年末ご挨拶
警戒感一杯で迎えた1年前に比べ、今年の年末は安堵感が漂う中で年末を迎えています。
さて2020年。
恐らくこの1年で、自動車産業の今後の方向性が明確化することになるでしょう。
それによって浮上する企業や業界もあるでしょうし、それによって確実な衰退に向かうものもあるでしょう。
新しい自動車産業の中心に、これまでのようにドイツと日本が居るのか、そうではないのか。
逆にドイツと日本の経済の中心は、これからも自動車産業であり続けるのか、変わるのか。
19世紀以来21世紀にいたるまで、その形をほとんど変えることなく産業革命後の製造業を牽引し続けてきた自動車産業の変化が、国内外の経済地図に与える影響の甚大さを、社会も市場もまだ織り込みには行っていないように見えます。
モノ作りの国にとっては試練と変革の一年が始まります。
本年の営業は本日までとさせていただきます。
今年一年大変お世話になりました。
2020年もよろしくご支援ご鞭撻のほど、お願い申し上げます。
寺本名保美
(2019.12.27)
2020年
来年の市場環境のイメージは、
引き続き、ソフトやビジネスモデルが主導する景気拡大がベースにあって、製造業が主役となるにはまだ時間が必要で、新しいビジネスモデルやソフトと新しい製造業とを繋ぐインフラ整備が主役となる一年。
インフラ整備には設備投資の側面と法整備の側面とがあり、どちらも政府主導の力仕事。
政治の混乱がインフラ整備の停滞を招けば、製造業の立ち上がりは益々遅くなり、一時的な景気後退シナリオが現実化する。
逆に、政治が財政総動員でインフラ整備に邁進すれば、実体経済を通り越した景気加熱を招き、バブルシナリオが現実化する。
どこの国の政権も爆弾を抱えているようにもみえる年末。
さて、どちらの目が出るか。
寺本名保美
(2019.12.26)
ハンズフリー元年?
今年のマイブームはハンズフリー。
家のテレビや照明の音声操作。
スマホの音声入力。
読書は電子書籍を通り越して、オーディオブックで聴き流す。
ついでに、今年爆発的にヒットしたらしい、擦らないお風呂用洗剤。これもある意味ハンズフリー。
どれもこれも完璧なサービスではないものの、それでも一度使ってしまうともう後には戻れません。
新しいテクノロジーから技術臭さが抜けてきて、生活の一部に収まり易くなってきている実感があります。
さて、2020年。私の生活はどのように変わっていくのでしょう。
寺本名保美
(2019.12.25)
持続性のないサスティナブル
投資における「持続可能性‐サスティナブル」という単語は、元々経営の健全性や利益の安定性を意味するものでした。
それが昨今では、自然環境に優しい、という意味で説明されることが多くなり、本来この言葉が持つ意味の重要性が、却って歪んでしまっているように思います。
代替エネルギー産業がサスティナブルであるかどうかは、経営や利益の安定性からは判断の難しいところです。一方で自然環境に配慮する、という視点でみればサスティナブルである、ということになります。
またガバナンスという言葉の意味も、時代と共に変遷しています。株主価値の最大化を目指す経営が株式会社の唯一最大の目的であった時代から、今はステークホルダー全体の利益に配慮することが求められるようになりました。
資本に社会的責任を求めることは決して間違ってはいないと思っていますが、ETF等の新しい運用商品を組成するためのお題目になってしまっては、サスティナブル投資そのものに持続性がなくなってしまうようで、気持ちが悪いです。
寺本名保美
(2019.12.24)
歪み
今年一年の市場を考えていると浮かんでくる言葉は「歪み」でした。
亀裂になる手前の歪み。
居心地が悪かった一年。
政治も経済も金融政策もイノベーションも、変化したくてもしきれない歪みが多発しています。
捻じれ切れるほどではなく、捻じれが限界近くに達すると一時的な巻き戻しが発生し、再び緩やかに捻じれ始めることの繰り返し。
さて来年。どこかの歪みが亀裂になるリスクを抱える一年。単発の亀裂で終わることがベストシナリオ。亀裂が断層的に拡大することがストレスシナリオ。
一年後、今年の漢字は「裂」と言っていないことを祈ります。
寺本名保美
(2019.12.23)
ため息が出るような内外格差
Amazon とgoogle とAppleが、スマートホームでの接続規格の共有化に動き始めたと報道されています。
Hey Siri!でもOkay Google!でもアレクサ !でも、同じ設定で動くようになる?
日本ではまだ余り市民権を得ていないスマート家電ですが、この規格をこの3社が統一することの意味は、家電業界にとって激震に近いほど大きな意味があります。
ビジネスやクラウド分野でのプラットフォームのみならす、家庭で日常生活のプラットフォームの主導権までもが、この三社に握られてしまいました。
たかだか国内での、QRコードの統一規格さえ決まられずにいる我が国のIOT産業を振り返る気にすらならないほどの格差です。
頑張れ、という気すら失せてきています。
寺本名保美
(2019.12.19)
元の木阿弥、その一
先月の国民投票で急騰したボンドが、昨日1日で元の木阿弥となりました。
何を期待して買って、何に失望して売ったのか、売り買いした人を探して聞いてみたい気分です。
さて、時を同じくして、米中合意に沸いた株式相場。
こちらの方は、まだ高値圏に留まっています。
今年の日本の年末年始は長い。
誰かのクシャミで急落、みたいなことにならないとよいのですが。
寺本名保美
(2019.12.18)
香港経済
香港でデモが本格化してから半年が経ち、ここにきて香港経済への懸念が高まってきているようです。
香港政府によれば香港の今年のGDPはリーマンショック以来のマイナスに転じるとされ、またイングランド銀行によれば香港のGDPの1.2%に及ぶ50億ドル規模の投資資金が香港から流出したとみられます。
訪港客の減少により苦しんでいるのは観光ビジネスだけではなく、エアラインも同様で、ロイターは香港航空の一部保有機を空港管理局が差し押さえたと報じました。
香港のデモについて、抜本的に解決する見通しが立たない中、香港市民と政府との我慢比べが続くことで、香港経済が疲弊してしまえば、結局のところ資本力のある中国本土の関与を高める結果が待っているようにも思えます。
香港経済が弱体化し、いつの間にか国際社会のテーマから外れ、気が付いたら中国本土に吸収されていた、という結末にならないことを祈るしかありません。
寺本名保美
(2019.12.17)
情報フィルター
先週ロイターが「Reuters Staff」名義で投稿した特別リポートを衝撃をもって受け止めました。
ロイターが配信した香港関連の記事を、ロイター記事を配信しているリフィニティブが中国国内での配信において自己検閲フィルターを掛けたという告発文でした。
従来から中国国内で流通する情報にはフィルターが掛かっているということはある意味で周知のことてあったものの、今回の記事によってそれが情報を提供するプロバイダー側の自己検閲によって行われていたことが明らかになったのです。
これは政府当局による強制的な閲覧制限よりも、ある意味において深刻で質の悪い事実でもあります。
メディア自身が取材し、記事を書き、配信する、という自己完結型の時代ではありえないことが、今のメディア産業には起きています。どれほど良い記事を書こうと、それが配信されなければ何の意味もありません。
直接的な関係があるかないかは不明ですが、ロイターからニュース専業業者とSNS配信との関係性についての意見を求めるアンケートが送られてきました。
配信ビジネスを持たないメディアが、今後も意見主張をフィルター無しに発信し続けるためには、敢えて対局にあるSNSを活用していくというのも一つの方策ではあります。
フェイクニュース問題も含め、情報の質というものが以前ほど均一ではなくなっている現代において、結局ところ受け手側の質を高めていくことしか自衛手段はないということなのかもしれません。
寺本名保美
(2019.12.16)
波乱はもう少し先?
対中制裁が緩和されたといっても所詮第四次部分が見送られただけに過ぎず、英国がEUから合意下での離脱過程に入ったといってもアイルランド問題を棚上げした合意に過ぎず、冷静に見れば状況は何も変わっていないことは市場参加者は判っています。
結果として、投資家心理が劇的に改善するということはなく、買い戻し一巡後は、再び膠着相場に戻るというのが順当な見方でしょうか。
だからこそ、金融政策が再度利上げに転ずるという見方は当面出でこないと思われており、2018年10月の急落前の水準に株式市場は戻っても、金融政策がそこに戻ることはありません。
もしここから先、米国の金融政策が再び利上げに転じるとすれば、それは投資家心理が過度に楽観的になった局面であり、その時の引き締めは長く大きなものになるかもしれません。
とりあえずは、政治的にはまだまだ波乱含みであることから、投資家が本当に楽観的になるのには時間がかかりそうではあります。
寺本名保美
(2019.12.13)
選挙が作るセンチメント
今晩の英国総選挙の結果がどうなろうと、英国経済に漂う暗雲が晴れることは無さそうです。
現政権が過半数を取れば、一月末にはいよいよブレグジットとなりますが、アイルランド問題の見通しについては、全く見通しが立っていません。
万が一、労働党政権になれば、ブレグジットは宙に浮き、イギリス経済は、大昔の高福祉国家下での英国病が、復活するかもしれません。
アイルランド問題の悪化は、各国の独立運動への機運を醸成させるリスクごあり、労働党政権の公約は各国の左派ポピュリズムを勢いつかせるリスクがあります。
2016年のEU離脱を巡る国民投票が世界政治全体に意図せざる変化を与えたように、今回の総選挙もまた、世界政治のトレンドに少なからずインパクトを与える可能性もあります。
当の英国の人々に、それほどまでの自覚は、全くなさそうなだけに、結果について予断を持つことは全くできません。
昨日のFOMCが無かったのように息を潜める今日の金融市場。
年末を控えて、大損する人が出てこなければいいのですが。
寺本名保美
(2019.12.12)
政府系ファンドって何?
革新投資機構などの政府系ファンドの役割って何なのかと考えています。
ユニコーンのリスクは取れるけど、オールドインフラの延命リスクは取らない、というコンセプトは正しいのでしょうか。
成長性のあるユニコーンでリスクを取るのは本来民間資金であり、資本効率からみれば投資は難しいものの社会的意義のある投資を支援するのが公的資金なのではないかとも思うのです。
本来取るべき民間がリスクを取らないからといって、公的資金がリスクマネーの出し手になってしまったら、その国の資本市場はいつまでも育たない。
政府系ファンドって、何なのか?
みんなで良く考えてみた方がいいのではないかと思うのです。
寺本名保美
(2019.12.11)
外野だけが騒いでる?
今週12日の英国総選挙。
ようやく争点の整理が見えてきました。
与党・保守党が過半数をとれば、1月末離脱でその後FTA交渉。
野党・労働党はEUとの離脱協議を再開し、再協定案によるEU離脱とEU残留とを選択肢とした国民投票。
その他自由民主党はEU離脱反対主張した国民投票。ブレグジット党はEU離脱。
ということで、与党+ブレグジット党で過半数をとれば1月末ブレグジット。労働党+自由民主党∔αで過半数をとれば国民投票。
政権交代し国民投票に向かっていくとなると、再びEUとの協定案の作成のやり直しから始めることになり、時計の針が丸々一年戻ってしまいます。
争点は見えてはきたものの、今の英国経済にとって何も決まらないことこそがが最大のリスクである、という意見が市場参加者の中にも増えつつあり、どの結果が市場にとってポジティブであるのかは、今だ混沌としたままです。
英国の人に聞くと、相変わらず所詮英国というローカルな話。深刻に考える必要ないんじゃない、というのんびりとした返事が返ってきます。
当人達のご意見を尊重し、結果に一喜一憂しないのが得策なのかもしれません。
寺本名保美
(2019.12.09)
AIの癖
大学入学共通テストで一部記述式が導入されることが決まった時、同時に採点をAIで行う案も提示されていました。
結局AI採点は見送られた一方で、採点の公平性が担保されないという問題から記述式そのものも、見送りの可能性が出てきました。
確かに採点する人間の個人差の排除を指して公平性というのであれば、AI採点ほど適したものはありません。
一方で、特定のAIに適合させるような答案の書き方を訓練するような話も既にでてきているように、AIにはAIの癖があります。
企業の人事採用部門でもすることが検討されているとも聞きます。
また株式市場における企業アナリストの仕事の多くも、早晩AIに置き換えられることになるともいわれていますし、企業や個人の与信管理もAIにシフトしつつあります。
AIに好かれる人間になるには、とか、AIに信用されるための10か条、といったノウハウ本が出てくる世界は、すぐそこまで来ているようです。
寺本名保美
(2019.12.07)
ベア型で長期投資?
今朝の日経新聞に、ベア型の国内株式ETFが、NISAや事もあろうにジュニアNISAで、残高を伸ばしているとの記事を見て唖然としました。
長期投資にとって、ベア型、つまり市場の下落が収益となる取引は、その裏側に通常の株式投資残高が同額以上ある場合を除けば、単なる危険な投機です。
危険な投機商品が、何故NISAの適用になるのか、さっぱり理解できません。
この国の個人投資市場は、相変わらずどこか根本的に間違ってます。
寺本名保美
(2019.12.05)
完全なるマッチポンプ
今のトランプ大統領にとって重要なことは、他人のお膳立てではなく、自らの功績にみえるようなディールをすること。
北朝鮮問題も対中問題も中東問題も、2ヶ国間通商協定も、どれもこれも思ったような展開にならず、新たな火種を自ら撒き散らすマッチポンプ作戦に突入です。
喧嘩を売られた側の首脳もその辺りは心得ているので、一応それなりの反応はするものの、基本的には大統領選が終わるまで、もしくはトランプ大統領が本当に弾劾されるまで、適当に時間を稼ぐのが常道でしょう。
つまるところ、火種は次々と出てくるものの、何も解決せず、何も炎上せずで、あと一年振り回されることになります。
短期売買に徹すれば面白い一年、中長期で見れば何もしなければ良かった一年、という感じでしようか。
寺本名保美
(2019.12.04)
持たない国だからこそ
COP25が開催されています。
トランプ政権だけでなく、化石燃料産出国であるロシアのプーチン大統領からも否定的なコメントが出てきているのは、化石燃料の輸出が外貨収入の過半を占めるロシアとしては当然のことでもあります。
資源国はエネルギーの需給が可能であるという点おいて、国際社会において圧倒的な優位性をもっています。にもかかわらず、多くの資源国は経済発展において国際的に成功しているとは言い難いのは不思議なことです。
日本やスイスのような資源を持たない小国は、だからこその努力と工夫が必要になります。経済的な繁栄は持たざるものの努力の結果でもあるのです。
これからの時代、確実に次世代エネルギーを支配するものが世界を制することになるでしょう。
資源を持たない国だからこそ、次のエネルギー大国になれる可能性が日本にはあるはずです。
資源大国となった米国に追随している場合ではありません。
寺本名保美
(2019.12.02)