飛び火
香港問題の終息が全く見えてこない中、来年1月11日に台湾正副総統選挙と立法委員(=国会議員)選挙が行われます。
予備選の段階まではやや不利と言われていた現職の蔡英文総統が、香港問題が深刻化して以降に支持率を上げ、親中派の国民党候補を上回ってきていると言われています。
蔡英文総統就任以降、対中関係は悪化しており、今回の総統選で関係の再構築を狙っていた習近平指導部にとっては、とても間が悪いタイミングでの香港デモだったと言えそうです。
香港市民が星条旗を掲げて集結する映像は、今のトランプ大統領にとっては困惑以外の何物でもないようにも思えます。
香港問題が次にどのような展開を招くのか、潜在リスクは日に日に増幅しています。
寺本名保美
(2019.11.29)
大きな決断
香港人権法案にトランプ大統領が署名しました。
例え大統領が署名しなかったとしても議会で採択されてしまうので、トランプ大統領が署名しないという選択肢もなかったわけではありません。
それでもあえて自ら署名という手段をとったということは、今のトランプ大統領にとって対中貿易摩擦の解消による経済的な恩恵よりも、国防的な対中強硬姿勢の維持を優先せざるを得ないということを意味しています。
大統領選までの1年において、トランプ大統領がこのどちらを重視していくのかということは、当面の金融市場の動向を占うには重要な意味を持っています。
今回のトランプ大統領の決断は、米中貿易協議の進展に楽観的になっていたポジションにどのような影響を与えるのか。
中国側の反応も含めて、よく見極めていかなければならないと思っています。
寺本名保美
(2019.11.28)
成長とモラル
ローマ教皇の被爆地でのスピーチについて核兵器に関わる文脈ばかりが取り上げられていますが、スピーチの中で行われた軍需産業全般への激しい非難について、あまりメディアは取り上げていません。
「兵器に大金を費やし、兵器の近代化、維持、販売で大儲けし、兵器の破壊力を増す。これは神に背くテロ行為です。」
核兵器に限定されていないこのフレーズは、現在の軍産の垣根の下がった産業構造にとっては耳の痛い発言です。
元々カトリックは欧州地域での影響力が強い宗教です。この数年欧州を中心に活発化している特定業種の投資対象外指定の動きにも何らかの影響を与える可能性もあります。
経済成長と社会的モラル。どちらかだけが正しいというものではなく、バランスをどうとっていくか。我々投資家としても考えていくべき課題であることは間違いありません。
寺本名保美
(2019.11.27)
山場
香港区議選で親中派が大敗。
これによって勢いつくのは、香港の若者達だけではなく、米国議会の対中強硬派でもあります。
香港人権法案への署名期限を月末に控え、トランプ大統領のディール外交は、就任来最も難しい局面を迎えたように思えます。
だからこその妥協が見出せるのか、本気で喧嘩モードに突入するのか、予断が許せな勢い状況です。
口先のリップサービスで強気になるのは、まだまだ時期尚早かもしれません。
寺本名保美
(2019.11.26)
選挙が怖い
週末香港で地方議員選挙があります。
国政選挙ではないので通常であればそれほど注目されなかった選挙ですが、米国議会がタイミングを合わせるかのように「香港人権法案」を可決させるなど、世界中のメディアの視線が集中する中での選挙となります。
この数年、「選挙」が政治経済の変動要因になる事象が続いています。
今回の香港の選挙は結果でどうであれ、中国と香港政府にとっては緊張を強いられることになりそうです。
これまで金融市場ではほとんど材料にされてこなかった香港問題。局面次第では高値波乱のトリガーになる可能性もあります。
寺本名保美
(2019.11.22)
たがか緩んでる?
ファンドの損失を親会社による事業資金の調達でまかなうなどという話は聞いたことがありません。
数千億円規模でこんな話がまかり通るほど、今の金融市場のたがが緩んでいるとするならば、その先にあるリスクについて思いを巡らす必要があります。
理解不能です。
寺本名保美
(2019.11.21)
誰のための取引所なのか?
東証の上場区分の見直しの議論が、いつの間にか新しいインデックスの話になってしまっているようです。
取引所というものが、企業と資本とを仲介するための市場機能という本来の目的から、どんどん離れていってしまっています。
取引所が取引の場としてのインフラではなく、機関投資家にインデックスを提供する指数計算会社になりつつあるのはこの10年位の世界的な潮流でしょうか。
インフラ整備に膨大なコストが掛かるようになり、そのコストを賄うためには、別の収益構造を持たざるを得ないということも理解はしますが、それでもやはりこの傾向には疑問が残ります。
東証の改革が、単に国内の機関投資家だけではなく、資本調達を行う企業側にとっても、意味のある改革になることを期待しています。
寺本名保美
(2019.11.20)
景気悪化と金利上昇
債券バブルと囁かれる今の長期金利市場の最大のリスクは、景気上昇ではなくて、景気悪化かもしれません。
金利政策が実体経済に影響を与えるのは、現実には意外に時間がかかるものです。
もちろん、金融システム危機のような局面であれば、もっとストレートな影響となりますが、いわゆる景気刺激策としての金融政策は、その効果は緩やかに発生します。
したがって、金融政策効果では時間的に間に合わないような急激な景況感の悪化や、政治的に景気刺激が求められる様な局面では、政策は金融から財政にシフトすることになります。
今のドイツを見ていると、財政政策に舵を切る時が近づいて来ているように思え、今のトランプ大統領を見ているとあてにならない金融政策から大胆な財政に舵を切りたくて仕方がないように見えます。
とはいえ米国について言えば、大統領選挙を控えたリップサービスの域を超えることは無いと考えますがらドイツについては突然の財政拡大リスクを考えておいたほうが良いと思われます。
新たな潜在リスクの確認でした。
寺本名保美
(2019.11.19)
インデックス投資の歪み
サウジアラビアによるアラムコ株のIPOについて機関投資家の事前評判はあまりよくないようです。
機関投資家の前評判はともあれ、主要インデックスはアラムコ株の指数組入を既に表明しており、市場取引が始まればエマージングインデックスの投資家は値段に関わらず購入することになります。
市場参加者の意向とインデックス会社の意向が合致しない巨大IPOの存在は、投資家の行動原則をインデックス会社に歪められているような気がして、釈然としません。
IPOに限ったことではないですが、このところインデックスというものの存在が投資行動に与えるデメリットについて考えることが多くなってきています。
インデックスパッシブという運用が単に運用報酬が安いというだけで世界的に残高を伸ばしている現状も含め、色々な観点から一度立ち止まって考える時期が来ているのではないかと思っています。
寺本名保美
(2019.11.18)
乗ることもなく逆らうこともなく
景気サイクルは底打ちの気配。
政治イベントは小休止の気配。
金利低下は一段落で、噂の逆イールドは解消中。
中長期の成長シナリオが崩れていないと考える投資家は減らし過ぎたリスク資産を積み増して、年内ひと勝負の短期筋は目先のトレンドに乗っかって。
慎重な投資家は既にポジション落として構えているので、これ以上売るべき資産は持っていない。
と、売り手不在の年末相場。
乗ることもなく逆らうこともなく。
寺本名保美
(2019.11.16)
ガラバゴス予備軍?
yahooとLINEが統合したとして、日本国内的には最強のプラットフォームができるかもしれませんが、それが返って日本のネットプラットフォームのガラパゴス化を招くことになるのではないかと懸念します。
孫さんという方が、非常にグローバルな視点を持っているように見えて、一方で自前主義の意識がとても高いようにも見えます。
yahooとLINEのユーザーを囲い込み、圧倒的な国内覇権を握ったとして、そこからグローバル市場にどう展開するつもりなのでしょうか。
国内だけで食べていかれるだけの大きさを持つ日本市場だからこそ、日本市場での成功が世界市場での成功に繋がらないという、過去の日本の過ちを繰り返しそうな嫌な予感がします。
最近の日本市場では、類を見ない合併イベントの行方は、今後の日本経済を占う一つの試金石になるかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2019.11.14)
もうすぐ、詐欺?
トランプ大統領の「もうすぐ」詐欺、に湧く株式市場です。
実際に合意したいという気持ちも強いのでしょうが、「もうすぐ何かの合意が、、、」と言い続けておけば、少しでも前進すればそれがトランプ大統領の成果のように見える、という計算も働いているのかもしれません。
年度末を迎えている市場からすれば、最後の一稼ぎの時期でもありトランプ大統領の計算に乗っかっていきたいところでしょう。
もうすぐ詐欺の賞味期限が切れる前に、トランプ大統領がホンモノの合意に辿り着く事が出来るのか。
トランプ大統領だけでなく、乗っかっている投資家にとっても、そろそろ賞味期限が気になり始める頃かもしれません。
寺本名保美
(2019.11.13)
金融業界の新たな使命
非金融セクターによる地銀への出資が続いています。
金融村を擁護するつもりは全くありませんし、テック企業と金融との融合は待ったなしである状況において、金融への異業種参入は時代の流れであると思っています。
それでも、やはり、事業会社が金融業に参入することに、不安が無いわけではありません。
既に資産運用業においては、非金融セクターからの参入会社は珍しく無くなっていますが、未だに彼らの「お金を扱う」ということに対するある種のおおらかに面食らうことがあるのも事実です。
モノが介在しないビジネスモデルという意味では、金融とテクノロジーとの親和性の方が、一般事業会社よりも高いのではないかとも思います。
金融業が金融業だけではもう立ち行かなくなってしまったことを受け入れつつ、それが一般社会に対する新たなリスクにならないようにすることもまた、既存の金融業界の使命であると考えます。
寺本名保美
(2019.11.11)
足下が見えている米国としたたかな中国
もし、今の中国において、習近平氏が対外政策に対する絶対的な決定権を持っているのであれば、足元の米中の駆け引きは中国優位に進むのでしょう。
米国においては、少なくても対中政策に対して、トランプ大統領より議会の声の方が強いように映るので、トランプ大統領の思うように物事は進まないかもしれません。
短期的な成果を求める一方で、それを自分の手柄として印象付けたいというトランプ大統領の個人的な野望が見え隠れする現状は、それだけでも相手に付け入る隙を与えそうな気がします。
経済的の悪化から劣勢を伝えられている中国ですが、したたかに逆転を狙っているかもしれません。
寺本名保美
(2019.11.08)
他人のお金は他人のもの
昨日の孫氏の記者会見を、ビジョンファンドに投資している投資家はどのような思いで聞いていたのかと思います。
そもそも、孫氏の壮大なビジョンに共感し、損益は二の次で同船している方々なのでしょうから、私の想像の範囲を超えるのですが、この会見をみて、これが一般的なベンチャーキャピタルの姿だと思われるのは勘弁して欲しい。
ファンドという名付けるのであれば、少しは他人のお金を預かっているという自覚を持った発言はできないものかとも思うのです。
これは、ソフトバンクをいう会社が、債券・株式を含め、資本市場から大量に資金調達を行っているということへの自覚の欠如にも繋がります。
他人のお金を扱っているという自覚のない人に、投資会社の経営をして欲しくはありません。
寺本名保美
(2019.11.07)
私は乗らないけれど
5月の急落後の7月の利下げ。
8月の急落後の9月の利下げ。
10月前半の急落後の10月末の利下げ。
今年の米国の利下げは全て急落後の反発局面での利下げです。
タイミングとして上昇している市場を更に押し上げる利下げとなっているので、利下げ後の市場には高値警戒感が醸成され、次の下落幅を拡大させてしまうのです。
こうして今年の株式市場は結果的には上がってはいるものの、途中経過の上下幅が大きいため、投資家としては今ひとつ気分の盛り上がりに欠ける一年となっています。
さて2019年も実質あと一か月。乗り切れない投資家が最後に飛び乗って高値を追うか、再び次の急落に見舞われるか、確率は半々というところでしょうか。
寺本名保美
(2019.11.06)
ブレインストーミング程度
WeWorkのつまづき以降、グローバルメディアでのソフトバンクとビジョンファンドに対する評価が辛辣になっています。
ソフトバンクグループが世界でこれだけ注目されている背景には、ビジョンファンドの存在が、現在のベンチャーキャピタル投資の過熱感を象徴するものと見られていることに加え、同グループの異常なまでの借入金の存在があります。
リーマンショック前は、インベストメントバンクやヘッジファンドだけでなく、本来レバレッジとはあまり縁のなかったPEファンド等の非流動性資産においても、多額の借入をしたレバレッジスキームが見られるようになっていました。
リーマンショックにおいてそうしたレバレッジスキームが破綻した後は、一転してレバレッジスキームを嫌厭する風潮が高まっていたのですが、ソフトバンクグループの戦略が、再びファンド業界にレバレッジカルチャーを復活させつつあります。
だからこそ、ビジョンファンドの成否について、各国メディアは興味と警戒を持った眼で追いかけているのです。
ソフトバンクグループの多額債務戦略が見直しを強いられる局面を迎えた時、巻き添えになる戦略や資産クラスは何なのか、今のうちにブレインストーミングを始めておいた方が良いかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2019.11.05)
開示できないほど大きいということ
本日のBloombergでも取り上げられていますが、GPIFが政策資産構成割合の変更を見据えて、当面の間資産構成割合の提示は行わないことを8月に決定していました。
議事録を読んでみると、資産構成割合の変化を四半期で公表することで市場の先回りを呼び、GPIFの運用にマイナスのインパクトを与えることが懸念されています。
言っていることは解らないでもないのですが、そもそも数%の資産構成割合の変更が市場に多大な影響を与えてしまうほどの運用規模であることの方が問題で、更に言うならその規模において環境に応じた資産構成割合を変更しなければならないようなリスクの取り方をしていることそのものが自己矛盾を起こしているとも言えます。
ひと昔前までの安全資産比率が6割だった時代のポートフォリオがとても懐かしく思えるのは私だけでしょうか。
寺本名保美
(2019.11.01)