナリオ。
年初の中東問題の影響が軽微だったため、昨年慎重だった投資家がリスクを上げ始めたタイミングでのパンデミック。
調整は少し深くなることを想定しておいた方が良いかもしれません。
取り急ぎ。
寺本名保美
(2020.01.27)
物理的、心理的な、安心安全
世銀のレポートによれば、パンデミックの経済被害の内、実際の罹患による経済被害は全体の35%程度で、残りの6割強は健康な人々の行動制限に由来する損失だそうです。
つまりパンデミックと経済との関係性は、心理的な影響をかなり強く受ける可能性が高いということで、だからこそ発生に関する情報公開は、感染の拡大抑制という意味を超えて、極めて重要であるということになります。
前回のリオオリンピックの直前に、蚊を媒介としたジカ熱が大きな問題となり、一時は開催を危ぶむ声まで上がっていましたが、ブラジル政府が数万人の兵士を動員して消毒を徹底する姿をアピールしたこともあり、オリンピックパラリンピックは無事開催することができました。
さて、東京オリンピックパラリンピックまで半年となった今、ホスト国として安心安全をどう確保し、どうアピールしていくのか。
とても困難な課題がまた一つ増えてしまいました。
寺本名保美
(2020.01.23)
癒しの戦略
ダボス会議世界経済フォーラムが始まっています。今年の主要テーマは以下の7つ。
健康な未来
地球を救う方法
恩恵をもたらすテクノロジー
社会と仕事の未来
地政学を超えて
より公平な経済
よりよい企業
テーマそのものの重要性に異議はなく、批判するものでもない、ということを申し上げながらも、このテーマを眺めていると、世界の政治経済の指導者層の疲弊と社会の病みを感じてしまいます。
経済戦略に癒しを求めてしまうほど、現代社会の亀裂が深刻であるということなのかもしれません。
こうした各国の指導者層の迷いが、政治経済運営にどのような影響を与えることになるのか。やや気がかりではあります。
寺本名保美
(2020.01.22)
アジア株の一角として
米中合意観測が出て以降、買い戻しが続いてきた中国株に対し、伸び悩んでいる日本株を見ていると、日本株がグローバル投資家にとってアジア株の一つとして認識されつつあるのを実感します。
我々自身は、米欧日、というカテゴリーが、グローバルにまだ存続していると思っている、または、思いたい、のですが、実際のところは、米欧亜、なのかもしれません。
なにも日本市場が衰退していると言っているわけではなく、中国経済の拡大や先進国と新興国との境界がグローバルに下がっていることも一因でしょう。
アジア株の一角と認識されることは、日本株の資金フローに今後どのように影響をしてくるのか。
寂しさを感じはしますが、悪いことばかりではないかもしれません。
寺本名保美
(2020.01.21)
日本としての防御
軍需と民需の垣根が下がる中、民間での情報流出が国家の危機に繋がりかねない時代となっています。
国と大学や企業等が防衛技術に関して共同プロジェクトを立ち上げると報じられた同日に、日本最大級の防衛産業企業へのハッキング事件が明るみになったことを、重く受け止めざると得ないでしょう。
大学の研究や民間技術が国の防衛や軍事に転用されることへの警戒感はあって当然ではあるものの、今の時代きれいごとでは済まされない現実があるのも事実です。
米中の知的財産権問題への解決は、どうやら先延ばしになってしまいましたが、米国任せではない主体性が、日本にも求められる時代になってしまったように思います。
寺本名保美
(2020.01.20)
十分な6.1%
中国の2019年の実質GDPが6.1%であったことは、悲観すべきことなのでしょうか。
例えば、昨年話題になった『Factfulness』のベースとなったgapminder.orgによれば、戦後急成長をした日本の一人当たりGDPが米国とのギャップを縮める過程には2段階あり、1975年の大阪万博までが急進期で、その後成長スピードを弱めながら1990年まで成長し、対米格差は1991年に最も縮小したのち、再び拡大に転じています。
これを今の中国に当てはめるなら、とりあえず第一段階の成長傾斜から緩やかな成長期に移行しているとみるのが自然であって、いつまでも7%近い成長を続けるということの方が異常です。
高度経済成長後の日本が、光化学スモッグ等の環境汚染といった高度成長の負の遺産に苦労したように、これからの中国もまた成長だけではない社会的コストを受け入れながら、次の成長過程に入っていきます。
そもそも6.1%って、今の日本の5倍以上の数字ですから。
寺本名保美
(2020.01.17)
異常気象という災い
環境問題一色となりそうなダボス会議にトランプ大統領が出席するとのこと。
おそらくオール野党の観衆を前に、どのような演説をするのか楽しみでもあります。
今の地球が熱さられているのか、はたまた冷えているのか。
温暖化であるとして、その原因が本当に化石燃料の大量使用であるのか違うのか。
こう言った科学的な論争に決着がついてはいないものの、昨年の欧州での熱波や、今年のオーストラリアでの大規模火災のように、実際に五感や映像に訴えられてくる足下の気象環境は、理屈を超えた説得力を持っています。
ここまで来ると、この非石化の流れはもはや止めようもなく、であるのなら、商売人であるトランプ大統領としても、そろそろ勝ち馬に乗る時期がきているようにも思えます。
米国をはじめとする産油国にとって、今の世界的な異常気象は国家を揺るがすほどの災いの種となるかもしれません。
寺本名保美
(2020.01.16)
早期退職制度という波
ここにきて、早期退職制度の導入が再び増加してきているようです。
早期退職という概念が日本において認知されたのは、2000年代初頭のことでした。
ある論文調査(内閣府経済社会総合研究所「経済分析」2003年第168号)によれば、従業員2000人以上の大企業で希望退職を募った企業割合は1994年の8.5%から2000年には23.8%まで上昇しているとされています。
この時期がバブル崩壊後の金融システム不安の最中であったことも一因ではありますが、むしろ1990年後半から高まってきたROE経営への傾斜が企業にリストラクチャリング経営を積極化させる要因になっていました。
当時の株式市場の銘柄選択において、「リストラ効果」という単語が頻発していたのには、今話題になっている日産のリバイバルプランの成功もきっかけだったように思います。
この時に発生したリストラ中高年問題は、10年後の派遣切り問題にを経て、20年後の貧困高齢者問題に繋がります。
さて再び巡ってきた早期退職の波。下手に乗ると社会全体が痛い目にあいます。
寺本名保美
(2020.01.15)
熱量が上昇中
オーストラリアの大規模火災やフィリピンの火山の噴火や日本の記録的な雪無し冬。
2019年も欧州の異常高温やブラジルの大規模火災と熱を持った話題が多かったのですが、2020年も引き続き地球が熱をもっています。
香港のデモ熱は台湾の選挙を動かし、イランでは異例な反政府デモが起きていて、社会全体の熱量も上昇しています。
国家間で上昇していた熱は、どうにかやや冷却モードに入りつつありますが、潜在的な熱量はまだまだ高いままです。
一方で外部環境に熱を吸い上げられてしまった金融市場はクールダウン気味。「グローバルリスクオンで為替は110円台に!」という威勢の良い見出しの割には株式市場に動きはありません。
あちらこちらの熱がもたらす結末を、少し慎重に見ていきたい気分ではあります。
寺本名保美
(2020.01.14)
台湾と韓国
明日は台湾総選挙の結果が出ます。
10年ほど前から急激に中国に接近していた台湾がこの数年で米国傾斜が強くなってきています。
一方で、従来中国から距離を取ってきた韓国がこの数年で中国傾斜が強くなってきています。
結果論ではありますが、足元の景況感を見る限り、米国寄りに位置取りを変えた台湾に軍配が上がっているように見えます。
韓国も台湾も半導体と製造業が産業の中心であることは変わりませんが、韓国が自社ブランドの完成品中心であるのに対し、OEMや部品中心の台湾の方が、経済構造や地政学の変化への柔軟性があったというのも、この2か国の経済格差を生んだ一因であるのかもしれません。
政治的な不安定さは抱えながらも健闘している台湾経済の強かさから学ぶことは少なくありません。
寺本名保美
(2020.01.10)
3分の2
ストレスシナリオの中で予測不能なものは、天災と戦争とパンデミック。
戦争とパンデミックの気配で始まった2020年。
今のところ、中東問題も中国の新型肺炎も、まだ気配。
パニックになるにはまだ遠いものの、気持ち悪いことこの上なし。
寺本名保美
(2020.01.09)
シナリオ整理
①中東での紛争で原油価格が上昇するだけであれば実体経済への影響はなく、金融市場への影響は限定的。
②この紛争が、原油の生産量、または輸出量の減少を招くようになると、実体経済への影響を考えざるを得なくなり、金融市場の混乱は長引く。
③紛争の拡大と長期化によって、世界経済の生産活動やヒトやモノの移動に制限が掛かるようになれば、金融市場は調整局面入り。
④世界経済の減速により、原油価格が下落トレンドに入ってしまうのが、完全なるリスクシナリオ。
今のところ、①と②の間。③にはいかないというのがメインシナリオではあるが、、、
寺本名保美
(2020.01.08)
中東問題の意味
今回の米国とイランの対立が金融市場に影響を及ぼすとするなら、それはサウジを巻き込んだ実弾戦にまで拡大する懸念が出てきた時かもしれません。
従来の伝統的なソブリンウェルスファンドとしての影響力だけでなく、ピジョンファンドに代表されるベンチャー資金の提供元として、更には昨年末のサウジアラムコの上場による巨大な発行体として、サウジと金融市場との緊密性は、過去類のないほど増しています。
過去の中東問題が金融市場にとってリスクとなるのは原油価格の高騰とインフレだったわけですが、現在の中東問題での最大リスクはサウジ経済の悪化と財政の緊迫です。
とりあえず一旦落ち着いている市場ではありますが、局面の変化には注意していきたいと思っています。
寺本名保美
(2020.01.07)
眩しいほどの日差しと轟く雷鳴
新年あけましておめでとうございます
東京は元旦から5日間、雲一つない快晴が続く、オリンピックイヤーにふさわしい日本晴れの年始となりました。
お天気に恵まれ、清々しい仕事始めにしたかったのですが、現実は甘くなく、国内外共に暗雲と雷鳴の気配を感じる幕上けとなりました。
今年の市場のテーマは「創造」と「破壊」です。「創造的破壊」ではありません。
革新ではなく創造であり、変革ではなく破壊です。
過去の延長線上に現在はなく、現在の延長線上を探していると未来を見失います。
時勢を見極める目を鍛えることが重要な一年となるでしょう。
本年も皆様の安定した資産運用の一助となるべく、社員一同精進していきたいと思います。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
寺本名保美
(2020.01.06)