欧州の財投?
ドイツとフランスの首脳が、欧州経済の底抜けリスクを回避するため、域内での投資を活発化させると相次いで発言しています。
ロシア情勢が不安定な中、外需依存の景気回復に過度に期待するのは危険であるという判断があるようです。
金融危機からの回復過程において、国主導の国内投資で内需を刺激する、という手法は、90年代の日本を彷彿させます。
金融緩和、ゼロ金利、財投、とくると、次は不良債権買取機構でしょうか。
日本にはならないと言っている欧州ですが、出てくる施策はよく似ています。
寺本名保美
(2014.08.29)
国家戦略としての言語
フランス大統領の指示で、世界のフランス語人口の今後について調査が行われたそうです。
ロイターの記事によれば、主要言語人口は1億3千万人、使用人口は2億3000万人とのことで、この使用人口の減少がフランスの雇用に大きく影響すると指摘しています。
正しい政策をとれば、この人口を7億人超まで増やすことができるとの見通しもついているとのこと。
言語の国際使用率と、経済との関係が、どの程度リンクしているのか、良くわからないところではあるのですが、例えば現在米国で社会問題になるほどにスペイン語使用者が増えていることが、スペイン経済にどれほどの影響を与えているのか、というような興味も湧いてきます。
韓国が未識字率の高い国々にハングル文字の提供をしているように、言語や文字というものを、長い目でみた国家戦略の一部をして認識されています。
さて、日本語。
世界で一番難しいといわれる言語だそうですが、国家戦略の一部としてどの程度意識されているのでしょう?
寺本名保美
(2014.08.28)
懐かしい?預貸率
今の国内株式や不動産市場は、割高であるかもしれませんが、「バブル」と呼ぶには程遠いと思っています。
一方で、将来のバブルの種については、かなり積極的に蒔かれている、という感触は日々強くなっています。
例えば、「預貸率」という言葉。
銀行預金総額に対する貸出残高の比率が低下しているので、銀行に貸し出しを出させるよう行政指導をしましょう、などという案が自民党から出始めています。
1980年後半のバブル期いは、やたらこの「預貸率」や有価証券投資残を示す「預証率」という言葉が、口に上り、そして、その延長線上にあったのが、過度な不動産融資と地方金融機関による無理な都市部融資とその先にあった不良債権の山、だったわけです。
まぁまだまだ、バブルの「種」ぐらいであって「芽」までは言っていなさそうなので、様子を窺っておくぐらいのスタンスではありますが。
寺本名保美
(2014.08.27)
ロシアのリセッション
ロシアにリセッションの懸念が出始め、ドイツでは対ロシアへの輸出が25%減となる可能性が示唆されています。
好調な米国株式とは裏腹に、ドイツの株式市場は7月以降下落トレンドが続いています。
ロシアの貿易相手国として、ドイツは輸入金額で中国についで第2位に位置します。ドイツの輸出総額からみれば対ロシア比率は3%程度で、大きな影響はないようにみえますが、鉄道やインフラ設備、また自動車生産拠点の新設など、大型プロジェクトが組まれているため、単なる貿易金額以上のインパクトがあると見たほうがよさそうです。
地政学的リスクというよりも、もっと現実的なロシア経済のリセッション化のリスクを、そろそろ真剣に織り込みにいく必要があるのかもしれないと懸念しています。
寺本名保美
(2014.08.26)
労働市場の哲学論争?
ジャクソンホールシンポジウムでのイエレン議長の講演内容に注目が集まっていましたが、結果としては特にサプライズのない無難なものとなったようです。
労働市場を主要テーマとしたシンポジウムであったことで、労働市場分析を得意とするイエレン議長が「労働市場の構造問題」に入り込んだ講演をしたことで、雇用統計と利上げについての明言を期待していた市場関係者にとっては、ややフラストレーションの溜まる内容となったのかもしれません。
金融緩和によって、名目的な失業率は低下したものの、労働参加率の低下といった構造問題は解決されていない。だから、「利上げはできない」とするのか。
構造問題は金融緩和では解決しない。だから「金利は正常化すべき」だとするのか。
FRBの理事の中でも意見が分かれているとも伝わってきます。
いみじくも、同日にBISの総支配人が言ったとされる「構造的な問題に関して言えば、金融政策は時間稼ぎができるだけだ」「7年におよぶ超低金利政策を経て、これは低金利では対応できない構造的な問題かどうかを問うことができる」(ロイター)
という言葉が、今の米国の労働市場を巡る構造論争に対し、ある種の正解を与えているよう、私には思えるのですが。
寺本名保美
(2014.08.25)
組織が先か、人材が先か?
東京都が資産運用をする、かもしれないとの報道が、あります。
GPIFを参考に、運用の専門家を配置し、元本を棄損しないように、株式等に投資する。
石原都知事の時、いきなり銀行作ったことを、やや彷彿しました。
そもそも、あちらこちらで呟かれている、運用の専門家って、日本にどれだけいるのでしょう?
運用リスクを取る業態が増えなければ人材が育たないというのは確かですが、人材が居ない中で方向性だけが独り歩きするのも、如何なものかとも思うのです。
寺本名保美
(2014.08.22)
冷静な市場と潜在リスク
昨晩のFOMC議事録を受けた、米国金融市場の反応は極めて理論的なものでした。
株式市場には中立。
通貨はドル高。
金利は政策金利に近い短中期が売られ、長期は中立。
エマージングとハイイールドにはマイナス。
市場参加者は薄いながらも冷静です。
ETF市場等が拡大し、ハイイールド等の流動性の低い商品において、空売りがしやすくなったことも、市場に加熱感が溜らない一因なのかもしれません。
そうはいっても、ハイイールドETFの空売りコストが異常な水準に高騰している、というような話には、注意をしておく必要がありそうですが。
寺本名保美
(2014.08.21)
MMFの規制強化
7月末、米国のMMFにおいて、実質的な元本保証が廃止されました。
基準価格の算定方法もいわゆる時価方式となり、日々変動することになります。
一方で、急激な資金流出が発生した際には、いわゆる解約ゲートが掛かることになりました。
日本においても、1999年にゼロ金利が導入されて以降、「元本割れを認めず且つ日々換金が可能」というMMFの商品特性が、大きな問題となり、結局幾つかのMMFが事業債の破たんの影響を受け、償還することになりました。
今回の米国の改正の切っ掛けは、リーマンショックや欧州金融危機いにおける大量解約を受けてのものですが、基本的には元本に対しクッションとなる短期金利が消えてしまった状況におけるMMFというものが潜在的に抱えているリスクを解消するという意味においても、今回の規制強化の持つ意味は大きいと思われます。
短期金利がない世界というものの弊害についても、日本の経験が世界の役に立っている一例かもしれません。
寺本名保美
(2014.08.20)
カジノと想像力
馬⇒農水 船⇒国交 2輪⇒経産 サッカー⇒文化 宝⇒総務
さて、何の判じでしょう(笑)
日本における公営ギャンブルの監督官庁の一覧です。
では、カジノができたらどこが管轄するのか?
とか、現在の公営ギャンブルは還元率が約75%とされていますが、カジノでも還元率を国が定めるのか?
で、還元率を法的に規定するとして、その実効性について、監督官庁は検査をするのか?
ならば、利益留保で配当金の蓄積が完了するまでにおいて、カジノは準備金を積まなければならないのか?
等々、カジノのスタートにおいて、考えると面白そうなことが色々あります。
カジノGメン とかって、できるのですよね、きっと。
新しいことを始める時は、関係者全てに、膨大な創造力を要求されます。事前にどれだけのリスクを洗うことができるかが、成功の鍵になることは間違いありません。
寺本名保美
(2014.08.19)
産業構造の変化
「国が主導する次世代国産旅客機」という見出しをしばしば目にするようになりました。
国産旅客機の開発と、電気自動車の開発は、裏表と言われています。
日本の自動車産業を支えてきた大量の部品技術が航空機開発を支え、一方で自動車が電気化することで需要が大幅に激減する部品産業を航空機開発が支えると見込まれているからです。
冷蔵庫を作っていた会社が自動車を作るようになり、自動車を作っていた会社が飛行機を作るようになり、飛行機を作っていた会社は大気圏外へ飛ぶ?
完成品メーカーとしての、弱電・自動車・重電の存在意義が大きく変わり始め、産業の新陳代謝が進みそうな予感です。
長く日本を支えてきた業態だからこそ、大きな前向きな変化の兆しに期待します。
寺本名保美
(2014.08.18)
思いつきは、夏休み♪
お盆休み週間にはいり、街にも心なしか静寂が漂う月曜日です。
私個人としては、物理的には難しいので、気分だけでも夏休み♪
ということで、今週一杯、思いつきはお休みします。
まぁ、何か書きたくなったら、書きますが…
では、また来週!!
寺本名保美
(2014.08.11)
目先はヒヤリ
悪材料に反応せず突っ張っていた国内外株式が、ようやく弊社の理論値近辺まで戻ってきました。
短期的には割高だといってきましたが、中長期において米・日中心の経済回復というシナリオは動かしていませんので、あまり心配はしていません。
地政学的リスクというものは、残念ながら今後の世界においては、「何時でもどこにでもある」存在になってしまうと思っています。
1980年代までの、冷戦や中東紛争の時代でも、株価も金利も経済を見て動いていたように、これからの金融市場もまた、戦火には段々反応しなくなってくるのかもしれません。
反応をし始めたばかりなので、しばらく時間が掛かるかもしれませんが、リスク配分をどこかで増やさなければいけない人にとっては、よい機会ともいえそうです。
寺本名保美
(2014.08.08)
嫌な感じ
ロシアを巡る経済制裁の行方が少し気になってきました。
欧米からの金融制裁等の対抗措置として、食料品の輸入を禁止する法案にプーチン氏が署名したとされています。
「米国で製造された…」という表現もあるので、米国メーカーであっても他国工場での製品は輸入が可能、ということなのでしょうか?
昨年、大手酒類メーカーが、ロシアの酒税法の変更を受けて、株価が急落した、ということもありました。
人口は多い国なので、欧米の食料品セクターへのインパクトは、それなりにあると思ったほうがよさそうです。
そろそろ、お互いに収束点を見出さないと、国民生活に悪影響が出てきます。
寺本名保美
(2014.08.07)
数字ではなく意識の問題なのですが
女性登用の数値目標に、事業入札等への優遇措置も含まれるとの報道がされています。
例えば金融業界での海外の事例でみれば、委託先には女性がファンドマネージャー、もしくは女性が経営者である運用機関のファンドを一定比率入れなければならない、という定めをしている公的年金等が存在します。
企業内での女性のプロモーションに対し数値目標を設けることは、当の女性の中でも賛否があります。
経営者の性別における優遇措置というものに、どれほどの意味があるのかどうかは、よくわかりませんが、銀行融資を受ける際に経営TOPが女性であることがハンディになる、という類の話が緩和されるのであれば、それはそれでよいことなのかもしれません。
本音を言えば、受け入れる側の意識一つで対処できる程度の数値目標であるような気もするのですが…
寺本名保美
(2014.08.06)
出遅れている人々
国内外株式ともに、アクティブマネージャーが何となく元気がない、四半期報告会です。
アクティブマネージャーが元気がない原因が、今の金融市場において、年金等の機関投資家が主役ではないところに原因がありそうな気がしています。
株式市場が堅調な一方で、制度的な不安を抱える世界中の年金基金が、乗り切れずに、取り残されている、というところでしょうか?
機関投資家が出遅れている今の市場、まだまだ天井は遠い、という事なのかもしれませんが…
寺本名保美
(2014.08.05)
誰が売った?
米国の雇用統計は、比較的落ち着いたものになり、利上げの時間軸の議論は少し冷えました。
ただ、この数日の米国を中心とした金融資産の下落は、外部材料とは無関係な値動きにもみえるので、あまり安心はしない方がよいかもしれません。
金融市場が、外部環境と無関係に下落する際は、どこかで大きなファンドの破たんや、大きな投資家の現金化等が潜んでいることがあります。
今の足元の環境が、ファンドの破たんを招くような環境とは思えないので、ファンド以外の別の投資家によるまとまった換金等があった可能性も否定できません。
いずれにしても、夏休み。
上も下も深追いは禁物です。
寺本名保美
(2014.08.04)
センチメント というもの
米国株式市場は、やや高所恐怖症気味でのポジション調整となったようです。
本格的な夏休み入り前の雇用統計の発表を控えて、誰しも一旦は身軽になりたいタイミングです。
アルゼンチン問題
米国の賃金インフレ懸念
ロシアへの経済制裁
中国の政局
一部企業の決算への失望
等々
昨日今日に出てきた材料ではないものも、全部まとめて反応しました。
当面は、市場のセンチメントの落ち着きどころを探す展開になるのかもしれません。
寺本名保美
(2014.08.01)