最後のアンカー
結局今年度も国内債券が頑張ってしまった一年となりました。
国内債券を複雑に代替させることが流行っている?ようですが、国内債券単体が4%弱の利回りを上げてしまう環境化では、なかなか苦しい戦いを強いられた一年と言えるでしょう。
日本の短期金利は、今後も世界のアンカーであり続けるでしょうし、更に日本銀行がこれから積極的に長期国債を買っていくことによって、日本から世界に向かって流動性が供給される展開は継続するでしょう。
これまでは米国が行ってきた流動性の供給者としての役割を、今後しばらくは日本が担っていくことになります。
しかし何時か、将来において、最後の出し手である日本が引き締めに転じた時、今の世界の株式やクレジットや商品や不動産価格を押し上げてきた資金が本格的に逆流することになるでしょう。
その時は、日本の債券も売られますが、世界のリスク資産も売られます。低ボラティリティも低相関も一時的には完全な机上の空論となるのです。
今すぐのリスクではありません。でもいつか確実に来るシナリオであることを、決して忘れないで欲しいと思っています。
寺本名保美
(2013.03.29)
?がいっぱい
どうにか順調に期末を迎えることができそうな国内市場に対し、海外ではここのところ理解が難しい値動きが散見されています。
キプロス問題以降、イタリア株式が5%しか売られていないにも関わらず、10%も売られたオーストリア株式。
株式市場では収束モードのキプロス問題であるはずが、通貨ユーロは日々対ドル対円に対して切り下げているという事実。
世の中が欧州にばかり注目するので、日増しに拗ね方が酷くなる隣国半島。
ところで、どうして今日の中国株式市場はこんなに下がっているのでしょう???
今すぐに何が起きるかということではないにしろ、不思議なこと、文字にできないこと、理解できないこと、が少しずつ増え始めている、ということを忘れないでおこうと思う昨今です。
寺本名保美
(2013.03.28)
価格崩壊と消費崩壊
イオンがダイエーを子会社化するようです。
勝ち組小売の勝利の鍵は、よく言われている「価格崩壊」ではなく、小売業の「製造業化」だったように思います。
本当のメーカーのような「ブランド力」のある商品開発ではなく、顧客ニーズに「迎合」した商品を、中間マージンを徹底して排除することで、低価格で提供する、というビジネスモデルが今のファミリー層の消費性向と見事にマッチしました。
従来のメーカーやブランドが、顧客ニーズを発掘したり、トレンドの創出者であろうとしているのに対し、こうした顧客迎合型の商品コンセプトはややもすると消費の軽薄化を増長させる一因になります。
イオンが席巻する日本の消費。
価格崩壊だけでなく、消費崩壊にならなければよいがと、少し心配でもあります。
寺本名保美
(2013.03.27)
過去の経験
ほぼ6年周期で来ている日本株式の上昇相場。
前々回の2000年、前回の2006年をピークにしたサイクル時には、株式ファンドマネージャーの多くが下げ相場しかしらない世代であることが、話題になりました。
突然遭遇した上昇トレンドへの懐疑心からの出遅れと、株価の上昇パターンへの不慣れが、プロであるはずのファンドマネージャーですら「最終バスに飛び乗らざるを得ない」行動に向かわせ、その後の傷口を広げることとなりました。
さて今回ですが、私の見ている限りにおいて、少なくても前回のサイクルを経験している人や組織が、比較的多く残っているように思います。
残念ながら、超小型株市場での経験者は壊滅的な状況ではありますが、一般的なアクティブ運用においての断絶は起きていないようです。
これからしばらく続くであろう国内株式市場の乱高下。
過去の経験を上手に生かして、上手く立ち回ってくださることを、期待しています。
寺本名保美
(2013.03.26)
EU問題の地政学リスク化?
毎日毎日市場はキプロスでサーフィン状態です。
上手く乗れている人は良いですが、裏に回っている人は悲惨な結果になっていそうです。
とりあえず、先ほどEUとキプロス政府が合意した、とのニュースフローで買い戻されていますが、中身の詳細は不明なままです。
小国キプロスではあるものの、ロシアの資金、天然資源の権益と、単純な金融システム問題ではないところでの思惑が見え隠れしているところで、この件を実体金額以上に複雑化しています。
従来のギリシャやスペイン等の財政問題とは、次元のことなる「厄介な災い」にならないとよいと、少し懸念をしています。
寺本名保美
(2013.03.25)
頭が代わって…
日銀の黒田体制が、いよいよスタートします。
個人的な興味としては、これで日本の金融政策がどうなるかより、トップが代わることで日本の組織というものが本当に変わるものなのか、という点にあります。
海外の企業と比べ、日本の大企業は経営トップの個性が発揮されにくいといわれています。
経営トップのキャラクターより、過去に醸成された企業カルチャーの影響力の方が強いケースが多いからです。
さて日本銀行。
白川前総裁が退任を発表して、日経平均は500円、新総裁が決まって500円…
頭の交代が、アベノミックスの単なる象徴に過ぎないか、日本の金融政策を根本から変えるものになるのか、一年後あたりが楽しみです。
寺本名保美
(2013.03.22)
桜は満開
東京は桜がほぼ満開になってきました。
枝が紅赤色に染まる蕾の時期を感じる間もなく、いきなり全開です。
3月になって強風が吹くことが多く、満開になってしまった桜が愛でる間もなく散ってしまうのではないかと、少し心配しています。
ここまで書いていて、ふと、運用収益率の事が頭を過ぎりました。
欧州や半島から吹く風が、この数日心なしか冷たい…
何年も何年も待ってようやく咲いた市場です。
できることなら、もうしばらく愛でる時間を与えて欲しいと願います。
寺本名保美
(2013.03.21)
損失可能性と覚悟
南海トラフの被害想定が発表されました。
地震だけでなく津波や富士山噴火など、この数年天災による被害シミュレーションが積極的に発表されるようになりました。
一昔前までは、こうした被害シミュレーションは、人心に余計な不安を与える、とか、経済活動全般にマイナスの影響がある、更には不動産価格への影響を懸念する、といった理由により、公的な公表が控えられていたものが殆どでした。
阪神淡路大震災以降、幾つもの不幸な天災を経験し、徐々にリスク情報の開示について、発表する側も受け入れる側にも覚悟がついてきた、ということなのかもしれません。
想定リスクや最大損失金額について、知らないより知っていた方がよいのは、資産運用も同じなのですが、こちら側にはまだ覚悟が足りない部分もありそうです。
寺本名保美
(2013.03.19)
天気もユーロも荒れ模様!?
キプロスへの金融支援の決定で、というより、その条件とされた預金カットによる取り付け騒ぎで、ユーロが一気に3円急落しました。
実態面だけの話をしてしまえば、貯蓄税という名目でカットされる見込みの預金金額が5000億強、支援される金額が1.2兆円程度
、キプロスのGDPがEU全域に占める割合は0.2%と、規模的にはかなり小さな話です。
問題は、今回初めて適用される見込みの実質預金カットが、今後金融支援を受ける可能性が高いとされているスペイン等にも適用されるのか、という点にあるようです。
今回のEUの措置は、キプロスの特殊事情によるものだという解説もあるので一概には言えませんが、EUの目指す「規律ある金融支援」の第一段として、規模の小さなキプロスが選ばれたとするなら、今年のEUまだまだ荒れ模様かもしれません…
寺本名保美
(2013.03.18)
ゼロ金利下での債券戦略
このところ、国内債券の利回りを少し上乗せする、または金利上昇リスクを「上手に」ヘッジする、というプレゼンテーションが、「とっても」多いです。
悲しいことに、殆どの場合トラックレコードはありません。
ひたすらゼロ金利だった国内債券市場において、過去も似たような戦略が出てきたこともあったのですが、その後も延々と続いた低金利環境において、いつの間にか消滅してしまいました。
ゼロ金利環境における債券戦略の怖さは、年間の標準偏差が2%内外しかない中で、0.2%長期金利が上下しただけで、収益率の変動幅が年間の標準偏差を振り切ってしまうことにあります。
一旦標準偏差の限界まで負けてしまった債券戦略が、失った収益を取り戻すのには年単位の時間が掛り、その間その戦略は維持できず消滅していったのがこの15年の歴史です。
ゼロ金利環境で、債券の絶対収益を目指すことは、リスク対比でみてとても効率の悪いことです。
債券を持たざるを得ない年金という業態のなかで、金利上昇リスクへの懸念が高まるのはわからないではないのですが、過去の経験から言わせていただくなら、ゼロ金利が解消するまで運用では無理をせず、残高そのもので調整していった方がよいのではないかと思っています。
寺本名保美
(2013.03.15)
金融市場は信用でなりたっています
中国株式市場が、不調から抜け切れません。
中国が不調だと、国際商品価格も伸び悩むので、日米英の主要国株価が上値を更新し続けるなか、中国関連市場についてはやや蚊帳の外にあります。
不動産などの実物資産への投資が、モノと現金の単純な交換であるのに対し、株式等の有価証券投資は「信用創造」という行為が伴います。
その経営者を信用できるのか、その会社の利益率の将来を予想できるのか、そして企業の存在基盤となっている政府に将来はあるのか。
様々な前提条件、様々な信用の積み重ねの結果が、価値として算出されるのが、有価証券というものです。
誰が見てもあきらかな「成長」というステージが終了した後の中国におけるこれからの有価証券投資は、既に「信用」というステージに移行しつつあります。
信用というハードルをどうクリアしていくのか、これからの中国経済の重い課題にみえます。
寺本名保美
(2013.03.14)
禍根を残さないようなエネルギー政策
メタンハイドレート 燃える氷
新しく、古いテーマです。
JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)による海洋調査が正式に始まったのは2001年。
現在はフェーズ2と言われる海洋算出試験の最中です。
シェールガス革命と期を同じくしているため、ここにきて突然脚光を浴びた形になっていますが、開発計画は、ほぼ当初計画通りに進行しているようです。
JOGMECのホームページを見ると、このところの研究の中心が、生産性と同時に、環境影響評価におかれてきていることがわかります。
大きな埋蔵地域が「南海トラフ」に位置することから、震災後は地震との因果関係を懸念する学者も増えているようです。
日本が資源国になることは、我々にとって夢のような話です。
とは言いつつ、ここからの環境影響調査が、我々の生活にとっては、最も重大な調査となることも間違いありません。
もう二度と取り返しのつかない禍根を未来に残さないように、エネルギー開発は慎重に進めて欲しいと思います。
寺本名保美
(2013.03.13)
静まれ 静まれ…
3月中旬からのラスト2週間。
2年前は震災で暴落。
昨年は根拠のない楽観で暴騰。
あまりい良い思い出はありません。
朝鮮半島はキナ臭く、米国は5日連続高値を更新…
上も下ももういりません。
市場参加者全員春休みを取ろう!!
静まれ静まれ…
寺本名保美
(2013.03.12)
あの時の思い
震災のあった二年前、とにかく働こう、と思いました。
日本という集団の一つの部品として、日本という機能を維持するために、自分に与えられている役割を果たしていこうと思いました。
誰のため、でもなく、自分のため、でもなく、日本というものの小さな小さな一部として、自分の出来ることに忠実に生きていこうと思いました。
国という機能が国民を守るために存在する一方で、その機能を維持し続けるためには国民一人一人がそれぞれの立場に応じてちゃんと生きていくことが何よりも重要なのだと思う二年間でした。
理念も理屈もなく、他者との比較感もなく、自分の内なる想いとして「あぁ、私は日本人だ」と感じたあの瞬間を、おそらく一生忘れることはないでしょう。
全ての震災犠牲者の皆様に合掌。
寺本名保美
(2013.03.11)
気持ちのゆとり
東京オリンピック招致への、都民の賛同比率が70%と前回調査を20ポイント以上上回ったそうです。
これには、招致委員会の努力の結果でもあるのはもちろんですが、もう一つ株価上昇やアベノミックスへの期待から生まれた「気持ちのゆとり 」というものも、大きく影響しているように思います。
不満や不安で頭が一杯の時に、オリンピックを誘致して景気を刺激しよう、等と言われたところで、素直にはのれない人達も、自分や社会に多少なりとも高揚感が醸成されただけで、反応はここまで変わります。
例えば、少子化の問題にしても、国の経済のために子どもを増やしましょう…と何百回言うよりも、景気に浮揚感を出して、個個人の雇用と収入の安定を確保することの方がよほど効果があるというのと、感覚的にはよく似ています。
国民心理を巻き込んだ順回転が始まりつつあるとするならば、何よりなことです。
寺本名保美
(2013.03.08)
最高裁
医薬品のネット販売について厚労省の出した省令が、最高裁で、「違法で無効」とされ、ネット販売が解禁されたそうです。
省令が、最高裁判断で覆ることがあることがよくわかりました。
厚生年金基金制度の廃止に伴う受給権の喪失問題。
廃止を掲げた厚労省にとって、進むも退くも、一筋縄ではいかなそうではあります…
寺本名保美
(2013.03.07)
QEバブル
米国のダウ工業株30種平均が史上高値を更新しました。
同じく米国の代表的な株式指標であるS&P500指数でみてみるとより明確になりますが、米国株式市場の今の水準は、00年のITバブルと07年の住宅バブルの過去2回の天井に頭を揃えたことになります。(添付グラフの赤がS&P500 白がダウ平均)
昨日の高値更新を受けた識者のコメントの多くが、「中銀による金融緩和効果の恩恵が大きい」という点に集中していました。
今の水準が振り返って、「QEバブル」と銘打たれないかどうかは、これからの米国製造業の頑張り次第となります。
今年の金融市場にプラス方向でサプライズがあるとするならば、その中心には米国が居るように思えてなりません。
QEバブルが一旦崩壊するとしても、今の水準が通過点に過ぎなくなる日はそれほど遠くないのかもしれないと思っています。
寺本名保美
(2013.03.06)
一口にリーマン前というけれど…
このところ、金融資産の水準について使われる「リーマン前」という言葉にやや違和感を覚えます。
リーマンショックのきっかけとなったサブプライムショック以前、時期的にいえば2004年から2006年まで、世界の金融資産はインベストメントバンクを中心としたレバレッジによって、明らかな歪みが発生していました。
特にその歪みが集中していた信用リスク市場や、住宅市場が、その後の金融危機の地雷源になったことは、まだ記憶に新しいはずです。
リーマンショックによって、金融市場におけるレバレッジは明らかに低下しています。民間のレバレッジ資金の解消部分を一部代替していた政府中銀による資産買取政策も、出口を探し始めています。
リーマン前の資産価格の何かフェアで何が異常であったのかの検証のない水準論は、極めて危険なにおいがします。
これから先は、アセットクラス毎の爬行性にも注意が必要になるかもしれません。
寺本名保美
(2013.03.05)
温度は大事です
『「香港への本土観光客は自国民」、中国高官が大挙批判に反論(ロイター)』
昨年、中国本土から香港を訪れた観光客数が香港の総人口の4倍に達したそうです。
市場の過熱感や水準感を見極める時に、金融市場の価格や経済指標そのものを分析することが本筋ではありますが、一方でこういった何気ないニュースフローなどから感じ取れる「温度」のようなものも、重要な判断基準となります。
昨年末に香港に出張した際、ショッピングモールでのブランド品の値札が日本での販売価格をはるかに上回る、明らかな「香港値段」であったことからも、香港の「温度」の高さを感じます。
傍からみればボーとしているように見えるネットサーフィンも、遊んでいるように見える出張先でのウィンドウショッピングも、それもまた大事なお仕事である、ということの一例でした…(汗)
寺本名保美
(2013.03.04)
あきらめないでいきましょう
年金制度の話をする中で、あちらこちらから「資産運用での収益は今後期待できない」という言葉を耳にします。
監督する側も、拠出する理事会側も、受益者である加入員や国民も、「年金運用では収益獲得ができない」ということを前提として、制度の維持の可否を議論しています。
一方で、「政府は貯蓄から投資へ」という旗印を下すことはなく、「年金運用は儲からない」と言っている理事会メンバーである社長方は自らの利殖話には興味深々という状況は、どこか捻じれているように思えます。
年金制度における運用が崩壊しているなら、それより10倍近い運用手数料をとられている個人向け投資信託など、存在する余地はありません。
年金という制度だから儲からない、というのはどこか誤解がありますし、一方で世界的に長期デフレが進行するなかで、資産運用業という物自体がすでに機能しなくなっている、という議論もまた悲観的すぎます。
資産運用業も年金制度も、あきらめるにはまだ少し早すぎるように思っています。
寺本名保美
(2013.03.01)