いつか見た景色に似てはいるが…
中国景気の減速が現在の世界経済の暗雲の一因であるといわれ始めてから、中国株式は独歩高となっています。
ちなみに2019年になってから、日本のTOPIXが約8%、米国S&P500ga役2%の上昇であるのに対し、上海総合は20%の上昇となっています。
景気指標が悪化する度に中国政府が財政政策を強化するから、というのが一般的な説明で、米国や日本のように財政に制限のない中国が実弾で景気を刺激しているのであれば、中国景気の回復は想定外に早いと市場は見ているのかもしれません。
一方で、2015年当時のように景気実態の悪さを政策的な株式の下支えで誤魔化している、という展開もあり得なくはなくて、これであれば次に来るのは中国発の市場急落の再現でしょう。
どちらの見方をとるかは人それぞれですが、私としては決め打ちせずに、もう少し冷静に環境を見極めていきたいと思っています。
寺本名保美
(2019.03.28)
領土としての宇宙
ロイターによれば、米国のペンス氏が、「何としてでも5年以内に米国人宇宙飛行士を再び月面に着陸させ、継続的なプレゼンスを確立し、火星上陸の準備をすることが次の飛躍だ」と強調した。とされています。
「火星上陸」という時代錯誤な表現が、返って生々しさを強調しています。
火星探査ではなくて、上陸。
人類の起源を探る旅、ではなく、占有や領土、のイメージが一気に強まりました。
宇宙空間では人類みな兄弟、というわけにはいきそうもありません。
寺本名保美
(2019.03.27)
人に酔った
マンモス大学の卒業式と、お花見客と、春休みの海外旅行客とに囲まれて、歩くだけで精一杯なので、今日の思いつきはお休みです。
寺本名保美
(2019.03.26)
意外に怖い債券戦略
週末の急落のきっかけとなった米国の長短金利の逆転、所謂逆イールドですが、過去逆イールドがリセッションのきっかけとなった、というのはやや言い過ぎな気もしていて、もう少し正確な表現をするなら、利上げ局面の最終局面を示す一つのシグナル、というところでしょうか。
つまり株式市場にとっては逆イールドになるような経済環境の結果として収益が悪化するということを意味していますが、他方債券戦略にとっては逆イールドという現象そのものが収益の悪化原因となることには注意が必要でしょう。
基本的に債券戦略というものは、どのような種類のものであっても、長期金利が短期金利を上回る右肩上がりの形状において収益を獲得するような仕組みになっています。
更に日本から円ヘッジをして投資する場合においては、円ヘッジコストが下がらないまま長期金利が低下することになるので、金利が下がって債券価格が上昇しているにもかかわらず、収益構造は悪化する傾向になるのです。
今は株式の変動に目を奪われていますが、ここから暫くは債券戦略の動向の方が個人的に警戒をしています。
寺本名保美
(2019.03.25)
絵に描いたような混迷
FRBの年内利上げ停止という決断の背中を最終的に押したのは、トランプ大統領でも、中国経済でもなく、イギリス議会だったのかもしれません。
当初の最終期限の1週間前になり、結局EUから引き出せたのは2週間の期限延長。
この2週間で議会との合意があれば、今度は5月22日までの1か月の延長。
5月22日以降は、1年程度の期限を切って現状の関税同盟を維持しつつアイルランド国境問題の解決策を探る、または国民投票のやり直しを行う。
つまり、期限が細切れにダラダラ伸びるだけで、状況はこれまでの1年と全く変わることのなり混迷が続くことになります。
メイ首相の信認は国内外でも急落しているようにも見え、首相退陣で英国議会空転しEUとの交渉当事者すら居なくなる気配が漂ってきました。
米国の利上げ停止が株式市場のセンチメントを多少なりとも下支えしては居ますが3月末までの残り1週間、予断を許さない展開は続きます。
寺本名保美
(2019.03.22)
外気は敵
陽気に誘われて、お休みをいただきました。
心地よい日差しと同時に、花粉となんらかの微粒子も浴びています。
この時期から5月まで、私にとっては外気が敵になります。
では、皆様、よい祝日を!
寺本名保美
(2019.03.20)
あら、一回り
iPadシリーズの新商品が発表されるや否や、各種媒体が一斉に商品解説を始めました。
ネット系の記事だけではなく、金融専門媒体も経済紙も新聞系も雑誌系も、皆さん一様に新製品のレビューをしています。
こうして新商品が出てみると、以前ほどの神通力はないとはいえ、このシリーズが持つプランド力の高さが顕然として維持されていることが判ります。
こうした新製品のレビューを宣伝広告費に換算すると、どの程度の金額になるのかと考えるにつれ、プランド力というものの潜在価値の大きさを改めて認識します。
日本の製品において、こうしたブランドを形成できる分野がどこにあるかと、首を360度回してみたりしています。
寺本名保美
(2019.03.19)
フランスになりたいか?
ポピュリズム的な主張には、複数の概念が混在しています。
「所得の再分配型」「機会の均等型」「エコロジー型」というあたりが典型でしょうが、最近は「非成長型」が目立つようになりました。
成長し拡大することを目標とせず、幸福の拠り所を経済的な成功以外に求めようとする考え方です。
成長しなくても国民は満足していたように見えるフランスでは、現状に危機感を持ったマクロン政権が改革を試みたものの、国民から反抗されています。
これまで成長することを第一義的に考えてきたにもかかわらず、この10数年成長できずにいる日本では、成長戦略に頭を悩ます政府を他所に、現実を容認するかのような非成長主張が拡大しつつあります。
今を生きる我々が成長しなくても幸福であると思えるのは、先人の遺産があるからで、今成長することを我々が放棄してしまった先の100年に成長を求めない幸福があり続けるのかどうかは判りません。
日本がフランスになってしまうことを私は望みません。
寺本名保美
(2019.03.18)
一人よがりは事故の元
10連休への各所の対応が少しずつ聞こえてくるようになりました。
金融市場も一部は稼働するようでもあります。
決済システムも含めて、何が稼働して何が稼働しないのか、まだよく判りません。
中途半端に稼働するものがあるせいで、却ってシステミックリスクが高まってしまうのではないかという懸念もあります。
海外市場が急変した時の為に売却注文だけは受けます、という表示も見かけますが、急変して狼狽売りをしたくなるような局面がもし発生したとするなら、その時解放されている東京の市場には強烈なストレスがかかるでしょう。
顧客に対して良かれと思ったサービスが、むしろトラブルの元にならなければよいのですが。
寺本名保美
(2019.03.15)
そして失望だけが残る
今の英国議会で起きていることについては、英国に住んでいる人々よりも、外にいる我々の方がよほど詳しいのではないかと思ったりしています、
ロンドン以外の英国に住む人々の生活において、Brexitという単語はどれほどの意味を持つのでしょう。
国民の大多数が事態を受け止めていないからこそ、議会はこれほどまで迷走できるのです。
当事者達の無関心と、関係外野の懸念と、どちらが正しいのかは、ことが現実になってみなければわかりません。
今回の騒動が終わった後に残るのは、世界経済に対する英国という国の影響力の更なる低下と、大英帝国の残像の完全なる消滅だけなのかもしれません。
寺本名保美
(2019.03.14)
大きすぎて、考えられない
今日のお昼頃、会社からGoogle のメール機能にトラブルが発生していると連絡があり、関係があるかどうかは不明ながらスマホのデータ通信が繋がらない状態がしばらく続きました。
何かグローバルにトラブルがあったようです。
今後リーマン級の金融危機が起きるとするなら、きっかけは伝統的な金融機関ではなく、金融決済を含めたシステムを支配している、ブラットフォーマーが原因になると思っているので、こうした通信トラブルが起きると、人一倍動揺します。
便利の裏側にあるこのリスクについては、考えるだけ無駄、と思ってしまうほど、すでに大きくなりすぎています。
ユーザー一人一人にできることなど何も無いように思うと、無力感と恐ろしさだけが、頭に残ります。
寺本名保美
(2019.03.13)
「合意」ではない「合意」
イギリスのメイ首相とEUのユンケル委員長が、英国議会向けの最終選択肢について合意しました。
「合意」という単語に市場が反応してしまっているようですが「メイ首相とEUとの合意」は今回が初めてではなく、過去この両者の合意を「イギリス議会が否決」してきたから、今の状況に至っているわけです。
ということで、舞台は再び12日のイギリス議会の下院採決へ移ることになります。
今回の合意文章に、「イギリスは5月23日までにEUを離脱しなければならない」という一文があります。
そして、最大の問題であるアイルランド国境を巡る議論については、解決策が見いだせない場合のバックストップの議論ばかりで、将来的な解決策の目途が立っているのか未だに判らない状態が続いています。
株もポンドも上がることは嬉しいですが、私にはどうもよい報告に進んでいるようには見えないのですが。
寺本名保美
(2019.03.12)
ドイツ
このところ良くも悪くもドイツの動きが目につきます。
今日は大手金融機関の統合に関する協議が政府主導で始まったと報道されました。この裏には、ブレグジットに伴い金融機関の欧州拠点の多くがドイツに移転を始めていることと無関係ではなさそうです。
また、ファーウェイ製品の取り扱いについてドイツは米国や他の欧州各国とは一線を画し、特定企業の排除はしないと明言する一方で、サウジ向け武器輸出の禁止を継続するなど、防衛関連の議題においてフランスとの意見の食い違いが目立つようになっています。
大きな過渡期を迎えているドイツ最大の産業である自動車業界においては、業界内での最大のライバルであるダイムラーとBMWが自動走行技術において共同開発を発表しました。
足元での景況感が停滞し、政治的にも不安定な状態が続いているからこそ、産業界が何か大きく変わろうとしているようにも見えます。
やっぱり役に立たないフランスのおかげで、欧州経済の明暗は結局ドイツが一身に背負っています。
暫くはドイツの行方に注目していきたいと思っています。
寺本名保美
(2019.03.11)
欧州にとって大事な時期なので
欧州議会選挙を5月に控えたEUにとって、足元の景況感を悪化は、反EU勢力の躍進を招きます。
ECBという中央銀行機能が、一国の中央銀行のような政治的独立を確保されているかどうかは定かではありませんが、今ここでドラギ総裁がサプライズ的な金融緩和策を出してきた背景には、こうした政治的背景も見え隠れします。
一方で、リーマンショックから10年、その後の欧州危機からも7~8年が経過したにもかかわらず、欧州の金融機関の体力の回復は米国の大手金融機関に比べ遅々としたものに留まっています。
日本の場合、90年のバブル崩壊以降で大手金融機関の破綻に至るまでの期間が7~8年。不良債権処理の完結まで約15年、の月日が掛かっています。
欧州については当初から日本以上に不良債権処理には時間が掛かると見込まれていたので、欧州金融機関にとっての再編はここからが本番になるでしょう。
これ以上、ポピュリスト勢力を増大させないためにも、金融機関に体力を温存させるためにも、欧州景気にはもうしばらく頑張ってもらわなければいけません。
一次的には景気後退のシグナルとして否定的な反応を招いた今回のドラギ総裁の大胆な決断ですが、結果的には市場にプラスの効果を与えることになると思います。
寺本名保美
(2019.03.08)
雲の中になにがある?
トヨタが宇宙ビジネスに参入する?!
今年のメインテーマが「宇宙!」である私には、久々に納得感のある企業ニュースです。
すっかり世界から出遅れてしまったロケットを飛ばす技術について、今更国際優位性を持つことはできないとしても、ここから先技術開発主戦場となる宇宙空間において、どんな形にしろ日本の技術の存在感をしめしておくことは、日本の製造業の未来にとって死活にかかわる重大事項だと思うからです。
情報と宇宙。
どちらも、雲をつかむような話、かもしれませんが、外から見るだけではなく雲の中に入ってみなければわからないこともあります。
寺本名保美
(2019.03.07)
仲介機能
テスラがネット販売への全面移行を打ち出したことの持つ意味は重いです。
自動車という高額で且つ安全性が重視される物品がネットが人的サービスを介さずに売買されることが受け入れられるなら、個人消費において略全ての物の売買がネットで完結することになるでしょう。
今はまだ、少なくても日本においては、ネットで100万円単位の買い物をするには心理的な抵抗があります。
どちらかというと、ネットで買うのは騙されても諦めのつく金額の範囲内、という印象でしょうか。
自動車をネットで買う時代の次は、不動産をネット買う時代がきます。
金融も含めた「仲介機能」というサービス形態が、大きく変遷するかもしれません。
寺本名保美
(2019.03.06)
手続き難民
最近、高齢者向けの公的書類に記入することが多々あるのですが、あまりの煩雑さに辟易としています。
高齢者だけ世帯だとすると、高齢者自らが読んで、記入して、捺印して、切手貼って、期日までに投函するわけですが、絶対に無理だと確信してしまいます。
だからといって、こういう手続きを、全部電子化してしまえば、それはそれで高齢者を置き去りにしてしまうことになるのでしょう。
デジタル対応がどうにか可能な団塊の世代が80歳代になるまでにはまだ10年以上あります。その間の高齢者行政は、従来の書類行政と次世代のデジタル行政が併存することになり、わかりにくさが倍増しそうな予感がします。
高齢者ばかりが優遇されていると言われてはいますが、手続きが取れずに得られる支援を受けられない高齢世帯がどれほどあるか実態調査を一度してみたほうが良いのではないかとも思います。
寺本名保美
(2019.03.05)
投資家という責任
デジタル革命への対応が遅いと言われている日本ですが、デジタルへの対応以上に遅いのが、遺伝子組み換えを始めとしたバイオや生体関連技術への理解かもしれません。
遺伝子組み換えの低農薬作物と、高農薬作物と、どちらが心地よいか。遺伝子組み換えの高成長作物と、化学肥料作物と、どちらが心地よいか。
こんな哲学論争のようなことをしている内に、今度は認証チップを皮下に直接埋め込む技術や、動物にヒトの臓器を内包させる技術等、倫理感を試されるような課題が次々と押し寄せてきます。
そしてこうした倫理観をまず一番最初に試されるのは、資本市場に影響を与える投資家自身の倫理観です。
投資家であるということは、これからの社会に対し、とんでもない責任を負う存在になるのだという自覚を、少しずつ持っていくような努力をしていく必要があるのだと思います。
寺本名保美
(2019.03.04)
先送り
米朝会談・英国のEU離脱・米中交渉・日米交渉と3月末までのメインイベントが全て結論先延ばしになりそうな気配となってきました。
3月末に決算を迎える年金基金にとっては、とりあえず3月波乱がなくなったかのように見えることは、悲惨な10-12月期で傷んだ気分を少し上向かせてくれるかもしれません。
とはいえ所詮先延ばしなので、こうなってくると日本の10連休が今までに増して心理的な大きな重しになってきます。
目先は米国のトランプ大統領を巡る暴露合戦に市場とメディアの興味が移ってしまい、残された問題点の重要度が良く見えなくなってしまいました。
とりあえずは戻りを楽しむとして、年度明けに向けて、再度リスク量の再調整が必要になるのかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2019.03.01)