2011年02月の思いつき


焦らない、煽られない

日本の今を話す時、インドや中国の活気や勢いを引き合いに出すのは無意味です。

GDPが人口差が10倍近くある中国に抜かれたことに動揺するのも無意味です。

日本は新興国ではないし、戦後復興は遥か昔に終わっています。


国中が工事現場で、ベンチャー企業が有象無象している昭和中期には戻りようもなく、人々の熱気や意欲を当時や今の新興国の人々と比較するのは単なる郷愁でしかありません。
私達が見なければいけないのは、日本より早く成熟期入りした国々の成功例であり失敗例であり、そうした国々の人々の心の持ち様です。

自分達の成長期が終わってしまったこと、自分達が時代の中心ではもはやなくなったことを一旦認めた上で次の展開を考えなければ先に進めません。

焦らず煽られず、ちゃんと前を向いていきませんか?

(2011.02.28)



CSK(涙+怒)

CSKが実質的に消滅しました。

戦後のソニーなどのベンチャー企業が安定期に入った後に育った我々世代にとって、ベンチャー企業というものの存在を始めて意識させた企業の一つです。
「SE(システムエンジニア)」という当時聞きなれない名前と共に、IBMの向こうを張って一時は互角に戦っていたCSKが、どういう訳か金融ビジネスに舵を切り、最後は証券会社まで買収し、頓挫した姿は、とても無残です。

学生時代、当時ここの子会社だったゲーム機メーカーに就職をしようと思ったこともあり、当時の熱気と活気を思い返すにつれ、残念な気持ちと、「食い物にした」と言われてもしかたのない関りの深かった金融グループへの怒りとがフツフツと沸いてきます。

(2011.02.25)



欧州の利上げ

これまで微妙に均衡していた日米欧の金融政策が、原油価格の高騰で三竦みが崩れかけています。

利上げがしたくてしかたのないドイツを誰も押さえることが出来なくなりそうな気配に、昨晩の海外株式市場は反応しました。

一方で、米国でも欧州でも長期国債利回りはこのところ低下傾向にあります。昨年11月のQE2以降、債券から株式へ流れていた投資資金が少し巻き戻しを始めているようです。

ここで欧州が無理やり金融政策を転換したとしても、長期金利は上がらず、単に株式市場が下落するだけのことであるのなら、ユーロ安の恩恵を放棄してまで利上げをする理由が、今ひとつ見えてきません。

「欧州の勝手な利上げ」が世界を壊す、ことにならないように、どうぞお願いしたものです。

(2011.02.24)



国土の争奪戦

大概の場合において「土地」とは、それを利用する事で何らかの付加価値を生むための「場」に過ぎません。
人々が生活をする場であり、作物を育て収穫をする場であり、事業をし、物を生産する場です。

土地が単なる「場」である限りにおいて、土地はそこに付加価値を与える「人」とのパッケージでしか意味有るものと存在しえないため、国土の保有者が誰であるかということに、大きな意味はありません。

一方で、産油国に代表される「資源国」にとって、土地は財産そのものとなり、人的な付加価値とのパッケージではなく、国土の保有者が誰であるのかということに甚大な意味を持ちます。


今回の民主化運動がチュニジア・エジプトという「持たざる」国から、リビアという「持っている」国に波及したことの意味は、単に原油価格の高騰という次元に収まらない、大きな混乱の火種となってしまったのではないかと感じています。


資源国における民主化運動とは、政権の主体の委譲ではなく、過去から未来に続く国土が産む莫大な財産そのもの争奪戦となりかねません。

厄介です。

(2011.02.23)



政治家という絶滅危惧種

「今の政治家は税金泥棒…by経団連会長」
パチパチパチ♪今年の流行語大賞決定です!

こんな政治のもとでデモ一つ起きないことが、日本の七不思議の一つだと言われていることを、当の政治家は知っているのか知らぬのか?

政治主導…今年の絶滅危惧リスト入り、決定です。

(2011.02.22)



近寄らない

中東発の混乱、そろそろ頭の中で警戒警報が鳴り始めました。

それにしても、今回の件について、運用機関からの情報が極めて少ない。
エマージング特化やエマージングを含むベンチマークを受託した以上、解らないではすまされないわけですが、弊社を含めやはり情報不足であることは否めません。

解らないものには近寄らないという弊社の鉄の掟に鑑みれば、ここは一旦距離を置くべきだということになります。

それにしても昨年来のエマージング債券の大ブーム。初めからおもいっきり距離を置いているので、状況がよく把握できませんが、うまくソフトランディングできるのでしょうか?

(2011.02.21)



安全通貨の地位

中東情勢の緊迫化を受けスイスフランが全面高となり…

というくだりをみて、円ではなくスイスフランだったことに、安堵してよいものかどうか、やや複雑な心境です。

通貨取引はムードや流行があるもので、「円」が安全だと見なされている最中は、多少日本に問題があっても安全通貨としての「円」の役割は揺るぎません。

このところ、円がじり安となっている状況だけを見て、「円」の安全通貨との役割が終わったと結論つけるのはやや性急すぎるとは思いますが、世の中の「円」に対する認識が少し変わりつつある気配には注意しておいたほうがよいかもしれません。

3月政局?予算が通らない?馬鹿言ってるんじゃない!つくづく何もしなくてよいから邪魔だけはしないでくれと、誰か国会に言ってください。

(2011.02.18)



物忘れ

少し前のブルンバーグに、欧米で再び証券化商品が売れ始め、格付けがAAAであればよい、という投資家が増えていることをさし、「人間というのはなんと物忘れの激しいものか…」というコラムがありました。

最近思うのですが、物忘れが激しいということの他に、投資家や運用会社でリーマンショックを経験した担当者の多くが、配置換えまたは退職となり、組織としての経験が継続していないということも、大きな問題なのかもしれません。

ファンドマネージャーを評価するとき、過去に失敗経験のない人ほど、将来リスクが高いと我々は判断します。

組織としてのプロセスの継続性よりもむしろ、人間の経験値としての継続性の方が、よほど重要なのではないかと思っています。

(2011.02.17)



金利アレルギー

人からモノを教わる時は、そのことを判りすぎている人からではなく、ある程度苦労して習得した人から教わる方が理解しやすいものです。

先天的に語学の才能のある人から英語を習っても、全く効果的ではないように、数式を直感的に理解できる人から数学を習っても意味不明なままです。

弊社は金利取引で身を立ててきた人間が多いため、若手も金利が得意になるはずが、現実はそうもいきません。
教えなければならないのですが、身体に既に染み付いてしまった分、何がどうしてわからないかが、判らない、、、という悪循環に陥っています。

社内の金利アレルギー撲滅の処方箋を、そろそろ真剣に考えなければいけなさそうです。

(2011.02.16)



悪貨が良貨を駆逐する

過去に私が見てきた、金融証券会社と資産運用会社との関係において、資産運用会社が金融証券会社が売る商品の一部として組み込まれた瞬間から、資産運用会社の劣化が始まっています。

大きな金融ビジネスの一つの部品として、「上質ではない」ものの「均一」なサービスの「安定的」な提供を負う使命を担うことで、それまで何十年・世紀を超えて維持されてきた「資産運用会社」としてのカルチャーや哲学が脆く崩壊していきます。

これまで数多くの資産運用会社が、金融コングロマリットに組み込まれ、崩壊してきました。この崩壊のプロセスに日本のメガバンクもどうやら加担しようとしているようです。

元々資産運用会社に対し「質」より「量」を求める体質の強い日本の金融機関が、グローバルな資産運用業界に触手を伸ばすことは、業界にとってよいこととは思えません。悪貨が良貨を駆逐する、という言葉がふと頭に浮かんでしまいます。

(2011.02.15)



バラマキ

エジプトが一安心なのかどうか、まだ確信はありませんが、デモの抑えこみのため、とりあえず一家族22万円をばら撒いたバーレーンを見て、日本の子供手当てみたいだ、と思ってしまいました。

バーレーンと日本と次元は違うかもしれませんが、ばら撒けば収まる、というものではなさそうだ、という点では共通点がありそうです。

バラマキ効果は一瞬に過ぎず、むしろ要求水準を引き上げ、政策への満足度を低下させる効果があるということを、民主党の皆さんバーレーンの王様に教えてあげるのがよいのではないでしょうか。

今日は久々の平日バレンタインデー。
チョコではなくて気持ちだけ、皆様に愛をバラ…ではなく降り撒きましょうか?

(2011.02.14)



はい、と言った責任

タクシーに乗って一番困るのは、道が判らないにも関わらず、「はい。判りました!」と言われることです。
自慢ではありませんが、超が付く方向音痴の私としては、判りました!と言われた瞬間に気が緩むので、その後とんでもない道を走られると、絶望的な気分になります。

判らないこともわかった振りをするブラフも場合には必要ですが、言ってしまった以上は結果に責任を持って欲しいとつくづく思います。

タクシーでも、社内でも、四半期報告でも、ですが…

(2011.02.10)



説明のスペシャリスト

この仕事を10年以上していて、最も進歩がないのが、四半期報告会。

進歩というより、むしろ後退しているような印象すらあります。

お客様とのリレーションに責任を持つ営業担当者でもなく、だからといってプロダクトの内容に責任を持つプロダクトスペシャリストでもない、「ただの説明係」という職種が増えてきたあたりから、四半期報告会に緊張感が失われてきたように感じます。

あらゆる商品について、完璧に説明できる、「説明のスペシャリスト」であれば、もちろん歓迎しますが、そういう方にお目にかかれるケースはとても稀です。

顧客への説明に会社として力を入れていないということは、そのプロダクトへの愛着もないということで、そんな愛着のない商品を採用すると、ひどく無責任な結果に遭遇することにもなります。

四半期報告会に緊張感がないような運用機関は、運用結果もそんなものです。

(2011.02.09)



霧散

不動産の証券化投資でのトラブルの素は、元々「不動産」という目に見える「実物資産」であるにも関わらず、投資元本が「ゼロ」と霧散する可能性があるところにあります。

一般的な投資家にとって、株式や債券は企業が倒産すると「ゼロ」になるかもしれない、ということは理解できても、目の前に存在する不動産が消えてなくなることは想像できないのです。
いくら景気が悪くなってテナントが居なくなっても建物は存在し、万が一大地震で建物がなくなっても土地の価値は残る、というのが不動産投資への大方のイメージです。

外部の借り入れ資金を使い、レバレッジを掛けた証券化というスキームにおいて、投資家が保有するのは「不動産から得られる利益」の権利であり、今そこにある不動産そのものの所有権ではないということを、投資家に事前に理解してもらうのは、想像以上に困難です。

「あるはずのものが消えた」という思いは、単に「損をした」という思い以上に「騙された」という思いに繋がります。

実物資産の証券化は、投資家にとっても売り手にとってもリスクの高い資産であるといえそうです。

(2011.02.08)



閉めるな 止めるな

あまりニュースにはなりませんが、コートジボワールという国が先月末、デフォルトをしました。
理由はお金がないからではなく、政権委譲の混乱でオペレーションが止まったからです。

エジプトの株式市場が休場となって、もう10日になります。ここも首相の信認が得られなければ、再開しないつもりなのでしょうか?

今後、あちらこちらで頻発しそうな政権交代の度に、市場が閉鎖されたり、利払いが停止されたりでは、グローバル投資家はたまりません。


史上最大のエマージング投資ブームは、究極の流動性リスクと背中合わせです。

(2011.02.07)



年金のリスク管理とは

先日のセミナーでも申し上げましたが、年金の基金運用にとっての「リスク管理」とは、「年金基金制度」を維持し続けるための管理です。

利回りが想定以下であり続ければ、運用をしている意味がないとみなされるでしょうし、一方で母体会計が耐えられないような単年度損失を続ければ制度の維持は難しくなります。

ある程度の期待リターン水準は維持しつつ、単年度損失を限定させるという、相反する命題を解決するための工夫をするのが年金のリスク管理の本質だと私達は考えています。

ですから、「過去」の損失を解消するために、「将来」の損失管理を無視した結果、単年度損失が膨らみ、制度の存続に疑義がでるような行為が本末転倒であるのはいうまでもありません。

新聞等で報道されている、不動産運用の失敗は、多くの年金運用団体の極々一部で起きている話です。
ほとんどの年金運用団体はこうした「一か八か」の運用とは無縁に淡々と運営されていますし、ここにきてさらにリスク管理を強化する取り組みも目に見えて増加しています。

一部の極端な失敗例が、あたかも基金全体の問題のように報道されることを危惧しつつ、もう二度とこうした事例が出ないよう業界関係者各々が「年金基金のリスク管理」について、考え直して見る必要があるのではないかと感じています。

(2011.02.04)



ストレスシナリオ満載

弊社では、過去の大幅下落となったイベントをストレステストのシナリオとして整理しています。

これからの一年、弊社の用意しているストレスシナリオのほとんど全てが再現される可能性があることに気づいて愕然としました。

米国とドイツの金融政策の不協和音が招いた1988年ブラックマンデー。
中東情勢の緊迫から原油と金利が急騰した1990年湾岸危機。
アジアへの過剰投資が招いた1997年アジア危機。

そして大手金融機関の破綻に伴う2008年金融危機。

どれもこれも今年は全部再現可能です!

但し一番違うのは、これらのシナリオは市場参加者のほとんどが既に認識済みである点です。

事前に予測のつくリスクであるかぎり、市場インパクトは限定されるので、これらのシナリオが大きな市場崩壊に繋がるリスクは過去と比べれば、格段に小さいかもしれません。
過剰な警戒はまだ必要ないとは思いますが、そういう物騒な環境であるという認識は必要です。

(2011.02.03)



とにかく上がるのはいいことです

エジプト問題の沈静化を受け日本株式は急騰。。。。。

何がどのように沈静化したのか、よくわからず。
だったら、月末めがけて売るのは止めて欲しいと思い。

とはいうものの、今の市場はそんなもので、毎日市場の上げ下げのコメントをもっともらしく書かなければいけない記者の方々も大変です。

ところでインテルのチップに不具合が見つかり、PCメーカー各社が出荷を一時停止、との記事。少し気になります。

なんだか今日は頭がぼんやりとして、読んでいること書いていることのどこまでが現実でどこまでが夢なのか、今ひとつ確信がありません。この辺で止めておきましょう…

(2011.02.02)



利食い千人力…

エジプト問題。何か反応しなければいけないかどうか、まだ見極めをつけかねています。
原油の100ドル乗せも、定着するとも限らず、これだけでインフレ議論を煽るのも時期尚早な気もします。
一つはっきりしているのは、今の投資資金の足の早さであり、今回の中東地域株式のように、1日2日で二桁下落、という目にあう可能性は、どの市場にもあるということです。

業績や経済より資金フローがモノをいう、過剰流動性相場においては、数ヶ月かけてコツコツ稼いできた利益を数日で吹っ飛ばす、という覚悟も必要となります。

3月末までのどこかで一旦リスクを落とすことを、少し考えはじめています。

(2011.02.01)


build by phk-imgdiary Ver.1.22