ガイダンスがでない
1-3月の国内株式アクティブファンドの結果は、各ファンドとも想像よりは平準化されています。
但し、パフォーマンス寄与の大部分が、3月11日以降の価格変動で説明できるため、各ファンドの実力という意味ではこの1-3月の結果はあまり参考になりません。
問題はこれから半年のアクティブファンドです。
四半期報告会で既に運用機関から説明が出ているように、今回の企業決算では企業による業績見込み(業績ガイダンス)を発表しない企業が多く出てきそうです。
また、例えガイダンスを出したとしても、その数値の信頼性については従来に比べ極めて低いものになる、というのがアナリストの人達の共通認識です。
特に、企業からの公開情報への依存度の高いクオンツ運用においては、ある種の異常事態下での運用となります。
運用の確度が落ちる中で、収益の質をどう維持していくのか。
リスク管理を含め、クオンツ運用者の実力が試される半年となるでしょう。
寺本名保美
(2011.04.28)
格付けを甘くみると…
先程、S&Pが日本の「格付け見通し」を引き下げました。まだ格下げではありません。
日本の財政状況について、世界が、特に金融市場がどう見ているのか、ということに対しそろそろもう少し敏感になった方がよいかもしれません。
事の善悪は別として(私は悪だと思いますが)、格付け機関が市場に及ぼす影響力は、サブプライムショックがあったにも関わらず増すばかりです。
特にソブリン格付けに関しては、格付け機関が起こすアクションに対しての市場の過剰反応が、再び格付けに影響を与えて、最終的に国を追い詰めていくパターンが増えています。
こうした格付けスパイラルが始まってしまうと、一政府のいうことなどに誰も耳を貸さなくなります。
これは、欧州危機以降顕著に現れた現象で、前回格付げ騒動の起きた2003年とはかなり様相がことなります。
財政問題より先に考えなけれはならないことが山ほどあるのは解るのですが、格付け問題をあまり甘く見るのはとても危険です。
寺本名保美
(2011.04.27)
予測は無意味か
ことの大きさは全く異なりますし、同じ範疇に入れてはいけないといわれるかもしれませんが、地震などの天災の予測、その被害程度の予想、それに対する事前のリスク管理というものへの批判が、リーマンショック前後に金融市場で起きた各種の批判にオーバーラップします。
発生確率や、発生可能性の頻度を分析することは出来ていても、それが何時起きるかという時間軸をあてることは不可能に近いです。
2000年初頭から東北地方での大規模地震は予想されていた、と言われても、それから10年以上の月日にどう対処すればよかったのか。
複合する震源が同時多発する可能性と、その結果としての実際に起きた現象が想定の何十倍にもなることを、事前に想定していたとして、実際に何ができたのか。
規模も時間も当てられないなら、予想や予測など無意味なものなのか。
最大被害を常に想定した日常というものが現実的なことなのか。
おきてしまったことの内、どこまでが仕方のなかったことで、どこまでがもっとどうにかできたことだったのか。
リーマンショックから2年以上、日々考え続け、結論の出ない命題がここにはあります。
寺本名保美
(2011.04.26)
電気貯めたいよね
週末、髪を切りにいって、美容師さんと節電談義。
「電気貯めたいよね」「電気貯められたら、もっと節電する気になるよね」「夜中に家に帰って節電しても意味ないと思うと空しいよね」
という意見集約?を行いました。
トヨタがハイブリッド車の発電や蓄電機能を、今回改めて再認識したと言っています。ハイブリッド車に家庭用コンセントから充電するだけでなく、家電用電源としてのコンセントを装備する、という話です。いわゆるスマートグリッドの始めの一歩という感じでしょうか。
発明は必要の母。
電力会社に気を使ってなかなか前進しなかったとも言われている「蓄電」という概念。ここから数年の産業革新の中心になるかもしれません。
寺本名保美
(2011.04.25)
BUY JAPAN
宮城の被災地で農機具販売をしていた親戚のプログに、新規受注の話や種蒔きの話とかが出てくるようになりました。
それこそ風評で、この地域での米作りは当面再開されないのではないかと勝手に思っていたことが申し訳なく、また、ちゃんと前を向いている姿に安堵しています。
原発問題は後を引きますが、それでも日本は大丈夫なのではないかと思っています。
上手くいけば、今年後半は日本株が独歩高、という局面もありえなくはありません。
そうなった時、日本の株や資産を保有しているのが、海外投資家ばかりということにならないように。
あらためて「Buy Japan」
寺本名保美
(2011.04.22)
いっそう、ノスタルジックに
大口電力の25%削減問題が、これから半年の日本経済に与えるインパクトを考えるあたっては、やはり1973年から1974年に掛けてのオイルショックが参考になるのかもしれません。
ただし問題は、当時と現代を比較すると、鉱工業生産に対する大口電力使用量の決定係数が明らかに異なる点で、当たり前ですが現代の方が鉱工業生産一単位に対する電力消費量は圧倒的に大きいわけです。
金融市場だけで見ても、1973年の取引所は人間と電話さえあれば株式も債券も取引が成り立ったのに対し、今は電気が止れば全てがストップです。
ディーリングルームを関東圏から移設させろとか、取引所や銀行を週休3日にするとか、どこまで実現可能なのかよく見えない案が飛び交っています。
取引所に「場立ちさん」とか「場電さん」復活というのも、なかなか味なものではありますが。
寺本名保美
(2011.04.21)
年金資産の流用
復興財源としての年金特別会計。
追加で借金をする、つまりは復興国債を発行するぐらいなら、ある資金を流用すればいいという発想は、ある意味とても判り易いものであることは認めます。
但し、年金積立基金の目標利回りは、年間4.2%であり、国庫負担二分1予定分の2兆5千億を1年間運用に回さないとするならば、年間で約1千億円の逸失利益が発生する計算になります。何年後に税金から補填するのかは判りませんが、この1千億円の逸失利益は複利で増幅することも忘れてはいけません。
もちろん、今の年金積立基金の予想期待収益率は1.5%弱しかなく、今年度は若干のマイナス利回りとなる見込みなので、それなら国債を発行するよりコストは安い、といわれれば、それまでなのですが…
年金資産を流用するのであれば、過去の財政投融資のように、最低でも国債金利ぐらいの付利を条件とするぐらいの議論は必要なのではないかと思っています。
寺本名保美
(2011.04.20)
複雑怪奇な欧州債務問題
米国のクレジットウォッチについては、そもそもAAAだったことに若干の疑問がある中、市場がここまで反応したことの方にむしろ驚きました。
それはそうとして、ギリシャの債務再編の議論は難しいです。
判断が難しいのではなくて、問題の仕組や争点を理解することそのものが難しい。
サブプライム問題の時も、次々と変化する事象を追っかけていくことは困難ではありましたが、本質的には今回のソブリン危機を追いかけることは、理解するのを諦めたくなるほど判らないです。
今の問題は、IMFと欧州各国がギリシャ等に与えた債務削減のための期限である「2013年」を待たずに、ギリシャが自主的に「債務の削減や再編」を、ギリシャ国債を保有している公的機関や民間企業(銀行を含む)に要請をする可能性が高まっている、ということと理解しているのですが、それが明日起きる現実のこととして認識されているのか、今後数年で起きる可能性の高まりのこととして認識されているのか良くわかりません。
というかいたって素朴に、助けるんじゃなかったの?という話ではあるのですが…
すみません。諦めずに少し勉強してみます。
寺本名保美
(2011.04.19)
同じ轍
中国が再び利上げをしました。
金融引き締めの効果がでるのは、半年から一年後。
効果が出るまでのタイムラグは当局と市場の我慢比べ。
この当局がこの期間に耐えられないで、引き締めを加速すると、後に待つのは突然のリセッション。
90年初頭の日本も、そしてサブプライム前夜のアメリカも、わかっていながら踏んだ轍。
賢い中国は踏まない?
寺本名保美
(2011.04.18)
不可思議な生き物
菅さんが震災時の首相として適任かと言われればNOであると思うし、今の官邸や政府への満足度が高いかといえば、?かもしれません。
やり場のない困難や不安や怒りの持って行き場として、首相や政府に矛先が向かうのは致し方がなく、叩かれながらもやるべきことをやり、叩かれることを恐れずに日々決断を繰り返していくしかないとも思います。
だからといって、今ここで声高に政権批判を展開する民主党の政治家や、内閣不信任案を思案する野党政治家の言動は私には全く理解できません。
今ここで官邸機能に空白が生じることも、ましてや選挙をすることも、笑ってしまうぐらいあり得ません。
政治家という生き物が私には本当に理解できない存在だということを改めて認識しています。
寺本名保美
(2011.04.15)
ふぅー
最近、運用会社のファンドマネージャーさんと、じっくり話をする機会が続いています。
プレゼンとかパフォーマンスレビューを聞く、という本題を外れて、話をする、というか、こちらの思いをトコトン伝えようと試みると、先方も少し心を開いて本音を話してくれたりします。
我々評価会社が本来すべき運用機関との対話というのは、本来こういうものであるべきだったのではないかと、少し反省です。
気力も体力も数倍必要なので、一日一回が限度ですが…
寺本名保美
(2011.04.14)
売れば買うから…
最近大手スーパーで、関東以西産のバカ高い野菜しか置いていないことに、ひどく不満です。
ニュースで関東圏の野菜が風評被害で半値以下、と言っているのですが、スーパーとかで仕入れてくれないと買いたくても買えません。
関東野菜フェアとかで、無料配布するイベントに長蛇の列ができるなら、スーパーで仕入れても安ければ売れると思うのですが…
消費者の気持ちとかやらを勝手に邪推しないで、それこそ損を覚悟で思い切って仕入れてみる太っ腹な量販店はないものでしょうか。
まさか、風評被害に乗じた便乗値上げなんてことはないですよね。
寺本名保美
(2011.04.13)
時の経過
朝、目が醒めると同時にテレビをつける習慣ができたのは、2001年の米国多発テロ以降です。
寝ている間に何も起きていないことを確かめるような生活は、その後10年間多少の間断はありながらも一貫して継続しています。
ある意味、世界の金融経済は、この10年間常に「予想外の展開」に翻弄されてきたということを、朝の目覚めが身を持って実感させてくれます。
それでも、終わりが見えないと感じていた、テロへの緊張も金融危機への緊張も、完全に解決したわけではないにしろ、半年一年と経つにつれ、徐々に徐々に薄れていきました。
今はまだ先の全く見えない日本の厳しい現実も、きっと少しずつ緩んでいくことでしょう。
東京の桜は今が満開。心の洗濯には何よりの特効薬です。
寺本名保美
(2011.04.12)
深い守り
民主党が負けたことだけが明らかでも、誰が勝ったのかよくわからない、という、前回の参議院選挙と同じ構図で終った統一地方選。
どんな時でもノリの良い大阪だけは動きがあったものの、あとは民主と無所属とが入り繰っただけで現状維持という感じでしょうか。
東京は、新銀行東京の経営責任も、築地市場の移転も、各種失言も、すべて吹っ飛んでの石原さんの四選。
石原さんに文句は沢山あるけれど、有事の安心感という意味では抜群で、この点においては、菅さんはそれこそ「完敗」です。
日本全体が深い深い守りに入ってしまった現状を、よく表した選挙だったのかもしれません。
寺本名保美
(2011.04.11)
潜在的な恐怖指数
市場参加者のリスク回避度を測る指標としてヘッジファンドなどが注目しているものに、「安い値段で売る権利の割高さ-Putskew」というものがあります。
例えば、S&P500が現状1300PTの時に1100PTで売る権利を買う値段の割高さ、という意味です。
この権利が意味を持つのは、S&P500が1100PT近くまで急落した時ですから、この権利の値段が上がるということは、市場参加者の「潜在的な恐怖心の上昇」を表しているということになります。
一般的に恐怖指数と呼ばれる「VIX」が、市場の現実の変動に対し反応する短期的な心理を表すのに対し、この「Putskew」は将来への潜在的心理を表すと見られます。
米国では2月後半の中東情勢の悪化と、3月中旬の震災とリビア情勢とで、skew・vix共に上昇傾向にありましたが、足元でvixは下がったものの、skewは高止まりしたままです。
目先は足元の好材料に反応している米国株式ですが、投資家の潜在心理はそれほど楽観的ではない、ということなのかもしれません。
寺本名保美
(2011.04.08)
東電とインフラファンド
東京電力の国有化の話ですが、加害者としての責任論としての国有化や、今回の原発事故や計画停電に絡む全ての補償を東電一社がまかなうと仮定しての破綻の議論には、かなり抵抗があります。
一方で、今回の事故は「インフラ事業」が民間企業であるべきか、公的企業であるべきか、という議論をやり直すには、よいきっかけになるのではないかとも思っています。
インフラ事業は、企業形態が民営であろうが国営であろうが、受益者には選択余地が限りなくない事業です。
選択余地がない以上、企業として赤字であろうが黒字であろうが、存続してもらわなければならない事業です。
また選択の余地がない以上、事業利益は受益者に等しく還元するべきで、損失は受益者が等しく負担するべきであるとするならば、民間の株式会社である必然性は限りなくない、ということにもなります。
この数年インフラ事業をファンド化し、民営化する動きが世界的にも高まっています。インフラ事業がファンド化すること、インフラ企業が上場することの意味を、もう一度考えなおす必要があるような気がしています。
寺本名保美
(2011.04.07)
円安解禁?
ドル円が85円台と聞くと、随分円安になったような気がしますが、間違いなく気のせいです。
復興資材の海外調達コストがあがると経済相が懸念しているとの記事もありましたが、そんなことは100円近くになってから考えればよいことです。
今回の震災が日本の中長期の経済にプラスの影響をすることがあるとするなら、景気対策としての「通貨安誘導」に日本が参加しても、もう怒られることはないだろう、ということでしょうか。
日本のゼロ金利の時間軸の延長は間違いなく、急激な円高のリスクは協調介入で封じ込められ、財政赤字拡大での格下げというイベントも見え隠れする中、いわゆる円キャリートレードが復活する素地は整っています。
とはいうものの、米国の予算執行にも、欧州の財政問題にも、大きな地雷があるのも事実で、突発的な円高リスクがなくなったわけではないのですが。
寺本名保美
(2011.04.06)
サスペンス劇場のほうがまし
震災以来、テレビをあまり見なくなりました。
特に、朝晩の報道娯楽番組は、本当に見なくなりました。
国民のために、とか、国民が必要としている情報が、とか、国民国民と連呼されることに、辟易としてきました。
「政治家 対 国民」、「官僚 対 民間」、という二元論の構図は、平時には面白く、一種のガス抜き効果もあるかもしれませんが、危機管理時においては、無用な軋轢と誤解を招き、不満を増幅させるだけです。
まだ、サスペンス劇場でも流していてくれた方が、精神衛生上よっぽど役に立ちそうな気がします。
寺本名保美
(2011.04.05)
シンプルな生活
この半月の各種省エネ。例えばエレベーター対応のある駅でのエスカレーターの停止や、危なくない程度の消燈、ネオンの減少や、自家用車の使用頻度の低下。早朝出勤に早帰り。
慣れてくると、ほとんど違和感がなくなってくるもので、始めからなくてもよかったのではないかと思えるものも出てきます。長距離歩くのももう怖くないし…
こういう生活を半年とかすると、きっと生活がかなりシンプルになっていくのではないかと感じています。
基本的に「自粛」には大反対ですが、無駄を省くことはよいことです。
少し気温は低いですが、東京はとてもよいお天気です。宴会をすると知事に怒られるらしいので、二駅歩いてお花見通勤というのもよいかもしれません。
寺本名保美
(2011.04.04)
笑顔でスタート
気分も新たに、新年度の始まりです。
今日から弊社4人目の新卒君が登場です。
弊社が初めて新卒採用をしたのが2008年4月、ベアスターンズの実質破綻から始まった運命の一年の始まりの時でした。
あれから既に丸3年が経過したということです。市場や経済の緩慢な回復からみれば「もう3年も経ったのか」という感覚がある一方で、過去3人の新卒組の確実な成長に、それなりの時間の経過を実感したりもします。
景気や市場への不安に下を向きがちな一般社会人の中で、新しい出会いに高揚する新入社員の笑顔は、どこの企業においても大きな救いになるでしょう。どうぞ遠慮せず、前を向いて笑顔で、新生活をスタートさせてください。全ての新人さんに幸あれ。
寺本名保美
(2011.04.01)