政治家らしい政治家
ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領とが、ヨーロッパ体制の維持に奔走しています。
昨日発表された独仏首脳共同声明において、EUでの共通予算の創設や欧州難民庁の創設などが公表されました。共通予算についてはマクロン大統領が主張していた財政の共有化からは後退したものの、欧州の南北問題解消に一定の効果は期待され、また難民庁についてはこれまで各国が判断していた難民の取り扱いについての基準を示すことで国内でのポピュリズム的機運のこれ以上の高まりを抑えようとする意志を感じます。
米国や中国といった力も声も大きな国に世界が左右される現状において、EUの結束力が高まりシステムとして安定化することは、世界のパワーバランスにとっても重要なことです。
内憂外患の独仏ではありますが、この二人がいる限りEUは大丈夫なのではないかと思っています。
寺本名保美
(2018.06.20)
サービス産業への期待
製造業中心の経済とサービス業中心の経済との最も重要な相違は、「為替レート」かもしれません。
今日上場したようなメルカリに代表されるような純粋なサービスセクターが株式市場に一定の比率を持つようになれば、日本の株式市場の為替連動性も変化してくるでしょう。
経済が為替レートへの耐性を持つことで、金融政策の選択肢も広がりますし、強い通貨を表明することができるようになれば万が一原油価格が高騰するような局面においても輸入物価をコントロールすることができます。
日本の経済構造の安定化のためにも、国際競争力のあるサービス産業の活躍が望まれるのだと感じています。
寺本名保美
(2018.06.19)
地震
このところ大きな地震が相次いで起きています。
被害に遭われた地域の皆様には心よりお見舞い申し上げます。
市場への影響はいまのところ限定的ですが、今後鉄道等を始めとするインフラの状況次第では、物流がボトルネックとなる一時的な景気停滞も懸念されます。
慎重に状況を見ていきたいと考えています。
被害地域の皆様、充分にご自愛の上、お過ごしくださいますよう。
寺本名保美
(2018.06.18)
景気が良いからこそのリスク
欧州の金融政策決定会合では量的緩和の停止が宣言され、米国の年4回の利上げ宣言と共に、市場コンセンサスの上限に近い引締め感が残る結果となりました。
とはいえ、利上げへの言及がないことは想定通りだったのですが、あと一年間は金利水準を変えない、と明言したことに、債券や為替市場はやや反応しています。
とはいえ、一旦落ち着いた後は、1年後の政策金利の変更を織り込みながら市中金利はジリジリと切り上がっていくことになるのでしょう。
さてこうして、グローバル通貨の短期金利が上昇に転ずる中、本当に心配しなければならないのは、国内問題で通貨が崩れているアルゼンチンやブラジルやトルコではなく、足元で景気が良いがためにドル調達が膨らんでいるアジア諸国のファイナンスです。
今はまだ景気の拡大スピードと調達コストの上昇スピードとの鬼ごっこの最中ですが、いずれは景気が鬼に捕まるタイミングが必ずきます。そこで起きるアジアでのデレバレッジに今のグローバル景気が耐えられるか。
当面の潜在リスクとして認識しておきたいと思っています。
寺本名保美
(2018.06.15)
ようやく正常化
意外感のあったFOMCの年4回利上げ宣言でしたが、市場の反応は非常に冷静でした。
こうした市場の反応を見ていると、少なくても米国にとって、金融政策が原因ではなく結果になりつつあるように思えます。
2007年のサブプライムショック以来、中央銀行の一挙手一投足こそが、市場の方向性を決めてきました。金融緩和こそが経済にとってのエネルギーであり、中央銀行の発言こそが市場の方向性を示す羅針盤でした。
言うまでもなく、これは中央銀行と市場という関係性において、正常な形ではありません、
本来の金融政策は、株価を上げたいから、とか、長期金利を下げたいから、行うものではなく、景気や物価の結果としての調整弁であるべきものです。
だからこそ、金融政策の予想は、経済分析をしていれば誰でも可能であったわけで、金融政策にサプライズが起こる可能性は極めて低いものだったのです。
米国で、中央銀行と市場との正常な関係性が復活したということは、10年前の金融危機がようやく過去のものになったことを意味しています。
あくまでも、米国だけのことですが。
寺本名保美
(2018.06.14)
欧州が気になる
元々米国の人々にとっては、どうでもよかった米朝会談が、とてもどうでもよい感じに終ったので、市場の興味は一気に米・欧・日の金融政策決定会合に移ってしまいました。
米国の利上げの回数の話しより、個人的には欧州のテーパリング議論がどの程度進捗するかの方に興味があります。
今年後半には佳境に入るブレグジット問題を抱え、イタリアやスペインの財政・金融問題が燻り、相変わらず市場評価が極めて悪いドイツの巨大銀行を抱え、と問題山積の欧州中銀とすれば、テーパリングどころではなくそろそろマイナス金利を正常化しておかなければ、次に来る金融危機で手の打ちようがありません。
欧州の金融システムが健全でないことはECBが誰よりも理解しているはずなので、ここは多少無理をしても金融政策の舵を切っておきたいところなのではないでしょうか。
日本については、何もない、以外のコメントが見当たらないのですが。
寺本名保美
(2018.06.13)
宴の後はどうなるのか
米朝会談が進行中なので、コメントを出すのがタイミング的に難しいのですが、敢えていうなら、今回の会談結果が大成功であろうとなかろうと、北朝鮮の政治体制が平昌オリンピック以前に戻ることは、恐らくもうないのだろうと思います。
であるとするなら、少なくても金融市場における喫緊の課題として持ち上がってくることは、韓国と北朝鮮の経済の合流がどのような過程を経て、どの程度のスピード感をもって実行されていくかということでしょう。
合流されることが韓国経済にとって、更には、国際経済全体にとって、プラスなのかマイナスなのか。
そもそも北朝鮮経済が合流するのは、韓国なのか。中国なのか。
結果として韓国経済に混乱が生じるとするならば、世界の電子産業全体の需要にどの程度の悪影響となるのか。
最悪、韓国にアジア危機当時と同じような現象が発生した場合、グローバルな金融システムに波及することはあるのか。
世界が注目している、とは言っても、核問題以外での影響については未だ市場の議論は全く深まっていない状況です。
宴の後に待っているのがバラ色の未来だけとは限りません。
寺本名保美
(2018.06.12)
どちらが主役?
主役になれないG7を中座して、主演のシンガポールに早々に到着したトランプ大統領。
古今東西とはず、この手のタイプには、とにかくスポットライトを当てて、全て自分で決定したかのようなお膳立てをしてあげることが重要なのですが、若いカナダのトルドー首相には少々荷が重かったかとしれません。
さて、「世紀の」米朝会談、
主役になりたい権力者が二人。
見世物としては面白いですが、こんな二人に振り回される政治経済というのも、虚しいことこの上なし、です。
寺本名保美
(2018.06.11)
忖度はない?
来週のECB理事会で、債券買入の停止について議論がされるとの思惑から昨晩の欧州市場では金利が上がり、ユーロが上昇しています。
スペイン政権でのスキャンダルや、イタリアの組閣問題等、南欧が再び反EUに傾くリスクが高まったことを受け、次のECB理事会では金融政策に大きな変更はないと見込んでいた市場からは、昨晩のECB首脳のタカ派発言はやや意外感をもって受け止められました。
よく考えてみれば、ECBが加盟国の国民感情に配慮して、金融政策を決定するというのは、それはそれでおかしな話でもあり、そんなことに忖度していたら、EUのようなパッチワーク経済の金融政策を決定することなどできはしません。
域内に問題が山積しているECBだからこそ、締められる時に締めておかなければならないのは自明です。
テーパリングの次は、マイナス金利の正常化が待っています。
ここは忖度なく、淡々と前に進んでいくことになるのではないかと思っています。
寺本名保美
(2018.06.07)
最終形とパス
どれほど最終形が正しくても、その結論を導き出す過程を他人に伝わるように描かなければ、社会を動かすことはできません。
以前「発明家」とか、「天才」とか、いう種類の方々と、少しだけお仕事をさせていただいたことがあるのですが、この人達のほとんどは、最終形を出すことはできても、そこに至るパスを説明することができませんでした。
最終形を描く能力と、論理的なパスを書ける能力が、両方備わっている人は恐らく稀なので、組織として考えるならこの二つの役割を果たすそれぞれのチームが相互補完できるような体制や人材が構築されていることが理想です。
今の政治を見ていると、政治家の描く最終形も、それを実現されるための官僚の能力も、同じような勢いで急激に劣化しているように見えます。
せめて、どちらかが救いにならないと、この国の将来は本当に危うい。
一旦壊れた組織を立て直すのには、甚大な時間とエネルギーが掛かります。政治家の新陳代謝と官僚の立て直し、どちらの方が手っ取り早いのでしょう?
寺本名保美
(2018.06.06)
とにかく実現
トランプ大統領が「私には私自身を恩赦する絶対的な権限がある」とSNSに投稿したことを、米国のメディアが一斉に報道しています。
こういったトランプ大統領の言動を見ていると、米朝首脳の相性は意外に悪くないのかもしれないと思ったりしています。
昨年前半はフランスのマクロン大統領が市場の雰囲気をガラっと変えてくれました。
実際の効果は別として、今年になってから停滞感漂う市場環境に対し、米朝会談が一種のカンフル剤となってくれることへの期待は高まっています。
スキャンダルが絶えないトランプ大統領にとっても、国民経済が疲弊している北朝鮮にとっても、刺激が欲しい金融市場にとっても、結果はともかく、まずは実現するということに意味があるといえそうです。
寺本名保美
(2018.06.05)
こんな国民投票
今週の世界の金融市場での注目材料として、「スイスにおけるソブリンマネーの是非を巡る国民投票」というものがある、らしい、です。
期日は6月10日。
ロイターによれば否決される公算が限りなく高いものの、国民投票に付き物の「もし」の可能性を100%排除することはできない、そうです。
ということでこの国民投票の元になった「ソブリンマネーイニシアティブ」というものを読んでみたものの、理解できない…。
ようするに民間銀行の信用創造機能を廃止して、信用創造は中央銀行に一元化させる、というようなことを言っている、みたい、です。
こんな難解な内容で国民投票ができるスイス国民って、単純にスゴイです。
まさか本気で波乱が起きるわけはないとは思っていますが、もう少し勉強してみます。
寺本名保美
(2018.06.04)
情報社会の幕開け
日本におけるデータ社会の実現に関する大きなニュースが2つ、今日の日経新聞に掲載されていました。
一つは、セブンイレブンとドコモが個人データの共有化に向けての開発研究組織を作るというもの。
もう一つは、日本と欧州との間での個人データの移転に伴う協定が合意される見込みとなったというもの。
一年前の弊社セミナーにおいて、正にこのテーマでの講演会をした際のお客様の反応は、例え匿名であったとしても個人の購買や行動記録が商業利用されることに、かなりの抵抗感があったように見受けられました。
あれから一年。
日本においてもようやく「社会の情報化」が現実的なイメージを持って展開し始めます。ここで1年前のセミナーの時とと同じ様な拒絶反応を社会全体がしてしまうと、日本のビジネス環境は世界標準からまた大きく出遅れることになります。
最近低迷気味の日本企業がもう一段ギアを上げるためには、このデータ問題を社会として如何にスムーズに受け入れられるかが大きな鍵となるでしょう。
焦らず丁寧に国民のコンセンサスを醸成させていかれればよいのですが。
寺本名保美
(2018.06.01)