2014年09月の思いつき


リスク感覚の相違

大手商事会社のシェール開発事業の失敗。

単独事業で1700億円の損失。
他の資源関連でも一事業あたり数百億円の損失計上。

商社における事業リスクの規模というものが、いつもながら良く理解できません。

平均規模の金融機関であれば、信用リスクが発生してもおかしくない規模の損失です。

一般論として、商社や商社の方が絡んだ投資案件やファンドの話をきいていると、どうもリスク感覚に違和感を感じることが多いのですが、やはり潜在的なリスク量の感覚が、どこかかけ離れているのかもしれない、とも思います。

それでも、屋台骨がびくりともしないのは、それだけリスクバッファーが積まれているということですから、見事ではあるのですが…

寺本名保美

(2014.09.30)



振られてわかる脆弱性

市場に何か需給イベントが発生した際、それが市場価格にどれほどのインパクトを与えるかどうかは、需給の金額そのものよりも、その市場の過熱感や水準に左右される部分が大きいような気がしています。

日本や米国の国債市場において、1兆円程度の需給は平時であれば充分に吸収可能な金額です。

そのタイミングにおいて、市場参観者の多くが、水準に警戒感を持っていたり、売り時を探しているような状況においては、想定外の価格変動をもたらす可能性があります。

さて、先週末に起きた、米国債券市場での振動。

債券市場が割高であったかどうかを判断するという意味においても、大きなニュースであるといえそうです。

寺本名保美

(2014.09.29)



小さな身体に大きな期待

昨晩の米国株式市場の急落の原因の一つは「iPhone」ショックとみられます。
新製品の発表以来、予約が殺到していた商品に壊れやすいというユーザー評価がでたり、新osに一部欠陥がでたりと、少しドタバタしているようです。
ITバブル以降ついこの間までは、「インテルショック」が周期的に市場にインパクトを与えていましたが、この数年は「Apple」に一喜一憂する状況が続いています。
部品メーカーや、ソフト開発だけでなく、小売店での決済機能など生活インフラにも影響を与えるほどのインパクトが、Appleの新製品にはあると言われています。1ヶ月単位での発売の遅れであっても、経済に与える影響は小さくはないのでしょう。
片手にのってしまう小さな端末には、先進技術だけでなく、世界経済の期待も凝縮されているということでしょう。

寺本名保美

(2014.09.26)



残り3か月の折り返し

ここのところの為替市場。

円安というよりは、ドル高です。

経済指標が米国の一人勝ちであること。
金利の方向性格差を捉えた取引が起きやすいこと。
今更ながら、有事のドル高を意識していること。
計算期間にもよりますが、貿易額を前提に計算した実効為替レートでは、まだまだドルが割安だとみることができること。

などなど、ドルを買いたい理由を探そうと思えば幾らでも並べられます。

株式市場は高原状態にあり、商品市場はさっぱり動かないなか、夏休み明けの一儲けを狙う人々にとっては、ドルを追っかける他見当たらない、ということもありそうです。

ヘッジファンド等にとっては、2014年という一年は、ここまでのところあまり冴えない年となっています。ここからの1か月、年内最後の勝負を仕掛けにくるタイミングではあります。

寺本名保美

(2014.09.25)



フランスには期待しない

フランス景気指標が芳しくないことが欧州株式の頭を押さえていると指摘されています。

数か月前、ロンドンを訪問した際、あるストラテジストの方が、「全く成長意欲のないフランス」という表現をしていました。

フランスという国に成長意欲がないのは今に始まったことではなく、外部から見ていると、何十年にも渡り「不景気」である状態を維持し続けていることにむしろ驚くほどです。

私の学生時代の専門は実はフランス政治だったのですが、当時の指導教授から言われた「フランスは完全自立国家だから成長がない」という言葉が思い返されます。

国土が広く平坦で、土地が豊かで、気候にも恵まれ、文化的にも独立している、という環境が醸成した国民性は、一朝一夕には変わるものではありません。

こんなフランスを材料に売り買いするのは、とてもむなしい作業であるように思うのですが。

寺本名保美

(2014.09.24)



風向きが変わった?

今回のG20。

全体として何を決議したか、というよりも、各国それぞれに対し何を期待しているかが明確化になった会議でした。

その中で日本に対する期待の方向性ですが、従来の「成長戦略と財政再建の両立」というスタンスから、「成長戦略への期待」にやや舵が切られたような印象を受けます。

欧州の中で唯一期待されていたドイツが息切れを始め、フランスには危機感がなく、スペインとイタリアという時限爆弾の針は動いたまま。

中国経済のスローダウンは決定的で、如何にソフトランディングできるかどうかの勝負となり、インドが持ち直してきているとはいってもグローバルに見れば足を引っ張らなくなった程度の貢献しかない。

こうした環境において、米国一国だけがエンジンである状態は不安定であることは間違いなく、日本に対する期待が自ずと高まらざるを得ない環境にあることが確認されたということでしょう。

財政再建より成長戦略というお墨付きをもらったことで、来年4月からの消費税の引き上げについても、小休止する余地が出てきたようにも思えます。

但し、その場合は、各国が納得できるような明確な成長路線を再度示すことが条件となりそうですが。

寺本名保美

(2014.09.22)



黒マジックと色鉛筆

スコットランドの独立騒動は、恐らく今回は否決されそうです。

ただ一度、蓋を開けて壺の中身を覗いてしまった以上、何事も無かったというわけにはいきません。

世界のあちらこちらで、思い思いの色鉛筆と、黒マジックを手に、国境線を引き直す作業が始まることなど、あまり想像したくありません。

金融というのはルールの産物です。
ルールを共有するためのプラットホームの基礎の基礎となる、国家や政府という岩盤が緩むことは、金融市場の不安定化につながります。

なんだか、厄介な世界の序章が始まったような気がしています。

寺本名保美

(2014.09.19)



買いたくてしかたがないので…

昨晩からの為替市場を見ていて、市場参加者の方向性として「ドルを買いたい」という気持ちが非常に強かったことが確認されたように思います。

FOMC声明も、イエレン議長の会見も、ほぼ織り込まれた内容以上でも以下でもなく、強気派・弱気派がそれぞれ文脈の中で都合の良い言葉尻を捉えてコメントしているだけに見えます。

それでも、これほど為替が反応したのは、「中立な材料であれば$買」というセンチメントが醸成されていたからで、シカゴの先物市場での建玉が、アベノミクス以降ほぼ一貫してドル買ポジションに偏在していることからも参観者の思惑が窺えます。

米国政府関係者からは「強いドル」を好感するコメントも出ており、為替の方向性については、当面今の傾向が続くのかもしれません。

とはいえ、それだけを材料に日本株を買い上げるのも、そろそろ限界です。前回弊社の理論値から10%乖離したところで大きく跳ね返された記憶がよみがえります。

不意の悪材料には要注意です。

寺本名保美

(2014.09.18)



内憂外患

ドイツの景気期待指数。現況指数が前月の44.3から25.4に急落しました。これを受けドイツの10年国債利回りは1%を割り込んでいます。

ロシアとの間の経済制裁の影響が、想定以上にドイツ経済にダメージを与えていそうです。

一方の英国では、スコットランド独立の住民投票が明後日に控え、事前の世論調査の結果に一喜一憂する状況となっています。

スペインのカタルーニャ地方の独立問題も、スコットランドに刺激され再び燻り始めたと言われています。

欧州の金融危機から2年。
外患があるから内憂なのか、内憂が外患を招くのか。
景気が悪いから政治が荒れるのか、政治が荒れるから景気が悪いのか。

欧州周辺域全体の荒れ模様は明ける気配がありません。

寺本名保美

(2014.09.17)



資産規模と戦略

カルパースがヘッジファンド運用から撤退するとの報道が出ています(日経新聞)。

4300億円を引き上げるとありますが、総資産32兆円の1.3%程度の話です。

逆に言えば、総資産の1%程度を、ヘッジファンド運用に配分したところで、全体の収益に与える影響は誤差の範囲にすぎず、その程度の収益を獲得するために、高額な人材と特別なリスク管理体制を持つには費用対効果がないと判断されるのは、ある意味当然かもしれません。

逆に言えば、カルパースの規模だから、ヘッジファンド投資は有為ではなかった、ということで、全ての年金運用にとって意味がない、ということではありません。

また、数十兆円以上の規模での運用体だからこそ、意味がある運用手法と、数百・数千億円程度の規模で意味がある運用とも異なります。

カルパースの運用はカルパースにとって、GPIFの運用はGPIFにとって、最善の戦略を模索しているのであって、それが決して世の中のスタンダードにはなりえない、ということを認識しておく必要がありそうです。

寺本名保美

(2014.09.16)



ものを書くということ

私が文章を書いていて、気を付けていることは、

「事実-伝聞」と「解釈」と「意見」との境目を明確にすること、です。

そして「解釈」や「意見」を書くことは、ある意味とても楽な作業である一方で、伝聞を含めた事実を記述することには、その何倍も神経を使います。

出来る限りにおいて正しく事実を伝えるためには、書かれた言葉、話された言葉に対し、極力先入観を持たず、素直に見聞きするという作業が絶対に必要だと感じています。

報道機関というものに課せられた役割の大方が、「事実を伝える」という行為であるならば、記事を書くという作業は傍で感じるよりもはるかに厳しい仕事でしょうし、その努力をしてきたからこそ人々に信頼されてきたのでしょう。

ものを書くということの責任の重さを、改めて実感する今日このごろです。

寺本名保美

(2014.09.12)



想定の範囲内

急激な円安への懸念、という言葉が目につきます。

どの程度急激かというと、6月末の101円31銭を基準にして、弊社が試算した3か月間での変動幅の上限が107円後半。通常の値動きであれば104円半ば位で収まるはずだったと計算できるので、確かにやや「急激」だったかも、しれません。

ただ、それは3か月間という短期間での値動きとしては加速度があった、というだけの話で、水準感からみれば大した水準に来ているわけではありません。

2007年の夏にサブプライムショックが起きる前、円キャリー取引全盛の時で120円台。リーマンショック直前が110円を切る程度、ということなので、今の水準は金融危機発生前に戻りつつある、ということになります。

もし欧州がもっと健全で、マイナス金利でなければ、それこそ急激な円安にいってしまったかもしれませんが、ドルとユーロで引き合ってくれている分だけ、穏やかな展開になっています。

ある程度、想定された円安の展開。右往左往している場合ではありません。

寺本名保美

(2014.09.11)



サッカーではなくで、デフォルトの話

テニスが終わって、昨日はサッカー。スポーツの秋。

で、サッカーの対戦先だったベネズエラ。

生活物資のインフレが高騰し、外貨準備が不足し、貿易決済用のドルが不足し、今週になってデフォルト懸念が取りざたされ始めています。

幾つかレポートを斜めに読んでみたのですが、何が起きているのかさっぱりわかりません。

産油国であり、お金に不自由はしない、はず、なのですが、何故にデフォルトなのか?
国内での決済通貨が複数あるとか、良くわからない話ばかりです。

新興国投資においてリスクを判別するのは本当に難しいと、つくづく思っています。

寺本名保美

(2014.09.10)



テニス祭、楽しかった♪

突然のテニス祭。メディアも株式市場も?盛り上りました。

テニス人口が減少傾向にあったそうですが、私の周りでは数年位前から、ラケットを持つ人が増えています。

街で時折見掛けるテニスコートでも、若者より、圧倒的にミドル-シニア層が目立ちます。

テニスって、いつからバブル世代の遺物になってしまったのかと、思っていました。

錦織くんの活躍で、その気になるのが、昔を懐かしむ年代だけでなく、裾野が広がるきっかけになればよいのですが。

寺本名保美

(2014.09.09)



国 ・くに・クニ

スコットランドの独立の是非を巡る世論調査で、独立支持派が初めて過半数を超えたことで、ポンドが急落しました。

ロイターは、英国政府がスコットランドの自治権を拡大する方針で検討をしている、との報道をしています。

スコットランド問題に限らず、ここのところの国際情勢を見ていて思うのは、ひどく大仰な言い方をするなら、この100余年、近代化と経済成長という大義において封じ込められてきた「Nation」と「State」や「Land」と「Country」という単語の違いが、ここに来て疼き始めたような感覚でしょうか。

大人の英国と大人のスコットランド、だけの話であれば、何の問題もなさそうですが、血気盛んな国々に伝播しなければよいのですが。

寺本名保美


(2014.09.08)



よい言い訳?

かつての日本より余程状況は悪い、と米英から言われつつ、自分達は決して日本にはならない、といい続けている欧州中銀。

今回、ゼロ金利と共に、ABSの買い取りを決定したことは、量的緩和の規模よりも、今後の不良債権の直接買い取りへの道筋を付けたと言う意味において、大きかったのではないかと思います。

ウクライナ問題による景気後退懸念は嘘ではないでしょうが、どちらかといえば、ウクライナ問題を上手く利用して、中銀による資産買い取りをドイツに納得させた、ようにもみえます。

欧州経済の将来、まだまだ混沌としています。

寺本名保美

(2014.09.05)



デフレ脱却と創意工夫

牛丼屋さんが、空席が目立つ店舗の2階で、ちょい飲み居酒屋を始めたら大好評、との記事を見つけました。

価格崩壊の最先端業界のTOPが仕掛けた新事業、というところに、面白さを感じます。

ファーストフード業界が、価格切下げ以外での生き残りをようやく本気で探り始めたのは、大きなトレンドとしての「デフレの収束」を経営が認識し始めたからのように思います。

例えば、単に安いだけだった100円均一が、今では便利小物のアイディア商品に力を入れているように、様々な業態が値段勝負からの脱却を図りつつあるようです。

デフレというものが、如何に我々の思考を停滞させていたかを認識するよい事例かもしれません。

寺本名保美

(2014.09.04)



数値目標ということで、数値を羅列してみました。

内閣改造で女性の入閣5名。

官邸の目指す、数値目標、有言実行…

衆参両院で自民党国会議員総数403人。内女性は40人で10%

全国会議員における、女性比率8%。

閣僚の数、多少の上下はあるにしろおおよそ25人。

で、今回5人、20%…。

いえ、だからどうというわけではなく…
適材適所ですよね?

寺本名保美

(2014.09.03)



少し不気味

「ロシア国債の購入禁止検討、EU追加制裁で=関係筋(ロイター)」

あまり良いニュースではありません。

実際にこれによってロシアがデフォルトすると思うわけではないのですが、これを切っ掛けに、金融市場でソブリンリスクが意識されることの方が怖いです。

ギリシャ-南欧でのショックを見てもわかるように、市場の信認が一旦崩れ始めた後のソブリン市場は、予想外に脆弱な動きをします。

政治の暴走が、市場のパニックに繋がるリスクを、誰かが冷静に見極めてくれていることを期待しているのですが。

寺本名保美

(2014.09.02)



スピードの問題か、安全基準の問題か?

飛行機の航行中に、電波を発しない状態であればスマートフォンなどを使用することが可能となりました。

このこと自体の是非は、専門家にお任せするとして、この制限緩和が米国航空局で発表されたのが昨年の10月1日。この11か月のラグが一体何だったのか、気になります。

おそらく機体に違いはなく、空は共通、空港も共通、という中で、サービスに係る差異ではなく、安全基準に係る基準が、国によって異なるのは、非常に不思議が気がします。

これが、技術の問題でなく、単なる行政のスピード感の違いであるなら、頭の痛いことですし、安全確認のレベル感の違いなら、少し怖いこととなります。

どちらだと思われますか?

寺本名保美

(2014.09.01)


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