政治の希薄化
2008年の金融危機から10年が経過して、警戒も反省もすっかり忘れてしまったのは、投資家や金融機関ではなくて、政治家なのかもしれません。
どこの国においても政党と国民との信頼関係が希薄化し、与党も野党もあるべき形を見失っているように見えます。
今はまだ経済の底は抜けていないので、彷徨う政治に耐えられますが、この状態で次の景気後退を迎えることを想像すると、少し背筋が寒くなります。
メルケル首相も退陣が決まり、本当に政治家が世界から消えていきそうで心配でなりません。
(2018.10.31)
微かな兆し
これからの日本は、インド周りで欧州にアプローチ、というのが、私見なので、安倍内閣の親インド戦略は違和感なく受け止めています。
強かである、という点において、中国と良い勝負のインドと、今後どうお付き合いしていくのか、とても興味深いテーマです。
外国人労働者に対する規制緩和について、成功の秘訣は同一労働同一労働条件です。
安い海外労働力、ではなくて、豊富な海外労働力、というフレーズを浸透させること。
停滞していた安倍政権。ようやくレールが見えてきたかもしれません。
寺本名保美
(2018.10.30)
ナイフには近づかない
今の下落が単なるバリエーション調整だとするなら、弊社のイールドカーブモデルによる期待利回りが外国株についてはようやくプラス圏内に戻ってきました。
国内株については過熱ゾーンからは脱しました。
一方で、国内外とも高値から約20%の修正が急激に起きているので、いわゆるポジションの整理はまだ終わっていません。
今は然したる理由もなく下がっているように見える展開ですが、後付であったとしても、理由が付いてくる局面がくれば、下方へのオーバーシュートも意識しなければいけなくなります。
ここで止まるか、オーバーシュートするか、まだ見極めがつかないなかでの値ごろ感での買いは危険です。
落ちるナイフに手を出す勇気など持つ必要はありません。
寺本名保美
(2018.10.29)
官僚主導の株式市場?
政権への信頼性とは全く切り離されている米国株式市場に対して、日本株は未だに政権への信任票と株式投資が連動しているように見えます。
日本の産業構造のマクロ依存度が高いというのも一つの原因ですが、産業主導で政策が描かれるのではなく、政治が描いたレールの上を産業が走るという構造に変化がないため、いつまで経っても株式市場が政治の方向ばかりをみてしまうのです。
産業は政治をみて、政治は官僚が主導する、ということは、つまり日本の産業は未だに官僚が主導しているということで、『官僚主導の株式市場』なんて聞いただけで儲からない気がします。
戻りの悪い株式市場をみていると、どうもこんな愚痴を言いたくもなりませんか。
寺本名保美
(2018.10.26)
ギシギシと軋む
米国の株価が調整をしているのは、単純なバリエーション調整というだけではなくて、この数年の産業構造改革が次のステージに深化するにあたっての、新たな取捨選択が始まっているからかもしれないと思っています。
そういった視点から見た場合、このReutersの記事は今後の産業構造の根幹に関わる議論として、とても重要で面白い記事です。
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[ブリュッセル 24日 ロイター] - アップル(AAPL.O)のティム・クック最高経営責任者(CEO)は24日、企業が顧客データを利益を増大させる武器に変えていると批判し、米国のプライバシー法制定を呼び掛けた。 ただ、フェイスブック(FB.O)のマーク・ザッカーバーグCEOは、広告ベースの事業モデルについて正当性を訴えた。
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これまでIOT関連と一括りにされてきた先端企業における業績や将来性にバラつき出てきていることは、株価をみていてもよくわかります。
ハードウェア型企業とプラットホーム型の企業。今後の産業構造における主導権をどちらが取っていくのでしょう。
リアル対ネット、の議論は通り過ぎて、今はネット対ネットでの生き残りの時代に突入し始めているのかもしれません。
社会も株価も、暫くは軋みます。
寺本名保美
(2018.10.25)
国語は必要
医学部の女子問題の記事を読んでいて一番驚いたことは、医学部受験において「国語」の試験が軽視されているという事実です。
殆どの医学部の筆記試験に「国語」がない、という記事を読んで、確かめるべくネットサーフィンをしてみると実際に
センター試験の科目別合否データで理数系が正答率90%超えであるのに対し国語は78%、
とか、
論文試験といっても実は理数系の記述試験。
というような医学部受験情報を沢山見つけることができました。
医師、特に若い年齢のお医者様と話していて、どうしてこんなに言葉が通じないのかと思うことが多いことが、妙に腑に落ちる結果となりました。
基本的に人間相手の仕事をするなら、必要な資質は何はさておき「国語力」。
理数に弱い私のひがみでしょうか。
寺本名保美
(2018.10.24)
パンドラ
どうして今日の東京市場で日経平均が500円も下げなければならないのが全く理解できないのですが、まさかトルコ大統領の記者会見に備えたリスク回避を東京市場でしている人が居るということでしょうか。
雰囲気が悪いと、悪い材料に反応しやすくなるもので、FaceBookへの行政指導や、個別企業決算や、サウジ関連銘柄やと、売りたくなる材料を探せばきりがありません。
英国についてもメイ首相がEUに対し妥協するという一部報道を好感すべきなのか、これでメイ首相の失脚リスクが高まったと悲観すべきなのかもよくわからない状況で、大量移民が迫って激怒しているトランプ大統領の言動はもはや予測不能。
誰かがどこかでパンドラの箱の蓋でも開けましたか?
寺本名保美
(2018.10.23)
時間稼ぎ
中国の主要株式市場の急反発で、アジア市場の株価の下落は一旦止まっています。
各種の政治的混乱という外部要因で下がる局面においては、中国のような国策が効く市場が一旦はストッパー役となります。
中東情勢が荒れているわりには原油価格が落ち着いていることも、金利環境の悲観的な見通しを若干緩和しています。
あとは、これから発表される7-9月の米国企業決算が協力な支援材料となってくれることに期待します。
グローバルな資金需給をみていると、この半年金融商品への資金流入が徐々に細くなっています。過去積み上がった投資資金が大きく流出に転じる前に、各国の政治イベントが無事に収束することを望むばかりです。
寺本名保美
(2018.10.22)
成長率のギャップ
中国のGDPが6.5%とリーマンショック直後の2009年1-3月以来の低水準となりました。
という書き方をすると、中国経済が急激に悪化している様に見えますが、この中国のGDPというもの2015年にこれまで死守さえてきた7%を切った後は、なだらかな減速傾向が続いているので、取り立てて足元の数値に大きな変化があったわけではありません。
だたし、気を付けなければいけないことは2015年当時に話題になった「真のGDP」と評される「CMI」が2018年に入って以降減速を続けていることでしょう。
2015年にはGDPが7%、CMIが2%と、表の成長率と裏の成長率とに異常なギャップがあったものの、足元では両方の数値とも6.5%程度とギャップが消えていました。
ここから先、景気への感応度の高いCMIの数値が下降を続けていくとするならば、中国の実体経済への懸念はGDPの数値に見えるよりも悪化していることを意味していきます。
今の中国経済の減速が一時的な調整と見なしてよいものかどうかを見極めるまで、市場は暫く神経質な反応となるかもしれません。
寺本名保美
(2018.10.19)
宵越しのリスク
結局、EU首脳会議の結論は先延ばしとなり、合意のデッドラインを年内と確認しただけで終りました。当面はブレグジットの移行期間を1年から2年延長することについて、メイ首相が英国議会を説得できるかどうかが焦点となりそうです。
もう一つの懸念だった米国の為替操作国認定については、中国の指定がとりあえず見送られたことは、市場にとってはプラスでしょうが、これも先送りです。
で、最大の国際問題となりつつある、サウジアラビア問題については、状況は悪化するばかり。
いずれにしても、金融市場としては、どの問題についても受け身でいることしかできず、宵越しのリスクは取りずらい環境が続いています。
寺本名保美
(2018.10.18)
目先の山場
先週に株式市場が急落した理由の一つに、英国のEU離脱交渉の行き詰まりがありました。
株価が急落していてもドル円があまり動いていないようにみえたのは、為替の興味がポンドとユーロに向いていたからです。
今日17日からEU首脳会議が始まります。EU側はここでメイ首相からの具体的な提案が示されなければ11月中の合意は困難であるとし、一方で英国議会ではここでメイ首相が妥協案を提示するなら不信任決議をするという動きもあり、どちらにしてもメイ首相にとっては極めて困難な数日となりそうです。
市場にとっては、期限を延長してでも決裂することなく交渉を継続するというパターンが最も心地よく、交渉が決裂するだけでなく、メイ首相がEU側に良い顔をしすぎて国内で失脚するということもまたリスクです。
今日明日、金融市場にとっては目先の山場かもしれません。
寺本名保美
(2018.10.17)
時代遅れのうやむや戦術
1年後の消費税引上げに向けての具体的な工程がようやく見えてきました。
その中で、電子決済を利用した消費には2%の低減税率を適用する、という案が出ています。
先進国中で最も遅れていると言われている、日本の電子決済化を、この機に乗じて進めてしまおう、という政府の思惑が見て取れます。
それにしてもどうしてこの国の政府はこうした「うやむや戦術」から何時までも抜けられないのかと不思議に思ってしまいます。
外国人労働者の件にしても同様で、もう少し良い表現をするならば「既成事実化戦術」というところでしょうか。
正面からの議論を避けで、うやむやな既成事実を作っていくような昔ながらの手法は、今のネット社会ではそれこそ「炎上」の元にしかなりません。
社会基盤を新しくする前に、政治戦略を見直す方が先なのではないかとも思います。
寺本名保美
(2018.10.16)
こっちの方が厄介かも
世界の貿易市場にとって、米国大統領が目下最大の波乱要因であるとするなら、世界の金融市場にとっての最大の波乱要因はサウジアラビアの皇太子でしょうか。
サウジアラビアの脱石油を見据えた経済改革が招いている国内外での混乱が、場合によっては国際金融システムの根幹を揺るがすような資金フローに発展する可能性を少なからず意識せざるを得なくなってきました。
ウクライナ問題でのロシアへの経済制裁が発動された経緯を思い出してみると、このままではサウジアラビアに経済制裁を発動する可能性が否定できないからです。
とはいえ、大借金国のロシアへの経済制裁と、大投資家のサウジへの経済制裁が同質に扱うことは困難で、だからといってあからさまなダブルスタンダードにする訳にもいきません。
2015年の急落は、中国の金融不安に中東資金の投資資金の換金が重なって起きました。
さて。
寺本名保美
(2018.10.15)
波状攻撃
単独のリスクであれば耐えられる市場環境であったとしても、リスクが重なることで壊れることもある。
米国の金利だけが問題であるなら正常な調整と言い切れる。
トランプ大統領の舌禍だけが問題であるなら11月の中間選挙までと割り切れる。
ブレグジット問題への懸念であるなら10月末まで様子をみようと思える。
中国の元安や新興国の問題は週末のG20を見てから判断すればよい。
でも上記のリスクが少しずつ時差を持って波状攻撃をしてくることが想定された時、今の株式のバリエーションは耐えられるのか?
一旦身を屈めるべきなのかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2018.10.12)
利食い
米国金利の上昇に対しての反応がまとめて来たという感じでしょうか。
足元での市場金利の上昇は、市場参加者の投資行動の結果であって、トランプ大統領の言うようなFRBの政策判断のせいだけではありません。
政策金利を上げているわりには上昇スピードが遅かった長期金利がようやく正常な反応を始めただけです。
とはいえ、米国中間選挙やブレグジットと、政治的なイベントを控え、且つ年末のファンド決算も近くなっているこの時期。
この数ヶ月で一儲けした人達にとってはリスクを落としたくなる環境です。
調整、少し長引くかもしれません。
寺本名保美
(2018.10.11)
築地から未来へ
紆余曲折、あり過ぎるほどあったものの、結局築地市場は無くなりました。
豊洲新市場についての良し悪しはまた別の議論として、あまりにも広大な築地跡地の今後が気になります。
ここに何を作るのかを考えるには、築地をどうしたいか、ではなく、東京をどうしたいのか、と視点が必要になります。
観光地にしたいのか、これ以上住人を増やしたいのか、今住んでいる都民の福祉の充実が優先なのか。
直下型震災に対応する広域避難場所という視点もあるかもしれません。
いずれにせよ、東京の未来を左右する再開発。
急がずに、次の都知事選の論点にしながら、都民全体で考えていかれればよいと思っています。
寺本名保美
(2018.10.10)
2015年との違い
足元での市場センチメントの調整が本格化するかどうかは、今の中国通貨安が中国政府のコントロール下にあるか否かによるのかもしれません。
米中貿易摩擦が激化し始めた4月以降、中国元は約1割の切り下げとなり、上海株式市場は15%下落しています。
株価の下落については、米国との通商摩擦が中国経済に与える影響への懸念から起きていることとして、同時に起きている元安については2015年のような資本の流出に起因するものなのか、それとも中国政府による元安誘導なのか、実際のところが判らないでいます。
当初は意図的であるかどうかは別として、今の元安については中国政府のコントロールが効いているという楽観論が大勢であったものの、先週末あたりから2015年型の急落への懸念が一部に出てきているように感じます。
とはいえ、今の中国の政治体制は2015年当初と比べても、中央集権化が一層強化されているようにも思え、資本のコントロールができない状況にはならないと思ってはいるのですが。
要注意ではあります。
寺本名保美
(2018.10.09)
グローバルな同一労働同一賃金
トランプ大統領が熱望する製造業の自国回帰を実現する最も単純な方法は、米国企業に対し「グローバルな同一労働同一賃金」を法令化することです。
どこの国での労働であったとしても、同一の労働に対するドルベースでの賃金は同一でなければならない、としたら、製造業の多くは米国に生産拠点を戻すかもしれません。
労働コストが同一であったとしても、土地やインフラに関わる費用には地域差があり、法人税や所得税にも各国によって異なります。企業としてはこうしたインフラや税制による損得に加え、物流コストと時間とを加味した上で、製造拠点の最適化を図ることになるはずです。
欧州での移民問題も、労働コストの安い労働者の流入が問題の原因であるなら、外国籍であるなしに関わらず同一労働同一賃金とすれば、移民労働者問題の一部は解決するでしょう。
どこの国に居ても、一つの労働に対する金銭評価が単一であるなら、労働者はより生活環境の良い地域に移動するでしょうし、労働者を引き留めるための生活環境の改善に各国がもっと努力するようになります。
個人の労働意欲を無視するようなベーシックインカムの議論をするよりも、労働コストの均一化の議論をした方が現実的であるような気がするのですが。
寺本名保
(2018.10.05)
債券損の確定
長期金利が上がっています。
米国10年利回りの3.2%超えは、2011年7月以来の水準となり、ここを超えると3.5%ラインが見えてきます。
日本の長期金利も2016年のマイナス金利導入来では初めての水準となります。
これまで政策金利の引き上げに比べ反応が鈍いと思われていた米国の長期債ですが、動き始めてしまうと加速します。
今回の米国の金利上昇は、後戻りのない上昇となります。ここから先どこまで上がるかはまだ定かではないですが、欧州金融危機が再発でもしない限り長期金利が3%を切る水準まで低下することは恐らくありません。
つまり、今年になって発生した債券投資での損失はほぼ確定してしまったということです。
債券市場でリターンを得るのは本当に難しい時代です。
寺本名保美
(2018.10.04)
英国の方達
英国とEUとの離脱交渉について、あまり建設的な報道が聞こえてこないことをそろそろ不安に思い始めています。
EU大統領がSNSで英国を茶化したとか、メイ首相のスピーチを冷笑したとか、なんとも大人げない話も漏れ聞こえてきます。
現実を見据えた「通商交渉」として、淡々と進めていくしかないものを、妥協なき離脱とか、誇りを持った離脱とか、いった感情的な単語が並ぶこと自体がナンセンスです。
先日金融関係以外の友人から「英国は貴乃花みたいだね」と言われ、「でもEUは大相撲協会よりは建設的な気がする」と答えておきました。
こんな例えを彼の国でされてしまっているような現状に、誇り高き英国の人達はどう思っているのでしょう。
寺本名保美
(2018.10.03)
やっぱりレームダック
第4次安倍内閣の組閣。
初入閣大臣が12人であることが問題なのではなくて、この12人が「ポスト未定」というカテゴリーで報道されてしまうことに、強烈な違和感があります。
入閣ありきで、適所は二の次であることを、明確に露呈してしまった組閣です。
ここから3年。消費税もあり、オリンピックもあり、多分何れかの国でのバブルの崩壊もあり、産業構造の変化に政府の支援は欠かせず、日本の未来にとって本当に本当に重要な3年です。そのスタートの切り方として、この弛緩した感じは残念としか言いようがありません。
結局、残り3年という期限、また来年の参議院選挙という期限の中において、第4次安倍政権がレームダック化していることを確認しただけの内閣改造になってしまいそうです。
寺本名保美
(2018.10.02)
災害対応力
国内外問わず、自然災害が多発し、この傾向は今後も続くであろう、ということを前提として、日本が世界に発信できることは少なくないのだろうと思っています。
例えば、地震や津波が多発し、その度に数百人単位での犠牲者を出しているインドネシアに対し、地震や津波大国である日本の経験から、被害者数を減らすための技術や知恵をもう少し伝達することはできないものなのでしょうか。
こうした新興国での災害被害を見聞きする度に、被害者の救援や支援もさることながら、被害者をどうしたら最小化できるか、という視点での援助をもっと積極化できればよいと思ってしまうのです。
昨日の台風で、被害にあわれた地方や皆様へ心からお見舞い申し上げると共に、あれだけの台風でこれだけの被害で済んだこの国の災害対応力に驚きも感じています。
寺本名保美
(2018.10.01)