2019年07月の思いつき


発射台は高く

為替市場はポンドの急落の方に気を取られてか、日銀政策決定会合後のドル円市場は今のところ無風です。

米国のFOMCを待ちで動き難いというのが実情でしょうか。

トランプ大統領の口先介入は少々度が過ぎるレベルになってきて、株式市場もややそれに悪乗りをしつつある展開に気持ち悪さを感じます。

気持ちが悪いというならば、ポンド市場は2017年の最安値までもう少しのところまで売り込まれています。合意なき離脱を目指すといいながらEUと新たな合意が必要だともいう今の新政権の先行きには不安しかありません。

欧州を含め中央銀行は10月末に向けてのハードブレグジットシフトに入りつつあり、正直言ってトランプ大統領のツイートに気を取られているような状況ではないでしょう。

セイフティネットとしての金融政策が必要となるシナリオが近づいている中、足元の金融緩和はできるだけ先に延ばしてイザという時のための発射台は高く維持しておきたいところです。

寺本名保美

(2019.07.30)



なんだか腹が立つ朝だった

『イデコ加入全会社員に(日経新聞7月29日)』

書いているのか書かされているのかは知りませんが、もういい加減idecoとか積立NISAの説明やプロモーションに「公的年金の先細り」というフレーズを使うのは止めにしませんか。

公的年金が今のままであったとしても、公的年金だけでは老後の生活資金の確保できないことは自明のことです。報酬加算部分の厚生年金まで含めたとしても国が約束しているのは現役世代の退職時の平均報酬の50%まで。そこから先については国は始めからコミットしていません。

高齢期の生活資金のプランニングは、公的年金制度が先細りしようなしなかろうが、個々人の責任において「しなければならない」ことなのです。教育現場における投資教育や、若い内から少額積立という概念に親しむことは、公的年金が安泰であったからといってその必要性が低下するようなものではありません。

危機を煽って消費者行動を変化させるという時代遅れの対応しか未だに取ることができない役所も、それをそのまま流すメディアも、それに乗じる業界にも、朝から無性に腹が立っています。

寺本名保美

(2019.07.29)



Brexitに向けての温存

英国の新首相の決定が、欧州の金融政策に影響を与えています。

10月末のBrexit期限の結果次第では、ECBも緊急緩和を決定しなければいけない状況となるかもしれません。

これは欧州だけでなく、米国や日本についても同様です。

そういう意味では、足元の緩和や利下げについては、できるだけ小出しにしたいというのが、各中銀の本音だと思われます。

来週の日米の対応についても、やや不確定要素が増えてしまったというところでしょうか。、

寺本名保美

(2019.07.26)



夜明け前

自動車の完成車メーカーの業績が悪化しています。

日本だけの問題ではなく、ドイツの景況感が急激に悪化しているのも自動車産業の低迷が原因と言われています。

日産・三菱の経営者問題や米中摩擦による中国需要の落ち込みも一因ではありますが、根底には産業のCASE化(Connected、Autonomous、Shared、Electric)による構造変化があります。

最近様々な会議で「需要のエアポケット」の話をします。イノベーションによる「将来的な成長期待」の前にある「短期的な需要の落ち込み」という罠に、自動車産業は既に嵌ってしまっているように見えます。

自動車産業の陥ったエアポケットが口を開けているのは自動車産業に限ったことではありません。

製造業にとってここからが夜明け前の正念場になるのかもしれないと思っています。

寺本名保美

(2019.07.25)



ブレグジット問題の次にくるもの

昨晩のポンド市場。

新しい首相が「元ブレグジットの顔」であったボリス・ジョンソン氏になるとの見込みから売られて始まったものの、実際にジョンソン氏の就任が決定した後は買い戻され、その後は大きな波乱なく安値圏で終わりました。

元々、2016年のブレグジットを巡る国民投票では投票前の放言を結果が出た後に間違いだったと、あっけらかんと訂正した人です。

当の英国国民がどう思っているかはわかりませんが、金融市場的にはこの人が有力な首相候補となった時点で、英国政治の当事者能力について見切りをつけてしまったということでしょう。

この先にあるのはブレグジット問題ではなく、アイルランド問題であり、その先に燻るスコットランド問題です。

英国のEU離脱問題はとうとう「グレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国」という英国の呼称そのものを議論しなければいけない局面に突入してしまうのかもしれません。

寺本名保美

(2019.07.24)



解無し?

喫緊の課題。

一年後のオリンピック期間、業務体制をどうするか?

そもそも交通機関で出社は可能なのか?

不確定要素が多過ぎて、最適化できないのは、今の資産配分と同じ。

寺本名保美

(2019.07.23)



選挙です!

今週末が選挙だということを忘れてしまいそうな金曜日です。

選挙演説が政策ではなくて、「皆さん選挙に行きましょう」の連呼になっているほど盛り上がらないのは、国内外で選挙より気にすべき事件や事象が多すぎるからでしょうか。

でも今回は原則として任期6年が保障されている参議院選挙。

一度選んだら6年間は議員報酬を払い続けるわけで、それだけの価値がある候補なのか、政党なのかを本当は真剣に精査しなければいけません。

判ってはいるのですが、やはり興味はその先にある日米の金融政策会合の方。

そもそも日曜は仕事なので、明日は期日前投票にいきますか。

寺本名保美

(2019.07.19)



バブルを作らせないこと

2008年の金融危機の後、米欧の中銀の合言葉は「日本と同じ轍は踏まない」でした。1990年のバブル崩壊後の日本において、金融緩和が中途半端であったことや不良債権処理に時間をかけ過ぎたことが、その後の日本に深刻なデフレを招いた原因だとみなされていました。

だからこそ、米国のFRBは2008年の金融危機後迅速に不良債権の直接買取を開始し、欧州はマイナス金利の導入を決定し、傷の浅かった日本でさえ異次元の金融緩和を導入したのです。

結果として、景気は鋭角に立ち上がり、株価も史上最高値を更新し、雇用も安定しましたが、日本の陥ったデフレの罠から逃れることは出来ず、一度無くしてしまった金利を復活させることに想定外に苦労することになっています。

結局のところ、一旦大きなバブル崩壊を経験してしまった経済の正常化に際して金融政策ができることには限界があるということを、日銀だけでなく、米欧揃って実証することになったこの10年という見方が徐々に広まりつつあるようにも見えます。

であるのなら、今の金融当局がしなければならないことは、絶対に次のバブルを作らせないことのはず。

今の流れ、明らかにおかしいです。

寺本名保美

(2019.07.18)



将来の子供はどこにいった?

MMT(現代貨幣理論)の提唱者の来日で、一部で財政拡張論が盛り上がっているようです。

消費税に反対するがための財政拡張論を唱える人が、ついこの間まで歳出抑制を訴えていた人と同じだったりと、何やら不思議な現象が起きています。

そもそも財政赤字を何故減らす必要があるかというと、別に借金で財政が破綻するからではなくて、国の財政支出に占める国債の利払い費が膨らみすぎることで、国が本当に行わなければならない歳出原資が減ってしまうからだったはずです。

ついこの間までは、将来の子供達に借金を付け回してはいけないと言っていたのに、最近では国内の所得格差の是正や社会保障の安定化そして消費税の引き上げを阻止するといった、「今を生きている人」の為の政策ばかりが議論されるようになってしまいました。

年金どころか、国家100年の計も、怪しくなってきているように感じる選挙戦です。

寺本名保美

(2019.07.17)



情報の質

夏休みに家に居て、テレビのワイドショーを見ていると、会社にいるよりも日韓問題や消費税問題に詳しくなれそうな気がしてきます。

テレビの主役がドラマから情報番組になったことで、硬軟問わずあらゆる情報がワイドショー化し、更にネットで誇張され変質されるリスクを抱えるようになりました。

米国のように大統領自らが誇張し拡散するケースもありますが、官民問わず情報の公開や発信には、細心の注意が必要になっていることを感じます。

今の世の中、情報の量ではなく、「情報の質」というものを如何に意識し続けることができるか、頭を弛緩させないようにしていかないといけないのだと思います。

寺本名保美

(2019.07.16)



夏休み

今週、少し早い夏休みをいただきます。
週明け、市場の景色が変わっていなければよいのですが。

では、また来週。

寺本名保美

(2019.07.10)



誰もNOと言わない不可解さ

今日・明日の米国FRB議長による議会証言が今月末のFOMCでの利下げの確実性を予想するものとして注目を集めています。

「保険としての利下げ」という不可解な言葉を、期待先行型の株式市場だけでなく本来理論的であるはずの債券市場でさえ、疑うことなく使用していることに違和感を覚えます。

足元での弱い景気や物価の指標が「利下げを行う原因」ではなく、「利下げを正当化する材料」として認識されています。

まず利下げありき、で物事が進みすぎていることの潜在的なリスクは、米中問題が深刻化するリスクと同等かそれ以上に大きなリスクだといえるでしょう。

先週まで、年間で最大1%の利下げまで織り込んでいた金融市場。この数日で0.5%程度まで修正が進んでいるようではあります。

月末の政策判断まではまだ時間に余裕があります。とりあえずは議会証言で市場とトランプ大統領の反応次第では、議会証言と月末の政策が一致しないことも十分にありえます。

不可解な金融政策に対し、債券市場までもが不可解だと言えないこの状況が将来どのような災いの元となるのか。よく考えていかないといけないと思っています。

寺本名保美

(2019.07.09)



デジタル冷戦

今の米中問題、中東問題、朝鮮半島問題。

どこまでが予定調和で、どこまでが想定外なのかを考えることは、大切なことなのではないかと思っています。

トランプ大統領を始め、登場人物のキャラクターが強いので、起きていることが全て突発事故のように見えますが、相当な部分はどこかで描いたシナリオ通りに進んでいるのかもしれません。

善悪はともかくとして、冷戦時代に米ソの直接交戦を抑制させた核兵器と同じような役割を、今のデジタルプラットフォーム上のサイバー攻撃が担っていくとするならば、ファーウェイ問題は単なる前哨戦にすらならない程度の問題で、この程度の波風で失速してしまうような中国なら、米国はここまで本気て喧嘩をしないのではないかと思うのです。

結局のところ、こうして揉めているうちに、各国における国防上の技術開発は加速度を増して進捗し、デジタル冷戦構造は不可逆的に確立されていくのでしょう。

日本はこの冷戦構造のどの辺りに組み込まれているのでしょう。

寺本名保美

(2019.07.08)



ふと思ったこと

英国の海兵隊がイランの石油タンカーを拿捕したニュースを見て、一瞬1982年のフォークランド紛争を思い出しました。

もちろん今回はEUの対シリア制裁に則った英国の行動なので、全く状況は異なりますが、ブレグジットを巡り連邦が分裂の危機にある英国において対外仮想的を持つことがあり得ないことではないような気がしたのです。

1982年のフォークランド紛争も、元々英国の方から戦争を仕掛けたわけではないと言われていますが、結果的にフォークランド紛争に勝利した当時のサッチャー政権の支持率は上がり、深刻な景気後退も一時的には解消に向かいました。

そんなことを考えてしまうのも、一時期反発していたポンド相場が再び下落トレンドに入っているからで、ここから7月後半の首相選を経て、英国の混乱は第二段階に入ることになるでしょう。

外部に敵を作ることが得策だとは思いませんが、果てしない内部闘争は英国と欧州の経済体力を奪うばかりです。

寺本名保美

(2019.07.05)



視野の狭い選挙

選挙が始まったらしい。

争点は、たった3か月後に期限の迫った消費税と、たった1か月前に降ってわいた年金問題?

足元の労働力不足の問題。将来のロボット化での労働力余剰の問題。
情報社会のセキュリティの問題。IOTにおける個人情報の問題。
ネット社会での高齢ネット難民の問題。
そしてどうみても波乱含みの国際問題。

山ほど議論をして欲しいことあるものの、選挙のテーマには程遠い。

トランプ大統領のことを色々いうけれど、問題意識の広さという意味においては、日本の政治家は見習うべきものがあると思う。

寺本名保美

(2019.07.04)



大きな大きな潜在リスク

Facebookが主体になって来年設立するとされている「リプラ」というデジタル通貨について、ネット上に様々な解説や評論が出ています。

読んでもよくわからない、というのが本音ではありますが、数年前ビットコインが話題になった時とは比較にならないほど、社会的インパクトの大きな話のようではあります。

リアル通貨が電子マネーになることについては、歓迎していた各金融当局が、今回のデジタル通貨については揃って異議を唱えているという事実だけみても、このリブラというものの潜在的な影響力の大きさがわかります。

将来の金融危機は金融機関からではなく、プラットフォーマーから起きる、という2年ほど前のセミナーで言った自分の言葉が、妙にリアルに思いだされてきました。

寺本名保美

(2019.07.03)



次の火種は足元に

米国と中国との全面対決が先延ばしになり、ファーウェイへの部品供給が再開され、一息ついたかにみえた製造業の先行きに、今度は日韓摩擦が陰をさすことになりました。

日本が世界経済全体に悪影響を及ぼすような政治行動を自ら起こすことは、記憶の限りでは思い浮かばず、今回の対韓行動が世界に与えたインパクトは少なくないと思われます。

所詮大人しい日本のすること。大問題になる前に収まるだろう、というのが、国内外の大勢の見通しではあります。

一方で、これまで国際社会において表だった喧嘩をしてこなかった日本が、国際捕鯨委員会から脱退したりと、このところやや姿勢が変わってきていることを念頭に置くと、今回の対韓措置が想定外に深刻化する可能性もゼロとは言えません。

喧嘩なれしていないこの国が拳を下ろし方を間違えなければよいのですが。

寺本名保美

(2019.07.02)



花火?空砲?爆音?

トランプ大統領のマッチポンプに踊らされている金融市場、という言い方をすると、トランプ大統領本人にとっては、些か不本意かもしれません。

トランプ大統領自身は、マッチで火をつけている自覚はあっても、ポンプで水を掛けている自覚は全くないでしょう。

米国の大統領が大統領選挙の前年に、手当たり次第の導火線に着火して歩いていて、それが花火なのか、爆弾なのかは、はたまた空砲なのか、打ち上げてみないとわからない。という笑えない現実を、この1ヶ月、世界中が目の当たりにしています。

とりあえず、サミットで轟いた爆音の多くは空砲だろうというのが今のところの大勢の意見のようなので、であるなら今日上がった株式市場の賞味期限は短いということになります。

こんな空砲騒ぎが、大統領選挙まであと一年半、続くと考えると、目眩がしそうです。

寺本名保美

(2019.07.01)


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