2018年12月の思いつき


地固め

足元の株式市場の急落で、国内外株式共に理論値との乖離がほぼなくなりました。

ほぼ、なのでまだ回復には少々時間が掛かるかもしれませんが、この水準であれば1月年初のモデル配分で約1年半ぶりに株式のウエイトが復活しそうです。

来年の株式市場のテーマは「内需」になるかもしれません。

5Gでの新製品に沸く前に、まずはデータセンターや基地局といったインフラ整備が必要です。

日本ではオリンピックまでのカウントダウンや海外労働者の受入など、都市のグローバル化も急ピッチで進むでしょう。

株式市場も経済も、次の飛躍のための基盤整備と地固めの一年です。

焦らず慌てず慎重にリスクを取るタイミングを見極めていきたいと思います。

寺本名保美

(2018.12.25)



中国リスクの変節

この一年で世界経済における中国という国の存在感は劇的に変わりました。

一貫して下落していた株価とは反比例するように、中国の経済支配力の拡大を意識せざるを得ない一年でした。

少し前まで「中国リスク」といえば、中国国内の金融バブルの崩壊や貧富の格差による地方の反乱などを意味していましたが、今の「中国リスク」は米国の主要ハイテク企業と伍して世界シェアを拡大している中国企業への脅威を指しています。

中国経済の破綻リスクが当面のシナリオから消えたことは世界経済全体の需要にとっては好材料である一方、国家統制的資本主義の台頭という新たな火種がもたらす別次元のリスクが生まれたことになります。

米国と中国が世界経済を二分していく地殻変動の中で、日本が如何に埋没しないで生きていかれるのか。2019年の大きなテーマでもあります。

寺本名保美

(2018.12.21)



いよいよ

欧州各国は、英国との合意なき離脱に向けての準備を急速に進めることになりました。

英国の人と話していると合意の可能性は限りなくゼロに近い印象を受けます。

逆にこれまで何らかの合意はあるに違いないと思っていた、国外の投資家の方に心構えがまだ足りないことが気になります。

そろそろ準備しないと。。。

寺本名保美

(2018.12.20)



情けない

今回のソフトバンクのIPO騒ぎを見ている限り、個人に対する証券会社の営業姿勢は結局何も変わらない。

そういう個人をターゲットにした資金調達の手法を繰返すソフトバンクという企業文化も変わらない。

保有している投信や株を売ってIPOに応募して、公募割れに驚いて、投げ売りをすることになった個人の、証券投資というものへの悪い印象もまた変わらない。

個人の金融資産の構築に向けて、真面目に努力している人達がいることはよくわかっています。

でも、業界を挙げての大イベントが、そのコツコツとした努力を根こそぎ吹っ飛ばす。

想定できた結果だけに、それを避けることができなかった業界が情けない。

寺本名保美

(2018.12.19)



6割が変わる

来年度の市場環境を考える材料を探すと全てが5Gに繋がってきます。

取り敢えず、私の身近で起きそうなことをさがすと、VR(仮想現実)の実用化がメインテーマになるようです。

10年以内に現在のスマホなどの電子媒体の60パーセント以上が5Gによって切り替わるという試算もあります。

i phoneの売上が減少している、などという次元の話は、あと数年でスマホの形状そのものが変わってしまうのであれば、当然の流れであるのかもしれません。

今見えているモノのなかで、10年後生き残っているものがどのぐらいあるのかと考えると、全てのモノが愛おしく思えたり、と。

寺本名保美

(2018.12.18)



ついていかれるかしら????

先日、平均年齢55歳の酔っぱらいが15人、居酒屋で割勘とおつり銭の計算をすったもんだとしながら、これが20歳代だと言葉通りスマートに電子割勘になるのかなぁ、と思っていました。

平均年齢55歳がスマートに決済するようになるのには、あと2-3年はかかりそうですが、それでも来年はデジタル決済の本格的な始動が始まるのだと思います。

急激に市場が拡大し、参入会社が増え、詐欺とトラブルが横行し、規制が強化され、業者が淘汰される、というプロセスを1-2年で消化していくのでしょう。

祭りと混乱に政府の消費税対策が薪をくべる。

来年はそんな一年です。

寺本名保美

(2018.12.17)



ドイツの不思議

毎年12月末が近づくと恒例のように話題に出てくるドイツの金融機関問題。

不思議なのは、ドイツの景気が良くても悪くても話題になることには変わりなく、逆にその国最大の金融機関の決算上の懸念が出てもドイツの経済には影響がない、という関係でしょうか。

金融システムに依存していない経済を立派とみるべきか、全く改善しない金融システムを嘆くべきなのか、よく判りません。

ドイツ国内ではあまり気にしていないのかもしれませんが、グローバルな金融環境にとってはストレスになるので、そろそろ解決の方向に動いてはもらえないものかと思います。

寺本名保美

(2018.12.14)



今年の漢字。

私としては「裂」でしょうか。同じ「さける」でも「割」というよりも「裂」。

国や地域が裂け、業界の岩盤に亀裂が入り、企業の封印してきた箱のにも裂け目ができて底が抜けた。

地殻変動が起きていることは判っていて、変わらなければいけないことも判っていて、その先には新しい海図が開けていることも判っているけど、今年は裂ける痛みに怯えて耐えるだけで精一杯。

年が明けてもあと少し、亀裂の拡大は続くかもしれませんが、そこから後は修復するだけ。

今は裂け目に落ちないように、じっとして次の海図を見極める時期です。

来年はもう少し楽しい漢字を書ける一年になることを祈ります。

寺本名保美

(2018.12.13)



投資家心理はまだ安定

今年10月以降の資産運用結果が非常に厳しいものになった理由を3つ。

①例えばヘッジ外債や損保商品のように国内債券等の代替として保有していた戦略が機能しなかったこと。

②米国の株式市場等への過熱感から、逃避先として選択された欧州や新興国市場が、米国以上に下げたこと。

③株式のアクティブ、特に国内株式のアクティブファンドの超過収益が異様な程不振であったこと。

2017年までの堅調な市場環境に対し2018年については当初からやや慎重な戦略に回避しようとした投資行動が見られていたものの、結果が伴わない一年だった、というところでしょうか。

逆にいえば、リスク過多になっていた局面での急落ではないので、市場の下落幅ほどグローバルな投資家心理は痛んでいないかもしれません。

久々のマイナス局面に、やや意気消沈気味ではありますが、雰囲気さえ変わればリスクを取りたい投資家はまだ多いように見えることから、あまり悲観的にならずに年を越したいと思っています。

寺本名保美

(2018.12.12)



新たな秩序へ

やや強行にも見えたファーウェイを巡る米国の措置について、トランプ大統領に対し否定的な論調の強かった米国の主要メディアが、その正当性を論じています。

ウォールストリートジャーナルによれば今回の問題の発端は既に2016年に始まっていたとしており、米国の経済界も概ね今回の規制強化に同調しているとされています。

トランプ政権の対中政策については、これまでもトランプ大統領の個人的な意向より、議会や財界からの圧力の方が強いと思われる展開が続いていたので、今回のCFO逮捕に対し米国世論に違和感はないのだと思われます。

結果的には次世代通信規格において、中国製品を許容するかしないかが、今後の地政学マップにおける踏み絵の役割を果たすことになりつつあり、世界の分断が更に明確化してします懸念があります。

これもまた新しい国際秩序の形成への第一歩であると前向きに捉えていかないと、視界が暗澹としてきます。

寺本名保美

(2018.12.11)



普通の景気サイクル

市場見通しやリスクシナリオの話しをする際、市場下落において「リーマンショック並み」という形容詞を用いるのは、往々にしてミスリードになります。

米国の金融・不動産バブルの崩壊については、2007年年頭から2008年8月までの事象で、これはいわゆる「バブル崩壊」です。

一方2008年9月に米国FRBがリーマンブラザーズを破綻させた後の半年間の事象は「世界規模での金融危機」にあたります。

2007年からのバブル崩壊が2008年の金融危機の原因の一つであったことは事実ですが、この二つの事象は基本的には別物です。

足元の金融市場について、想定しなければいけないリスクシナリオは、何がしかの「バブル崩壊」であって、「世界規模での金融危機」ではありません。例えば99年のドットコムバブルの崩壊は金融危機とは無縁でした。

基本的に10年間拡大を続けてきた世界経済にとって、直近の大きな調整といえば「リーマンショック」ということがまず念頭に浮かんでしまうのは仕方がないことではあるのですが、通常の経済サイクルの中での景気減速というものの存在を少々忘れてしまっているのではないかと思います。

楽観できない環境であることは事実ですが、過度に悲観的になりすぎる必要はないと感じています。

寺本名保美

(2018.12.10)



普通の国になるのは難しい

かつて大国と言われたソ連。

かつて産業と貿易の中心にいた英国。

どちらも今は普通の国になってしまいました。

国の凋落というものは、意外に早く、途中で止めることは難しい。

今のロシアには米国と正面から競う体力はなく、だからといってその座を奪った中国の軍門に下るつもりもなく、虚勢だけが目立つようになりました。

欧州離脱を巡る英国の混乱は、他国との繋がりなくしては存在しえない英国の現実と、かつての大英帝国の残像を引きずっている国民の意識とのギャップが問題の根底にあります。

日本がかつては経済大国だった、と過去形で言われる日は恐らくそう遠くない将来であるのでしょう。

その時、日本国民が如何に「しなやかでしたたかに」生きていく道を探ることができるのか。

どうしたら経済大国であり続けるかと足掻くことも大事ではありますが、一方で普通の国として道筋を描くこともこれからの大きな課題なのではないかとも思っています。

寺本名保美

(2018.12.07)



次世代に向けての号砲

2019年の経済活動の中心にあるのが「次世代通信規格5G」であることは間違いありません。

これは今更判明したことではなく、潜在的には数年前から周知されていたことです。

米国による対中圧力の激化の根幹には、この次世代通信規格問題があり、トランプ大統領の気まぐれで今年になって唐突に出てきたようにみられていた対中制裁問題もまた、米国内で周到に準備されたきたことの結果に過ぎなかったのかもしれません。

渦中にあるファーウェイ(華為)については米国だけでなくニュージーランドや豪州、直近では英国などでも利用を制限する動きが出てきています。今回のCFOの唐突な逮捕劇は2019年の5G戦争に向けての号砲のようにも見えます。

大きな地殻変動の中にいる経済は非常に不安定である一方、巨大なエネルギーにも満ちています。

2019年このエネルギーがどの方向で動き出すのか、不安ばかりでなく期待も込めて見極めたいと思っています。

寺本名保美

(2018.12.06)



公的部門主導は失敗します

「産業革新投資機構」を巡る報酬問題や「水道事業の民営化法案」の議論も、公的セクターが関わるファンド問題とみると同種の問題定義をしていいます。

完全な民間資本でのファンドの経済行為が認知されていない土壌において、公的セクターでの正面突破はやはり無理があるように感じます。

通常ファンドの運営者は一般投資家とは異なり、投資に関しての無限責任を負います。その代わりファンドの収益の一定割合を成功報酬として受けとり、それをファンド運営会社の役職員で分配します。また、ファンドの役員や社員は自ら運営するファンドに一般投資家として投資を行うことが一般的です。

ファンド運営者は投資先の失敗が会社の存亡に関わるというリスクを負いますし、更に投資の失敗は自らの投資資産の損失にも繋がるという仕組みの中において、彼らは成功報酬を受け取ることができるわけです。

官製ファンドになった場合、その損失の受け皿は税金ということになり、また役職員が投資ファンドに自己資金で投資できるスキームになっているかどうかも不明であるため、一般的な民間ファンドにおける成功報酬体系をそのまま適用するのにはやはり無理がありそうです。

水道事業の民営化にしても公的セクターにおけるインフラファンドの議論とのパッケージで世論を醸成してからでないと、先に進むのは難しいでしょう。

いずれにしても、グローバル基準から周回遅れの焦りがあるのは判りますが、民間で進まないことを官製パワーで打開しようとするのは失敗の元のような気がしてなりません。

寺本名保美

(2018.12.05)



長期と短期のバランス

2017年の春、フランスにマクロン大統領が登場した時、私はマクロン大統領への期待と同等に、マクロン大統領を選出したフランス国民の変化に期待しました。

既得権益での低位安定より、変化による成長をフランス国民が本当に望むのなら、それは欧州、延いては世界経済にとっても、大きな支援材料になると思いました。

我々マクロン大統領に期待していたことは、フランスが過去100年、もしくはそれ以上の期間において陥っていた停滞からの脱出であり、当然1年や2年で結果が出るものではありません。

一方でフランス国民が、特にフランスの若者がマクロン大統領に期待していたことは、明日の職であり、明日の賃金です。

フランスにとってのデモは、日本で受ける印象よりも、もっと日常的なものではあります。

この数日の混乱が人々のガス抜きになって、より中期的な改革への一歩となることを望んでいます。

寺本名保美

(2018.12.04)



小型株ファンド

小型株投資のファンドマネジャーと話す時の違和感は、今も昔も変わらなくて、それは彼らがよく使う「企業への投資」という言葉への違和感でもあります。

株価を買うのではありません。企業を買うのです。というフレーズは心地良く聞こえますが、株価の変動には責任を持てないという言い逃れにも聴こえてしまうのです。

歴史のある海外の運用会社も「企業をみて投資する」というフレーズをよく使います。但し彼らが言っているのは「企業をよく見た上で株式に投資する」ということで、だからこそ株価の適正価値というものを、企業価値と同様に重視します。

そもそも、投資運用会社は、原則として他人のお金を預かって、預けた人の代わりに投資判断を行うことで報酬を得ています。従って投資は投資家の利益の為だけに行われるのであって、投資先企業の為に行われるのではありません。

投資家の利益は、投資収益の中長期の最大化です。株式投資であれば、投資した株式が配当を生み、値上りをすることに他なりません。それ以外の目的は全く存在余地がないのです。

いわゆるエンゲージメントにしても、投資先の企業の財務や業績が上昇することで株価が上昇することを期待して行うのであって、投資家の高邁な義務によるのではありません。

小型株投資はどうしても、ファンドマネジャーと経営者との距離が近くなりやすい投資です。そのため、ファンドマネージャーの視点が投資家ではなく、企業側に傾きやすいリスクを潜在的に持っています。

小型株のファンド運用者には、ぜひこのことを改めて自覚して、本来の役割に徹してもらいたいと強く思っています。

寺本名保美

(2018.12.03)


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