揉めただけ?
内容の問題以前に、発表時間が1時を過ぎたことで、市場に日銀の中が揉めているような印象を与えたことはマイナスだったと思います。
出てきた結果が、とても中途半端な現状維持だったことも含め、この内容を決定するのに何を揉めていたのだろう、という余計な勘繰りを招きます。
私が期待していたようなメリハリのある結果ではなく、結局現状政策を想定以上に維持せざるを得ないという事実を確認しただけで終わりました。
この1週間の騒動は債券市場に久々にボラティリティを復活させた、ということ以外、何のメッセージにもならなかったということのようです。
寺本名保美
(2018.07.31)
国家と企業と経済摩擦
中国企業が自国企業の買収を国防案件として却下するケースが米国以外でも出て来ました。
ドイツ政府は中国企業によるドイツの精密機械メーカーの買収を却下する見通しと報じられています。
トランプ政権の保護主義を非難しているドイツのメルケル政権にしても、中国に対する知的財産権侵害への対抗策は、米国と同様に取らざるを得ないという現実があります。
特にデータ移転に関していえば、米国よりもむしろ欧州の方がより厳しい規制を敷いており、今後この分野において中国との軋轢が高まるのは米国ではなく欧州かもしれません。
既に国家という概念が希薄している企業側と、逆に国家主義が高まっている政府側との意識の乖離も拡大しており、国家間の経済摩擦は今後世界の様々なレベルで広がっていくことになりそうです。
寺本名保美
(2018.07.30)
ズバッと
黒田総裁になってからの日銀の金融政策の最大の特徴は『小出しにしない』という点にあります。
従来の総裁が市場の反応をうかがいながら、回数多く政策変更を重ねていったのに対し、黒田総裁は、インパクトのある政策で、むしろ市場のサプライズを誘引する手法をとってきました。
とはいえ
イールドカーブコントロール以降、黒田総裁の政策にも発言にも、やや切れがなくなってきているようにも思えます。
金融政策は金融機関の収益を意識して決めるわけではない、と言い切った時のような力強さは影を潜めてしまっています。
緩和を続けるにしろ、縮小するにしろ、メリハリのある政策転換がそろそろ必要になっています。
久しぶりにすっきりとした黒田節を聞いてみたいものです。
寺本名保美
(2018.07.27)
14兆円が飛んだ?
決算がアナリスト予想を大きく下回ったFacebook株が時間外取引で2割以上の急落となっています。
昨日までに発表された他のネット関連企業の業績が、各種規制等の影響をさほど受けず堅調であっただけに、Facebookの業績に対する失望感が大きかったようです。
IOT関連銘柄の株価の急騰は、この1年半ほど継続している現象ではあるものの、さすがに今年に入ってからの半年間の株価については99年のITバブル時の株価の歪みを彷彿させる水準に到達しつつあると感じていました。
特にFacebookについてはIOT関連銘柄の中において、ビジネスモデルの安定性に不安の残る一角でもありました。
そういう意味では、今回のFacebookショックは「健全な調整」という評価に早晩落ち着くのではないかと思っています。
とはいえ、一夜の内に14兆円が吹き飛んでしまうような株価変動が投資家心理全体に与える影響には暫く注意が必要かもしれません。
寺本名保美
(2018.07.26)
狂言回し
もし、今の米国大統領がトランプ氏ではなかったとしたら、米中関係の深刻度は更に深まっていたかもしれません。
今はトランプ大統領をある種の道化役に仕立て上げ、幾分かの茶番性を醸し出すことで、本質的な対立から世間の目をそらすことに成功しています。
トランプ大統領が生来の八方美人なリップサービス外交に走ると、議会からの強烈な反発を招いていることからも、今の米国の強硬な通商政策の本質がトランプ大統領の気紛れによるものではないことがわかります。
本人が意図しているかどうかは別として、この時代の大統領として、ある意味最適な人材を米国国民は選択したと言っても過言ではないでしょう。
寺本名保美
(2018.07.25)
大きなマイナス
昨日の国内債券市場の振れ幅は、一日のマイナス幅としては、かなり異常な値となりました。
日次で0.5%以上インデックスリターンがマイナスになったのは、2000年4月からのカウントでも過去10回程度しかありません。
直近では2016年の1-3月期に何度か0.5%を超えるマイナスを付けたことがありましたが、この時は1月に史上初のマイナス金利の導入を決めた直後の混乱期だったので、上も下も幅が大きくなっていました。
今回は、むしろ動きが全くなくなっている中での急落だったので、市場に与えた心理的インパクトは2016年の時よりもはるかに大きなものとなっています。
指値オペでの機動的な対応で今日のところは一旦落ち着きを取り戻していますが、例え微調整であるにせよ、市場の厚みが薄くなっている最中で金融政策を調整することの難しさを実感します。
国内債券市場の動向に暫く注意が必要になりそうです。
寺本名保美
(2018.07.24)
トランプ大統領より黒田総裁
トランプ大統領の為替操作発言についての市場の反応は比較的穏やかでしたが、ドル円についてはむしろ日銀の政策見直し議論に強く反応しました。
今回の論点は、金融緩和の縮小や出口の話ではなく、むしろ想定以上に長期に現状緩和政策を継続していくことになるという見通しにおいて、持続可能性の高い方法論とターゲットを再検討する、ということだと考えられます。
株式や債券やETFといった特定資産については、方向性の変化により需給的な影響を多少は受けることになりそうですが、それよりも各国が出口の議論をする中において、緩和政策の期間の延長に関わるような議論をしなければならない経済認識の方が長期的に市場に与えるインパクトは大きいのではないかと感じます。
今回の日銀の議論の方向性がどういうものになるのかはまだわかりませんが、当面の金融市場に意外に大きな影響を与えるかもしれません。
寺本名保美
(2018.07.23)
アトムだ…
ロンドンの百貨店で、5基のジェットエンジンを搭載したロケットスーツが売り出され話題になっています。
時速50キロで移動ができ、5000万円で買えるそうです。
売り出されるということは、現実に装着して飛ぶことができるということです。
自走1輪車すら公道走行許可の出ない日本では、現実味は薄いのかもしれませんが、ドバイとか中国とかのベンチャー都市では、その内ロボットスーツで空を飛んで移動する人を見られるのかもしれません。
日本にいるとよくわからない内に、世界の変化が加速しているようで、気分が落ち着きません。
寺本名保美
(2018.07.20)
想像力
先日、プライベートアセットにおける、政府関与のリスクについて書きましたが、当然ですが上場資産においても同様のリスクは存在します。
極々足元の事例でいうなら、中国政府が廃プラスチックの輸入を停止した影響があげられるでしょうか。
製造コストと処理コストのバランスが崩れたプラスチック製品全般に小売業等から使用見直しの津波か起きつつあります。
卑近な例ではファーストフードでのストロー不使用が世間の話題を集めています。
技術革新、環境問題、エネルギー問題に、国際的なパワーバランスが複雑に絡み合っている現状は、企業活動のどこに落とし穴が隠れてあるのか見極めるのはとても困難です。
株式のファンドマネジャーには、サプライチェーンの全体像を頭に入れつつ想像力を駆使した、銘柄管理が求められる難しい環境になりつつあるようです。
寺本名保美
(2018.07.19)
将来の金利差
米国の景気が極めて健全に成長している、という米国のパウエル議長の声明を受け、金融市場に久々の安堵感が広がっています。
昨年末以来、米国の財政赤字が主要テーマだった為替市場も、堅調な経済活動が中長期的に継続することへの確信度が高まるにつれ、ドルの買い戻しが優勢になり始めました。
為替というものは短期的なテーマに左右されやすい市場である一方で、金融政策については足元の政策変更より中期的な政策の方向性に反応しやすい傾向を持っています。
もう少し具体的にいうなら、今の金利差より、今の金利差と将来の金利差の変化率に反応します。
米国において少なくても2020年まで金利引き上げが継続されることが明示されたことで、少なくても2020年まで現行の超低金利の維持を確認している日本との金利差が拡大し続けるという見通しが市場の中で共有されつつあります。
政治的な不透明要素がまだ頭を押さえていますが、資金のドル回帰は当面継続するとみるのが自然かもしれません。
寺本名保美
(2018.07.18)
非上場資産と政治リスク
足元の資本市場全体の流れを見た時、非上場資産を経由した資本フローの先行きにやや懸念を感じています。
代表的なプライベートエクイティやデット、インフラや不動産、ベンチャーキャピタルやバンクローン。
これらに共通しているリスクに、政府による政策関与の余地の大きさがあります。
例えば、M&Aの規制。ベンチャーキャピタルへの投資規制。税制改正。極端なケースでは事業接収。
資産が上場していないということは、グローバルな資本市場のルールが適用されておらず、足元でルールと思われていることがあったとしても、それは投資家意思が確認されることなく、どこかの政府の一存で変更することが可能であるということを意味しています。
資本のグローバル化が加速する一方で、資本市場に対する政治の関与が高まる続ける現状に不気味さを感じます。
施政者の傲慢さが次の金融危機の温床にならなければよいのですが。
寺本名保美
(2018.07.17)
ESGへの期待
今の需要の拡大の一つのキーが国防費であるとするならば、今の国際政治の混乱度が増すに従って、景気が強気になる理由も説明が付きます。
ここから先。技術革新の軍需転用が加速する中で、唯一歯止めをかけることができるとするなら、それは資本の力かもしれません。
莫大な研究開発費用を税金だけで賄うことは考えにくく、また民需と軍需の垣根が限りなく下がってしまっている中において、軍需産業への関わりの強い企業や製品へ株式や債券や投融資における資本の判断は、非常に重要な意味を持っていきます。
ESGという単語がお題目ではなく、本当の意味で資本家の意思を示す手段になることが、世界の将来を左右できる可能性に期待してやみません。
寺本名保美
(2018.07.13)
撤退の言い訳
外資系の大手量販店の撤退の話が出ているようです。
少し前にファーストフード店の撤退の話が出た時も撤退の理由を日本の人口問題や低迷する消費で説明していました。
一消費者として言わせていただくなら、「だって不味いもん」という感じでしょうか。
景気の悪い原因をデフレに押し付けるように、日本で成功しない理由を人口動態に押し付けるのは、消費者に受け入れられなかった単なる言い訳です。
今は価格勝負だけならネットで幾らでもネットでアクセスできます。
結局、商品やサービスに付加価値がなければ、消費市場があろうがなかろうが、ネットに勝つことはできないということなのかもしれません。
寺本名保美
(2018.07.12)
円安なのですが
この数日、為替の円安傾向が続いています。
対ドルだけではなく、対ユーロでも、混乱しているといわれる対ポンドでも同様です。
市場の目先の興味は米中貿易戦争と中国の株式市場動向、更にイギリスのブレグジットを巡る政局である、と思うのですが、どれをとっても円安になる要因はありません。
米中関係に対する過度な警戒が薄れリスクオフトレードが巻き戻されているという解説もみられますが、その割には日本株は弱いままです。
どこかの海外買収案件の資金調達が行われるといった実需が原因の可能性もありますが、一方でそろそろ日本の財政赤字がターゲットにされる可能性も視野に入れておいた方が良いかもしれないとも思います。
それにしても日本株はなんだか枯れています。
寺本名保美
(2018.07.11)
過去と未来の断絶
CATや損害保険系の運用商品に対しどうしても積極的になれない理由の一つが、過去統計への確信度の問題があります。
こうした商品が世の中に誕生した当初にいわれていたことは、気候データは世の中において最も古く、最も広範に、最も正確に、残されている統計データの鑑のような存在で、この大量データを基にした統計予測はあらゆる数学的な予測の中でも最も精度の高い予測の一つだと、いうものでした。
金融商品であろうと、気象予報であろうと、まだ来ない将来について何等かの予測をするには、過去データによる統計処理に頼らざるを得ません。そして過去が未来に対する説明力を維持しているいうことが過去データを使った統計処理の前提です。
昨今国内外で起きている自然災害を見ていると、未来に対する過去の説明力が確実に落ちてきているような気がしているのは私だけではないはずです。
過去が未来を示唆してくれない状況の中で、未来の自然災害を収益の源泉とするということへの強烈な違和感は、日々高まるばかりです。
寺本名保美
(2018.07.10)
参考になる過去とならない過去
今すぐのリスクではないものの、次に来る大きな市場のショック時への備えとして何ができるのかを少しずつ考えつつあります。
10年前のリーマンショックの際に有効だった戦略や仕組みが次回のショックでも有効であるということに確信が持てません。
リーマンショックの特異性ということも理由の一つではありますが、それよりもむしろその後に起きた市場構造の変化の方が気になっています。
VIXに代表されるボラティリティ指標が一般のポートフォリオに積極的に取り入れられるようになったのも、「リスクオン-リスクオフ」という言葉で価格変動のある資産が資産クラスを飛び越えて同じ方向で売買されるようになったのも、リーマンショック以降です。
資産クラス間だけでなく、機関投資家内の同質性が高くなっていることも不確定要素の一つでしょう。
過去から学べること、学べないこと。
よく取捨選択しながら、将来へのリスクに備えたいと思っています。
寺本名保美
(2018.07.09)
代理戦争
米国による対中制裁関税が発動されました。
今回の問題、いわゆる国内産業保護を目的としたトランプ大統領の「保護貿易主義」が招いた部分と、知的財産権に代表される議会主導の「国防議論」との二つの側面があります。
当初トランプ大統領お得意のブラフだと思われていた対中制裁が実行されるに至った原因は、多分に後者の要因が大きかったように思えます。
そういった観点からみればこの対中制裁は、知的財産権等で共通の懸念を持つ日本やEUにとってもまた、代理戦争という側面を否定できるものではなく、トランプ大統領の保護主義には眉を顰めつつも、全面的に非難するわけにもいかない、微妙な立場に置かれることとなります。
想定以上に力を持ってしまった中国に対し、米国をはじめとする既存の市場システムの恩恵を受けてきたG7がどう結束していくことができるのか、今回の経済制裁は大きな第一歩となるのかもしれません。
寺本名保美
(2018.07.06)
「デフレ」禁止
国内の経済情勢を説明する際「デフレ」という単語の使用を禁止してみてはどうでしょう。
段々とオールマイティな言い訳のように聞こえてきました。
現行の金融政策が目指しているのは「デフレ脱却」ではなくて、「インフレ目標の達成」ですし、今の日本経済が直面している課題は「デフレ経済からの脱却」ではなく「10年先を見通した成長戦略の欠如」です。
賃金上昇率が頭打ちなのはデフレのせいではなくて労働生産性と所得分配の歪みのせいです。
給料が上がらず物価が上がって苦しい人はいますがそれは「デフレ」ではありません。
製品やサービスの付加価値が落ちていることをデフレという言葉で胡麻化していませんか。
政官民そろってデフレデフレと連呼している国の将来は確実に先細りです。
寺本名保美
(2018.07.05)
流石の個人も毒された?
日経新聞によると、個人の住宅ローンでの新規契約で短期変動金利型が長期固定型を上回ったそうです。
黒田総裁が登場した2013年からの三年間は、長期固定が優勢で、2016年のマイナス金利導入後は短期変動が優勢となっているようです。
ここまでの結果だけみれば、貸し手の銀行にとっては有利な、借り手にとっては不利な選択が行われているように思います。
これが銀行の顧客誘導の結果だとするなら、銀行員の金利感覚は素晴らしいということになるのでしょうが、良くも悪くもそういうことでは、無くて、単に借り手の個人が話に乗って来やすい方を勧めた結果なのでしょう。
1990年なら金利急騰局面で、含み損を抱え青息吐息だった金融機関を尻目に8パーセントの利息が付く金融債や郵便局の定期貯蓄に、列をなした個人の金利感覚に驚愕した記憶があります。
長い長い低金利に流石の個人の金利感覚も毒されてしまったのか、はたまたこれもまた正しい選択であったということになるのか。
個人的には前者のようなきがしているのですが。
寺本名保美
(2018.07.04)
中国への期待
中国本土の株式市場の下落に対し政府の口先介入が始まっています。
前回2015年の急落の際には、中国の政府当局の介入手法の稚拙さや経営者の株式市場への過剰反応が、市場の下落を加速させました。
あれから3年が経ち、中国経済は拡大しただけでなく、かなり成熟した印象があります。
今回の株式市場に対する政府や経営者の対応が、中国企業が今度こそグローバル市場の一員として認められるか否かの大きな試金石となるでしょう。
心配しつつも期待して見守りたいと思います。
寺本名保美
(2018.07.03)
暑い!
突然到来した夏に敬意を表して、本日一日夏休み!です。
それにしても暑い!
夏は会社が、一番!
寺本名保美
(2018.07.02)