単なる道具としての車
日産の電気自動車の記事を見て、街中の全ての車が最高時速80キロの電気自動車になったら、経済活動にとってはプラスなのか、マイナスなのかと、考えてしまいました。
面白くない、といわれればそれまでなのですが、このところの若者の車離れを見ていると、車というものに嗜好性を求めて購入する時代はすでに終わっているようにも思えるのです。
「僕の夢は40歳代でBMにのって50代でポルシェに乗ること」、と言っていた人が居ましたが、今の若い子にとってその会話は首を傾げるばかりかもしれません。
車というものが、街の主役ではなく、単なる一機能となることを想定した、街つくり、車作りをしていかないと、日本をけん引してきた一大産業がどこかで行き詰るのではないかと、感じています。
寺本名保美
(2011.09.30)
せめて国ぐらい、投資するなら国内資産にしましょうよ
「前原氏は外貨準備を利用するのではなく、円を売って外国資産を購入する政府系ファンドを円高是正のために活用する必要があるとの見解を示した。(WSJ日本版)」
外貨準備を利用しない政府系ファンドと言われても、お金はどこにあるのでしょう?
外国資産を購入すると言われても何を買うのでしょう?
中国の真似をしたいなら、JTや郵政などの国有企業株を市中売却して、フランスの銀行でも買いますか?
民間企業の真似をしたいなら、アジアの工場用地に投資をして国内企業を誘致しますか?
ヘッジファンドの真似をするなら、、、とりあえず今は現金です。
今のこの時代、企業と一緒になって、国が外に投資してどうします。
寺本名保美
(2011.09.29)
運用のできない投資信託、経営のできない投資顧問
最近、日本の伝統的な投資顧問会社や信託銀行から、外部提携先商品を紹介される頻度が高まっています。
少し前までは、信託銀行等が外国株式など自社運用スキルの不足する資産クラスについて、提携先を探してくる傾向がありましたが、最近は資産クラス問わず、下手な鉄砲のようなラインアップに走っているとことも見受けられます。
日本に進出している海外の投資顧問会社をみていると、買収したり資本提携をした傘下の運用会社をラインアップしているケースは多々ありますが、資本関係もないいわば競合他社の製品を品揃えと称して提供しているのは、日本の運用機関独特のカルチャーかもしれません。
もう5年以上前、ある雑誌に「運用のできない投資信託、経営のできない投資顧問」という題名で寄稿したことがありましたが、そのころから状況は改善していません。
このままでは運用もできない投資顧問になってしまいそうです。
寺本名保美
(2011.09.28)
個人の行列
東京工業品取引所での「金先物価格」が急落しました。ピーク時に4800円近辺までいった価格は3800円台になっています。
ちょうど、金価格がピークを付けた8月末頃、炎天下の銀座の貴金属店の前に、金を売るために並んでいる長蛇の列を発見しました。
一方で、街の小さなジュエリーショップにさえ、「金買取ります」の看板が掲げられるようになったのもこの頃です。
当時、世界中で金の売り方に回っているのは、日本の個人ぐらいだと、揶揄していた評論家もいましたが、今のところは38度の猛暑に負ゲズ金を売った人の笑顔と、買取ブームに便乗したジュエリーショップの泣顔が、目に浮かびます。
20年前、日本の最後の高金利局面で、郵貯の定額預金や利付金融債に行列を作った日本の個人。意外に良いセンスしているのですよ…
寺本名保美
(2011.09.27)
パニックになる必要はありません
欧州危機が、一般的な市場認識より深刻であると弊社では主張し続けてきました。
だからといって、2008年9月の「リーマン破綻後の半年」に備えなければいけないとまでは、現段階では思っていません。
2007年から2008年の8月までのサブプライムショックと、リーマン破綻後に金融決済機能が一時的に完全停止したリーマンショックとは、別物です。
現段階の危機を「サブプライム以上、リーマン以下」として、ある日突然グローバルな決済機能をもつ金融機関をデフォルトさせるような荒療治さえしなければ、危機は長引くものの経済は崩壊しません。
リーマンショックまでのヘッジファンドが、苦しみながらも、大きな損失は出さなかったように、今のヘッジファンドもどうにか生きながらえていることからも判るように、金融市場は今のところ必要最低限の流動性は維持されています。
まだパニックになるのは早すぎます。
寺本名保美
(2011.09.26)
他にやりようはない。
FOMCの結果は予想されたツイストオペのみ。期待されたQE3はなし。
米国の金利は低下し株価も低下。ドル円も低下で日本にとっては、良いことなし…
ツイストオペというのは、FEDがすでに保有している短期債を売却し、その資金で長期債を買うことで、長期金利を低下させようとするオペレーションです。
要するに量的緩和を伴わない、金融緩和、という「高度なオペレーション」は、株式市場にとっては単に中途半端な政策と映ったのかもしれません。
米国議会の捻れを受けて、FEDに対する雑音も日増しに強まっています。
米国の財政赤字と格下げ問題の火種は燻っていて、米国国債の需給は安定しているとは言えません。
金融システムは欧州次第で見通しは極めて悪い。
いわば三重苦も四重苦も抱えるバーナンキ議長にとって、今回のFOMCはこんなものではないかと、私は思います。
バーナンキ議長の苦悩はそのまま金融市場の苦悩です。
当面気の重い日々が続きます。
寺本名保美
(2011.09.22)
天も地も高ボラティリティ
東京にも台風が近づいています。
朝の通勤時間に、大量の中学生に遭遇し、台風なのに遠足?と思ったら、休校による下校でした。
このビルの他のテナントさんは早帰りですよ、とビル会社に言われたので、弊社も本日は早めの終業とさせていただきます。
それにしても、災害が多い。
イタリア・ポルトガル地方は、季節外れの降雪だそうです。
それはそうと、今日明日は、天下分け目のFOMC。
期待感が高い分だけ、反動が怖い気もしますが。
寺本名保美
(2011.09.21)
疑心暗鬼
EUに対し不良債権買取り機構の設立を進言しに行った、米国のガイトナー氏に、あなたに言われる筋合いはない、と言ってしまう、欧州のプライド。
その妙なプライドが、地域連合通貨という壮大な実験を現実化させる原動力でもあり、行き詰まりを打開できない根源でもあります。
とは言っても、今の欧州問題にとっての不良債権とは、加盟国そのものです。国の主権は名義移転できません。日本や米国の時のように不動産や特定の証券を買い取るのとは訳が違います。
壮大な実験の結末のシナリオが、誰にも描ききれていないように見えることが、更なる市場の疑心暗鬼をうんでいます。
寺本名保美
(2011.09.20)
虚しいデジャブ
UBSの巨額損失と各国中銀による緊急の流動性供給。
これをデジャブというには、同じ金融市場に置く身とすればあまりにも情けなく虚しい。
唯一学習効果が働いている中央銀行の対応の素早さが、市場心理のセーフティネットになっています。
前回の金融危機で米国からインベストメントバンクが消滅しました。
今度は欧州からユニバーサルバンクという概念がなくなるのでしょうか…
政府中銀の規制強化を嘆く前に、彼らからのセーフティネットに頼らなくて済むような節度というものを持てないものか、この業界。
寺本名保美
(2011.09.16)
デカップリング、後、カップリング
市場環境の先行きに不透明感が強まると、必ず「デカップリング」という単語が、市場を飛び交うようになります。
先進国と新興国、資源国と非資源国、金融資産と非金融資産。
今であれば、先進国国債と新興国国債。
市場に大きな軋みが発生した時、その軋みが市場全体に伝播するのに掛かる時間がデカップリングを発生させています。
言い換えるなら、単なるタイムラグの問題であって、市場そのものが分断されているわけではないということです。
従って、軋みが非常に大きくなったり、長く続くような局面では、デカップリングはいつの間にかカップリングしていきます。
今の金融市場の軋みは一時的なものではありません。今安全そうに見える市場がいつまでも安全であるとは限りません。
垣根のないグローバル経済というのはそういうものです。
寺本名保美
(2011.09.15)
やっかいなMMF
フランスの商業銀行の資金調達不安のきっかけとなったのは米国のMMFの動向のようです。
米国のMMFは運用残高が約2.5兆$にのぼる巨大な短期運用商品です。
前回米国の格下げ問題の際にもふれましたが、米国の規制上MMFは短期格付けで最上級の物しか原則としては購入できません。
従って欧州危機が高まる中で、この最上級の格付けを失う可能性のある欧州銀行の発行する短期証券やデポジットから、MMFは資金の引上げを行なっていると見られています。
昨日、フランスの大手銀行は、全ての米国MMFからの資金が引き上げられたとしても、$調達には支障がないということを強調し、信用不安を沈静化させました。
2008年の金融危機のきっかけを作ったのも、MMFであったことを思い出すにつれ、「格付けに縛られた」「元本を割ってはいけない」「何時でも解約可能」なMMFという商品構造そのものが、金融システムの安定化には障害となっているように思えてなりません。
寺本名保美
(2011.09.14)
地合い
昨晩、フランスにとっては「間が悪い」という言葉を絵に書いたような展開に、会社でモニターを見ながら冷っとしました。
フランスの核施設での爆発事故は、結果的に大きな問題にはなりそうもないとのことで一安心ではありますが、ギリシャ債務問題に揺れるフランス金融市場にとって、最悪のタイミングであったことは間違いありません。
相場の言葉に「地合い」という表現があります。
今風に言えば「投資家心理」に近い言葉でしょうか。
一瞬フランス株式を5%以上も下落をさせた後、「中国資本」による大量の欧州債券買いの噂で若干改善したものの、「地合い」の悪さを消し去ることはできません。
やはり今週は要注意な1週間になりそうです。
寺本名保美
(2011.09.13)
撃鉄
昨年ギリシャ問題が勃発し、ユーロ危機が初めて認識された時から、危機への引金は、ドイツの忍耐力にあると思っていました。
そういう意味では、この1年半、ドイツは想像以上に忍耐強く、望んでもいないであろう「欧州の父」としての役割をよく果たしてきたように見えます。
このドイツの忍耐力と体力とが、むしろ問題解決のスピードを遅くし、結果として状況の悪化に寄与してしまったとも言えるかもしれません。
ここにきて、ECBの専務理事というポストを投げうち、ギリシャの選択的デフォルトに言及するにいたり、ドイツの持つ撃鉄がいよいよ引き上げられたとみるべきでしょう。
今週の15日で、リーマンショックから3年が過ぎます。何事も起きないことを祈ります。
寺本名保美
(2011.09.12)
けんかをやめて♪~
オバマ大統領による雇用対策が発表されましたが、やや国民向けのパフォーマンスに終わってしまったような気がして、感触はよくありません。
今回の演説で一番言いたかったことは、「危機的な雇用状況に直面しているのだから、けんかはやめよう」という一点で、言い換えれば今の雇用悪化の責任の一端が「議会の喧嘩」にあるということを改めて強調しただけとも受け取れます。
人を雇うと約賃金の6%を支払わなければならない税金を半額に下げたからと言って、仕事が増えるわけではありません。
雇用を維持することが目的であれば、こうした政策も効果があるでしょうが、雇用を創出しなければいけない米国にとって、意味のある雇用対策になるのか、私にはよくわかりません。
これから来年の大統領選挙に向けて、こうした実効性の伴わないリップサービス的な政治イベントが続きそうです。
そんなことをしている内に本当に景気が底割れし始めなければよいのですが。
寺本名保美
(2011.09.09)
なにもかにも暗証番号
免許の更新に行ってきました。
免許証がICチップ内蔵になり、それにともなって暗証番号を2つ設定しなければいけなくなりました。
暗証番号2つというのは、高齢者はもちろんのこと、我々にとっても大変な難業です。
従って、決めた暗証番号はご丁寧に、プリントアウトされて持ち帰れるようになっています。
4桁の暗証番号を10個もそらで覚えられる人間などいないので、どうしても暗証番号は各種共通になりがちです。
ですから基本的に、暗証番号がプリントアウトされた書類をむき出しで取り扱う業者がいると、、、某通信会社のように、、、契約止めようか、と思う方なのですが、それが警察署では付き合わない訳にもいきません。
警察が犯罪の種をバラマイテどうします。
寺本名保美
(2011.09.08)
イライラにはカルシウム!?
6月以降一方的にフランが買われ、自国株式が独歩安にみまわれていたスイスが、よく怒らないものだと感心していたら、8月から頭に湯気が立ち上りはじめ、とうとう怒り大爆発となりました。
スイス人怒らせると恐い…
捨て金であれば誰か拾うかもしれませんが、熔解炉にお金をくべているようなギリシャ支援にドイツがとうとうNoと言いそうな気配が出てきています。
そんなドイツに、最後まで面倒をみないのはワガママだ、と言わんばかりの発言が周辺国から出始め、ドイツが強硬に反対している欧州統一債についての基本構想を秋には発表するとEU首脳が言ってみたり。
各国の政策が冷静さを失って、発言にも場当たり的なものが増えているのは、金融市場にとって非常に大きな災いです。
皆さんカルシウムでも飲んで少し頭を冷やしませんか?
寺本名保美
(2011.09.07)
情報力
学生面接をしていて、「資産運用業に必要な資質はなんですが?」と聞かれると「想像力です」と答えます。
「風が吹くと桶屋が儲かる」仕組みを想像することが重要だと説明します。
どこでどのぐらいの風が吹いているという事実を確認するのが「情報力」であるとするなら、その風がどのような玉突きを招いて、最終的にどの桶屋が儲かるのかを理解するのは「想像力」です。
風が吹いているという事実を知っているということだけでは、その情報には何の付加価値も存在しません。
資産運用「業」、金融「業」は、情報に付加価値を付けることで報酬をもらう産業です。
情報「量」はお金で買えます。情報「力」はお金で買えません。
「量」を「力」に変えることができるのは、「想像力」だけです。
寺本名保美
(2011.09.06)
雇用の維持、雇用の創出
何度も書いていますが、円高問題は雇用問題です。
単純に円高が企業利益の問題だけであるなら、円高を利用したビジネスモデル、という発想も成り立ちますが、雇用数の確保、とう観点から見た場合円高の悪影響を否定する論拠が見当たりません。
たっだら、金利を下げたり、介入をしたりと、市場野水準を動かすことに無駄なお金と労力を使わないで、円高による雇用の減少を抑制するような具体的な税制や補助金の中長期的な設定を考えた方がよほど現実的だと思うのですが、どういうわけか議論はそちらの方にはいきません。
米国では9月末に向けオバマ大統領が具体的な雇用対策を発表する予定になっています。一から雇用を作らなければいけない米国に比べれば、少なくても今の雇用数を維持する政策を打つだけでも効果がある日本政府の方がよほど、簡単なように見えるのですが。
寺本名保美
(2011.09.05)
無視と無知
英国の株式ヘッジファンドが、株式に強気の見通しを変えずに今年度大きな損失を出した、とのニュースが流れています。
企業業績は良好であり株式市場についての見通しに変化はない、とファンドは言っていると、コメントがついていました。
このコメント、この数ヶ月株式のファンドマネージャーや、信託などの資産配分担当者が念仏のように唱えている言葉と同じです。
いくら企業業績が好調であっても、キャッシュフローが潤沢であっても、現実に株価は1割も2割も下落してしまった以上、「強気の見通しを変えない」という言葉はなんの意味も持ちません。
マクロを無視しているのか、マクロに無知なのか、どちらなのでしょう?
寺本名保美
(2011.09.02)
ウェルカム!外資系ホテル
外資系高級ホテルの日本進出が増加中。
外資系量販店の代表格だったテスコが日本撤回検討中。
今の日本の方向性としては、正しいような気がします。
牛乳をガロン単位で売るような量販店の撤退は二件目でしょうか。やはり今の日本の家族環境において、この種のビジネスモデルの定着は難しそうです。
一方、海外観光客の受け皿としての外資系ホテルの進出はとても良いニュースです。日本の観光ビジネスにおいての弱点の一つとされている高級ホテルサービスがこれで大きく飛躍できるかもしれません。あの国のあのホテルに泊まることを目的に旅行プランをたてる、というのは海外では珍しいことではありません。外資系のノウハウや知名度に日本の接客が上手く融合すれば、日本の観光業にとって非常に大きな戦力となるでしょう。
雇用の受け皿にもなりますし、こういう日本進出なら大歓迎です。
寺本名保美
(2011.09.01)