2015年07月の思いつき


価格形成機能

上海株式指数の乱高下。

年初から半年かけて6割上がり、6月からの1か月で3割下がり、その後の10日で2割上がり、その後の2日で1割下がる。

弊社の物知りアナリスト氏曰く「価格形成機能を失った市場は単なるカジノ」だそうで、今の中国の株式市場が危機であるとするなら、それは値幅の問題ではなく、本質的な市場機能についての信頼を失いかけていることにあるのかもしれません。

前回の下落での政府の市場介入があまりにも露骨であったことに対する強烈な副作用が出てしまったと、誰しもが思っています。

だからこそ、昨日からの下落において、中国政府は前回ほどの立ち回りはできないと、常識的には思います。

今回の下落を一旦フリーフォールさせる位の荒療治が、今の中国市場には必要なのではないかとも思っています。

寺本名保美

(2015.07.28)



中国発 資源経由 新興国

7月に入ってからの中国株式の急落で最も被害を被ったのは、商品市況かもしれません。

昨年の暴落後、今年に入ってからの中国株の復活を梃子に、戻り基調にあった原油価格ですが、中国の景気後退懸念が顕在化する中において、先物価格が再び50ドルを割る水準まで下落しています。

原油価格については、急落後80ドルを目途にした堅調な市場に戻るとの意見と、35ドルを意識した長期トレンドに戻るとの意見とが拮抗していました。

今回再び下落トレンドに戻ってしまったことで、35ドル説が足元やや優勢になりつつあるというところでしょうか。

原油につられて資源価格全般が弱含む中、ロシアを含めた新興国全体のボラティリティが心配です。

寺本名保美

(2015.07.21)



GPIFの出口戦略

GPIFの3月末の状況がようやく公表されました。

サプライズはなく、目標に向かって淡々とリスク資産を積みましている印象です。

それでも今年の1-3月を振り返ると、随分需給に影響を与えていた印象があります。

リスク資産の積み増しもほぼ一段落と思われるので、しばらくはもう市場の注目を集めることもならそうです。

問題は、何年か先の出口。
事前に言っていた、リスクが高まる局面ではリスク資産を落とすこともある、という言葉を実現させるとすれば、市場へのインパクトは甚大なものになります。

行きはヨイヨイ帰りはこわい…というところです。

寺本名保美

(2015.07.13)



配慮

今週の市場の乱高下が、米国の利上げタイミングに影響を与えるとの議論が出てきています。

6月中旬に行われたFOMCにおいて、すでにギリシャや中国の問題は議論されていたようですが、足元で起きていることがその議論の想定内の話だったのか想定外だったのかは定かではありません。

今日のところは欧州も中国株式市場も落ち着いていますが、市場全体の体力が大きく毀損したことは間違いなさそうです。

米国は1995年からの利上げ局面において、メキシコから始まった新興国危機にはほとんど配慮しなかったという「前科」があります。

米国が新たな金融危機の引き金になることは避けたいのでしょうが、市場が期待する配慮をイエレン議長がどの程度応えるのか、難しい舵取りになりそうです。

寺本名保美

(2015.07.10)



悪いことは重なるもので

昨日の欧州市場が一旦落ち着きを取り戻し一安心と思っていたところで起きた、米国NYSEのシステム障害。
その直前に起きたエアラインのシステム障害と合わせて、市場心理を急激に冷やしました。
勘ぐろうと思えばいくらでも勘ぐれますが、それはそれとして…

一方の日本ですが、東芝が銀行にコミットメントラインを申請したとの報道が冷や水となっています。緊急流動性支援「枠」ですから、今すぐに東芝の資金繰りに問題が発生しているわけではないのでしょうが、嫌なニュースではあります。

中国株とパッケージで取引されることの多い商品市場が急落したことで、ロシア経済の命綱である原油価格の先行きに再び暗雲が立ち込め始めました。折しも中露首脳会談の最中の出来事に、両首脳は何を思ったのか?

いずれにしても、問題の中国。大株主は持ち株の1年間の売却禁止、とか、ファンドマネージャーに自分の運用するファンドの買い付けを強制するとか、わけのわからない政策が次々と出てくる中国。値段の問題ではなく、大丈夫か?と心配にはなります。

少し時間はかかるかもしれませんが、今のところ静観です。

寺本名保美

(2015.07.09)



財政支援から人道支援へ

ギリシャの国民投票の結果を受けて、ユーロ急落、とか、株式急落、とかの単語が、表示されていますが、実際の東京市場はかなり落ち着いた展開となっています。

海外メディアを見ても、ギリシャのことよりも、中国の異例な株式買い支え政策の方の興味が高いようにも見えます。

チプラスさんの、これで欧州との交渉ができる、という発言が本心であるのかどうかよく理解できないのですが、欧州やIMFはとりあえずギリシャに対する「人道支援」の準備を始めると言っています。

「金融支援」や「財政支援」が「人道支援」という単語に置き換わっていることに、物事の本質が浮かび上がっているようにも思えます。

ギリシャ問題が経済問題から地政学的問題に変質しないかどうかが、今後の大きな注目点になるのかもしれないと思っています。

寺本名保美

(2015.07.06)


build by phk-imgdiary Ver.1.22