有効求人倍率
今年4月の有効求人倍率は0.46倍で過去最低。衝撃的なのは正社員の有効求人倍率は0.27倍、という数値となりました。
絶対値をグラフ化してみると判るように、求人数が趨勢的に低下していく中で、求職数が急増しています。パートタイムとの比較を見ても、パートタイム人口と非パート人口との間での、流出入が大きな原因には見えず(これまでパートだった人が非パートになりたいとか、パートの求人がなくなり正規雇用への就職者数が増加しているとか)、単純にリストラ人口が増加しているのか、女性の求職者が増えているのか、新卒での未雇用者が増加しているのか、いずれかでしょう。
これまで、非正規雇用の話が中心でしたが、問題がいよいよ本丸に移動してきたようです。
株式市場はともあれ、景気実体はなかなか厳しいものがあります。
(2009.05.29)
金利上昇のマイナス要因
国内、海外、問わず、株式のファンドマネージャーに当面の懸念材料を聞くと、一様に「米国長期金利の上昇」と答えます。
理由は幾つかあります。
住宅ローンの借換コストの増加。
予想利益の前提となっている、割引率の上昇。
米国政府の財政負担の増加によるドルの信認の低下。
金利上昇から連想されるインフレ懸念がスタグフレーションに進行する可能性。
FRBが国債の買入を行う限り、極端な金利上昇はないとは思っていますが、現在の米国の長期金利が決して魅力的には見えないだけに、FRBだけでどれだけ金利上昇を押さえ込めるか、不安も残ります。
少なくても、「今の金利上昇は、株式市場のセンチメントの好転を織り込んでいる」などという、お気楽な解説は信じない方がよさそうです。
(2009.05.28)
興味なし?
一連の北朝鮮の行動に、各国の対応が冷静であるのは、判りきった挑発に乗らないというメッセージ。
では、北朝鮮の行動に、各国の株式市場が反応しないのは、極東アジアの株式市場に投資家があまり興味がない、といういうメッセージ?
決して地政学リスクがない、わけではなくて、影響がありそうな日本と韓国について、単に注目度が薄いだけ、かもしれません。
これが中国の地政学リスクに発展する気配でもあれば、市場はもっと反応するでしょう。
為替も同様。「世界随一の低金利通貨」という地位もなくした今、「円」はすっかり蚊帳の外です。
忘れた頃にまとめて材料にするのだけは、止めて欲しいものです。
(2009.05.27)
厚生 労働 省
過去の思いつき
厚生労働省分割。はい、賛成です。
業務量として一目瞭然に無理、だからです。
ここの業務が玉突きを起すと、国民生活が直撃されるからです。
人手を掛けてでも、速やかに業務を遂行していただきたいわけです。
別に予算が巨大化したからとか、霞ヶ関の権力の集中が、とかいう「つまらない」理由には全く興味はありません。
2001年の省庁再編でお団子にされたのは厚生労働省と国土交通省。その後問題を多く抱える結果となったのは、偶然なのでしょうか?
(2009.05.26)
人生の期間リスク
確定拠出年金制度が導入されて始めての大暴落の時期を迎え、この制度の抱える最大のリスクがようやく認識されつつあります。
それは、我々がどうしても選択することのできない「人生の期間リスク」です。
景気や金融状況には、必ず山谷が発生します。老後に必要な所要金額に向け、コツコツと積上げてきたはずのものが、年金受取り目前で暴落を経験すれば、もう取り返すことは不可能となります。
年金運用が長期であるいうのは、年金基金や保険など集団投資スキームにおいて、加入員と受給者が連続して発生し、理屈上「無期」の投資であるから成り立つ概念です。
「有期」であるものについては、期日前にリスクを低減させる必要があり、一定のリスク資産を理論通りに維持することはできません。さらに期日が景気の山近辺に来るか、谷近辺で来るかによって、最終受取金額は、それこそ山と谷ほど違います。
公的私的を問わず、確定給付型の年金という仕組みの最大のメリットは、個々の人間の人生の期間リスクを逓減させるところにあるといえるでしょう。
(2009.05.25)
いったん小休止
日々の株価の値動きに、だんだん興味を失ってきました。目先の価格調整が一通り終わったこと、数ヵ月後の投資環境がまったく読めないことの両方が原因です。
日本では政権交代があるかもしれず、世界的には秋口にかけインフルエンザが悪性化する可能性も否定できません。
暴騰も暴落も超凪相場も、全部ありだということを前提として資産配分も戦略も一旦中立化しておいたほうがいいのかもしれません。
(2009.05.22)
消費の今後
世界の個人消費はこれからどちらに転がるのでしょう?
これまでの消費低迷は、
市場暴落の影響を受けた「逆資産効果」
金融危機の直撃を受けた「ウォールストリート効果」
を中心とした「心理的消費抑制」が中心でした。
これからの消費低迷は
企業の雇用削減や所得減による、「実質的消費抑制」に移ります。
心理的抑制には、給付金などの短期的バラマキ効果が有効です。
実質的抑制には、労働環境の改善以外に特効薬はありません。
国内にどれだけ労働市場の受け皿を作ることができるかが、各国ともこれからの経済政策の根幹になります。
鉄道と道路と橋を作るアメリカ。
日本は介護ビジネスというけれど、それでは生産性がありません。
さて、どうしたものか?
(2009.05.21)
インフラファンドの撤退
インフラファンドが日本の空港会社から撤退するそうです。
空港ビジネスはインフラ投資の代名詞のようなものなので、とても象徴的な撤退です。
公共施設へのファンド投資が機能するものなのか否か、成功例が全くない日本に居ると、正直よくわかりません。
電力事業を自由化し大停電を起した米国の例などが、どうしても頭をよぎってしまいます。
新興国の上下水道や鉄道建設などの資金供給を一時的に担い、経済がテイクオフした後は政府が買取る、という仕組みのインフラファンドについては、存在意義は確かにあると思うのですが、先進国対象のインフラファンドについては、どうしても腑に落ちずにいます。
(2009.05.20)
マスク色々
マスクだらけの電車内を見回して、その種類の豊富さに感心しています。
日本はこういう繊細な技術には本当に向いているのでしょう。
そういえば、赤ちゃんも犬もマスク姿を怖がりません。
相手を「目」で認識しているのでしょうか?
長引きそうなマスク生活。諦めて非日常を楽しむしかありません…
(2009.05.19)
行政の性善説
インフルエンザのフェーズ引き上げの原因がわが国になりそうだという現実から、何を学べばよいか考えて見たほうがよいと思います。
「海外渡航者」「水際対策」という言葉のフィルターが強すぎて、検査対象者が必要以上に絞り込まれてしまったことは今後のよい教訓となったでしょう。
そもそも日本が得意とする「水際対策」というものが、もう時代遅れなのではないか、という思いを強くします。
入り口の規制に注力するのではなく、進入したことを前提とした対策に注力すべきだということは、インフルエンザだけでなく、金融行政を含め全てにおいて当てはまることのように思います。
日本の行政はどうも性善説すぎます。
(2009.05.18)
運用機関の再編
英バークレイズ、資産運用部門の売却で交渉中─関係筋=FT紙(ロイター)
このこと事体はまだ観測記事としても、世界的に運用資産残高が縮小し成功報酬だけでなく、固定報酬も激減している中、運用機関の大規模な再編は避けられないかもしれません。
計量モデルのように、収益は薄く、報酬も薄く、というタイプの運用では、とにかく残高を増やさないことには、莫大なシステム投資を回収できません。
市場規模が大きい内は、似たようなモデルの会社が乱立していてもコストをカバーできていたでしょうが、ここから先は淘汰が起きざるを得ないでしょう。
運用機関の合併は、投資家にとってあまり歓迎されることではありません。運用機関選択の難しい時代がやってきそうです。
(2009.05.15)
投資会社の体力
東証一部上場のベンチャーキャピタル会社が事業再生ADRを利用した私的整理を発表しました。ADRって何?という話は別に置いておいて、投資ファンドの資産価値の急落により、大幅な最終赤字になったとのこと。
そもそも投資ファンドのGP(無限責任組合員)を行っている会社のバランスシートにファンドを連結させるべきか、という議論はあるようですが、ザックリ言ってしまえば、ファンドビジネスというのは投資行為そのものであるわけで、ファンドが苦しければ運用者も苦しい、ファンドが潰れれば会社も潰れる、というのは極めて明快なことなのではないかと思っています。
間違ってはいけないのは、あくまでも他人のお金を預かって運用サービスを提供する投資信託や投資顧問会社のような「金融サービス業」と、自己資金を入れて投資する「投資会社」とは、似て非なるもので、投資会社である以上ファンドリスクは自己リスクです。
ベンチャーキャピタルを含めPE系のファンドには、投資資産の評価価格以外にも、運営会社の財務体力も注視しておいた方がよさそうです。
(2009.05.14)
また一つ詐欺の素
エコポイント。
定額給付金といい、どうしてこんなに複雑な仕組みにするのでしょう?
複雑にすればするほど、コストがかかり、時間がかかり、トラブルが増え、そして何より詐欺が増えます。
手続きを難しくすれば、詐欺を排除できると考えているなら、それは大間違いです。
定額給付金詐欺防止の政府広告にどれ程のコストがかかっているのか知りませんが、また同じことを繰り返しそうな気がしています。
(2009.05.13)
金太郎飴
今回の四半期報告…
買った理由、負けた理由、今後の見通し、どこも似たり寄ったりです。
ここまで均一なのも珍しい。
皆が同じことを考えている時は逆に行くといいますが、さてどうなりますか???
報告会真っ盛りなので、このぐらいで失礼します(バタバタ)
(2009.05.12)
お祭り後
現在の株式市場が、金融危機が終わった、らしい、というお祭り相場であることは、周知の事として、次の展開を考えましょう。
問題① お祭り後の水準。金融危機で明らかに売られすぎた部分の解消と、ややハシャギすぎた部分、と相殺して、どこのあたりの居心地がよいか?
問題② 今後景気後退を改めて織り込んでいくとして、その深さを長さをどう判断するか?
問題③ そもそも金融危機は本当に終わったのか?
本当のリスクシナリオは問題③に舞い戻ることで、バッドバンク構想が不首尾に終わったり、実は今回発表のストレステストは前提が甘すぎた、とかいうことが出てくるのは怖いです。
一応、問題①や②の範囲での調整であるのなら、低迷は長引くかもしれませんが、昨年度のような暴落は想定しなくてよいと考えます。
緩やかな長期低迷相場が、ベストシナリオというのも、なんとも情けない話しではありますが。
(2009.05.11)
信用リスク
東証一部上場全銘柄に投資するパッシブファンドでは、信用懸念銘柄については投資対象から外す作業をする事があります。
一般的な信託銀行の合同口で見てみると、外された銘柄数は現状で100銘柄を越えます。(5月12日訂正:200銘柄→100銘柄 すみません)
日本が金融危機の真っ最中にいた2003年がちょうどこの水準、その後50銘柄程度まで減少し、一年位前に30銘柄台をつけたのをピークに、再び100銘柄台に逆戻りしました。
2003年と今とを比べると、おそらく企業財務は今の方が圧倒的に悪い。一方真偽のほどは定かではないものの、金融機関の健全性は今の方が良いように見えます。
言い方を変えるなら、金融パニックになっていない分、信用リスクに対する体感温度がそれほど上昇していないだけで、実態上の信用リスクは最悪期に近いということです。
ここにきて尚欧州は追加の金融緩和を決定しています。
正常な経済活動への道のりにはまだまだ時間がかかりそうです。
(2009.05.08)
リハビリが必要
5連休終わりました…結構長い。というか、休み前の記憶がほとんど飛びました。
ボケボケの頭で四半期報告ラッシュに突入です。
なんだかピンと来ない説明も、きっと私の頭のせい…と妙に納得してしまったり。
相場は元気で何よりです。
(2009.05.07)
日本の金融行政の謎
三井住友銀行グループが日興を買収し、野村グループは資産運用会社の買収を狙い、そしてやや質は異なりますが、新生とあおぞらは合併再生を目論む。
一方で世界的な潮流としては、金融コングロマリットは徐々に分解を始め、それぞれの業態が規模を縮小し本業回帰しようとしています。
この傾向は各国政府が、「To Big To Fail-大きすぎて潰せない」という昨年来の現実に心底懲りている、ということとも呼応します。
AIGの例をとるまでもなく、金融コングロマリットにおける信用リスクの増大は、業態を越えた金融リスクの発生を呼びます。その規模が大きければ大きいほど、金融システム全体への影響度は甚大になり、潰すにも生かすにも莫大なコストがかかります。
さて、日本の金融界は、日本の金融行政は、どこに向おうとしているのか?
今からなお「To Big To Fail」の素を仕込んでどうするのか?
日本の過去の金融危機に学べと皆さんおっしゃいますが、今起きている世界の金融危機から日本は何か学んでいるのでしょうか?
(2009.05.01)