南欧ではなく南米
ギリシャの「お金返せません!」宣言に、南欧諸国が呼応することを恐れていたら、木霊が南米から返ってきたようです。
米国自治連邦区プエルトリコが、720億ドル(約9兆円)の債務の弁済が不可能であると宣言したと報じられています。
一年前にニューヨーク連銀総裁がプエルトリコの債務については維持不可能であると警告しており、米国のギリシャと呼ばれていたとの記述もあります。
プエルトリコの知事は「債務を支払うことはできない」と言っているらしいのですが、ギリシャ問題でもよく耳にするこの「ない袖は振れない」発言が、正当化されつつあるようで気になります。
ユーロ圏からの離脱が取りざたされているギリシャ。
米国からの独立運動がくすぶるプエルトリコ。
収入は観光資源のみ、というのも共通です。
観光立国であり続けるためには治安の維持が一番です。各国国民は妙な方向に暴走しないことを願います。
寺本名保美
(2015.06.30)
売り買いともにお休み
ギリシャ交渉の決裂後の東京市場は、とりあえず最低限のインパクトで収まっているように見えます。
リーマンショックの時もそうですが、週末にイベントが発生し一番始めに開く主要市場として、東京市場は大変大きな役割を果たしています。
特に現在、黒田総裁が仁王立ちしている東京市場には、妙な安心感というか期待感があるのは確かです。
逆に言えば為替にしても株価にしても、東京市場では売りにくい。
今日の東京市場の日中の落ち着きが、今回のギリシャショックの反応を全て表していると思うのは楽観的すぎるものの、元気な米国とバズーカをちらつかせる日本が居る限り、そう深押しもできないようにも思えます。
いずれにしても、今は売り買いともお休みです。
寺本名保美
(2015.06.29)
だるまさんが転んだ
昨日の黒田総裁と為替市場の関係をみていて、
「だるまさんが転んだ」
という声が、思い浮かびました。
鬼にストップ!と言われ、ピタッと止まる、大変に物分りのよい子供達です。
通常、為替市場においては、当局者が一定のラインを示すことは、むしろその水準を突破させるエネルギーの蓄積要因となるため、当局者は具体的なラインを示すような発言は控えるべきだとされているのですが、どうも今の為替市場と当局との関係にはそういった緊張感が感じられません。
実際、この1-2年の為替市場の動向は、政府中銀の一挙一動を伺っているだけで、経済や財政環境等のファンダメンタルズを元に市場が自らあるべき水準を定めに行くような構造にはなっていません。
親の干渉が強すぎると、ひ弱な子供しか育ちません。
寺本名保美
(2015.06.11)
好きでなければ
昨日の続きで思ったこと。
この仕事をする前、証券会社で長いこと法人営業をしていました。
その時から今に至るまで、自分の取り扱っている商品やサービスが私はずっと好きでした。
言い方を換えるなら、私の仕事は常にその商品やサービスを好きになるところから始まり、好きでいることができなくなったら、すっぱり辞める、ということを繰り返してきました。
今の日本の資産運用業界の人達、本当にこの仕事が好きなのでしょうか?
もちろん三度の飯より好きというファンドマネージャーやアナリストは別として、運用機関の経営や企画や営業方針をたてている偉い人達の中で資産運用業が好きです、と言える人がどれほどいるのでしょう?
私の人生において、証券会社で働いてきた年月よりも、この仕事での年月の方が、いつの間にかはるかに長くなっています。
やっぱりこの仕事が好きなのでしょう。
寺本名保美
追伸
黒田総裁もご自分のお仕事お好きなようで…
国会答弁、朝の10時過ぎから始まって午後になってもまだ続いています。止まらない黒田総裁発言に為替市場は大荒れです。
(2015.06.10)
停滞感
各種イベントはあったものの、基本的には2009年以降の一貫した金融相場において、持っていれば何でも儲かってきたこの5年。
しかたがないことではありますが、資産運用業界に停滞感が漂います。
ヘッジファンドが衰退気味であるといわれるのも、本当のことを言えば、市場が右肩上がりであるなかにおいて、コストや手間を掛けて売り買いを組み合わせる必然性が、投資家サイドに乏しいからこそ言えること。
問題はここから先、再び右肩上がりではない環境となり、且つ各国の短期金利が投資家の満足がいく水準にまで到達しない状況が継続した場合、今のようなβだけに掛けるような投資スタイルでは成り立たなくなる局面が必ず来ます。
今の環境でコツコツとアルファの源泉を掘り続けていかなければ、本当にアルファが必要な時に掘り手が居ない、ということになります。
この停滞感が焦燥感に変わるのはいつでしょう?
寺本名保美
(2015.06.09)
債券なのに▲10%?!
30年国債金利が一日で0.2%も上がるということは、債券価格で100円に付5円近く売られるということです。
ドイツの30年国債利回りは、6月入ってからの3日間で0.4%上昇していますから、価格でいえばほぼ10円の下落です。
ドイツが一番極端に出ているものの、米国でも英国でも5年超の金利は月初から軒並み0.2%近く上昇しています。
前回のドイツ金利の急騰時とはことなり、今回は欧米の株式市場においては比較的冷静に債券市場の混乱を受け止めているようですが、新興国の株式市場はやはり動揺しているように見えます。
REITのような金利感応度の高い資産、高配当株のような金利感応度の高い戦略にとっても岐路となる可能性もあります。
特定の市場で大きな損失は、関係のなさそうな他の市場での資金フローにも影響を与えます。
主要株式市場の堅調さだけを見ていると、何かを見誤るかもしれません。
寺本名保美
(2015.06.04)
誰の責任って。
年金記録…
厚生年金基金廃止という唐突な政府の決定を受け、厚生年金基金にある膨大な記録と、年金機構が保有する膨大な記録とを、ただ今突貫工事で集約中。
マイナンバーができたらば、基礎年金番号はマイナンバーに集約?
で、今回流出した基礎年金番号は新しい番号に振り返る?
言うのは簡単ですが、実際の現場がどうなっているのか、全体像を把握している人はいるのだろうか。
年金のような巨大な個人情報を、あっちにやったりこっちにやったり、繋げたり、ばらしたり。
これだけ色々な人間や組織がいじくりまわしていれば、事故が起きないわけがない。
担当部署の責任ではないですよ。
政府の責任です。
寺本名保美
(2015.06.02)
天をみて憂う
足元のリスクシナリオを考えていると「日本の天災」というのが一番初めに挙がってきてしまうのに困惑します。
それだけ外部の経済環境が安定しているということの裏返しでもあるのですが、やや背伸びをしている今の日本の金融市場にとってダメージはやや大きく出る可能性があります。
個々は別として、集団としての個人というものの投資志向が時として驚くほどの先行性を持つことに考えを巡らすなら、株式や債券といった金融資産が、バブル崩壊後の高値を更新しつつある中において、不気味なほど静かな不動産市況というものが、日本の潜在的なリスク基盤の何がしかを表しているのかもしれないとも思います。
天が落ちてくることを心配するなど、文字通りの「杞憂」ではありますが、運用において詰めを伸ばしすぎない、ことへの戒めとしては、頭の片隅に置いておいた方がよいかもしれません。
寺本名保美
(2015.06.01)