定年のない世界
イギリスが65歳での定年制度を廃止するとのニュースがでています。
企業は原則として年齢を理由とした解雇が禁止され、本人が望むなら雇用を65歳以上でも雇用を継続しなければいけなくなるというものです。
さて、これはイギリス国民にとって哀しむべきことなのか、悦ぶべきことなのか
当然年金支給開始年齢の延長が背景にあるので、もらえるはずの年金が逃げ水のように遠ざかるという点では面白い話ではありません。
ただそういった既得権の議論から一旦離れて見てみると、それ程悪い話ではないのかもしれないと思う人も少なくないのではないでしょうか?
むしろ本人の意思や能力とは無関係に、生まれた日にちだけで人生を強制リセットされてしまうより、よほど人間的なのではないかとも思います。
但しこのシステムが機能するためには、人事体型が年功序列になっていないとか、能力を理由とした雇用の裁量権が企業にもっと認められるといった自由度の高い労働体系が前提となります。
いずれにしても英国でこの議論がどのように進んでいくのかとても興味のあるところです。
(2010.07.30)
デフレという材料
目先の市場の注目材料として、8月10日に米国のFOMCがあります。
ここで再度金融緩和の決定をするための、地ならしが始まっているようにも見えます。
米国の金融当局の意識は、景気の水準という問題よりも、むしろ「デフレ」に向かいつつあるのかもしれません。
彼らが反面教師として研究してきた「バブル崩壊後の日本」では、資産価格の下落⇒金融不安⇒景気後退⇒需要の後退⇒深刻なデフレ というスパイラルを描いてきました。
2008年の金融危機当初から、本当に怖いのは景気後退ではなく、どの後のデフレだという議論は米国で盛んに行われていたものです。
市場最低の長期金利水準に直面している米国債券市場ですが、いよいよ未知の領域に突入していくのかもしれません。
(2010.07.29)
思考停止の四半期報告
バーナンキFRB議長が使った「見通しが異例なほど不確か」という言葉に呼応するかのような四半期報告会が続いています。
「見通しが利かないなら、リスクをとらない。
リスクをとるなら、理由を述べる。」これ、鉄則です。
「見通しが利かず、何をすればいいかわからないから、以前取ったポジションを放置して、戻るのを待ちます」これ、止めてください。
どこもここも思考停止に見えるのは、環境のせいか、暑さのせいか。
運用力の問題か、単なる説明力の問題か。
激動する市場環境に適応するだけのスキルとストックの不足か。
皆さん、もう少し頑張りましょうヨ…
(2010.07.28)
頭だけが夏休み…
夏休みの予定がたちません…
何時休むのか、という予定もたちませんが、
休んで何をするのか、という予定もたちません。
でも、頭の中では、「夏休み」という言葉がキラキラと日々存在感を増すばかり。
このままでは、休みもせず、頭だけが使い物にならない夏休み、という最悪パターンに陥るのも時間の問題。
ダメだ…何とかせねば。
(2010.07.27)
モラトリアム期間の短さ
先週金曜日の欧州ストレステストは、2003年のりそな危機のような展開を予想していた人々にとっては、やや物足りない結果となったかもしれません。
不良債権を小出しにせず、幅広なディスクローズをした上で、公的資金を注入し幕引きを図る、というのが日本の2003年パターンであるとすれば、今回のストレステストは1998年の第一次金融危機から不良債権を小出しにしながら時間稼ぎをしてきた「日本の失われた5年」パターンといえます。
日本の場合は、その5年間で不動産価格の回復を待ったのに対し、欧州の場合は、約束した2年間での財政赤字の半減を待つ、ということになります。
2年といっても、原則として1年単位でしか動かない国家財政である以上、約束実行に残された期間は長くて一年です。
今回のストレステストによって得られた「モラトリアムの賞味期限」が日本の場合と比べ「明確でかつ短い」ことが、恐怖でもあり、一方で救いでもあるのかもしれません。
(2010.07.26)
セミナーお礼
昨日は、酷暑の中、予定された方ほぼ全ての方にご出席いただき、心より御礼申し上げます。
私の話は下記公式が全てです。
(パフォーマンス - フロック損益 - トレンド損益)
= (運用スキル + リスク管理)
これだけではなんだか判らないですよね…
運用スキルを見極めるには、運用スキル自体を探すのではなく、スキル以外の要因を除外してみて、残りがあるかどうかで判断しましょう、という話です。
そろそろ四半期報告会が始まります。この公式を頭の片隅に入れて、運用機関のお話を聞いてみてください。
では、私もこれから四半期報告に行ってきます!
(2010.07.23)
今日はセミナーの日です!
ものすごーく暑い朝です。
皆様頭がボーとしていらっしゃるかもしれませんが、今日は弊社の定例セミナーの日です。
出席のお返事をいただいた皆様、覚えていらっしゃいますか~?
あまりの暑さに忘れた振りをしないでくださいね…
後半戦の私のテーマは、「運用機関のモニタリングのノウハウ教えます、です(笑)」
溶けてしまいそうな頭に併せ、今日は少し柔らかい話をしようと思っています。新任コンサルタントによる「雑話コーナー」もありますのでご期待ください。
では、詳細はまた明日♪
(2010.07.22)
下手な鉄砲
ゴールドマンの決算が80%の減益となり、アップルの決算が80%の増益となる。今の米国を象徴するような、とても判りやすい決算発表です。
脱「金融」入「IT」。という今の米国政府の方向性が、本当に定着するのか、ということについては意見が分かれます。
アップルは一時期の「任天堂」に過ぎないのではないか、という見方もあるでしょう。
それでも、萎縮している国民心理を盛り上げるには、政府が掲げるこうした単純な構図はとても効果的です。
金融危機後、「環境」「鉄道」「IT」と、ある種のプロパガンダが矢継ぎ早に繰り出される米国ですが、下手な鉄砲すら打てない日本よりは、よほどましだと、私は思います。
(2010.07.21)
超虚弱体質
言いたくないし、聞きたくもないでしょうが、今日の午前中の段階で7月の月中リターンがマイナスだったのは、主要国株式市場で「日本」だけです。
超~虚弱体質!
皆が長距離走をしている時ベンチで見学をしているのは、可愛い女の子と相場が決まっていますが、この相場は可愛くもなんともない!!
単に気合が足りないのではないか?!と誰に怒ればいいのやら…
(2010.07.20)
デリバティブ規制と商品先物
米国で金融規制法改正案が上下院とも可決されました。
今回の法案に織り込まれた、デリバティブ取引に関する資本規制や取引所集中義務、そして決済の一元化、という項目については、「CFTC-米国商品先物取引委員会」がSECと共にかねてから主張していた事案です。
更にCFTCは今回の法案とは別に、商品先物取引に金融関連取引と同等のプルーデントマンルールを導入することを提案しています。具体的には商品の実需取引部門とトレーディング部門との情報の隔離(チャイニーズウォール)、未公開情報を利用した取引の禁止(インサイダー規制)といったことがあげられています。
デリバティブが金融市場を席巻するようになって20年。「規模の拡大」というステージから「質の向上」というステージに、デリバティブは大きく変化しようとしています。商品先物取引が今後どのような変化の圧力を受けにいくのか、注視していきたいと思います。
(2010.07.16)
プロフェッショナル
今回逮捕された木村剛氏と、2006年に逮捕された村上ファンドの村上さんとがダブって見えます。
村上さんが、産業行政のプロであっても自称するような「株式運用のプロ」ではなかったように、木村さんは金融行政のプロであっても「銀行業務のプロ」ではありませんでした。
両者とも、行政という高みから業界を鳥瞰してみると、眼下の実務者達がとても愚鈍で臆病に見えたのかもしれません。自分だったらもっと上手くやれると思って大風呂敷を広げたものの、現実は思うようにならず、焦りがでて崩壊、というところでしょうか。
もちろん勘違いをした本人達が一番悪いのですが、「~のプロ」と囃した周りも悪い。
プロフェッショナルとは、自分がプロフェッショナルでありたい、という強い意志を持続している人のことであって、自分のことをプロフェッショナルと自称する人のことではないと、私は思います。
(2010.07.15)
売り安心感の転換
大した理由もなく下がった市場は、意味もなく上がります。
ポルトガルの格下げではなく、ギリシャの国債入札成功に反応したり、超楽観的なストレステストのコメントを好感したりと、悪材料のみに過剰に反応するセンチメントから市場はようやく脱出しつつあります。
材料そのものが変化しているわけではない中での乱高下であり、油断は禁物ですが、売っておけは安心、というような局面が少し変わってきたのかもしれない、と期待感を込めて思っています。
(2010.07.14)
みんなの野党!?
選挙の後、満面の笑みを浮かべる自民党の谷垣さんをみて、本当に野党の党首が板についてきたと感心しました…
民主党も野党だった時のほうがよほど元気だったのを思い返すにつれ、この野党のある種無責任な活力を利用する仕組みはないものか、と感じます。
いっそう、「みんなの野党」という統一会派でも作って、政策立案を与党と投げ合う、というのが、弊社のアナリスト君のかねてからの主張なのですが、いかがでしょう?
(2010.07.13)
自分では決められない
比例獲得総数では民主が勝ち、選挙区では自民が勝ち、キャスティングボードをみんなの党がとる、という、結局誰が勝ったのか良くわからない、という意味で事前予想通りの混沌とした参議院選挙結果となりました。
選挙結果の混沌は、そのまま経済の混沌につながり、「何も決められない国ニッポン」に逆戻りです。
現在世界を覆っている「財政再建」という暗雲が、どれほど深刻なものか、おそらく日本には伝わっていません。
選挙民がムードに左右され移り気なように、投資家もまたムードに乗るものです。今の市場テーマが「財政再建」である以上、そのテーマに逆らう国は投資対象から外されるだけでなく、格好の売り対象とされる危険もあります。
司馬遼太郎ではありませんが、結局この国は、強烈な外圧に対応することでしか、自らを変えることはできないということなのかもしれません。
(2010.07.12)
なんとなく不穏…
ヘッジファンド業界は、5月に引続き6月もどうやらマイナスだったようです。日次を集計しているインデックスでマイナス1%内外という感じですが、詳細はまだわかりません。
最終投資家のリスク回避度が高まっているといった外部環境の問題もあり、そろそろ大型ファンドからの大量解約という噂が出始めました。
また、デリバティブ規制の今後の影響を気にしている投資家も出てきていること、様々なレピュテーションリスクに投資家が過敏になっていることなども、業界全体の空気をやや重くしています。
このところの金価格の乱高下が某ファンドの現金化のせいだとか、クオンツ系株式戦略からの大量キャッシュアウトの噂とか、数年前をフラッシュバックさせるような話題も見聞きします。
なんとなく、少し不穏な市場環境です。
(2010.07.09)
大阪と観光
大阪の大学の先生とお話していて、大阪を観光都市にする最大のボトルネックが、外国人用大規模ホテルの不足だということを聞きました。
観光スポットは豊富であるものの、受入れインフラが整っていないため、観光誘致をしたくても本腰が入らないそうです。
そもそも、既存産業維持が主要命題で、新規事業に注ぎ込むお金も意欲もない、という悲しいコメントもありました。
中国からのビザ要件の緩和の恩恵で、東京に大量に中国観光客がお見えです。既存産業だけでなく、観光という新たなビジネス資源まで東京に集中してしまう現状は、やはり改善していかなければいけないと思います。
大阪、頑張れ…
(2010.07.08)
愛情一杯夢一杯!?
新幹線の中の雑誌に、ソニーは何故i-pad を作れなかったか?という記事がありました。
アップルのCEOが記者発表で、新製品の隅から隅まで愛情を込めて説明するのに対し、ある日本メーカーの社長は忙しくて自分では使ったこともない、と答えた、というエピソードが書かれていました。
経営者にプロダクトへの愛情がないと決してよい製品は生まれない、というのは、製造業でも、資産運用業でも同じです。
今の日本の大企業に欠けているのは、自社製品への愛情そのものなのかもしれません。
(2010.07.07)
彷徨う政治家
昨日ぼんやりと参議院選挙政見放送というものを見ていて、どこもここも現政権の批判をすることが政策だと言わんばかりの内容に辟易し、「だったら絶対に連立なんて組まないわけね?」とテレビに向って喋ってみたり…
どこの政党も、今回は有権者の視線がどこに向っているのか、今ひとつ掴みきれず、結果として政策がぶれているように見えるのは、民主党だけではありません。
有権者の視線はどこに向っているのかは見えにくい環境ですが、海外投資家の目線は消費税引き上げに向って比較的はっきりしています。
政治家が頼りにすべきは、彷徨う有権者か、はたまたお金持ちの海外勢か。
いずれにせよ、彷徨う政治家とうのだけは勘弁してください。
(2010.07.06)
過熱感のない下落
今の市場環境で性質が悪いのは、それが「過熱感無く」下落しているところにあります。
金融危機の際リスク・インディケーターとして注目された、金融機関の短期調達コスト(OIS)も大きな変動はなく、株式市場のボラティリティも劇的に変化しているわけではありません。
各国の株式市場も一律ではなく、先進国と新興国というだけでなく、新興国の中でも中国のように年初来二桁マイナスの国もあれば、プラスの国もあります。
2007年から2008年にかけてのサブプライムショックにおいて、過度な楽観論が大勢を占める中、市場が堰を切ったように暴落したのに対し、枚挙に暇がなく流れてくる悪材料に、誰しもが持つ漠然とした不安を日々消化しながら価格を切り下げている、のが今の市場展開といえるのかもしれません。
過熱感のない上昇が長持ちするように、過熱感の無い下落も長びきます。しばらくは我慢の日々になりそうです。
(2010.07.05)
周回遅れの危機
「ギリシャ問題」という爆風で、蓋の開いた「欧州危機」という箱の奥底から、封じ込めていたはずの「スペインの金融システム不安」という妖怪が復活してしまいました。
スペインの株式市場の内、金融関連産業が締める割合は50%弱もあり、その金融機関がスペイン国内の不動産関連融資に傾斜していたことは、周知の事実でした。
不動産の証券化市場が崩壊して2年。証券化というプロセスを経由した資金フローが途絶えた後、実物の不動産市場がジリジリと干上がることで、金融機関の基礎体力を奪う、という構造は、何もスペインだけの問題ではありません。
昨日発表された日本の路線価を見るにつれ、スペインが他人事でなくなる日が来ないことを祈るばかりです。
(2010.07.02)
史上三度目の1%割れ?
日本の長期国債金利が1%割れ目前の水準まで買われています。
10年債で1%を割れたのは、1998年のロシア危機と2003年の日本の信用不安の時の二回です。
ちなみに2003年の時は20年金利も1%を割れました。
株式市場は「青天井」という言葉が使えますが、債券市場の金利はゼロ以下が基本的には存在しないので、青天井に価格が上がり続けるということはありません。
年金の保有している国内債券のデュレーションは6年程度ですので、万が一10年国債が今後過去最低の0.5%割れに到達したとしても、リターンは3%程度しかありません。
期待リターンの限界値まで来た資産は、なだれをうったように崩壊します。まだ先の話ではありますが、そろそろ注意した方がよいかもしれません。
(2010.07.01)