テジャビュ
新興国債券投資の魅力を話す運用会社は幾らでもいますが、新興国債券へのポートフォリオ上の組み入れ意義を説明してくれる会社は今のところ一社もありません。
縮み続ける、新興国債券と米国債券との利回差は、どこが適正水準なのか?という質問に答えてくれる人もいません。
経済力に伴い格付けが上昇しているから大丈夫とか、グローバルに投資資金が流入しているから大丈夫とかいう類いの話しは、サブプライムショック前にクレジット市場で交わされていた会話を彷彿させます。
先進国の金利がなくなり、押し出されるように投資資金が新興国国債に流れ、今新興国事業債券にまで到達しようとしている現状に追随する気にはどうしてもなれません。
流動性という言葉の意味が身に染みた時から、まだわずか2年も経っていないのですが…
(2010.09.30)
税制は税政
税制は税政です。
個人に関わる税は個人の消費や貯蓄行動を誘導し、法人に関わる税は企業の経営方針を誘導します。
税制は、政府が民間の行動を一定の方向に誘導できる最大の手段なのです。
今回議論されている法人税の引き下げが、企業利益のためだけのものであるなら、この財政難のおり下げる必要があるかどうか疑問です。
それが例えば国内での新規設備投資や新規雇用や技術の保護などを、条件にしなければ、それは批判を受けた個人へのバラマキ政策と同じになってしまいます。
国内の景気底上げのために残されたお金も時間もあとわずかです。
日本の将来のためになる「税政」を心底期待しています。
(2010.09.29)
SRI
日本株のSRIインデックスが日本で設定され始めた2003年当初、あるインデックスに「武富士」の名前があり、SRIの基準がよくわからなくなった記憶があります。その後数ヶ月で武富士の社長が逮捕され、そのインデックスから「武富士」は除外されました。
SRIというものを組織図などの外形的な判断基準で行えば、当然こうしたことが起き、主観的な判断をいれればインデックスとしての客観性や再現性はなくなります。
結局、道徳的・宗教的見地から市民権を得ている欧州を除いて、SRI投資が機能しないのは、SRIという概念が道徳や宗教という、一定のカテゴリー内で共有された「主観」に基づいた概念から、「一般化」された概念に進化できずにいる「あいまいな存在」であるからです。
特定の武器開発に寄与している企業群を特定してネガティブスクリーニングを掛けるなどの、判りやすく思い切った投資行動にまで踏み込まない限り、SRIというのは何時までも机上の空論で終るような気がしています。
(2010.09.28)
地政学的リスクを為替
日本にリンクしている「円」という通貨は、「経済」という覇権において、その実力が維持されているものです。
従って、冷戦構造が終わり、世界の覇権が軍事力から経済力にシフトしていくなかにおいて、軍事力ではなく経済力のある国の通貨として「円」が優位になるという傾向が続いていました。
冷戦終了後唯一世界全体が緊張した、2001年の多発テロ後の3年間「円」が弱かったことは、日本の金融危機が重なったからだけではないと思います。
もし今、日本を取り巻く環境が軍事的に緊張していると世界がみなせば、円は今後円安に転換する可能性が高いかもしれません。
逆説的に言えば、相変わらず84円台をウロついている今日の為替市場を見る限り、日本の地政学的リスクの変化を示唆する気配は、金融市場についてはまだないということです。
今日に限っては、円高で少しホットしています。
(2010.09.27)
ヘッジコスト
最近の、株式低ベータ戦略やヘッジ型戦略に対して一言だけ。
ベータを0.5程度でコントロールする運用で、ベータ1に相当する運用報酬が掛かっているということ。
ポートフォリオインシュアランス的なスキームは、結局のところオプションのPUTを買うためのプレミアムを支払っているということ。
ヘッジをすることが悪いとは言いません。
但し、ヘッジをするために掛かっているコストが、本来の投資ポートフォリオの期待リターンに見合っているかどうかの検証は必要です。
国内株式に提供されているこうしたヘッジスキームは、果たして今の株式市場の期待リターンに見合っているものなのか、私は少し疑問に思っています。
(2010.09.24)
ダメなものはダメ
国際的に商品先物市場が活況を呈している中、日本の国内商品先物市場だけは、音も無く消滅しつつあります。
商品ファンドの自主規制団体が解散を決め、東京工業品取引所の出来高は2003年のピークの三分の一以下まで減少しています。
何が起きているのかと業界の人に聞いてみても、「不招請勧誘禁止」による個人投資家の減少が影響していると言うばかり。
不招請勧誘を禁止したら潰れてしまうような業界にはそもそも存在意義がない、というあたりまえの疑問を、この業界はどうして今まで持つことができなかったのか不思議でしかたありません。
幾ら外部環境がよかったとしても、ダメなものはダメ、という典型例のようにも思えます。
(2010.09.22)
国としての統一性
米国で大統領が新しい政権が発足すると、100日間のハネムーンというものがあります。
政権発足後しばらくは、マスコミも野党も政策批判を抑えて、新政権の船出を見守る期間です。
日本にはこのハネムーンがありません。
どんな政権であれ、発足後すぐにマスコミも野党も全面批判を行います。政権が1年持たないから100日も待っていられないのか、100日の猶予すら与えられないから政権が持たないのか、よくわかりません。
為替介入についての評価にしても、もう少し肯定的なものがあってもよいと感じます。批判の矛先がなくなった野党が苦し紛れに批判するのはわかるとしても、マスコミまでが野党に足並みを揃えるかのように介入効果は一時的だの、単独介入は失敗するだのと、他人事のような批判記事を書くことに、どうも納得がいきません。
内憂外患の今ぐらい、もう少し国としての統一性が持てないものなのでしょうか?
(2010.09.21)
下がり続ける金利
世界はインフレに向っているのか、デフレに向っているのか、という質問を受けました。
過去30年以上、基本的にはオイルショック以降、先進国の金利は趨勢的に低下し続け、新興国の金利は1998年のアジア危機以降低下し続けています。
その間、名目物価は確実に上昇し、人口は増加してきたはずですが、金利は下がり続けています。
これがどういうことで、何を意味していることなのかと、最近考えています。
技術や資金フローなど経済活動に関るあらゆる側面での進歩が、まさに「市場を効率化」し、生産活動に必要とされる調達コストを引き下げた結果なのかもしれませんし、経済が成熟化し老齢化する中での潜在成長力の低下が要因なのかもしれません。
市場経済の急激な効率化と、人口の急激な老齢化、という二つの要素を同時に経験した結果としての日本の長期デフレと低金利は、今後の世界経済全体のある種パイロットになっているようにも見えます。
不動産バブルのような局所的なインフレは周期的に到来するにしても、長期的に怖いのはデフレなのではないかと感じています。
(2010.09.17)
沈黙は金
毎日新聞によれば、6年以上ぶりの介入を準備した財務省担当者は、2003年の大規模介入の指揮をとった当時の財務官にノウハウの伝授を受けたそうです。
同様に政治家も、当時の担当閣僚から学べることは学べばよいと思ったのですが、なんと当時の財務大臣は小泉内閣下の谷垣さんでした(笑)
介入は一旦始めると少なくても数ヶ月間は断続的に継続されるものです。これから年内一杯日本の通貨戦略にとっては気が抜けない時期が続きます。
この間政治家にお願いしたいことは、とにかく口を慎むことです。それが官僚であろうがなかろうが、政府関係者は今後一切コメントをするべきではありません。
今回の介入における最大のリスクは、「政治家の口」にあると思っています。変に存在感を示そうなどとは思わないことを祈るばかりです。
(2010.09.16)
政治主導という幻想
「日本以外で二番底の懸念はない-OECD事務局長」と言われてしまいました。
日本の投資家が、米国の二番底や欧州の金融危機を心配しているのとは裏腹に、世界は日本だけを心配してくれているようです。
だったら、日本を助けると思って、協調介入しましょうよ♪
目指せ3桁!どうでしょう?
それはそうと、民主党の総裁選を通しての国民の反応は、本当に「小沢・反小沢」の構図だったのでしょうか?
地方の経営者の方達と話していると、政治主導という幻想への厭世観が非常に強く伝わってきます。
もしかすると今回の選挙は、政治家のリーダーシップというものを、実は国民が望んでいない、ということを意味しているのかもしれない、とも感じます。
永田町が、世界からも日本からもひどくズレて空回りをしているような気がしています。
(2010.09.15)
バリケード
今日は弊社のご近所のホテルで民主党の代表選が行われています。
弊社ビルの前の道でも何故かバリケード封鎖の用意がされるなど、物々しい警戒態勢となっています。
バリケードで封鎖して欲しいのは、道ではなくて、為替なのだが、と思いつつ、83円台前半のドル円チャートを見つめています。
首相が誰になろうと、総裁選後のお仕事はまず「円高対策」です。
万が一、選挙後に政局が始まり、政治家がさっぱり、やっぱり、役に立たないことになろうが、現場にいる財務省や日銀は、やるべきことをやってくれると私は信じています。
政治がダメなら、役人がいるさ…これが日本の生きる道???
(2010.09.14)
パワーポリティックスの世界
夏休み明けです。よく寝ました♪
休み中、ビクビクするようなニュースもなく、ペイオフ発動のシミュレーションとしては適材の振興銀破綻の他は、相変わらずの「エイエイオー!!」の総裁選映像を見ながら、くだらん…と一人ぼやく平和な休暇を満喫していました。
ところで、ソ連崩壊後死語となりつつあった「パワーポリティックス」という言葉を、最近思い出す機会が増えているように思います。
「軍事的もしくは経済的な力の使用もしくは脅迫的使用に基づく国家間の外交」という訳がありますが、特に経済的なパワーバランスが崩れてきている中で、様々なブロック間での摩擦係数が上昇しています。
普通の外交ですら上手いとはいえない我が国が、ギリギリとしたパワーポリティックスの世界で立ち回ることができるのか、正直とてもとても心配です。
今更ですが、経済力は外交力、です。
(2010.09.13)
嵐と共に…
今週、待望の夏休みをいただきます♪
夏休みと共に台風も到来しそうです。
待望の雨、なので、それはそれで良いかと…
市場の嵐で呼び戻されることさえなければ、多少の雨風には目をつぶりましょう。
では、来週月曜日まで、おやすみなさい zzzzzzz
(2010.09.08)
大きな過渡期
本当に予定通りのタイミングで予定通りの政策が発表される米国経済。
意外性はないものの、失望もない、というのは今の市場環境にとっては良いことです。
意外性がないということを、「手詰まり」と評する人達も多くいますが、地味であってもやるべき方向性が見えている国が羨ましく思えてなりません。
ボルカールールを始めとする一連の金融改革で、オバマ政権は金融界と富裕層を敵に回しました。
金融界に頼ることなく、米国に富を生ませるための方法論はまだ見えてきていません。
米国の直面している大きな大きな過渡期を乗り越えることができるのか。中間選挙までのあと2ヶ月、オバマ政権の動向にとても興味があります。
(2010.09.07)
雇用者数の増加
米国の雇用統計で、失業率が悪化したにも関わらず、市場に安心感がでた、一つの理由として、民間部門の雇用者数が2009年の12月を底として今年に入り確実に増え続けていることにあります。
民間部門の雇用者が減り始めたのは、サブプライムショックが深刻化し始めた2007年末です。その後2009年の株式市場の戻り局面でも、一貫して減少を続けたものが、2010年に入り緩やかな回復軌道に戻りつつあります。
もちろん水準そのものは、2002年の不況期をはるかに下回っており、まだまだ安心できるものではありませんが、未だに常勤雇用者指数が最悪期から改善していない日本と比べると、はるかに安定した推移となっています。
この傾向が確認できると、米国の二番底懸念は大分薄らぐと思うのですが、市場の信頼を取り戻すには、まだもう少し時間が掛かりそうです。
(2010.09.06)
食の技術
アルコールには全く興味のない私ですが、日本酒で作ったサイダー「京都サイダー お酒どす」には、ちょっと感動しました。
味わいは、とてもスッキリしたサイダーなのですが、間違いなく「お酒」です。
美味しいことへの感動より、京都の老舗酒蔵の作った「伝統の中の新規性」に、ワクワクしてしまいました。
贔屓にしているテレビ番組「和風総本家」風に言えば「日本っていいなぁ~」ということになるわけですが、こういう食材技術は「和食」というニッチな分野に限らず、もっと世界の中心で勝負できるのではないかと思います。
埋蔵金を探すより、こうした埋蔵技術に世界の陽の目を当てることの方が、よほど大切なのではないかと思うのです。
(2010.09.03)
いまごろ証券化?
「国有財産を証券化すれば200兆円ぐらいの資金は調達できる」と小沢さんが言ったのを聞いて、東京都が新銀行を作る時、石原都知事が「証券化という手法をとれば中小企業金融は簡単にできる」と言ったのを思い出しました。
ご参考までに、664兆円の政府資産の内証券化の対象となりそうなのは、貸付金124兆・公共用財産143兆、ぐらいです。
公共用財産には道路や河川とかも含まれていて、有料道路はインフラファンドに売れても、インカムのない一般道や河川はどうしようもありません。まさか霞ヶ関一体を証券化して、議事堂も省庁もファンドのテナントとなる、などということを考えているのでしょうか。
ちなみに貸付金の124兆ですが、サブプライムショック前であればともあれ、不良債権を証券化しても優良債券にはならないという事実を世の中が知ってしまった今となっては、日本政府の貸付金を証券化して買いたい投資家が世の中にどれほどいるかどうか、かなり疑問ではあります。
そういえば、200兆円の証券化商品を組成すれば、証券会社等には最低でも4兆円程度の手数料が入ります。それこそ真水4兆円の経済効果!但し、日本の証券会社に入るかどうかは微妙ですが…
(2010.09.02)
やっぱり変だ、この市場
世界の投資家に対し、現在の世界の市場環境において、潜在リスクの高い市場はどれかと聞かれたら、「日本の株式市場」という答えが多いかもしれません。
年初来でイタリア株式市場にも負けている日本株式市場で、本当のところ一体何が起きているのでしょう?
過去の値動きを見ている限り、日本株の低迷は民主党政権発足直後の為替政策の誤りがきっかけだったようにも思えますし、昨年後半のメガバンクの増資ラッシュの影響とも見えますが、実際のところはよくわかりません。
中国に抜かれようが、世界第3位の経済大国であることは間違いないわけで、このままでは「日本発の経済不況」などという言葉が、世界市場で囁かれることにもなりかねません。
単に株が安いだけなら良いのですが…
(2010.09.01)