他人の土俵
ポケモン騒動で影が薄くなっていますが、ソニーの出した3Dゲーム機の売れ行きも好調なようです。
ハードの開発能力はあるもののソフトに弱く、高値で買った米国の映画会社のコンテンツを生かし切れていなかったソニー。
ソフトはあるが、自社でのハード開発に拘り、スマホへの展開が遅れた任天堂。
結局、今回のポケモン騒動は、米国社の作ったプラットホームに、コンテンツとしての任天堂が乗っただけ。
ソニーの3Dに乗るコンテンツは、ハリウッド仕様?
もし、ソニーと任天堂が組んでいたら、もっと違う展開があったのではないかと、少々残念に思います。
金融市場も同じですが、一番儲かるのはルールメーカーであり、プラットホームを持っている会社です。
技術力のある日本がいつまでたっても海外発のプラットホームの上でしかプレイできないことに、この国の成長のボトルネックがあるのでしょう。
今回のポケモン騒動は、日本の可能性と限界を象徴する、よい教材であるのかもしれません。
寺本名保美
(2016.07.27)
過度な楽観も悲観もなく
地政学リスクや政治的なイベントに振り回されている中、それ以前にあったリスクや要素を少々見失い気味であることに気づきます。
原油価格が50ドル近くまで戻っている中、クレジット市場は大きく戻りましたが、原油需給のおかれている環境が芳しくないことには変わりません。
イタリアの大手銀行への救済についての議論は日々更新されており、状況は悪化しています。
株価は戻ったものの、イギリスの景気センチメント指数はBREXIT以来大幅に悪化する一方、ドイツの一人勝ち状態は継続です。
米国の利上げについては、国内的には利上げしないことを理論的に説明する材料を探さざるを得ない環境が続き、外部環境の混乱が収まっている中、再び利上げ観測は再燃しています。
一方で、AIやロボットでの新しい産業の芽は着実に伸びており、マクロ環境が悪いわけではありません。
こうして並べてみると、色々あったわりには3月頃の環境に対し、大きな変化はなかったようにも見えます。
プラス面マイナス面、マーケットも頭を一度リセットして、仕切り直す必要がありそうです。
寺本名保美
(2016.07.26)
シナリオの書き直し
今週の日銀の政策決定会合への期待が再び高まっているようです。
日銀の追加緩和の手段には注目が集まる一方で、追加緩和の目的についての意識は段々薄くなってきたように思えます。
株式市場が期待しているようなETFの買取金額の増額にしても、株価対策にはなるかもしれませんが、本来の物価目標に対してどのような効果があるのか不明です。
マイナス金利拡大の議論も同様で、長期金利は一段下がる(債券価格は上昇する)かもしれませんが、景気刺激に効果があるかは不明です。
株式や債券価格を押し上げたとしても、資産インフレという言葉には程遠く、消費センチメントの改善効果も不明です。
政府の経済対策も同様ですが、手段の話ばかりが先行して、目的がどこかにいってしまっているように思えます。
政府も日銀も一からシナリオを書き直す時期に来ているのかもしれません。
寺本名保美
(2016.07.25)
好奇心が全て
午前中、待ち時間が長かったので、ポケモンgoのダウンロードを試みました。
が、私のスマホは対応しておらず、断念。
何を馬鹿なことを、と思った方々。
この仕事は、好奇心が全てです!
特に現代のように、世の中が大きく変わろうかとしている最中において、斜に構えていては何も見えません。
いつまでも、日銀だの、財投だのを追いかけている場合ではなーい。
というわけで、どなたか試してみた方、感想教えてくださいね。
寺本名保美
(2016.07.22)
一年前…
今、日本株が買われているのは、政府の経済対策と来週の日銀政策決定会合への期待。
今、米国株が買われているのは、他に買う市場がないからという消去法と、金融市場が混乱する中での利上げ見送り期待。
米国株式の消去法以外については、相変わらず期待と失望の繰り返しで、ボラティリティを高めるだけなので、ほどほどにして欲しいと心から思う。
昨年の6月急落7月反転8月大暴落、という展開に懲りて、膾を吹きたい気分です。
深追いせずに自然体で。
寺本名保美
(2016.07.21)
ルール
金融取引とスポーツとは、どこか似ている部分があります。
勝ち負けがある。
瞬発力が必要である。
プロフェッショナル性が強い。
そして何よりも、ルールに基づいたプレイである、ということ。
ルールは絶対ではありません。人為的に作られ、場合によっては作為的に変更されるものです。
但し、そのフィールドでプレイをするのであれば、そのルールの順守は必須となります。
だからこそ、ルールは常に周知され、理解し易いものでなければなりません。
自分に不利なことが起きた時、そんなルールは知らなかったという人が出てくるとするならば、それはルールメーカー側の問題であるし、そんなルールはおかしいと言い出す人は初めからプレイに参加する権利はありません。
オリンピックを前にしたゴタゴタを見ていると、今の世界の縮図のようでもあり、暗い気持になります。
寺本名保美
(2016.07.20)
平和なのか世紀末なのか…
10日ほど前、ポケモンGoの最初の記事を目にした時、宝の持ち腐れ状態だった任天堂のコンテンツビジネスが漸く開花してよかったね、程度の感想だったのですが、瞬く間に社会面を賑わすほどに化けていました。
マイケルジャクソンのプロモーションビデオみたく人々がスマホに首を傾けながら通りを練り歩く姿をテレビで見ていると、もしかすると世界はとてつもなく平和なのではないかとも思え、また江戸時代の「ええじゃないか」のような世紀末現象なのかと思ったりもします。
いずれにしても、企業活動としては、継続性が命なわけで、何か大きな社会問題に繋がることを防止する設計は、当然事前に組み込まれている、はず、です。
ポケモン強盗とかポケモン衝突とかポケモン転落とか、平和なキャラクターであるポケモンの名前を傷つけるような文言を目にはしたくありません。
想定外の大化けによって、設計側で制御不能になっていなければよいのですが。
寺本名保美
(2016.07.19)
リスクオフでもオンでもない頃合い
先月イギリスの国民投票結果が出たときの基本シナリオは、一時的な大混乱、後、一旦巻き戻し、後、長くて緩やかなイギリスの衰退、というものでした。
最大のリスクは一時的な大混乱によって市場のどこかに発生する大きな傷が、ファンドの解約等を経由して、金融市場で玉突き損失を発生させること、と考えていました。
今のところ、一時的な大混乱後の巻き戻し過程にあり、イギリスの不動山ファンドで発生した大きな亀裂がどこに波及するかはまだ見えていない状況です。
リスクオフではないものの、リスクオンになるには早すぎる。
売られ過ぎたものを買い戻すぐらいが、調度よいところでしょうか。
寺本名保美
(2016.07.15)
小さな山間でのインフラ投資
久しぶりに夏休みをいただいて、日光の先まできています。
特急駅は当然のことながら、明らかにひなびているローカル線の温泉駅にもエレベーターがあり、車内放送もテープながら、英語と中国語と韓国語があり、中々の観光インフラです。
山間にある数件の温泉宿は、競いあうかのようにリニューアル。
こうした設備投資が、どうか長期的に報われることを心から願います。
ということで、明日の思いつきはお休みです。
寺本名保美
(2016.07.13)
愛すればこそ
最近つくづく思うのは、金融業界の将来を金融人に聞いても当たらないし、自動車業界の将来を自動車業界の人に聞いても当たらない。
あまりにも大きなルールチェンジの最中に居ると、潜在的な抵抗感や既得権益への意識から、判断がどうしても保守的になります。
付け加えるなら、自動走行などの自動車のAI化の話を、自動車好きなオジサン達に聞くと、もの凄く抵抗されるのもこの一種。
業界愛があるからこそ、見えない現実もあるのでしょう。
寺本名保美
(2016.07.12)
変えすぎたことへのトラウマ?
一年半前の衆議院選挙の時と同じような凡庸な結果となった参院選です。
現政権に不満は無いわけではないものの、変えるほどのこともないだろう、という程度の信認。
市場にとっては、アベノミクス路線の継続への安心感と、安倍総理が改憲に突っ走る程の大勝にはならなかったことへの安堵感とで、ある意味ベストシナリオの結果となったかもしれません。
日本で国民が変化を望んでいないように見えるのは、小泉、小沢、民主、橋下、と風に流されて自ら選択してきた結果に対する、国民の反省というかトラウマがあるからなのではないかとも感じます。
今年になって、徒に変化を求めてきた世界の選挙の流れの中で、日本の選挙が無難に終わったということは、我々が思っている以上に世界経済にとっては大きな意味を持つ結果だったといえそうです。
寺本名保美
(2016.07.11)
優先順位をつける見識と決断力
毎回思いますが、東京都知事選が、毎回毎回、何度失敗しても、相変わらず空虚であることに、都民として情けなくなります。
都知事なんです。
東京都民のための知事なんです。
国政を変えたければ、国政に行ってください。
党利党略での戦いは、国政選挙で行ってください。
目立たなくていい。地味でいい。この街に住む1300万人が、日々安全に安心して生活できるよう、都政として行うべきことに、優先順位をつける見識と決断力があればそれでいい。
たったそれだけのことなのに、それだけのことを託せると思える人が出てこない。
悲しい現実です。
寺本名保美
(2016.07.08)
とりあえず8年前との比較
イギリスで起きている不動産ファンドの解約停止問題ですが、とりあえず今のところは、サブプライムショックの再来を危惧するよりは、金融市場がサブプライムショックから何を学んだのか、を確認することの方が先だと思っています。
2009年以降、金融業界においては極めて評判の悪い、金融規制の強化で、金融機関における融資残高もレバレッジも減少の一途を辿っています。
従って、不動産ファンドの毀損が、金融システムリスクに直結するリスクは、かなり限定されているはずです。
解約停止についても、当時の教訓から、ファンド運用会社の多くは、本当の危機的状況になるかなり手前で、解約制限をかけるように、ファンドルールを変更しています。
そういう意味では、解約停止という言葉の持つ意味が、当時と比べ幾分異なる可能性があります。
投資家サイドについては、年金などの投資プロセスが明確な投資家についての損失管理も当時よりは厳密になっているはずなので、イギリスという特定の国におけるファンドの毀損が、資産全体に与える影響は限定されると考えます。
問題は、リーマン後に投資規模を急激に拡大してきた、ソブリンウェルスファンドへの影響でしょうか。
損失の穴埋めに、昨年度のような、突然の売却風を吹かす可能性は否定できません。
あとは、他の流動性リスクのある資産クラスへの玉突きが起きていないかを、注視しつつ様子を見るしかなさそうです。
寺本名保美
(2016.07.07)
台風が過ぎ、様子をみると…
イギリスの不動産ファンドの悪化と原油価格の下落、イタリア金融機関の不良債権問題とが重なっての突然の下落となりました。
Brexitの直接的な影響が最も心配されたのが、既にバブル化していた英国の不動産市場。
原油価格については、ここまで悪い材料に全く反応しなかったことの反動。
イタリアの不良債権については、Brexitにより欧州の金融市場が混乱した時に最も心配されていたこと。
6月23日からの2週間、極度な悲観と反動の楽観の間で右往左往してきた金融市場が、ようやく落ち着いて状況を見極め始めたということでしょう。
冷静に冷静に。
寺本名保美
(2016.07.06)
4-6月の繰り返し
波瀾の6月のパフォーマンスが少しずつ手元に入ってきました。
市場環境だけをみるならば、株式が苦戦し債券が善戦した1か月のように見えますが、絶対収益やアルファを追及する戦略のパフォーマンスは一概にそうともいえなさそうな気配があります。
足元での株式市が、業種や銘柄の選好に極端な偏りがなく、乱高下の場面においても、比較的逃げ場が提供されやすい市場であったのに対し、債券市場については市場間の相関も強く且つアルファの源泉が金融セクターに偏っていることが、投資判断の幅を狭めることとなりました。
急激な為替変動は別として、株式や債券といった原資産パフォーマンスは乱高下の割には落ち着いた結果となりました。おそらくここから年内一杯、この4-6月の様な市場環境を繰り返すことになりそうです。
国内株式にもようやく割安感が囁かれ始めたことでもあり、株式のファンドマネージャーの力量に期待します。
寺本名保美
(2016.07.05)
よくわからない最終兵器
今年後半の金融市場のテーマを考えている中で、よくわからない「ヘリコプターマネー」という単語に行き着きます。
この1-2か月、国内外のメディアやレポートで、この不思議な単語を目にする機会が大変に増えました。
ただ、この単語の意味するところは、書き手によって本当にバラバラで、共通しているのは「従来型の金利引き下げと量的緩和」で効果がない場合の「奥の手」としての「超伝統的」な金融政策、のことのようです。
そもそも、今は当然のように認識されている「量的緩和」も、当初は非伝統的手法と言われていたわけなので、非でも超でもあまり変わらないようにも思えるのですが、要するにデフレ脱却の最終兵器という意味合いなのでしょう。
海外で言われているような、個人口座に現金を振り込む方式、というのは日本では度々行われいて、ほとんど効果はありません。そういえば個人向けではなりませんが「ふるさと創世1億円」とかいうものもありました。
日銀と国庫との間の無制限の財政ファイナンスという案もその一つのようですが、そこで調達された資金の回す方法が見えてこなければ何の意味もありません。
どちらにしても、よくわからない新兵器が登場するまでもなく、自然体で離陸できるのが一番なのですが。
寺本名保美
(2016.07.04)
理不尽な結果
波瀾の6月が終わり、市場収益率を眺め、唖然としました。
主要市場(エマージングも含め)で、下落幅の大きかった株式市場TOP5は以下の通り。
ギリシャ▲16% アイルランド▲13% イタリア▲10% 日本▲9.7% ポルトガル▲9.6%
ちなみに震源地英国のFT100は「プラスの」4.4%。
心配されていたエマージング諸国は殆どプラス。
ドイツ・フランスが5%程度のマイナス。
理不尽というのはこういう時に使う言葉です。
でも、そのおかげで、弊社の日本株の期待値が2年ぶりにプラス転換しました。
企業収益における為替の想定レートの修正を織り込みにいかなければならないので急反発は難しいかもしれませんが、ゆるゆると下値を切り上げていく展開に期待するとしましょう。
寺本名保美
(2016.07.01)