2015年01月の思いつき


インフレと景気

2004-6年ごろに穀物を始めとする商品市況が上がり続けた時、インフレとは何なのかと考えました。

そして今、原油を初めとする商品市況が下げ続けているなかにおいて、改めてインフレとは何なのかと考えています。

従来型の金融経済の理屈では、インフレとは経済に従属するものであったはずです。

単に景気の結果として物価が動くという意味だけではなく、2004年当時のように、景気刺激策としての過剰流動性の副作用としての資産インフレという意味も含めての、結果です。

それがこのところ、どうも主従が逆転してしまっている気がして違和感を覚えます。

市場も、政治も、金融政策も、景気とインフレを一旦切り離して、世の中見直してみる必要があるように思うのですが。

寺本名保美

(2015.01.30)



感謝とご挨拶

本日より株式会社トータルアセットデザインに社名を変更いたしました。

エー・エム・シーとしての約17年間と同様に、トータルアセットデザインとして、また細く長く社歴を刻んでいきたいと思っています。

年金基金様が構築してきた、委託運用のプロセスは、日本において唯一確立された運用体系です。

他のどのような団体よりも、真面目に、真っ当に運用に取り組んできた、年金基金様達と試行錯誤をさせていただいてきたこの16年を私は誇りに思っています。

これからも、年金基金様と共に歩んでいくことはもちろんのこと、資産運用というものに真剣に取り組まれる全ての業態の皆様と、ともに成長していきたいと思っております。

株式会社トータルアセットデザインをどうぞよろしくお願いいたします。

寺本名保美

(2015.01.29)



また利下げ

シンガポールが利下げを行いました。

今後のインフレ動向に大きな変化が生じたからという説明ではありますが、ユーロや円に対抗しての通貨安競争への防衛のようにも見えます。

今の通貨市場をユーロ安だの円安だのと言ってもあまり意味のないことで、単純に「ドル高」だと割り切ってしまえば、各国が利下げ競争をしたところで効果は限定的でしょう。

最近、中央銀行の金融政策が、市場の予想と折り合わないケースが増えています。

市場には見えていないリスクが中央銀行には見えているのか、インフレやデフレという概念に対する判断に、中央銀行と市場との間で乖離が生まれているのかよく判りません。

何か不可思議で気持ちの悪い市場環境が続いています。

寺本名保美

(2015.01.28)



強いのか鈍いのか?

ロシアの格下げとルーブルの下落、ギリシャの選挙とギリシャ株の下落。

さて、今日は、米国東海岸に、史上空前の暴風雪警報。

昨年の前半、一昨年末からの大雪の影響による米国経済指標の悪化で、市場が混乱したのを思い出します。

怖そうな材料が並んでいるわりにはあまり反応しない株式市場。

どこかで反動がでなければよいのですが…

寺本名保美

(2015.01.27)



軸のない通貨

ギリシャが今後ユーロの中でどういった位置付けになるのかは、全く読めなくなりました。

ただ、本当に読めないのは、ギリシャの扱いではなく、ユーロという通貨の居場所なのではないかと思っています。

ユーロ圏での経済環境が一律ではないなかにおいて、ドルと円のような単純な交易条件を物差しにすることができません。

ユーロ高の局面ではドイツの経済力にフォーカスがあたり、ユーロ安の局面では、南欧のリスクにフォーカスがあたり、軸が定まらないまま右往左往している印象があります。

どこかに軸を定めたい市場参加者の中で、ユーロとドルのパリティ議論が再び再燃することになりそうな気もしています。

寺本名保美

(2015.01.26)



質より量

昨日のECBで決定された量的緩和。

量は特大、質は不明。

第一弾としての評価は上の下。

但し、やはりドイツの中銀は反対票を投じたとのことで、今後の2弾3弾についての道のりは険しそうです。

目的はとにかく「ユーロ安」というフレーズは、どこかの国でも聞きました。

米国の金利が上がるにしても、過去のQEでの資金が回収されるには長い時間が掛かります。

$・円・ユーロと足並みの揃ったお札の大量発行と、ある種の通貨安競争。それでも上がらないインフレ期待。

さて大暴騰と大暴落。どちらが先にくるのでしょう…

寺本名保美

(2015.01.23)



どこまで踏む込めるか

今日ECBが量的緩和を決定すると、市場では予想されています。

現在行われているダボス会議では、ECBの決断に期待はするものの、量的緩和が万能ではない、との意見が多くだされているようです。

米国の2008年からの量的緩和には2つの意味がありました。
一つは流動性の供給。もう一つは不良債権の買い取りです。

世界の先進国金利がほぼゼロとなり、日本を始めとして流動性の供給は進行中であるなかにおいて、今の欧州に求められているのは流動性の供給ではなく、不良債権の買い取りと銀行システムの健全化です。

今回のECBの決定が単純に国債の買取だけで終わってしまい、且つその対象から低格付国国債が除外されることになれば、量的緩和は唯でさえジャブついているグローバルなリスクマネーを拡大するだけに過ぎません。

ドラギさんの命運を掛けた決定、とまで言われている今回のECB会合。ドラギさんの命運だけではなく、当面の投資家心理にも大きな影響を与えることになるかもしれません。

寺本名保美

(2015.01.22)



ポートフォリオの効率性

厚生年金基金がGPIFの収益率にトラックしなければいけなくなった時、資産配分上の一番の悩みは、当時のGPIFの資産配分が非常に効率的で文句のつけようがないポートフォリオだったことにありました。

どうシミュレーションをしても、当時のGPIFの配分以上に効率の良いポートフォリオ構成は見当たらず、GPIF配分を基準としてリスクを加減するしか対応のしようがなかったのです。

さてその後色々あり…、GPIF配分は標準偏差で10%を超えるものに様変わりとなりました。
トラックさせられている厚生年金基金にも色々あり…、GPIFへのトラックも短期決戦となりました。

が、もし今でも従来通りGPIFに3-5年周期で勝てるポートフォリオ運営をするという命題があったとするなら、この効率の悪い、リスク過剰なポートフォリオに勝つことは、以前と比べれば格段に容易くなっていたに違いない、と考えています。

この効率の悪いポートフォリオを後追いするような資産の動かし方だけは避けたいと心から思います。

寺本名保美

(2015.01.21)



炭鉱のカナリア

上海市場の落ち着きから、株価と為替はやや値を戻しています。

一方で、なぜか長期金利は10年国債で0.2%を割る水準まで低下しています。

現在の金融市場において先進国の長期債利回りは、ある種の「炭鉱のカナリア」で、金融システムの守護神である各国の中央銀行と市場参加者の「恐怖指数」の裏返しだとみておいた方がよさそうに思います。

とりあえず堅調に見える株式市場と、とりあえず恐怖に囚われる金利市場。
その中間のどこかに正解があるのでしょうが。

寺本名保美

(2015.01.20)



ヒビ(罅)に注意

1月25日のギリシア総選挙と、先週のスイスフランショックが重なり、金融市場全体がやや不安定になっているようです。

ギリシャ中銀は、ギリシャの大手銀行に対する緊急流動性支援をECBに申請したとロイターが報じ、イタリア経済相はECBに無為制限の債券買い入れによる流動性供給を決定すべきだと発言しています。

一方で中国では大手証券会社における信用取引を一部停止したと報道されたことで、上海株式市場が急落しています。

何がどこで繋がっているのかよく判らない話ばかりではありますが、ギリシャとユーロ問題で市場心理が悪化してい中における、為替市場での衝撃波が、金融システムという器に幾つかのヒビを入れてしまっているように思います。

問題は目に見えないヒビがどこかに生じていないかなのですが、これは割れてみないと判りません。

しばらくは、脆弱な市場の値動きに目を配る必要がありそうです。

寺本名保美

(2015.01.19)



たかがスイスフラン、されどスイスフラン

スイスフランショックで、市場が動揺しています。

動揺している理由の1つは、一瞬で30%という極めて異常な価格変動により、ヘッジファンドなどで大きな損失がでたと噂されていること。

もう1つは、このタイミングにおけるスイスの決断の裏に、1月25日のギリシャ問題が潜んでいるのではないかと勘繰られていること。

なによりも、リーマンショック以降築かれていると信じられてきた「中央銀行」と「市場の対話」という蜜月の構図が、幻想であったと認識してしまったこと。

たかがスイスフランの話と思われるかも知れませんが、今回の余震はしばらく長引くかもしれません。

寺本名保美

(2015.01.16)



少し不安

景況感の悪化やギリシャを巡る不安を抱える欧州にとって、「テロの脅威」という言葉がが欧州の団結を確認するのに便利に使われることがないよう願います。

フランスが軍事費の削減を取り止めたと報道されています。

何か、捻れた方向に物事が進み始めた気がして不安です。

それでも上がる日本株…

寺本名保美

(2015.01.15)



心配ごと

フランスでの史上最大のデモ行進。

上手く表現できないのですが、どこか違和感があります。

ある意味、近・現代において、一貫してテロと戦い続けてきたフランスです。

今までのテロに対する反応と、今回の過激な反応の違いはどこにあるのか?

「言論」というキーワードだけで、その違いを説明できるのか?

ここまで大きく振り上げてしまった拳は、このあとどこに向かうのでしょう…

寺本名保美

(2015.01.14)



バブルのお話

ということで、債券市場を眺めていたら、とうとう5年国債利回りが0%となりました。

株価が下がって買われ、上がっても売られず、下がって買われ、を繰り返していたら、いつの間にか0%になっていました、という感じです。

国債の需給にはあまり左右されないスワップ金利はまだ0.2%台ですので、5年の金利が無くなってしまったわけではないのですが、異常事態であることは間違いありません。

ベンチャーキャピタル関係の方々との会話では、このところのベンチャーに対する投資需要は2005年を通り越して1999年を彷彿させる、という人もいます。

1年前のセミナーで、気が早いかと思いつつ、「バブルのお話」ご参考 をさせていただきました。
1年経ち、株価そのものは比較的冷静な価格形成をしているようにも見えますが、異次元緩和が招くバブルは周辺市場から既に始まっているのかもしれません。

寺本名保美

(2015.01.13)



債券市場から見える景色

日本0.26% 米国2.01% 英国1.64% ドイツ0.51% 豪州2.7% ブラジル12.3%

こうして各国の10年国債利回りを並べてみると、今の金利環境の異常さとある種の正確さが良くわかります。

先進国内においては、景気環境ではなく、量的緩和の方向性によるグルーピングが行われ、高金利資源国であっても豪州とブラジルには明確な格差があります。

米国と豪州の長期金利格差がない事にもやや驚きがあり、米国と欧州との中間に英国がある、というのも絶妙な位置関係といえそうです。

眺めていて不安になるのは、やはりブラジルでしょうか。
BRICSの名付け親が「ロシアとブラジルはBRICSから脱落か」と言っている記事を見かけましたが、無理やりグルーピングして今更脱落と言われても…と個人的には思います。

この債券市場の景色の先には何があるのか、少し注意深く見ていきたいと思っています。

寺本名保美

(2015.01.09)



国内回帰の意義

アップルが日本に開発生産拠点を置くことを発表し、足下では日本の電機メーカーも工場の国内回帰を打ち出してきています。

日本に工場を作ることの目的がどこにあるのか、単に円安になったからというような一時的なものでないことを期待しています。

単純なコストの問題だけであれば、いずれはまた工場は海外に流出してしまいます。
コスト以外の部分において、日本に生産拠点を置くことのメリットを先行組がどう国内外に示していかれるかは、これからの日本の産業構造を占うには、大きな意義を持つものになるでしょう。

お願いですから、政府から言われたから、という類いの結論ではないことを、切に祈ります。

寺本名保美

(2015.01.08)



エネルギー狂想曲


今の原油価格の下落のスピードが急激すぎることは確かですが、マスコミ等で書かれている「歴史的安値」とか「5年ぶりの底値」というような表現は、あきらかなミスリードです。

このグラフを眺めていると、2004年に40ドルを超えた後の5-6年がむしろ異常だっただけで、かつてOPECが心地よいとしていた20-30ドルのレンジに戻りつつあるとみた方が自然なのかもしれないと思えてきます。

2004年頃から世界の人口爆発が唱えられるようになり、地球規模での燃料不足が話題になるようになりました。
エタノール用のトウモロコシが注目された始めたのもこの頃です。

トウモロコシから太陽光、そしてシェール開発へと繋がってきたエネルギー狂想曲が、一旦終章を迎えつつあるのかもしれません。

寺本名保美

(2015.01.07)



またギリシャ

この年末年始でセンチメントに大きな変化があったとするならば、要因の一つはギリシャだといえそうです。

12月末の期限までに大統領の指名ができなかったため、1月25日に総選挙をすることになったギリシャに対し、ドイツやフランスの首脳がユーロ圏離脱を認めるような発言を始めています。

前回のギリシャ危機からの2年間で、EUにおいて参加国離脱についてのスキーム作りが進んだのか、それとも単に反ユーロ勢力を牽制しようとしているだけなのかはまだわかりません。

いずれにしても、1月末にむけて、またギリシャに振り回される展開になりそうです。

「 ぼくらは生まれ変わった木の葉のように 無力なギリシャへ出かけよう (アレン・ギンズバーグ) 」

この詩歌の作られた1960年代と情勢は異なりますが、何とはなく身につまされます。

寺本名保美

(2015.01.06)



ルーレット!

新年あけましておめでとうございます。

今年の初夢は「ルーレット」でした(笑)

運を天に任せるということなのか、
頭の回転をよくしなさいということか、
目が回るほど忙しいのか、

"景気の起爆剤はやっぱり「カジノ」でしょう!"ということなのか。

今年の市場、どこかで大当たりしそうな予感はするのですが、当たるまでの期間におけるリスクコントロールが重要な一年になりそうです。

小さく堅くかけながら、元手を減らさず、時期を待つ。
そんなイメージの年明けです。

本年もよろしくご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

寺本名保美

(2015.01.05)


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