ロンドンに着きました
昨年の震災以来、中断していた海外視察を再開しました。
第一段は小春日和のロンドンです。
日本より一足早く、あちらこちらで桜を見ることができます。
オリンピックムードは思ったほどではありませんが、ホテルの窓からニョキニョキと突き出すクレーンが沢山見えるのは、やはりオリンピック効果でしょうか。
欧州問題は、イタリアではなくいつの間にか、スペイン問題にすり替わり、あまり感触はよくありません。
そんな中、ギリシャとイタリアの投資家は、自国資産を売却して相変わらずロンドンの不動産を買い続けいるらしく、おそらく同じ理由で街には中東系の人々の姿が目立ちます。
来るものは拒まずのイギリス人にとっては、とりあえずお金が動いているのは、良いこと、のようです。
では、また時間を見つけてご報告します。
寺本名保美
(2012.03.29)
脱出?!
北朝鮮のミサイル実験への懸念で、珍しく米・露・中の意見が一致していると報道されています。
これまでのような「内政干渉」を盾にした発言も、中露からは出てきていないようで、どうも様子がいつもと違います。
北朝鮮が所詮、発射しないということを事前に察知して、言葉を合わせているのか、本当に危ないことが起きることを懸念して意見が一致しているのか、どちらなのでしょう?
だから、というわけでは決してありませんが、、、明日から数日、日本を脱出します。
期末までの3日間、金融市場がソフトランディングするように、欧州首脳陣の口災を監視してきたいと思います。
では、次は4月3日!
寺本名保美
(2012.03.27)
ベースとしての金融知識
先週金曜日の強制捜査に伴い、AIJ問題についての報道も一旦ピークを付けた感があります。
各種メディアや国会での取り上げ方を見ていて、やはり日本人全般として、もう少し基本的な金融知識を持つ必要があるのではないかと痛感しました。
年金基金事務局が素人だと批判している当の政治家も役所も報道機関も、「それぞれの立場として求められる最低限の金融知識」を保有しているのか、疑問に思う局面も多々ありました。
知識人と呼ばれる人が堂々と、「投資というのは所詮博打ですから」と言ってしまうのが、今の日本の現実です。
「投資と博打と詐欺の区別」が付くぐらいの金融知識を国民が持つためには、どのような教育が必要なのか。本当に真剣に考えなければいけないと心底思った週末でした。
寺本名保美
(2012.03.26)
一休み?
外出先のためひとことだけ。
材料に特に変化なし。
リスクオン、一旦終了?
(2012.03.23)
様々思うこと
昨日の思いつきは、昨夕のインサイダー事件について書いたわけではありません。(というような文章を何週間か前にも書いた記憶がありますが…)
今回の中央三井アセット信託のインサイダー問題については、昨日書いたような金融機関の総合力の低下を痛感するということ以外にも、様々なことを思います。
これまでロングオンリーしかしてこなかった伝統的運用機関が、ヘッジファンドの真似事をしたときに組織として陥る罠の怖さ。
年金基金の多くにとっての総幹事信託でおきた不祥事。それこそ総資産の半分以上が総幹事に委託しているという状況下で、受託者としてとるべき行動がとれない現実。
そもそも、今回の問題は当初「外資-外資」で問題になっていたはずが、どういうわけか「国内-国内」が先に摘発されたという疑問。
おまけですが、改善策として示されている、ファンドマネージャーと証券会社の営業マンが直接会うことの禁止。だったら証券会社の金融法人担当者は全員失業?
そしてなによりも、通常は一年で一番暇なはずの3月の日々が、どうしてこんなに雑然と忙しいのか?という嘆き…
もう事件はいらない。
寺本名保美
(2012.03.22)
バック・ミドルの力
私が証券会社のディーリングルームに居た15年前とか20年前、証券の決済事務や約定管理や契約書面に関わるバック・ミドルといった業務の方達は、ものすごく優秀で、ものすごく怖かったです。
当時は、証券決済が電子化されていないため、資金決済の手順や証券の受け渡しの流れが非常に複雑で、ちょっとした不注意が銀行の当座預金に穴をあけてしまう、などということも発生していました。
スワップなどのデリバティブ取引が日本に持ち込まれた前後に、米国のオレンジ郡や大手企業でのデリバティブ破綻が相次いだこともあり、デリバティブ取引をするにあたっても、顧客の経験やリスク許容度にうるさいほど条件ををつけられました。
こうした管理をする部署には、大概この業務に何十年も関わり続けてきた、生き字引のような人がいて、当時の私のようなノウ天気な新人に時には机を叩いて、証券実務を教えてくれたものです。
今は、証券決済の電子化が進み、こうした職人のような実務家が段々いなくなっています。
信託銀行にいたっては、こうした業務を「トラスティ―」という別会社に移管してしまい、バック・ミドルと直接的に話をすることすらなくなってしまいました。
信託銀行・投資顧問を含めて、金融機関全体の総合力が落ちてきていることが、今回の問題の遠因なのではないかとも感じています。
寺本名保美
(2012.03.21)
ウォール街の未来と米国の未来
「ウォール街がクラッシュする10の理由」という過激なコラムがWSJ(ウォールストリートジャーナル紙)に掲載されています。
この他にも、先週は米国大手証券会社社員の暴露記事が、ニューヨーカーの物笑いの種となるなど、米国における金融証券ビジネスの存在感が、明らかに今までとは異なる次元に移行しています。
先ほどの10の理由の内、「健忘症」「幼稚」「超楽観主義」「過ちを認めない」などの項目は、的を射て笑ってしまうのですが、笑っている場合ではありません。
非常に大きな力を持った組織が、求心力と信頼を失って、急激に瓦解していく時のパターンに、今のウォールストリートは悲しいほど当てはまります。
身近なところでは、少し前の日本プロ野球が壊れる時も、同じ感触を持ちました。
米国の金融証券市場というものは、近代米国のアイデンティティそのものだったはずです。その変調が米国国内全体に、どのような影響を与えるのか、今の段階では予想がつきません。
日本のプロ野球が変質しても日本国そのものに変化はないかもしれませんが、ウォール街の変質は米国そのものを変化させます。
米国はどこへ行こうとしているのでしょう?
寺本名保美
(2012.03.19)
リスクの定義
資産運用において、リスクとは「収益の振れ幅」のことを言います。
低リスクの代表は銀行預金(預金保険の範囲内…)、高リスクの代表は年間で10%単位で上下動をする株式投資です。
万が一、毎月毎年、一定の収益をマイナスなく積み上げる金融商品が現実にあったとすると、それは究極の低リスク商品ということになります。
AIJ事件の解説において、基金が「ハイリスク-ハイリターン」に傾斜した結果だという、説明は基本的に言葉の使い方が間違っています。
この間違った言葉の使い方のまま、年金や投資顧問会社の規制を強化しようとすると、とんでもないことが起きます。
年金の運用規制の見直しを始めているらしい、厚労省の方や政治家の方々は、このあたりのことは十分にご理解いただいていることと存じますが、念のため…
寺本名保美
(2012.03.16)
耳障りなフレーズ
【追記】*************************************
当コラム3月6日でふれた、年金基金事務局と投資一任会社との役割付けについて、早稲田大学の上村達男教授が法的に整理した小論をMSN産経ニュースに掲載されています。上村教授の許可をいただいて小論をリンクさせていただきますので、是非ご覧ください。
⇒リンク*****************************
今回の事件が起きる前から、この数年、信託や投資顧問と話していてずっと気になっていたフレーズがありました。
「顧客の強い要望なので」「顧客ニーズがあるので」「顧客の意思を尊重して」
私は、本当にプロの運用機関と話しているのかと、考えてしまうほど、こういった発言がこのところ耳に障っていました。
そして、また昨日、国会中継で同じフレーズを耳にして、今日は極めてご機嫌斜めです。
今回の問題は日本の運用業界にとって、決して「氷山の一角」ではなく、非常に例外的な「事件」だという主張は揺るぎません。
揺るぎませんが、こういう発言が公に出続けるのであれば、「顧客の役に立つ」ことより「顧客に売れる」ことを優先するような業界になりつつあったことも、否定できなくなります。
お願いですから、皆さん、もう少ししっかりしましょうよ。
寺本名保美
(2012.03.15)
がんばれ~
全世界が金融緩和状態にある過剰流動性市場というものは、一方方向に流れやすい性質をもっています。
市場センチメントが悪い時は、良い材料には見向きもせず、徹底して悪い材料に反応します。
逆に市場センチメントが良い時は、悪い材料は完全に無視して、良い事ばかりを追いかけます。
昨今流行りのリスクオン‐オフという表現を使うなら、リスクオンとなった現状は、多少の悪材料は目に入りません。
米国のストレステストの結果、シティやメットライフなど超大手が落第したことが、むしろストレステストの信ぴょう性の向上に繋がった、とプラス評価されてしまうセンチメントですし、期待していた当面のQE3が遠のいたショックより、QE3がないほど景気がよいことを評価するセンチメントです。
これが良いか悪いか、ではなく、そういうセンチメント下において形成されている市場だということを、とりあえず理解しておいた方がよいでしょう。
とりあえず、日本株も絶好調♪年度末まであと二週間、がんばれ~。
寺本名保美
(2012.03.14)
何をがんばれば?
ギリシャ再編後、初めての欧州市場。
予想されていたとはいえ、あまり芳しい市場環境ではなかったようです。
再編後の国債に米国が信用補完を行った中南米のブレディボンドとは根本的に異なり、債務再編したとしてもその返済能力はギリシャ一国に依存することには変わりありません。
90年代後半にロシアが債務再編をしたケースにおいては、その後の資源価格高騰が一種の神風となりました。
韓国はIMF管理に入ったものの、ウォン安を利用して、国民総出で輸出産業の立て直しを行い、経済再建の唯一の成功例とまでいわれるようになりました。
ギリシャにはロシアのような資源はありません。韓国ように通貨安を演出することもできません。そしてユーロ各国は信用補完をしてくれません。過去の経済再建パターンのどれもあてはめることが難しいのです。
昨日、「がんばれ」と言ってみたものの、何をがんばればいいのか教えてくれ、と言われると、答えに窮するのもまた事実です。
寺本名保美
(2012.03.13)
がんばろ
一年前の月曜日、働こう、働くことができなくなった方々の分まで。働こう、大好きな日本のために。とこのコラムで宣言をしました。
人のためになどという大仰なことはできないから、今の自分の役割を精一杯勤めることが私のできる支援だと思っています。
頑張ろう日本の「頑張ろう」は、自分自身に向けての言葉でしかありません。
ところで、
借金棒引きがどうにか実現したギリシャ。
世界中の人々の痛みを伴った棒引きです。もしかするとこれからの世界経済にとってさらなる波乱の種を撒き散らしてしまったかもしれない債務削減です。
ギリシャの人々わかってます?
頼むから真面目に頑張れ!
(2012.03.12)
ギリシャの祭り、国会の祭り
ギリシャの債務再編。奇跡だ!史上に残る再編だ!欧州危機は遠のいた!と美辞麗句が並ぶわりには、状況が不明であることには変わりません。
一旦は、再編への参加率が95%に達する、と当局がコメントしたものの、その後それは集団行動条項(CAC)を発動した後の話、というように訂正されています。
正式発表は今晩まで持ち越され、結局また、すっきりとしない週末を過ごすことになりそうです。
すっきりしないといえば、今回のAIJ騒動での政治家の皆さん。
なんだか、お祭り気分になっていません?
社長の参考人招致?何の意味があるの?
こういうことを書くと、また敵を増やすって言われるのかなぁ…
寺本名保美
(2012.03.09)
想定内のデフォルト?
ギリシャの債務再編問題ですが、締切当日になっても状況がよく理解できません。
はじめの内は、集団行動条項の適用は最終手段であり、それを避ける努力をしていると言っていたはずが、いつのまにか集団行動条項の適用を前提とした札集めになっています。
集団行動条項を適用すると、CDSのクレジットイベントが適用されることは間違いないものの、それは既に織り込み済みだから、大丈夫、、、だそうです。
CDSのトリガーが引かれても大丈夫なら、つまり、デフォルト宣言をされても大丈夫なら、なにを今までもめていたのか?
何が想定内で何が想定外なのか。起きてみないとわかりません。
少し不気味です。
寺本名保美
(2012.03.08)
臆病なので…
投信評価会社とか、ファンド評価会社とかが毎年行っている「~アワード」とか「ファンド評価ランキング」とか。
同業者として、よく怖くなくあのような発表をするものだと、常々関心しています。
ファンドというのはナマモノです。保存状態が悪ければ、すぐに腐り始めます。
ファンドというのは素材です。料理の仕方一つで、美味しくもなりますが、食中毒もおこします。
活字にして公表してしまえば、その活字は一人歩きを始めます。公表後に何か大きな変化があったとしても、評価を変えることはできません。
評価基準など、見る側は読んでもいません。過去の数字での客観的な評価だから、などという言い訳はききません。
臆病な弊社には真似のできない、芸当です。
寺本名保美
(2012.03.07)
制度の問題ではありません
足元の心配ごと。中東情勢と原油価格の上昇。
直近の心配ごと。ギリシャの債務交換期限が8日に迫っていること。
業界の心配ごと。各基金に運用の専門家を配置するという、非現実的な提案が、真面目に議論されていること。
年金基金、特に総合型と呼ばれる基金は、国の公的年金の「徴収・支払事務」と、「資産運用」とを、「代行」しています。
だから、年金基金の事務局は、「年金事務の専門家」でなければならず、これは旧社会保険事務所(現年金機構)での業務経験者でなければ対応できません。「天下り」ではなく、法的にも公的年金事務の出先機関となっているのが総合型の年金基金です。
従って、年金基金事務局には「資産運用」の経験者は殆どいません。居ないので、資産運用は信託銀行や、投資顧問会社の一任契約、によって「プロの運用者」に委託をすることが、大前提となっています。年金基金がプロではないから、プロに委託するのです。
万が一、各基金に運用経験者を置くとして、それが運用を受託している側の信託銀行や生命保険会社や投資顧問からの「天上がり」だらけになってしまったら、委託者と受託者の間の緊張関係が崩れます。もっと現実な問題としては、日本中かき集めたところで、資産運用経験者を1000人集めることは不可能です。
企業型を入れれば1000を超える年金基金と、その後ろに居る受益者一人一人を守るために、200数十社のプロの運用会社が存在します。この200数十社のプロに詐欺師が混じるなど言語道断です。
年金基金サイドに重要なことは、自らがプロではないという自覚を持って、真摯に「委託者」としての管理義務を果たすことであり、運用会社サイドに重要なことは、自らがプロであるという自覚を持って、真摯に「受託者」としての執行義務を果たすことです。
そして我々コンサルタント会社は、委託者・受託者それぞれが、義務を円滑に遂行できるように、間に入って情報を整理し、精査し、場合によっては排除する、のが役割です。
人材や制度が足りないのではありません。
お互いの「自覚」が足りなかっただけです。
寺本名保美
(2012.03.06)
確認
内部の問題に追われている間に外の様子が見えなくなりそうです。
とりあえずプーチンさん再任とのこと。
ギリシャは再び緩やかな崩壊へ
そろそろちゃんとマーケットに気持ちを戻さないといけません。
寺本名保美
(2012.03.05)
がんばろ~
怒涛の一週間でした。
今回のAIJ問題は、非常に特殊な個別の事象です。
この件だけで、年金基金の体制全体を語ることはできないし、投資顧問業界全体の質を表すものではなく、ヘッジファンド運用のリスクの説明にもならなければ、ケイマンという島が悪いのでもありません。
ということを判っていただくためであれば、行政の方とでもマスコミの方とでもお目にかかります。
もちろん業界として、基金制度への信頼を取り戻すために改善すべきことは改善します。
あっちの行政が悪い、こっちの行政が悪い、信託の責任、基金担当者の責任、とあげつらっている隙はありません。
一旦失った信頼を取り戻すのは気が遠くなるほど大変な作業です。
関係各人、それぞれの立場で頑張るしかありません。
寺本名保美
(2012.03.02)
50で3年、5兆で150年、2千で?
2008年に米国で5兆円にのぼるポンジースキーム詐欺で逮捕された、バーナードマドフは「全資産凍結」の上、2009年に「懲役150年」の実刑となりました。
粉飾決算で金商法の虚偽記載で逮捕されたエフオーアイ元社長へ昨日出た判決は懲役3年でした。ちなみにこちらの被害総額は50億円程度だそうです。
5兆円だから150年で、50億円だから3年、ということではなく、日本と米国との間での金融犯罪における処罰の重さが、根本的に異なるのだと思います。
だから・・・いえ、たんなるつぶやきです。
寺本名保美
(2012.03.01)