正しくても伝わらなければ意味がない
中央銀行の金融政策というものに「アナウンスメント効果」があると真実のであれば、金曜日の日本銀行の決定は極めて判り易いものであったといえます。
国債買い取りによる量的緩和を維持すると宣言したところで、買い取る国債そのものが枯渇するではないか。
担保を入れれば貸し出すといったところで、日銀に入れる担保が枯渇するではないか。
という現実的な問題に対し、テクニカルな解を出すことで、「量的緩和の継続性」を担保したこと。
日銀当座にばかり資金が滞留し実体経済に回っていないではないか、という批判に対し、設備と人材投資を行う企業にお金を回したい、という意思を「新設ETF」で明確に示したこと。
いずれも、日銀の金融政策のガイダンスとして捉えれば、メッセージ性のかなり強いものであったという評価がされてしかるべきです。
但し、日銀が不運であったとするならば、18日が8月の市場混乱で曰くつきとなった「レバレッジETF」の再設定開始日であり、案の定レバレッジETFの18日一日の売買金額が5000億円超と、8月25日に次ぐ規模になってしまったこと。
個人が闊歩する株式市場において、日銀さんが対話しなければいけないのは、金融機関や機関投資家だけではない難しさが露呈された一日だったのかもしれません。
寺本名保美
(2015.12.21)
資源開発の淘汰
ほぼ利上げが決定しているFOMCを前にして、ポジションを減らす人、一勝負賭ける人、静観する人、様々で市場が上がったの下がったの言ってもあまり意味はなさそうです。
それより問題なのは原油の方で、サウジの産出量が増えているとか、米国のシェールの掘削量は減っていないとか、それに加えて米国議会が原油の本格輸出に向けての法案整備を始めた等々、よい話は全くありません。
結局こうなると、原油産業も資本力が勝負を分けることになりそうで、2000年代になってから開発された新興国油田や、シェールバブル以降の米国開発田などが淘汰され、気が付いたら旧来のメジャーの世界に戻りそうな気配がしてきました。
その先にあるのは米国が本格的にエネルギーの輸出国となり、双子の赤字が双子の黒字になる世界。
世界経済は安定するかもしれませんが、政治的な不安定さは加速していきそうです。
それはそれで怖い話ではあるのですが。
寺本名保美
(2015.12.14)