命を守るコスト
今週の日本列島は、再び台風の恐怖に怯える一週間になりそうな予報です。
米国で竜巻が頻繁に起きるのに人的被害がないのは、竜巻の多発地帯では各家や公共施設に地下シェルターが装備されているからです。
州によっては、竜巻シェルター整備への補助金が支給されますし、公共施設等での整備を義務化しているところもあります。
日本でいえば地震対策での政府関与に近いイメージでしょうか。
日本がこれまで行ってきたような地震をメインとした災害対策だけではカバーできない事象が拡大している中、国が人の命を守るためのコストが今後益々増加していくのだろうと思わざるを得ないのが現実です。
寺本名保美
(2019.09.30)
少し気持ちが悪い
このところ複数のグローバル株式のファンドマネージャーから、ポートフォリオをディフェンシブ化しているとの話を続けて聞いています。
1年前に起きた株式の急落の際は、ネット関連銘柄への確信度はまだ高く、バリエーション調整後の買い戻しも積極的に行ってきたようなマネージャーが多かったのですが、今回は少し様子が異なるように思います。
2018年10-12月の急落以降、投資家センチメントを置き去りにしたまま、指数だけが上昇してきました。
投資家側のポジションは比較的軽いかもしれませんが、心理的なリスク許容度は当時よりも低くなっています。
周回遅れの日本株が追い付いた時がグローバル市場の天井だったということにならなければよいのですが。
寺本名保美
(2019.09.27)
ハイボール
日米の、二カ国間貿易交渉が妥結しましたが、金融市場的にはこれで当面為替問題がトランプ大統領から蒸し返されることはなさそうだ、という意味において、一安心というところでしょうか。
自動車についてはTPPの際に期待されていたような、関税撤廃議論は遥か遠くに霧散して、その後に出てきた制裁関税議論が取り消されただけで、満足してしまったのが現実です。
トランプ大統領が登場した当時よく言われていたハイボールディールというのはまさにこういうことを言うでしょう。
懸念は減ったものの、どこか面白くない結果です。
寺本名保美
(2019.09.26)
居ないよりまし?
トランプ大統領弾劾の可能性が高まったというニュースフローで、市場センチメントがリスクオフになったのは、面白い現象でした。
世の中意外とトランプ大統領のことが好きなのかも、ということでは多分なくて、不確実性が高まることについての警戒感だったのでしょう。
とはいえ、最近の米国をみていると、対外的に好戦的なのは、大統領ではなく、むしろスタッフであったり議会であるようにみえることから、トランプ大統領のレームダック化が、グローバルリスクの拡大要因であるという反応も満更間違いではないのかもしれません。
自分こそノーベル平和賞に相応しい、というトランプ大統領の呟きを肯定するつもりは全くありませんが。
寺本名保美
(2019.09.25)
ある種のリーマンショック
英国の老舗旅行代理店の破綻が、世界の観光業を大混乱に陥れています。
いわば、観光業界にとっての「リーマンショック」です。
トーマスクックを破綻させないことに対し、イギリス政府が協力しなかったことの是非の議論を見ていると、リーマンを破綻させないことに協力しなかった米国政府を彷彿させます。
今回のトーマスクックの破綻とブレグジット問題の混乱が直接的には繋がっていないかもしれませんが、ハードブレグジットが万が一起きた時に起きる混乱の前哨戦のようにも思えます。
「トーマスクックショック」が、英国の政治家達に自らの役割を思い出させる一つのきっかけになればよいのですが。
寺本名保美
(2019.09.24)
特に脈絡はありませんが
脈絡はないのですが、
2005年。
米国利上げの総仕上げの年。
GMとフォードの格付けが非投資適格、つまりジャンク級になって、クレジット市場の大混乱が起きた年。
ハリケーンカトリーナとハリケーンリサが米国の精油施設を破壊して原油価格が急騰した年。
GMショックでのクレジット市場の混乱に、原油価格の高騰が重なって、ノースウェスト航空が破綻した年。
特に脈絡はありません。
ただ国内外で積み上がり続けるクレジット市場をみていたら、ふと思い出してしまっただけです。
寺本名保美
(2019.09.20)
中央銀行の役割
0.25%の利下げを行った米国にしても、政策を維持した日本にしても、次の一手については市場に言質を与えないという点で一致したようです。
金融政策当局と市場との間においては、対話を重視する局面とサプライズを重視する局面とに分かれるものですが、現状はそのどちらでもなく単に「決められない」状態に陥っているだけのように思えます。
景気動向も消費者のセンチメントも、金融政策とは無関係なイベントによって左右されている以上、金融政策は先手を打つのではなく何か起きた場合のセイフティネットに徹するしかなくなっています。
世界中の金利が消滅した世界において、中央銀行の果たすべき役割も急速に色褪せてしまっています。
寺本名保美
(2019.09.19)
もう少し緊張を、
いくらFOMCを控えているからといって、原油価格の動向に全く反応しない長期金利市場をみていると、さすがに楽観的すぎるのではないかと心配になってきます。
理由はよく解らないものの、ドルの調達金利は急上昇しており、債券や株式市場の平穏さが、むしろ気味が悪く感じます。
そもそもサウジでの被害状況が本当のところどの程度のものであったかも定かではなく、どこか嘘臭さも漂う中で、深刻な事態の割には市場の緊張感が、高まっていないのかもしれません。
このまま大事にならないに越したことはないのですが、弛緩しすぎるのは危険です。
寺本名保美
(2019.09.18)
まだ大丈夫ですが
1990年のクウェート侵攻の際、直前まで20ドルを切っていた原油価格が40ドルまで急騰しました。
その時、金利が上昇トレンドにあった日本では、原油価格の高騰が金利を急騰させ、一方金利が下落トレンドにあった米国では金利はむしろ低下し、結果ドル円は円高に振れました。
国内外とも株式市場は一旦下落したものの、原油価格の落ち着きともに米国株は反発。一方で、金利上昇と円高に見舞われた日本の株式市場は戻ることができず、その後の深刻な金融不況のきっかけとなったのです。
さて今回。原油価格の上昇は、幅としては2割程度で、90年当時の2倍と比べれば僅かではありますが、水準としてはかなり高いことが気にはなります。
一方で債券市場については各国とも金利下落トレンドにあるとはいうものの、債券・株式共に高値警戒感がある中でのイベントである点についても注意が必要でしょう。
今のところは、冷静に反応している金融市場ではありますが、歪みを持っている市場にとっては、こうした想定外のイベントが亀裂を拡大させる要因にもなります。
当面は、周囲に目を凝らして、環境の変化に対応できる準備をしておく必要があるかもしれません。
寺本名保美
(2019.09.17)
必要は発明の母か無駄の源泉か
セブン銀行が発表した「顔認証で現金が引き出せるATM」というコンセプト。
現金をおろして電子マネーに入金するニーズ、とか、それでも現金が良い高齢者への対応とか、海外の人達にとっては恐らく全く理解できないのではないかと思います。
我々からすれば、理解できますし、とても親切な新技術だとは思うのですが、このように技術側が消費者の多様なニーズに応えすぎてしまうことが、日本企業のイノベーションの原動力でもある一方、イノベーションのブレーキでもあるのでしょう。
日本国内でしか使えない技術開発に資源を時間を投入している内に、世界は地球を2周しています。
発明は必要から生まれ、アイディアは無駄と思われるところにある、とはいっても、日本の場合は、アイディアから発明が生まれる前に、必要から無駄が生まれている、というのが実態かもしれません。
寺本名保美
(2019.09.13)
ブラックアウト
台風15号による関東圏の被害について、報道があまりに少ないという声が聞こえてきます。
家の倒壊や水没や焼失が少ないために、命に関わる被害には見えないかもしれませんが、今の時代において三日三晩の停電というものが、個人や産業に与える影響は、想像以上のものがあります。
先日のセミナーで、金融市場が被る可能性があるハードランディングシナリオの一つとして、都市部でのブラックアウトを上げました。
昨年の札幌でのブラックアウトに続いての、今回の千葉県中心のブラックアウトを経て、日本のインフラに対する考え方を基本から考え直さなけばいけない時代が来ているようにも思います。
いずれにしても、被害地域の皆様の心身の疲弊が少しでも早く改善することを心よりお祈り申し上げます。
寺本名保美
(2019.09.12)
未来がない
内閣改造。
前回ほどの失望感はないものの、それでもやはり違和感は残ります。
70歳以上の閣僚がいることは別に問題はないものの、科学技術、少子化、地方創生の担当大臣が、70歳過ぎているという配置は、やはり如何なものかと思うのです。
敢えていうならこの3ポスト、30や40歳代でもいいぐらいの職域です。
大臣の中で最も未来志向の強い分野が揃って70歳代ということは、即ち今の政府が全く未来志向ではないということ。
これで、海外投資家に、日本株に戻って欲しいと思うのは、無理な相談です。
寺本名保美
(2019.09.11)
デフレだからデフレ?
先日スナック菓子の内容量が減るという記事を見かけました。
各種コストの上昇を吸収しきれなくなったからだそうです。
150円のお菓子を160円にしても、小売で設定される値段は変えられなくて、結局一番弱いところにしわ寄せがいくことは想像に難くありません。
今まで15本入っていたのを14本にしたところで、よほどコアな消費者以外は気が付かないので、誰も痛みを感じずにすみます。
これを繰り返してきた結果が、我が国の恐怖のデフレスパイラルというもので、アベノミクスがあろうが黒田総裁が何を約束しようが、長年染み付いた悪弊は変えようがない、というところでしょうか。
デフレマインドのリセットが必要なのは、消費者なのか、メーカーなのか、さて。
寺本名保美
(2019.09.10)
客観性のある正しい理解
先週金曜日は弊社セミナーを無事開催することができました。ご来場いただきました皆様に厚く御礼申し上げます。
第一部ではソニーフィナンシャルホールディングスの菅野正明様から「マクロ経済環境の光と影」と題した基調講演をいただき、第二部では定量モデルでのポートフォリオリスク管理についてのお話をさせていただきました。
資産運用において「正しく恐れる」ためには客観的な数値の裏付けを持った経済金融環境に対する正しい理解が必要です。菅野先生のご講演ではこのための必要十分なご説明と資料のご提示を頂きました。
また、定量モデルでのリスク管理については「リーマン級」を想定した管理と、日常のボラティリティを前提とした管理とを区分した上で、それぞれに適したリスク管理手法を組み合わせることが必要だということについてお話をさせていただきました。
いずれにしても、不確実性の高い世の中だからこと、楽観でも悲観でもない、客観性のある一貫したリスク管理プロセスの構築が必要なのだと考えています。
寺本名保美
(2019.09.09)
正しく恐れる
大規模災害への箴言である「正しく恐れる」という概念は、金融市場のリスク管理においても貴重な言葉です。
予想は当てるためにあるのではなく、危機に備えるための前提条件を確認するためにあります。
前提条件を洗いだし、対処をシミュレーションすることで、「今」に潜む潜在リスクを確認できます。
今日のセミナーは、この不確実性の高い世界において、正しき恐れるためにできることを模索します。
詳細はまた明日。
寺本名保美
(2019.09.06)
明日は30回目のセミナーです
明日は弊社の30回目のセミナーです。
「いつか来る、かもしれない、ハードランディングに備える」
というメインテーマです。
このテーマを考えた7月は、米国の積極的な利下期待から、株式市場が最高値を追っている最中だったので、今とは市場ムードがかなり異なっていて、1ヶ月先を見通すことすら難しいということを実感しています。
ようやく資料もできました汗
相変わらず不安定な気象が続いています。ご出席をご予定いただいている皆様には、どうぞお気をつけてお越しください。
寺本名保美
(2019.09.05)
魅力がない
最近金融系以外の方の話を聞く機会が多く、且つ金融系以外の方の話の方が圧倒的に面白いと思っています。
金融市場が実体経済のシナリオを描いていた時代は遥か過去の話となり、今の金融市場は実体経済の変化に振り回されて右往左往するばかり。
金融が表舞台に出ることなく本来の裏方に徹していることの証左であるとするならそれは正しい形ではあるものの、金融市場がいつの間にか時代の変化に取り残された過去の遺物になりつつあるような不安も感じます。
今週金曜日は弊社のセミナーです。
自戒を込めて、面白い話ができるように頑張ります。
寺本名保美
(2019.09.03)
アルゼンチンだから、とばかりは言っていられない
アルゼンチンがIMF等に対し債務の返済期限の延長を求める可能性が高くなってきました。
8月に行われた大統領予備選において、構造改革派の現職をポピュリズムに傾斜している野党候補が抑えたことで、通貨が30%以上下落し、金利は過去最高水準に急騰(債券価格は急落)。
金利の急騰により、新規の国債の発行が不可能となったため、先週末に国内外債権(債券)の、返済期限の延長を示唆するに至りました。
アルゼンチンの国債については、2001年のデフォルトから15年を経て、2017年に100年債と発行した経緯があります。その債券も足元では37円程度まで急落しており、前回のデフォルト時日本の個人投資家の保有している債券も含め、元本の7割程度が削減された記憶が蘇ります。
この10年、先進国の金利が過去最低水準まで低下する中、投資家資金はより金利の高い低格付けや超長期の年限に向かう傾向が足元でも継続しています。
アルゼンチンが特殊な事例だとは思わずに、債券というものの潜在リスクを認識する良い機会にしたいと思います。
寺本名保美
(2019.09.02)
織り込まれていないリスク
今の香港問題が国際社会においてどの程度の潜在リスクであるのかについて、金融市場は織り込めていません。
体制転覆はありえないとして、天安門の再現もないとするなら、落ち着きどころが全く見えないのです。
香港における一国二制度は、中国本土の深センといった経済特区の将来を占う上でも重要な意味を持ちます。
もっというなら、統制経済下における資本主義というものが、本当に成り立つのか否か、政治体制の新たなモデルとして、新興国にとっても大きな意味をもっているといえるでしょう。
今の中国にとっては、トランプ大統領よりも、香港の若者達の方が、よほど厄介な存在になりつつあるようです。
寺本名保美
(2019.09.01)