復興
長い長い一年がようやく終わります。
皆様、本当にお疲れ様でした。
今年は、金融ダムの決壊が、実体経済をなぎ倒したところで、終りを迎えました。
来年は、「復興」がテーマとなります。当面はまだ二次災害、三次災害に怯える日々が続き、復興という言葉を本格的に使えるようになるのには、後半年、国によっては1年かかるかもしれません。
それでも、次に来るのは間違いなく「復興」です。
そして「復興」というものが、決して金融バブル崩壊前の姿への回帰ではないことも明らかです。
金融サービス業を梃子としない、米国経済の復興。
自動車産業に過度に依存しない、日本経済の復興。
金融市場は、その役割を考え直しながら、ゆっくりとした復興になるのでしょう。
過去に固執せず、次の10年に向って、少しでも前進できる一年になればよいと思っています。
本年も大変お世話になりました。来年も株式会社エー・エム・シー、そしてこの「思いつき」をどうぞよろしくお願いいたします。
(2008.12.26)
農林水産
最近、あちらこちらの会合で、農業や林業を利用した雇用創出はできないか?という話で盛り上がります。
現場に近い方からは当然、現実化の難しさが指摘される一方、これまで農業政策には全く興味がなかったような金融関係者などが積極的に議論を展開しています。
一朝一夕に事が進むほど簡単な話ではありませんが、人々の興味の方向性としては間違っていないように思います。
金融バブルの崩壊や食品偽装といった暗い話が、農業復権に繋がるのであれば、それも時代の必然であったと思えるのかもしれません。
(2008.12.25)
そして今年もクリスマス
私の小さい頃のクリスマスは、自宅でクリスマスツリーを飾り、不二家のケーキを囲み、テレビで「クリスマスキャロル」や「くるみ割人形」などのクリスマスっぽい映画を観て、ほのぼの寝る、というものでした。
お正月のおせち料理も売れているとのこと。テレビのクイズ番組で御屠蘇を日本酒だと思っている人が余りに多かったので絶句しましたが、今年のお正月は家でお重を囲みながら御屠蘇を飲む、ようなスタイルが復活するのでしょうか。
家内行事であってもそれなりに真面目にやると、なんとなく背筋が伸びる感触があって、子供ながらに心地よかった思い出があります。
一年に何回か凛とできる瞬間を家族で共有するのも、悪くはないかもしれません。
メリークリスマス!!!
(2008.12.24)
運用会社の直販
ヘッジファンドを含め、運用ファンド全般の収益が低迷している中、ファンドの運用報酬の引下げという話もちらほら聞こえてくるようになりました。
一方で、新聞広告などを見る限り、「個人向け投資信託」の販売概要では、未だに販売手数料3.5%、運用報酬年間1.75%などという、手数料荒稼ぎファンドが後を絶ちません。
投信の販売金額そのものが低迷し、変額保険も売れなくなり、銀行も証券も、懐事情が苦しいのはわかります。だからといって手数料率の高い、ハイリスクファンドに営業を傾斜していくのは、ファンドの販社としては最悪の選択でしょう。
日本でのファンドビジネスが全然進歩しないのは、個人投資家との最終窓口となっている、証券や銀行の販社が全く進歩も反省もしないからです。
コスト面での折り合いがつかずすっかり頓挫した「運用会社の直販」という制度ですが、自社ファンドのブランドイメージを確保するという意味も含め、もう一度検討してみる価値があるのではないかとも思います。
(2008.12.22)
次のビジネスチャンス?
昨年まだ絶好調だったはずのニューヨークで、決してきれいとは言えない街並みをみながら、この国の生活インフラは何時になったら改装されるのか?という会話をしていました。
アメリカには地方都市も含め、耐久期限切れの橋が何万もあるとも言われています。
新政権が行おうとしている経済対策のメインは「大規模な公共投資」です。
車じゃなくて、水道管や橋を作ろう!という、分かりやすいメッセージです。
ことインフラ技術に関しては、日本は世界一の技術大国です。だてに今まで莫大な公共投資を行ってきたわけではありません。
車がダメなら橋作ろう!は日本にとっても大きなビジネスチャンスとはなれないでしょうか?
(2008.12.19)
自由?
「フリーター」という言葉が一般的に使われるようになったのは、何時ごろからだったでしょうか?
組織にとらわれない生き方をしたい。
仕事以外の生き甲斐を見つけたい。
生涯年収が、平均サラリーマンの4分の1と言われても、それでも「自由」であることを選ぶことが、カッコイイと。
お金より大切なものがあると言えることが、カッコイイと、世間が囃した時期がありました。
それがどれほど危険なことか、本当はわかっていた大人達は、「自分のできなかった夢」を無責任に若者に押し付け、雇用の流動化を図りたかった企業はその「浅はかな思い」を利用しました。
自分の意志ではなく非正規社員になった方々は別として、自分の意志で非正規社員を選んだ人達に我々はどう対応したらよいのでしょう?「自由の代償」として切り捨ててしまうには、あまりにも冷たい北風が吹いています。
(2008.12.18)
シナリオ
今の金融危機はいつ終わるのか?という問いには、数ヵ月以内、と答えます。この状態が後一年続けば世界経済は崩壊してしまいます。無責任な評論家ならともかく、現実的な対応を検討するにあたって、「破滅シナリオ」は描いても無意味です。
「破滅シナリオ」を回避すべく、米国の金融当局は、なりふり構わずとうとうゼロ金利にまで突入しました。恐らく年明けの新政権でもあらゆる政策対応が発動されるでしょう。
それが将来に禍根を残すことになろうが、米国が借金漬けになろうが、もしかして質の悪いインフレの種を撒くことになろうが、今の金融危機を収束させるためには何でもやる!と、昨日のFRBは言っているように思います。
一方で、景気の回復はいつですか?という問いについてはあまり楽観的ではありません。
金融危機さえ終われば世界景気は回復する、という論調はあまりにも楽観的です。
鍋底株価の底値がせめて10000円であって欲しいと思うのは、高望みでしょうか?
(2008.12.17)
プラスを疑え
あえて言います。
今、リターンのマイナスが出ていないファンドは、一度疑ってみるべきです。
マードフ氏の巨額詐欺事件の詳細は、まだ全く見えてきません。ただ一つ言えることがあるとすれば、「米国株式を買って、オプションでヘッジする」という戦略から出てくる収益が、この1年の市場の大混乱の中で、45度線上の右肩上がり、というのは、「どこかおかしい」ということです。
全てのヘッジファンド戦略が全滅している中で、プラスとなっているファンドがないとは言いません。でも、それはとってもとっても「異常」なことです。プラスが出ているから良い、のではなくて、どうしてプラスが出ているのかを、よくよく確認する必要があるということです。
収益だけをみて投資をすると、とんでもないことが起きる、ということの最大級のお手本です。
(2008.12.16)
脱!
昨年末、今年一年を「迷」と予想しました。
結果、「迷」どころか、袋小路で身動きのとれない「囚」の一年になってしまいました。
来年は、絶対に迷路から脱出しなければなりません。このまま迷路に囚われていたら、酸素不足で窒息してしまいます。
はしごを架けてでも、壁をよじ登ってでも、出口にたどりつく、という強い意志をもった一年にする必要があります。
もう迷って嘆いて悔いている時間は終わりです。
ひたすら前を向いて、顔を上げて、自分の今まで信じてきたことをもう一度信じて、出口を目指すしかありません。
「脱」。力をあわせて、今の混迷から脱け出しましょう!
(2008.12.15)
また個人?
個人向け社債の発行が急増しているとの記事があります。
一方で国内債券のファンドマネージャーと話しをすると、かなりの優良企業であっても機関投資家向けに100億円単位の債券発行をするのは、現状ほとんど不可能である、といいます。
社債だけではないですが、「機関投資家が買えないほどリスクが高くなった商品」が「個人向け」であれば売れる、という、この国の証券市場の仕組みは、何とかならないものなのでしょうか?
単に、法人にはお金がなく、個人にはお金がある、というだけの話であれば構わないのですが、プロの投資家には見えている潜在リスクが個人投資家には見えていない、という話である可能性は、否定できません。
日本ですら、とうとう国が企業から直接CPを買い取らなければいけないほど緊迫した資本市場に、今個人投資家が参加すべきなのかどうか、私にはかなり疑問に思えます。
(2008.12.12)
治療法?
先月初に具合が悪くなった原因を色々調べては見たものの、結局判らずじまいで、先生曰く「やっぱりストレスですかねぇ」と。
そういわれるとその気になるのが困ったもので、何のストレスかと思いを巡してしまいます。
治療法は
当面運用機関と会わない、とか。
テレビや新聞で政治家の発言は見聞きしないようにする、とか。
嘘です。冗談です。
市場環境は、このままグズグズと年を越して、オバマ政権樹立まで時間を稼げれば、と祈るばかり。
(2008.12.11)
採りにいきませんか?
メーカーでの人員削減が問題になっていますが、運用業界でも世界規模での人員削減が聞こえてくるようになりました。
その中で気になるのが、日本株式や日本債券関連でのリストラクチャリングの話の多さです。
日本株式単体でのパフォーマンスの悪さに加え、アジア地域全体での悪化が重なり、日本を含むアジア地域への投資魅力度が急減していると見られているようです。そもそも欧米の一流企業で、超がつくほど割安な投資がゴロゴロしているため、わざわざコストを掛けてまで東京やアジアに人員を配置しておくインセンティブがなくなってきているのかもしれません。
投資信託の残高が急減するなか、苦しいのは国内の運用会社も同じでしょうが、今の人材の流動化は次の運用の核を作るには絶好のチャンスです。これまで海外や外資に流出していた優秀な人材を国内に取り込むのは今しかありません。
運用会社の経営者の方々の次の10年を見据えた英断に期待しています。
(2008.12.10)
投資家の責任
昨日発売された『週刊エコノミスト 臨時増刊号』に小論を掲載しました。
「リスク管理とリスク回避-投資家の勘違いが生み出した金融バブル」という題名です。
私は経済的事象であろうと、政治的事象であろうと、社会現象というものは、そこにいる参加者の潜在的な意志によって創出されると思っています。
戦争が起きるのはそこに爆弾があったからではなく、爆弾を使おうと思った人がいるからです。危険物の存在そのものが人間の理性を失わせると言う発想は、大概において起きてしまった、起こしてしまった災いに対する、自己弁護と責任転嫁でしかありません。
今回の金融危機において、被害者としての投資家ではなく、バブル発生に加担した当事者としての投資家というものを冷静に振り返って見たいと思い、この小論を書きました。
機会があればご一読ください。
(2008.12.09)
二周目
金融資産の二次損失が深刻化しています。
1年前サブプライムショックによって、世の中の常識の1割以上安い水準になった金融資産を買った投資家の損失が、10月以降急拡大しているとみられるからです。
簡単に言ってしまえば、これまで「100円と99円」の間で動いていた価格が「95円」になったので、「ありえないほど安い」と思って買ったら、「60円」になってしまいました…という状況が起きています。
このような投資をしていた人の多くは、サブプライムショックでの一次損失が比較的軽微であった人々です。いわば最後のリスクテイカーとみられていたゾーンです。ここが痛んだということが金融市場や実体経済に与える影響は、極めて大きいと見るべきです。
周回遅れだから安心だと言われていた日本もその中に含まれるかもしれません。
第三の救世主は誰になるのでしょう?
(2008.12.08)
ビジネスエリートというクラス
米国の自動車3社のドタバタを見ていて感じるのは、日本にはない「ビジネスエリート」というカテゴリーの奇怪さ、でしょうか。
自家用ジェットに乗らないで、10時間かけて自動車できました。
来年の年俸は1ドルです。
という言葉に、意味があると彼らが思うのは、「自分達が所属するクラス」ではありえない行動をとっている、と自分達で思っているからで、残念ながらそのクラスにいない絶対多数の人達には、ほとんど意味のない発言です。
一部のコンサルタント出身者を含めた、よく言えば「経営のプロフェッショナル」、悪く言えば「経営屋」によって、運営されてきた米国企業というものの脆弱性が露呈しているようにもみえます。
彼らから比べれれば、運用オタクの集まりのヘッジファンド経営者など、本当にかわいいものです。
(2008.12.05)
外食産業の変貌
景気が悪くなって、マックの売上が伸びる、というのは米国だけの話ではないようです。
「外食産業市場動向調査」によれば、洋風ファーストフードの売上は前年比103.6%・和風ファーストフードで102.6%。
それに対し、洋風ファミレスが前年比95.8%・焼肉屋が93.8%、となっています。
ある食品メーカーの方も、8月以降外食関連の売上が急減速を始めたと言っていらっしゃいます。
ハンバーガー大国である米国では、ファーストフード依存症の肥満のことを「貧者の肥満」と呼びます。
景気後退は、かなり身近なところまで、押し寄せてきています。
(2008.12.04)
原油の行方?
全ての資産価格が5年前の水準に引き戻されている中で、原油価格の47ドルというのが、高いのか安いのか???
水準が20ドル台にあったころ採算ラインは35ドルだと言い、50ドル割れの水準になると採算ラインは75ドルだと言い。
矛盾だらけなのは、OPEC内部も同様で、100ドルを越える高値圏で足並みを揃えた増産はできず、下がってからの減産も足並みが揃わない。
体力のない産油国は、価格が下がったとしても今のラインなら、たくさん掘って、たくさん売って、少しでも現金が欲しいでしょう。利益の幅より利益の絶対量が必要だからです。だから原油価格は「こんな水準ならもう売らない」と彼らが思う水準まで下がらないと止らない。
一次産品依存型の経済はやはり辛いです。
(2008.12.03)
戦略的凍結
ヘッジファンドからの資金流出の話が、あちらこちらのメディアで報じられていますが、実際ヘッジファンド運用者やゲートキーパーと直接話している感触とにややギャップを感じます。
確かに欧州系のプライベートバンクを窓口とした個人資金の解約はすさまじいようですが、一方で年金資金や財団資金などによる解約は想定以内かむしろ少ない、という印象があるようです。
一部の特定投資家からの集中的な解約のためファンド資産の売却を強制されることは、他の安定的な投資家にとって不利益になります。特に今のような市場価格が不安定な時期に現金化することは、不要な損失を招くことにつながりかねません。
こうした事態を回避するため、10月以降多くのヘッジファンドが投資家からの解約を意図的に停止する、という行動にでています。9月までの解約停止や清算のようにファンド財産の毀損が激しく運用が継続できない、という趣旨とは異なる、いわば「戦略的凍結」とみなされる行動です。
こうしたファンドの行動は「異常事態」ではあるものの、その判断は、投資家財産の保全という観点からみれば「正常」な判断であるともいえます。市場も投資家心理も冷静になるまでの間、皆で冬眠をするというのも悪くないかもしれません。
(2008.12.02)
中小零細企業の国
裁判員制度がいよいよ始まります。
企業に有給休暇の設定など協力を促しているようですが、参加できる人はどれほどいるでしょう?
国内非農林業雇用者の内、10%が公務員、従業員数500人以上企業の雇用者が24%、100人以上500人未満が18%です。
500人以上の大企業と10%の公務員で35%、100人以上の中堅企業を入れても50%程度となります。非農林業従事者の半数以上は、中小零細企業での雇用者という、我が国の労働人口構成において、経団連や同友会といった大企業的思考で人間を動かそうとするのには、無理があります。
ほとんどの中小企業では、人間の代替が利かない状況でギリギリの人員配置をしているはずです。介護や育児休暇も同じですが、有休をとる人の代替人員獲得にかかる人件費を国が補助するぐらいのことをしないと、職場から人間を動かすのは大変です。
日本は中小零細企業の国です。経済政策も労働や社会政策も、まずそこを起点にして考えないと、機能しないのではないでしょうか。
(2008.12.01)