変わっている位がちょうど良い?
とりあえず、一般教書演説は、無難な内容で終わったようです。
最近小さな軌道修正が目につくトランプ大統領ですが、自身のパフォーマンスについてもやや自制気味です。
企業に勢いがある時の政府の役割は国内の交通整理と他国間での利害調整が主なものとなります。トランプ大統領がGoogleやAmazonと仲直りをし、他国に対して共同戦線を組始めたら、それはそれで厄介ではあります。
トランプ大統領が自制して常識的な大統領になってしまうと、それこそアメリカ一人勝ちの世界が近づいでしまいます。
トランプ大統領は変人位がちょうど良い?といったら怒られるでしょうか。
寺本名保美
(2018.01.31)
債券市場は緊張気味
本日の米国時間には、トランプ大統領の一般教書演説があり、今晩から明日にかけてはイエレン議長最後のFOMCが開催されます。
一般教書演説については、大型減税や大規模なインフラ投資を中心とした積極財政政策と財政赤字の見通しについてトランプ大統領がどのように説明するかが焦点となり、FOMCにおいてはイエレン議長が就任以来抱えてきた低インフレ問題について、最後にどのように論じ、次の議長にパスを渡すのか、に注目が集まっています。
比較的インパクトのあるイベントを前にした市場の反応は、とりあえずドルを買い戻し、長期の債券は売り、株は様子見、というところでしょうか。
米国の10年金利が2.7%を超え、約4年ぶりの高水準まで上がりはじめました。
ここから半年程度の債券市場の方向性を占うには、大きな節目となる二日間になるのかもしれません。
寺本名保美
(2018.01.30)
スタートアップの悲喜こもごも
スタートアップの技術や企業に投資をするということは、創業利益の恩恵を受ける権利と、創業損失のダメージを受ける義務との両方を引き受けるということです。
何が起こるかわからない。何が起きてもしかたがない。理論と現実の狭間のブラックボックスがあちらこちらに口を開けているなかに、自ら飛び込むのです。
だから、通常ではありえないほどのリターンがあり、それを投資の言葉ではリスクプレミアムといいます。
こうしたスタートアップの参加者が身銭をもって検証してくれることで、その新しいシステムやビジネスモデルが実用に耐えられるだけの成熟をします。
リターンとはリスクの裏返しでしかないということです。
寺本名保美
(2018.01.29)
大統領よりアップル
目先の市場の注目は、中間選挙を前にして経済対策に余念がないトランプ大統領の不規則発言、ではなくて、2月1日のアップルの決算でしょうか。
3ヶ月前の決算発表では不振を囁かれていたiPhoneXの受注が予想外に好調だったことで、ポジティブサプライズとなりました。
今回についても、事前予想は厳しい内容が多く、予想以上に悪い内容となれば、12月後半からの上昇相場は一転するかもしれません。
一方で、想定外のポジティブサプライズになった場合、市場はトランプ政権のスキャンダルなどすっかり忘れて、上値を追うことになるでしょう。
一企業の決算が、米国大統領の去就よりよほど影響力のあるというのも、それはそれで歪んだ世界ではあります。
いずれにしても、2月月初の波乱には、注意しておきたいと思っています。
寺本名保美
(2018.01.26)
一休み?
足元の対ドルでの円高については幾つかの要因が重なっています。
①月初の日銀オペ以降払拭できない、日銀の出口議論への懸念。
②米国政府機関の一時停止を招いた財政の崖問題への懸念。
③トランプ政権が対中国等を意識した貿易収支問題を再燃させていることが対日貿易に飛び火するのではないかとの懸念。
④安倍政権が経済の回復をアピールするために、日銀とは無関係にデフレ脱却宣言をするのではないかとの懸念。
⑤世界中のリスク資産が高騰している中で、投資家がリスクオントレードを縮小させつつあること。
という感じでしょうか。
取りあえずは、日銀の次期総裁人事が明確になるまで、今の傾向は暫く続いてしまうかもしれません。
為替市場だけでなく、市場全体で一休みするには、よいタイミングかもしれませんが。
寺本名保美
(2018.01.25)
社会実験を伴うAmazon
以前から噂されていた、Amazonの無人店舗がアメリカのシアトルで開店しました。
入店時に電子認証をすれば、商品を店外に持ち出した時点で自動的にクレジット決済されるというものです。
個人生活におけるIOTの代表例として頻繁に引用される次世代サービスが、いよいよ現実の世界に投入されました。
技術的にはそれほどハードルの高くない印象を受けますが、このサービス、社会的なハードルは意外に高いと思われます。
例えば、個人の購入履歴が個人のクレジットカード等の個人情報と完全にリンクされることの是非。
個人認証システムの精度となりすましの防止策。
それこそ、ピンポンダッシュ的なカッパライをどう防ぐか。
こうした実店舗が稼働してみないと解決しないこと、実店舗になってみて初めて判る、様々な疑問についても、これからAmazonが実証していくことになります。
この半年でAmazonの株式時価総額がFacebookの時価総額を抜き世界第4位となりました。
社会実験を伴うAmazonの躍進はまだまだこれからなのかもしれません。
寺本名保美
(2018.01.24)
発信力が足りない
安部首相の施政方針演説を読んだ感想は、一言で言えば「小粒」。なんというか地味。
恐ろしくなるほどダイナミックに動いている世界経済下で、経済大国の一翼を担っている国の所信表明演説とは思えないミクロ感。
トランプ大統領のような大風呂敷がよいとはいいませんが、もう少し国民に夢を与えるビジョンが示せなかったものかと残念に思います。
政治家が国民に夢のある未来を語れる機会など、何十年に一度あるかないかです。消費に必要なセンチメントにくべる薪がせっかくあるのに、将来不安を煽るような演説をしている場合ではありません。
今の日本政府に一番欠けているのは、ビジョンではなくて発信力です。
せっかくオリンピック招致で学んだ発信力。政治家皆さん、もう一度お勉強しませんか。
寺本名保美
(2018.01.23)
リスクへの反応 【本日は15時までとさせていただきます】
今四半期のリスクシナリオの一番目として意識していた米国の政府機関閉鎖が現実になりました。
が、市場はほとんど反応していません。
財政悪化が意識されたことで、米国の長期金利が上昇したこと(価格は下落)が唯一の反応というところでしょうか。
前四半期は事前に想定したリスクシナリオ項目が回避される中での株高でした。
今四半期は初っ端から「当たり」の中での株高となっています。
市場の政治離れが加速していると言ってしまえば説明はつくものの、市場リスクに鈍感になり始めている可能性もあります。
今四半期、リスクには少し敏感になっていきたいと思っています。
ということで…
本日東京地方は午後から積雪警報が出ています。交通機関が止まる可能性があるため、本日の弊社業務は15時までとさせていただきます。緊急のご用件等はメールにて対応させていただきます。ご理解の程よろしくお願いいたします。
寺本名保美
(2018.01.22)
今度は本物?
中国の2017年のGDPが6.9%となり政府目標の6.5%を上回りました。
2015年に中国主導で株価が急落した際に話題となった「真のGDP」と称される「China Momentum Indicator(CMI)」についても2016年年初を底に急回復しており、足元の中国の景気回復は本物のようです。
CMIでみると、現状の水準感はほぼ2012年から2013年のあたりで、習近平氏が国家主席に就任した前後の景況感というところでしょうか。
習近平体制になった後は、各種のバブル退治に始まり、やや引き締め気味な政策が続いたこともありCMIベースでの景況感は急激に悪化したにもかかわらず株価が逆行高をしたことが、2015年の中国株式市場のクラッシュの一因とみられています。
足元の市場では、中国経済のレバレッジの高さなどへの懸念も高まりつつありますが、今のところ景況感と株価との間には、大きなかい離は見られず、2015年のような明らかな歪みはまだ見えてきていません。
あまり信用するのも危険な国ではあるものの、今回の中国の景気回復については、もう少しの間は安心してみていてもよいのかもしれないとも思っています。
寺本名保美
(2018.01.19)
支持は高い、ようです
アップルが海外に滞留させている約2500億ドルの一部を本国に還流させ、380億ドルの税金を支払い、300億ドルの国内設備投資をし、2万人の新規雇用を創出する、と発表しました。
これは年末にトランプ大統領が署名した「かつてない規模」の税制改革に呼応した反応です。
米国のグローバル企業に対し米国国内への資金還流を促する「本国投資法」については過去2004年に行われており、その後3年間に及ぶドル高相場の一つのきっかけになりました。
一方で、この法案の国内雇用に対する効果については、還流された資金が配当還元等に使われ、且つドル高により国内製造業の国際競争力が損なわれたことで、国内経済には寄与しなかったという批判もあります。
今回のアップル社の発表は、国内還流と共に設備投資と雇用へのコミットメントを同時にアピールするという意味において、トランプ政権的には100点満点の企業広報となりました。
アップルがトランプ政権に媚びを売っているという表現をするメディアもあるようですが、これも現政権が少なくても経済的には評価されていることの証の一つでしょう。
居心地が悪い中で上がるのは株式市場だけでなく、日米の政権支持率も同様、ということのようです。
寺本名保美
(2018.01.18)
とりあえず、三方一両益
公的年金の受給繰り下げを70歳まで延長する話。
半年前に報道された時は、報道が中途半端だったこともあり、完全なミスリードになりましたが、今回は正しく報じられています。
この件だけについていうなら、表面的には誰も損をしない話です。
年金でもらって預金が増えるだけの人については、受給を繰り下げるだけで、びっくりするほど高い金利効果が受けられます。
生活が苦しい人、働けない人にとっては、今まで通りで変わりません。
若い人にとっては、年金を先送りする人が増えると、財政計算上の収支が改善するので、年金制度の健全化に繋がります。
リスクは先送りした人が、いつまで生きるか、という点に集約されるので、それはそれぞれの選択です。
これをきっかけに、なし崩し的に、受給年齢が全て70歳になるのではないかと勘ぐる人もいるでしょうが、逆に言えばこうしたコツコツとした財政健全化対策を積み重ねていかなければ、全面70歳化のタイミングは早まるばかりです。
さてこの問題。各メディアがこれからどれだけ正確に報道してくれるか、メディアの姿勢がみえるので興味深く観察していきます。
寺本名保美
(2018.01.17)
大統領 ダボスにいく
来週23日から始まるダボス会議には18年ぶりに米国大統領が出席を予定しています。
昨年のダボス会議では中国の習近平国家主席が演説をしたことが話題になる一方で、自国のポピュリズムを刺激することを警戒したメルケル首相や主要な欧州首脳は欠席となりました。
エリートや富裕層の集まりとみられがちなダボス会議に参加することは、国民からの支持を気にする政治家にとってはリスクのある行動でもあります。
このダボス会議にトランプ大統領が自ら出向くということが、何を意味しているのか、各メディアは興味高く論評しています。
いずれにしても、トランプ大統領が他人のセットアップした舞台で演説をすることにしたということは、トランプ政権がある程度の自信を取り戻しつつあることの証左ではあります。
気持ちよく拡大を続けている金融経済環境に多少の水を差す程度の舌禍は想定範囲内として、消せないほどの火種を撒き散らすようなことはご遠慮いただきたいものです。
寺本名保美
(2018.01.16)
あきらめてなかった・・・
年末にひっそりと、というつもりはなかったのでしょうが、現実的にはひっそりと、12月26日「水素基本戦略」なるのもが政府の再生可能エネルギー・水素等関連閣僚会議、なるもので決定されました。
「新産業改革ビジョン」の時も思ったのですが、日本の基本インフラに関わるような大きな政策方針を政府が定めたなら、もっとしっかりと国民に周知すべきだと思うのです。
実現する自信がないから言わないのか。
言って反対されたところで撤回するつもりはないから言わないのか。
言ってもどうせ理解されないと思っていいるから言わないのか。
何なのでしょう?
それにしても「水素基本戦略」ですか。あきらめてなかったのですね。
なんというか、「日本がプラットフォームになりたい病」の究極の案件のようにも見えるのですが。
寺本名保美
(2018.01.15)
仮想通貨、ですらない
ビットコインを巡る環境は日々変化しています。
ビットコイン市場の価格動向は、こうした制度的な環境変化によって、大きく変動しています。
仮想通貨市場が投機の対象であって投資の対象ではないと言われる要因の一つには、このように価格動向が市場内部の需給ではなく、制度的変化の思惑だけで、値段が動いてしまっている点にあります。
1年位前、ビットコインが市場の注目を浴び始めた当初は、法定通貨からの逃避対象としての仮想通貨とか、中国のように外貨の持ち出し制限のある国においての逃避通貨、というような、比較的説明のつきやすい需給がありました。
しかしながら、仮想通貨市場が実体経済とリンクする可能性が示唆されて以降は、「仮想通貨」の夢を買う、ような理想買いが中心となり、値段ではなく「ビットコインを買う」という行為そのものにしか意味を持たなくなってしまっているようにも見えます。
どこかで、仮想通貨に本来の需給が取り戻された時、そこで初めて仮想通貨にも何かと交換するための「交換価格」という概念が発生します。それまでの仮想通貨市場の価格は「値段」ではなく、単に「ビットコイン」を買うという行為によって発生した「シグナル」にすぎません。
「仮想」通貨、ですらない単なるシグナルに、大金をつぎ込む人々を見るのは、見ているだけで心が痛くなってきます。
寺本名保美
(2018.01.12)
先送りできない劣化
第二次世界大戦が終わって70年以上が経過し、その間本当に幸福なことに、戦火に合うことなく現代を迎えている各国において、インフラ設備の再生という課題は、もはや先送りをすることのできない喫緊の課題となっています。
日本についても当然例外ではなく、国家としての最大のリスクは、天災よりも先に、インフラ崩壊なのではないかと考えたりもします。
話は変わって、大相撲や大企業の不祥事や頻発する事故を見ていて、制度疲労とか経年劣化、という言葉が思い浮かびます。
誰がどうして、ではない、構造的な歪みや軋みが、日本の根幹を支えてきた伝統的な組織を蝕んでいるようにも思います。
色々な意味において、インフラ崩壊を未然に防ぐための意識の変化が、政治にも経営にも求められているということなのでしょう。
寺本名保美
(2018.01.11)
日銀の瞬き
昨日、日銀が瞬きををしました。
というより微かな瞬きをしたように、市場には見えました。
それだけで、ドル円は1円近く円高になり、国内だけでなく、海外金利も上昇し、米国10年債利回りは鉄板の2.5%を越えました。
実際のところ、日銀が超長期ゾーンの債券の買入金額をわずか100億円減額したことに、大きな意図はないのかもしれません。
ただ市場が日銀の正常化について、如何に神経質になっているかを理解するには、昨日の市場は十分な意味を持っていたと言えそうです。
今月には日銀総裁人事が発表されるはずです。
これだけ市場が気にしている中央銀行の人事であることを、政治が正しく理解していることを願います。
寺本名保美
(2018.01.10)
宇宙
オバマ政権の大きな積み残し政策だった、火星有人探査計画について、12月にトランプ大統領がそのための月面有人探査の再開を決定したことで、大きく前進する可能性が高くなってきました。
オバマ政権の8年間において宣言されていた、人間の脳のデジタル化や米国のエネルギー政策の自立、製造業の復活といったテーマについては、足元で期待以上の結果が出てきているといえますが、唯一オバマ政権の最終局面で出てきた、この火星有人探査を含む宇宙関連計画については、方向性がよく見えないまま、トランプ政権に引き継がれていました。
中国の動きに刺激されたのかもしれませんが、外交や地政学という概念が、とうとう海を越え、山を越え、大気圏を越えてしまうような印象が、沸々と湧いてきます。
ロケットを飛ばすのが相変わらず苦手な日本にとっては、どんどん困難な時代になりつつあるようにも思えます。
寺本名保美
(2018.01.09)
資源価格
年初の市場で最も目を惹いたのは、株式市場ではなくて、60ドル超えの原油市場。
さぞかしロシアが喜んでいるこの状況に、水を差すのはやっぱりトランプ大統領。
米国沿岸域での石油採掘に、過去最大規模で許可を与えると、報じられています。
昨年来、中国経済の底打ち感に呼応し、資源価格全般に上昇傾向がみられます。このまま原油が80ドルに向かってしまうのは好ましくはないので、アメリカが産油国としての存在感を示せるのであれば、悪くはありません。
いずれにしても、今年は資源価格には要注意となりそうです。
寺本名保美
(2018.01.05)
変化を楽しむ
新年あけましておめでとうございます。
東京の空には雲一つなく、国内外共に大きなイベントもない、穏やかな新年となりました。
今年一年は、変化を楽しめるかどうかが勝負だと思っています。
もう何十年も言い尽くされ陳腐化した「創造的破壊」という単語が、戦後初めて本当に意味を持つ一年になることでしょう。
変わることへの不安や恐怖で足を竦ませるか、変わることへの興味と期待から大きく上に伸びるか、二つに一つです。
変化を止めることができないのなら、ここから変わっていく自分の未来を思い切って楽しみませんか?
遭難しないように気を付けながら、大きな変化に身を任せるのも悪くないかもしれません。
本年もご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。
寺本名保美
(2018.01.04)