社会構造変化のプロセス
日本の社会構造の変化が、ボトムアップで国民の合意を形成しながら成熟していくのに対し、多くの海外の社会構造変化が政府主導のトップダウンで行われる傾向があることについて、海外の経営コンサルの方と話す機会がありました。
日本のようなコンセンサス重視の社会は、変わるのに時間が掛かるものの、一旦動き出すと劇的に変化する。トップダウン型の社会は見切り発車での変化なので始めてからトライ&エラーを繰り返し、最終形となるまで意外に時間が掛かる。
時間もコストも無駄にかかっているように見える日本の形は、トータルで見れば悪くないのでないか、というお話しでした。
私と話しているので、日本に対し少し遠慮した物言いになっているのかと思わないでもないですが、構造変化のプロセスの違いを表現するには、判り易い解説だったと思います。
石橋を叩くことは構いませんが、重箱の隅をほじくっているだけ、ということにならないようにしていければよいと思うのですが。
寺本名保美
(2017.12.20)
今回の相場の終わりかた
2018年の金融市場リスクが、米国やドイツのインフレと想定以上の利上げであることは、ほぼコンセンサスになってきたようです。
逆に言うなら、この件については、市場に織り込まれているわけで、もし景気に減速の兆しがみえたとしても、むしろこのリスクシナリオが低減するため、市場はプラスに受け止めるかもしれません。
一方、恐らく織り込まれていないのが、日銀政策の正常化です。
万が一、米欧中の景気がインフレを伴って加速し、それが周回遅れの日本に波及してきたタイミングが、各国の景気のピークと重なった場合、日銀の金融政策の変更が、世界株式の下落のトリガーとなり、かつ、日本にとっては、株安と円高と金利上昇が重なる最悪の展開となります。
まぁ、こういったストレスシナリオについては、その現実性に怯えるのではなくて、そうなった時のイメージを頭の中でシミュレーションしておくことに意味があります。
決して来年の話、ではなくて、2020年ぐらいに向けての、リスクシナリオということで‥
寺本名保美
(2017.12.19)
溜息
ビットコインの世界での取り扱い高において「円」が「ドル」を抜いて世界一になりました。
ロイター等はビットコインの中心が中国から日本になったことの証であるとしています。
以前、為替取引に個人投資家が大量に参入した際、日本の個人投資家は「ミセスWatanabe」と称されました。
そして今度はビットコイン。
投資に対する抵抗感は限りなく高く、投機に対するハードルは限りなく低い。
しっかりとした元手で投資はできないものの、ダメもとの投機ならできる、というセンチメントから、未だに抜けきれてない国民性がここにも見えてきます。
う~~ん。
寺本名保美
(2017.12.18)
ボンヤリ
税制改革というものはその国の政策の方向性を大きく左右する、ある意味メッセージ性の強いものです
今回のわが国の税制改革によって、国が何をしたいのかということが、残念ながら明確には伝わってきませんでした。
産業構造も、人口構成も、外的要因も、非常に大きな変化に直面している中において、申し越し明確なビジョンが出せなかったものかと残念に思います。
来年は、世界から日本が取り残されるか否かの勝負の年になるでしょう。
世界を牽引するなどということは考えなくていいので、とにかく取り残されないためにできることを国も企業もしっかり考えて欲しいと思います。
寺本名保美
(2017.12.15)
仮需と実需のデッドクロス
2009年末の3月末を底値とした株式の上昇が始まって8年になります。
少し前の日本株市場には、上げ相場を知らないファンドマネージャーばかりだと嘆く声も聞こえてきましたが、そろそろ下げ相場を知らないファンドマネージャーばかりになってきていることを警戒しなければいけない時期が近づいてきているのかもしれません。
逆に金融市場からはやや周回遅れの実需の世界では、好景気をしらない経営者の存在が景気のボトルネックになりつつあります。
その分慎重であることは悪いことではありませんが、そういった経営者が乗り遅れた船に飛び乗るとばばをつかみます。
降り方を知らないファンドマネージャーと乗り方を知らない経営者が、魔のデッドクロスをするまでには、まだあと一年位、余裕があるでしょうか。
寺本名保美
(2017.12.14)
アクティブファンドの報酬
詳細は解らないので印象だけの話になりますが、GPIFがアクティブ運用に成功報酬を導入するとの話に少しだけ違和感があります。
市場の上昇局面において、例えば日経平均以上に収益が獲得できたので、運用機関に成功報酬を支払う、ということは、一般の理解が得やすい一方で、市場の下落局面において損失が日経平均を持っているより少なかったので成功報酬を支払う、という行為に一般の理解がついていくでしょうか。
「ベンチマークとするインデックス収益率に対して超過収益を獲得する」というこの業界にとっては当たり前のフレーズは、資産運用の世界から一歩でも外にでれば、「全く理解不能の暗号」のようなフレーズです。
GPIFというものが、国民の年金財源を確保すべく、運用を洗練させ高度化していかなければならないことはよくわかります。
一方でGPIFというものは、気紛れな政権や気難しい国民という最終受益者からの信頼を失うことなく、維持していくことも、その大きな使命の一つです。
アクティブファンドの成功報酬というものが、後々の災いの種にならなければいいのですが。
寺本名保美
(2017.12.13)
陰陽
毎年恒例の今年の一字は何となるのでしょうか?
最近の「一字」の傾向が、どうも私の実感とズレているのですが今年はどうでしょう?
一字で表すのは難しかったので2文字になってしまいましたが、私の居今年の印象は「陰陽」です。
市場環境においても、陰と陽とが混在しつつ陽の光の強さが勝った一年だったといえるでしょう。
来年は、太陽の光の眩しさに視界を奪われている内に、陥没した道に嵌ってしまうような一年でしょうか。
それとも、雲一つ無い晴天が一転して雷雲に変わるような一年でしょうか。
良くも悪くも「温暖」とは言い難い一年になりそうな気がしています。
(2017.12.12)
逆イールド
米国のイールドカーブが来年度中に逆イールドになる可能性を示唆する専門家が増えていると、ブルームバーグが報じています。
短中期期金利が長期金利を上回る「逆イールド」という現象は、教科書的に言えば、将来の経済成長の期待値以上に短期金利が上昇することで、将来金利が低下してしまう現象をさします。
例えば、足元のインフレが加速しており、将来の景気より足元のインフレ抑制を重視した金融政策が取られる際などに見られるため、逆イールドはリセッションの前触れであると言われるのです。
それで、今の状況ですが、私も逆イールドになる可能性は高いと思うものの、それがリセッションの前提となるかどうかについては、少し教科書から離れて考えてみた方がよいのではないかと思っています。
いずれにしても、来年度の投資戦略における最大リスクの一つが米国の逆イールドであることは避けられないことであると感じています。
ゼロ金利下での運用戦略の議論はそこまでにして、次は逆イールドでの運用戦略を考えていかなければなりません。
寺本名保美
(2017.12.11)
そもそも理論値がない
ビットコインの上げが加速しています。
従来、法定通貨への信任の裏返しとして使われてきたのは「金」でしたが、足元ではその役割がビットコインに取って代わられようとしているとのコメントも見られます。
こういった新奇なモノで儲けるのが得意なヘッジファンドは、今回に関しては「空売り」で参入してしまい、その手仕舞い買いがビットコイン狂想曲の要因になっているともいわれています。
どれもこれも最もらしく聞こえる説明を聞きながら、弊社のアナリスト氏の「そもそも理論値や適正価格の根拠が無いシステムなんだから…高いとか安いとかいうこと自体に意味がない」という一言が一番腑に落ちる説明だったりもしています。
将来的には、経済の一翼を担うシステムとなることを否定するつもりはありませんが、それまでの間にはまだ相当の波乱と混乱が待っていそうです。
寺本名保美
(2017.12.08)
メガ対メガ
個人向けサービス分野で、グーグルのサービスがアマゾンで使えなくなったり、アマゾンのショップでグーグルの商品の取り扱いをしなかったり、その横でアップルがアマゾンのサービスを使えると宣言したりと、メガプラットホーム間での、バトルが面白い展開となっています。
FANGと一括りされるものの、それぞれ出自が少しずつ異る巨大企業であり、ここまではそれなりに棲み分けができていたように見えたのですが、IOTによる未来型生活のインフラ業務においては、完全にバッティングし始めたようです。
個人生活のIOT化に関しては、急激な変化と同時に生活情報の漏洩なども新たな問題も生まれつつあります。
巨大プラットホームが競争関係になり、健全な牽制機能の元で、新たなサービスが拡大していくのであれば、それはとても良いことです。
寺本名保美
(2017.12.07)
米国の短中期金利
足元で、ドル高と株安が同時に起きている理由は、米国の短中期金利が一本調子で上昇していることにあります。
2年金利でいえば9月8日の1.26%から直近の1.81%まで、ほぼ毎日休まずに金利は階段を上り続けています。
ちなみに米国の政策金利は6月以降変化はありません。
米国の政策金利の上昇を織り込む過程においては、このように中短期金利が日々切り上がっていく現象は珍しい光景ではないのですが、実際に資金調達をしている側からみれば、毎日毎日コストが上がり続けるという、なんとも心地の悪い環境ではあります。
普段、我々が目にしやすい、10年金利だけをみていると、この1か月でむしろ低下したようにも見えますが、現実の金利観は景気拡大と共に徐々に引き締まってきているようです。
米国での短中期金利の上昇は、日米為替のヘッジコストを直撃します。
年末のドル需要が高まる季節でもあり、新興国でのドル調達への影響も心配です。
12月のFOMCが終わるまでは、少し不安定な金融環境が続くかもしれません。
寺本名保美
(2017.12.06)
フィンテックとガラパゴス
欧米におけるフィンテックと日本におけるフィンテックには立ち位置に違いたあるように見えます。
欧米の金融機関にとって、非金融業者の展開する金融業や、中央銀行が介在しない仮想通貨は、既得権益や既存システムを脅かす、ある種の外敵という側面が強調されがちです。
一方日本においては、既存の金融業者は非金融業者の展開する技術やプラットホームを活用して、新しい金融業を模索しようとしており、中央銀行も仮想通貨に対し今のところ好意的に見えます。
我が国におけるフィンテック業者が今のところどこも小粒で、既存の金融を脅かすほどの存在になり得てないこと、現金通貨信仰の厚い国民性があるため仮想通貨への信頼がリアル貨幣を脅かすほどの存在になりえないと想定されること、など理由は幾つかあるのでしょう。
文化の違いによる技術の取入れ方の相違というものは当然存在しうるものではあるものの、結局これがこれまで日本の技術をガラパゴスと言わしめてきた遠因でもあります。
フィンテックのガラパゴス路線。早いうちに修正していったほうがよいのではないかと思うのですが。
寺本名保美
(2017.12.05)
改革なきリストラ
銀行の人員削減が日々報道されている一方で、証券会社や事業法人によるスタートアップやリスクマネーの提供ビジネスを再開するといったニュースフローも増えています。
更に海外からは、従来の商業銀行業務がファンド化された商品も、切れ目なく持ち込まれています。
銀行本体が行き詰まる中、銀行の本業に進出する別業態が増加するという構造は、どこかに歪みを感じます。
米国の様に、銀行のバランスシートが拡大しすぎて、リスクを小口に分散せざるを得ないというのは判るのですが、日本の場合は単純に従来の金融業が縮小していっているだけにも見えます。
金融庁主導の日本の金融改革が始まって3年。
改革ではなく単なるリストラと再編だけで終わってしまうのでは、あまりにも情けなさすぎます。
寺本名保美
(2017.12.04)
年末商戦と個人消費
これまで企業業績に注目が集まっていた米国の株式市場ですが、足元の好調な年末商戦を受け、個人消費の堅調さも市場の追い風になっています。
とはいえ、この数年の傾向ではあるものの、ネット販売がリアル店舗を駆逐する構造は一層加速しており、米国の年末の風物詩である「ブラックフライディー」の人混みは、例年より少ないとの報告も見られます。
結局のところアマゾン一人勝ちが止まらない米国小売り業界において、来年以降の再編は本格化することでしょう。
さて日本。ブラックフライデーの真似事をする、という企業もあったようですが、消費については「笛吹けど小躍り」が継続しています。
GDPの構成要素は基本的には企業の設備投資と個人消費と政府支出です。企業部門が好調であることは、米国・日本も同じとし、政府支出もおかれている状況にも大きな差がないとするなら、米国と日本とのGDP伸び率は違いは、個人消費の差ということになります。
日米の経済力格差、当分縮みそうにはありません。
寺本名保美
(2017.12.01)