あのインドが!
インドで高額紙幣が突然廃止された時は、インド経済の先行きを本気で心配しましたが、これによって電子マネー決済が本格化し、経済活動が円滑に回り始めている様子に、やや驚いています。
技術に強いインドらしい改革だともいえますが、この数十年何一つ変化していないようにみえていた世界最大級の人口を抱えるインドでこれほどの荒療治が実行できたことに注目せざるをえません。
施政者が本気になれば、社会を変えることができるという一例なのかもしれません。
寺本名保美
(2017.01.31)
晴れのち雷雲?
本日大阪トンボ返りの行程での新幹線。
頭上は晴れ。
気温は季節外れの暖かさ。
車窓から遠くを見ると、巨大な竜巻かと思うような雨雲が、黒い空から地上にまっすぐ降りています。あの下だけは只今集中豪雨なのかもしれません。
と思っていたら、なにやら物凄い霧に突入。
晴れのち雷雲。視界不良。
さっきまで説明していた来年度見通しとそっくりですが…
寺本名保美
(2017.01.30)
文字文化の変節
毎日こうして書き続けている電子媒体での文章と、本や雑誌に活字として書く文章とは、自ずと異なってきます。
きっとこれは私だけではなくて、例えば著名な作家が「書籍」として執筆した小説と、元々電子Book用に書き下ろした小説とには、本人が意識しているかいないかは別として明らかに違いがあります。
電子媒体用の文章にはスピード感がありますが、全体として軽さを感じます。
どちらが好きか嫌いかは読み手次第なので一概には言えませんが、媒体によって内容が変わる可能性については、社会全体として少し意識しておいたほうがよいのではないかと感じています。
紙媒体の文章は残るから慎重にという問題だけではなく、もう少し違うところの問題のような気がします。
文字が紙から遊離して所在なく揺らぎはじめ、情緒も思考も不安定化させているのかもしれません。
寺本名保美
(2017.01.27)
刃物や技術は使い様
AIなどの技術革新によって、人間の生活が侵食されるか、職が奪われるか、といったような論点について、問題のカギは「技術は使うものであって使われるものではない」という矜持を我々一人ひとりが持てるかどうかというところにあるのだと思っています。
これは金融という技術革新が進み続ける社会に身を置いている人間として、デリバティブなどの金融技術が我々の社会に頻繁に災いを招いてきたのは、技術そのものの問題ではなく使い方の問題であるということが身に染みているからです。
技術革新に対し懐疑的であるうちはまだ冷静です。
ここから先、走り始めた変化に飲み込まれ、新しい技術に人間が振り回されるような局面が必ずきます。
刃物や技術は使い様。
この言葉を念仏のように唱えながら、これからの数年を過ごしていきたいと思っています。
寺本名保美
(2017.01.26)
年齢のギャップ
高齢者年齢を75歳に引き上げる議論が、年金の支給年齢の変更に繋がる可能性についての議論が起きているようです。
今の高齢化問題には幾つかの切り口がありそうですが、例えば平均寿命と健康寿命と定年年齢と年金支給開始年齢とのそれぞれのギャップについて考えると、何か方向性が見えてくるような気がします。
健康年齢と平均寿命とのギャップを埋める為の制度。定年年齢後の健康年齢期間の補助的な制度。定年年齢と年金支給年齢との空白を埋める制度。
定年年齢以降を総て「年金」で一括りにせずに、もう少し細分化して見直してみるのも必要なのではないかと思うのです。
人生90年。年金だけに責任を負わすのは少々重すぎます。
寺本名保美
(2017.01.25)
景気が良い時のデフォルト
極一般論として、社会的インパクトのあるような企業のデフォルトは、景気が良い時に起き易いものです。
景気が良いというよりも、銀行や株式市場にそこそこの体力がある時、という表現の方が近いかもしれません。
デフォルトとは景気が悪いから発生すると思うのは間違いです。
あくまでも、一般論として、ですが。
寺本名保美
(2017.01.24)
8年前から変わらない
8年前のオバマ政権発足当初に話をしたワシントンを拠点とするストラテジストの一言を今鮮明に思い出しています。
「戦後アメリカは国内の消費市場を解放し、日本やドイツの経済復興を支援してきた。80年代に入り今度は中南米の経済復興を支援し足下では中国経済の為に米国の消費者は貢献している。そろそろアメリカは返してもらわなければいけない。アメリカの作ったものを日本やドイツやメキシコや中国は買わなければいけない。」
今振り返り、大統領が誰になろうと、表現方法や時間軸に多少の違いはあれ、アメリカという国の舵取りには全くぶれがないことに、背筋が少々寒くなります。
トランプさんという道化役に惑わされていると、アメリカの本気を見逃すことになるかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2017.01.23)
メディアとの捻じれ
大手メディアの反トランプ風が収まらない中、とうとうトランプ新政権が誕生します。
トランプ氏に対し米国国民の大多数がSNSでの発信を止めるべきだと思っていると、報道しているメディアもありますが、トランプ氏との関係が悪化するばかりでSNSでの発信をそのまま記事にせざるを得ないメディア側の焦りのようなものも感じます。
そもそも今回の結果の一端は、オバマ政権に対するメディアの評価の低さにも原因がありました。私が個人的にオバマ政権の方向性を好ましく思っていたから、という贔屓目もあるかもしれませんが、オバマ政権への大手メディアや都市部のインテリ層の評価は不当に低かったように感じます。
SNS至上環境においては、物事の判断が白と黒との二者択一になりやすい傾向があります。オバマ政権の否定が対極であるトランプ政権の誕生を招いてしまったことへの自己反省が大手メディア側にも必要でしょう。
政権とメディアの歪んだ関係から発生する情報の捻じれは、投資判断においてのリスクとなります。お互いもうそろそろ大人になって、冷静なメディア報道が復活してくれることを願います。
寺本名保美
(2017.01.20)
本来のマスタートラストへ
私が年金コンサルティングの仕事を始めたころはまだマスタートラストという言葉は日本の金融市場にはありませんでした。
日本において年金等の資産管理を一元的に行うマスタートラストサービスができたのは2000年になってからです。
1990年代後半からの日本における金融危機の影響により、信託銀行にも信用不安の影が差すようになっていました。年金信託という仕組みは資産の名義人が信託銀行となります。もちろん信託財産は分別管理されているものの、委託者側の不安を完全に払拭することはできませんでした。また余資の運用が銀行本体への貸出となっていたことも問題視されていました。
こうした環境下において、不良債権を抱えた信託銀行本体の財務から切り離し、顧客資産の受託管理業務だけに特化した格付けの高い新会社を作ることで、信託業界全体の信用を担保させようと作られたのが日本おけるマスタートラストサービス会社です。
また信託や生保各社からみれば、事務効率の一元化ができることでのコスト削減効果もありました。
マスタートラストの導入が始まった時、大きく期待されたレポーティング機能の充実や売買コストの低減、余資運用の効率化といった本来のマスタートラストのサービスについては、結局期待の半分程度も実行されていません。今回報道されたマスタートラスト業界の再編がもし実行されるのであれば、中身の充実も視野に入れた改変になってくれればよいと期待しています。
寺本名保美
(2017.01.19)
ポジション整理の週
注目されていた、はずのメイ首相の発言への市場反応は一瞬で終わり、市場の興味は完全に20日のトランプ大統領就任演説に集中しています。
中国のトップとして初めてダボス会議に参加した「習近平国家主席兼中国共産党中央委員会総書記」の「自由貿易主義の重要性」についての「歴史的」な演説も、20日のトランプ演説を前にすると影が薄くなってしまいました。
中国TOPがある意味において自分達の書いたシナリオ以外の路線に対応し発言せざるを得なくなっている状況を見るのはかなり興味深いことではあります。
ちなみにWSJが伝えたトランプ氏の為替発言は対中国に特化したものであり、ダボス会議での米国次期政権顧問のドル高による新興国経済へのリスクについては誰もが心配している当たりまえの話の繰り返しなので、特に足元で大騒ぎするような内容ではありません。
いずれにしても1月20日までで「一相場」と思っていた参加者が多かったことは事実なので、今週はポジション整理に終始することになるのでしょう。
寺本名保美
(2017.01.18)
英国はなにものになるのか?
今晩のイギリスのメイ首相が演説でEU単一市場からの離脱を宣言するのではないかと、市場が警戒しています。
米国のトランプ氏が、だったら米英の二国間協定を結んであげるよ、と秋波を送っていますが、米国と英国とでは置かれている立場が異なります。
世界の貿易金融の中継地であった、というよりも、でしかなかった英国にとって、多国間協定を失うことは、国の経済の根幹を失うことになります。いみじくも昨日英国政府首脳が言っているように、単一市場からの離脱によって英国は経済運営の方向性を見直さなければいけなくなるでしょう。
英国が19世紀に舞い戻り、製造業の国に戻るのでしょうか?
採算がとれなくなった北海油田にテコ入れして資源国を目指すのでしょうか?
決して美味しいとはいえない果物を改良して農業国になるのでしょうか?
トランプ氏の甘言に乗った英国の将来は暗澹としています。
寺本名保美
(2017.01.17)
美しくはない再構築
先日のセミナーご案内でもふれたように、トランプ政治の最大のリスクは外交です。
一方で、実利の政治は、平和を買うことができるのではないか、という淡い期待が私の中にあります。
2008年のサブプライムショック以前の金融至上主義経済において唯一評価できたことは、イデオロギーや宗教的な対立があったとしても、地政学的崩壊が自国経済の崩壊に直結するということを各国がリスクとして認識していた点にあると思っています。
逆にいうなら、オバマ政権の最大の失策は、「グローバル金融」のステイタスをイデオロギーや理念より劣位に置いたことで、国家間のバランスをより調整困難な状況に追い込んだことにあるのかもしれません。
「金儲けがイデオロギーを超える」
言葉としては決して美しくはないものの、今壊れかけているの世界のバランスを辛うじて維持するためには、もう一度「金儲け」という万国共通の価値観を再構築する必要があるのかもしれないとも感じています。
寺本名保美
(2017.01.16)
セミナーについて
少し先になりますが、3月9日に25回目の法人様向けの資産運用セミナーを開催します。
今回のお題は
「 ”アメリカンバブル“ 米国一人勝ち経済の可能性と投資戦略」
オバマ政権の8年間で補修整備が終わり準備万端となっている米国のハイウェイを、ガソリン満タンのランボルギニーに乗ったトランプさんがアクセル全開で疾走する、面白くも怖い時代が到来するかもしれません。
トランプ政権最大のリスクである外交について、時事通信社で長く経済畑を担当しニューヨークでの駐在経験もある石井正様から大胆な解説をいただき、後半では私が将来に禍根を残さないための投資戦略についてお話しをさせていただきます。
お客様には別途ご案内状を送付させていただいておりますが、詳細はセミナーページをご参照ください。
寺本名保美
(2017.01.13)
価値と利益
昨日のトランプさんの記者会見は、就任前で且つ20日の正式な就任演説を前にしたものとしては、妥当なところかと思います。
むしろ、日を前後して行われたオバマ大領領の離任演説とのコントラストに強い印象を受けました。
オバマさんが言う「アメリカの価値」と、トランプさんの言う「アメリカの利益」という言葉の持つ意味の違いを考えることが、両者の政策の違いを理解するにはもっとも適しているように思います。
株式投資で例えるなら、投資先企業の「利益の質」と「成長のスピード」のどちらを優先するかということに近いものがあり、利益の質の追求は長期的なパフォーマンスの安定をもたらす一方で短期的なパフォーマンスに繋がりにくく、成長のスピードを追う戦略は短期的にはリターンが上がるものの失速も早く安定性には欠けます。
どちらが正しいということではないものの、少なくても株式市場においては「利益の質」が高く「企業の潜在的価値」の向上に向けた努力をしている企業への評価が高く、株価も中長期的には上がっていきます。
トランプ政権が、短期的利益の先に更なる長期的な価値をアメリカにもたらすことができるのか。今のところその可能性は限りなくゼロに近かそうではありますが。
寺本名保美
(2017.01.12)
息苦しい時代のキャラクター
SNSやネットメディアの拡大は、人々の発言を解放しているようにみえて、実はとても不自由にしています。
そうした不自由な時代において公人として生き残っていかれる人というのは、オバマさんのように意図的に発言をコントロールできる人か、そうでなければ発言を個性としてキャラクター化できる人、でなければ無難に口をつぐみ続ける人、の何れかでしょう。
失策もなければ発信力もない三番目のタイプがあちらこちらで増殖していくことは、ある意味社会の衰退に繋がることで、深刻な問題です。
プロフェッショナルな公人としては一番目の自己規律型が望ましいのですが、こういう人ばかりだと息が詰まります。
ということで、米国であればトランプ氏、日本であれば麻生さん、という二番目のキャラクターの存在が、この息苦しいSNS至上社会での存在意義を増している、という気がしてきました。
決して彼らの種々発言内容を肯定しているわけではありませんので、悪しからず。
寺本名保美
(2017.01.11)
本音はどこに?
明後日11日に予定されているトランプ次期大横領の記者会見を前に、市場はトランプラリーのポジションを一旦縮小する動きとなっています。
トランプ氏のSNSでの呟きをニュース等で大きく取り上げるため、トランプ氏の発言の不確実性への疑念が膨らんでいますが、実際に複数のSNSの投稿を見てみると、意外と管理され計算された投稿のように見え、トランプ氏がその場の思い付きで気ままに発言をしているだけには見えません。
SNSを通して見える支援者向けのトランプ氏と、実際の大統領としてのトランプ氏との顔が同じ方向を向いているとも限りません。
さて、11日の記者会見。
トランプ氏の公の顔が見えるのか、未だ就任前のお気楽な顔のままなのか。
自由奔放に見えて意外と仮面が厚そうなトランプ氏の実像が垣間見える記者会見となることを期待しています。
寺本名保美
(2017.01.10)
中国、そして、仮想通貨
金融市場での年初の波乱は、「中国発の仮想通貨市場の暴落」という、なんとも象徴的な出来事でした。
トランプショック以降、資金流出懸念から下落を続けてきたオフショアで人民元が、年明けの3日で過去2カ月の下落を全て取り戻しました。
そして、人民元が戻るのとは裏腹に、最高値を更新していた「ビットコイン」が20%以上急落した、そうです。
人民元からからの資金流出を抑え込むために香港でのインターバンク金利を急激に引き上げたことが原因とされていますが、相変わらずこの国のことはよくわかりません。
一つはっきりしたことは、人民元が売られるとビットコインが上がり、人民元が下がるとビットコインが下がるらしい、ということぐらいでしょうか。
今回ビットコイン取引で大損をした中国の人達が、自国の金融資産の売却に走るようなことがあると、たかが仮想通貨、というわけにもいかなくなるでしょう。
国が市場を制御しようとすればするほど、制御の効かない小さな未熟な市場での歪みが拡大する、という典型的な事例をみているような気がします。
寺本名保美
(2017.01.06)
リスクの取り方
昨日発表されたFOMC議事録でもみられるように、ここから先の金融市場のリスクは、トランプ政策によるインフレ懸念の高まりが米国の利上げスピードを加速させ、それによる想定外のドル高が継続することです。
そうなった場合、円安が株高には直結せず、単に外貨エクスポージャーだけが、投資を支える構造となります。
今年のリスクシナリオとしては、このケースが最も実現性が高いと考えています。
足下で、金利と外貨との逆相関が、ポートフォリオ構成で優位に働き始めました。
リスクの取り方に一工夫が必要な一年になりそうです。
寺本名保美
(2017.01.05)
先入観を捨てる
新年あけましておめでとうございます。
歴史に学び、先入観は捨て
軸はぶらさず、変化を受け入れ
冷静さは保ちつつ、居心地の悪さには目を瞑る
そんなことを考えていた新年です。
本年もご指導ご鞭撻の程、よろしくお願い申し上げます。
寺本名保美
(2017.01.04)