金融市場の限界
金融市場が同じ間違いを何度でも繰り返すのは、金融市場というものそのものが所詮変わっていないからなのではないかと思っています。
技術革新めざましい最先端の、市場のように思われていますが、金融市場での「発明」と言えるものは、先物とオプションが最後なのではないかと思うのです。いずれも19世紀にはほぼ今と同じような概念は確立していたものです。
金融市場にあるのは「発明」ではなく、「発見」にすぎません。
「今までにないものを創る」のではなく、「今まで気付かなかったことに気付く」だけのことです。
始めに気付いた人は、それを普及させることで、自らルールを作っていきます。ルールが普遍化しそのルールの下に多くの人が集まることで、ルールの創業者利得を得ることができます。そして参加者が限界点を越えるとそのルールは賞味期限を失い、参加者と共に淘汰されます。
金融市場というのは所詮そんなものです。だから金融市場を中心とした経済体制は脆いのです。私は金融が経済の中心になってはいけないと心から思っています。
(2008.08.29)
本屋さんも順張り
いつも行く街の書店で、棚順が変わっていたので、どうしたのかと見回したところ…
株や投資関連本のコーナーが半分になり、かつ、隅に追いやられていました。
元々専門書の取扱いをしている大手書店はそんなことはないのかもしれませんが、一般書店で幅を利かせていた「あなたもできるデイトレ!」の類が激減です。
これまでがやや異常だったともいえるので、構わないのですが、散々売っておいて、相場が下がったらさようなら、というのも無責任なものです。
上がったら強気になって下がったら弱きになる。日本人は隅から隅まで、本当に順張りです。
(2008.08.28)
ジャンク債市場のない不幸
最近の企業破綻を見ていると日本に非投資適格債市場がないことの不幸を感じます。
銀行融資以外の市場調達手段が限定されているため、格下げが企業財務に与える影響が深刻化してしまいます。
BB企業であっても資本市場から調達できるためのインフラ作りがいよいよ重要な局面が到来しそうです。
(2008.08.27)
そろそろアメリカ離れを
ファニメイの株が10%上がった、フレディが15%下がった、リーマンがどうした。
100ドル近くあった株が、10ドルだの5ドルだの3ドルだの、という価格帯で乱高下したからといって、ダウ全体が、ましてや日本の株式市場全体が、200ドルも200円も動く材料にされるのは、いかがなものかと。
もちろん、金融市場全体を現すシンボルのようなもので、それ自体が値段を押し下げているわけではないのですが。
言葉は悪いですが、米国の金融株を巡っては、既に死に体の企業に対し、「いかに国の負担を少なく、次のステップにいけるかが」今の論点であり、ある意味株式市場の問題ではなく、「米国の財政負担とプライマリーバランス」という国債市場の問題へと変わりつつあります。
既に、国の関与なくしてソフトランディングは不可能というコンセンサスは国内で取れつつある中、あとは国民負担を減らす努力を精一杯した、という証拠作りの時間が必要です。
アメリカの国内問題に、日本の株式市場が一喜一憂するのは、そろそろ終りにしても良いころでしょう。
(2008.08.26)
涼しくはなったものの夏枯れ
日本の株式市場の出来高の減少傾向が止りません。昨年来大きなショックがある度に、逓減傾向が強まっています。
市場の出来高は、ヘッジファンドの流動性に大きな影響を与えます。大きな売買量が可能な市場ではリスクが取りやすく、売買量の小さい市場ではリスクが取りにくくなります。
今株式市場は、市場の変動率は高く、出来高が小さいという、リスク管理上では、最悪の環境にあります。
株式市場に資金が戻ってこないのは、ファンダメンタルズの悪さだけではなく、こうしたテクニカルな要因もあるのかもしれません。
異常な高温の夏から異常な低温の夏に様変わりです。
市場環境もそろそろ夏枯れからは脱却して欲しいものです。
(2008.08.25)
女性の元気
オリンピックが進むにつれ、あちらこちらから「女性は強いけど男はなぁ」という呟き声が聞こえます。
北島だけでなく体操やフェンシングなど男の子も地味に頑張っているので、ちょっとかわいそうな感じもします。
世の中一般的に女性の方が元気がよいという傾向があるので、どうしてもそういった視線でみてしまうのでしょう。
女性の元気が日本の活力になってきている中、この資産運用の世界は日本ではまだまだ男性ばかりが目に付きます。海外の運用会社のCIOが女性であるケースが少なくないなか、日本で女性のCIOに出合ったことはまだありません。
日本の金融界に元気がないのは、日本の元気の活力を利用していないからなのかもしれません。
今、オリンピックでは野球の準決勝が始まりました。昨日の女子ソフト金メダルのあとです。「男の沽券」という言葉が本当に死語にならないためにも、がんばれ!
(2008.08.22)
金余りと冷戦
東西の冷戦が終わったのは、ひとえに莫大な軍備費を維持する財力が東側に不足したからです。
そしてロシアが経済的な復活した今、再び冷戦構造の復活が取り沙汰されるようになりました。
わかりやすい話ではあります。
国というものは、余分なお金を持つと飛び道具に注ぎ込みたくなるのは何故なのでしょう?
日本の国は貧乏で良かったです。
(2008.08.21)
価格転嫁
いつも行く食べ物屋さんのサラダが小さくなりました。
ご近所のおじいさんが通うディホームの食事が一品減ったらしい。
コストが上がっているのはわかるのですが、黙って量や質を落とされるのはあまり気分の良いものではありません。それならはっきり値段を変えてくれたほうが諦めがつきます。
日本企業は価格転嫁が下手だといわれます。物価が動くということにあまり慣れていません。
成熟化したこれからの日本経済、株価も物価も上がったり下がったりの繰り返しです。物の値段が動くということにもう少し免疫をつけた方がよいのではないでしょうか。
(2008.08.20)
いわゆる、一つの、デフォルト…
[東京 18日 ロイター] 独立行政法人・日本貿易保険は18日、キューバ中央銀行と国立銀行から期日までに輸入代金の支払いができなくなった旨の通告を受けたことを明らかにした。
キューバ側は11日、その理由について「国全体の決算資金の不足が原因」と説明。このため、日本貿易保険は単なる信用事故ではなく、支払国の外貨繰りが原因の「非常事故」と判断、輸出債権に対して97.5%の貿易保険を適用することを決めた。
国に外貨がないから払えない。そうです。
嫌な響きです。
国というものは通貨の発券権があるので、通常国内債務についてデフォルトすることはありません。インフレが数千%になろうがお金を刷れば済みます。
一方外貨に関しては、自分で刷るわけにはいかないので、ないものはない。詰まるところ、国内で流通する紙幣はあるが対外的に持ち出せるお金はない「兌換停止」状態に陥るわけです。
新興国の外貨建債券の最大リスクはここにあります。
キューバのように日本で債券が流通していない国の話ではありますが、他山の石にしておいた方がよさそうです。
(2008.08.19)
全滅再び…
7月ヘッジファンド戦略はこの一年で5回目の全資産マイナスという全滅月となりました。これまでは、株式のショート戦略とCTAを除くという次元での全戦略、でしたが、7月に関してはそれを含めても、ほぼ全滅です。
月の前半と後半とで、市場環境が180度回転したため、買って損、売って損、のダブルパンチとなりました。
このままヘッジファンド戦略を継続していて大丈夫なのか、という問い合わせが増えるのは、仕方のないことです。
正直に申し上げると、「もう二度とこういう月は来ない」と言う自信はありません。ただ、この一年少しでも収益の上がりそうな市場や戦略にシフトしながら生き残ってきた「リスク許容度の高い資金」が、7月の逆回転で完全に息を潜めたとするならば、ヘッジファンド全体のリスクや変動性は、そろそろ落ち着いてくるのではないかと思っています。
だからといって儲かる、というものではないというのが、苦しいところで、市場が正常化するまで現金で待機しておくというのも、一つの選択肢ではあります。
(2008.08.18)
究極の夏休み
今年の夏休みは、75%の人が遠出はしない、と答えた、という話を聞きましたが。
私、昨日・今日と我が家で「究極の夏休み」中です♪
朝(昼?)起きて、ご飯を食べながらオリンピックを観。
お風呂に入る。
お昼寝をしながらオリンピックを観。
お風呂に入る。
締め切りがとっくに過ぎた、本の改訂版原稿にむかい。
すぐ飽きて夕涼みがてら買い物へ。
夕ご飯を食べながらオリンピックを観。
お風呂に入る。
再び原稿にむかうが…zzz就寝。
自前温泉生活、結構極楽です。
もしよろしければ是非一度お試しください。ご家族からひんしゅくを買うこと間違いなし、です。
(2008.08.15)
破綻することを前提として
アーバンコーポレーションが民事再生法を申請しました。
恐ろしいのは、市場での懸念が次々と現実化していくことです。
日本における最近の信用危機は98年の山一・拓銀ショックから2001年のマイカルショックまでの期間です。ただあの時は何度も週刊誌にリストアップされた企業の中で本当に破綻した企業は極わずかで、ほとんどの企業は銀行の債権放棄を受けて、存続をしました。
当時と今と何が一番異なるか。それは銀行の体力だと思います。銀行に体力があったから企業が再生したのではなく、体力がなかったから破綻処理ができなかった。逆にいえば、今銀行に体力がないから破綻がおきているのではなく、体力があるから破綻させることができている、のです。
また企業がファンドなど金融機関以外からのドライな資金調達手段を持つようになったことも、逆に破たん処理をしやすくしている一因かもしれません。
はっきりしていることは、日本は普通にデフォルトのある国になったということです。無理な延命措置を取ることなく、自然淘汰が働くようになったということはその国の基礎体力において決して悪いことではありません。
株式投資にしろ事業債投資にしろ、破綻があることを前提としたポートフォリオのリスク管理が、早急に求められています。
(2008.08.14)
熱しやすく醒めやすい
熱しやすく醒めやすい。
中国の国内株式指数を見ていると、こうした国民性が見えてきます。
日本の90年バブルの「倍のスピード」で「倍の高さ」まで膨れ上がった上海総合指数は、今年に入って既に半値、高値からでは6割の下落となりました。
オリンピックで日本選手に負けたバドミントンのペアが、マスコミから手の平を返したように叩かれていると、新聞に出ていました。その厳しさが中国スポーツの強さの源泉かもしれないと、その記事は結んであります。
国内投資家から手の平を返された上海株式市場は、この厳しい環境から何かを学ぶのでしょうか?それとも、敗戦の記憶が人々から失われるまで身を潜めて傷を癒すのでしょうか?
中国市場ならではの、ミラクルな復活を、世界経済全体が待ち望んでいます。
(2008.08.13)
景気後退期の格差
世界は物騒です。
地政学的リスクは明らかに高まっています。
格差というものは、景気のよいときはあまり問題にならないものだという話を聞いたことがあります。格差が広がってはいても、全体的に生活は底上げされているからです。
景気がよい時に広がった格差が、景気が下降してくると、暴発するのが、過去の歴史です。
これからの世界景気の下降ラインにおいて、政治リスクについて、一層の注意が必要になるのでしょう。
(2008.08.12)
がんばれ~
オリンピックがあるからと、重さに目をつぶりワンセグ付き携帯を選んだものの、今のところあまり活用せず…
たった今、データ放送で北島の金メダル確認!で、ようやく活用…
日本選手がんばれ~私のワンセグを無駄にするな~
(2008.08.11)
あら、静か…
大阪にいます。
いつもほぼ満杯のホテルの朝食会場がスカスカで、なんとなく雰囲気も違います。
!! アジア系の観光客がいない!!
オリンピックですから。日本にくるぐらいなら北京にいきますね。
この夏のサービス産業の景況感が少し心配になった普段よりちょっと静かな朝でした。
(2008.08.08)
金融株
海外のアナリストなどと話していると、欧米のメガバンクのビジネスモデルの変化についてのコメントが多く聞かれるようになりました。基本ラインは証券ビジネスの縮小とアセットマネジメントビジネスの強化というところで一致しているようです。
翻って、邦銀のビジネスモデルはと考えると、今更ながら何も見えてこないのが実状です。
消費者金融に軒を貸した個人向け融資も、不動産ファンド向けノンリコースローンも、中小企業向け融資の証券化も、金融商品の窓販売も、どれも本業には成りきれず、逆に妙な火種を残して頓挫しています。
世界がアセットマネジメントビジネスにシフトしていくなか、グローバルカストディに程遠い信託と国内資産運用しかできない投資顧問を抱える日本の金融ビジネスの影は薄くなるばかりです。
サブプライム損の大きさだけで金融株を見ていると大きな落とし穴に落ちるかもしれません。
(2008.08.07)
言動不一致
今回の四半期報告は本当に暗い…
収益率はさほど悪くはないのですが、今後の環境見通しの話になると、ここ数年聞いたことのないような、暗ーい話が続きます。
景気見通しが悪い、企業業績が悪い、海外の投資環境が悪い。需給も悪い。
不思議なのはこれだけ悪い話を並べる割に、株式の基本ウェイトが昨年度とほとんど変らない。
株式の年度末の着地水準(年度末の価格見通し)を切り下げても、配分が変るわけではない。
言っているだけで何も変らないのなら、暗い話を聞いて気分が悪くなるだけ損です。
暗い話でもいいですから、言動一致でお願いします。
(2008.08.06)
家計のファンダメンタルズ
この10年間のデフレが私達の生活の基礎を如何に変えてきたのか、今更ながら考えます。
100円ショップ、ユニクロ、ホカ弁、回転寿司に格安海外旅行。
30歳台前半で組む住宅宅ローンも、一家で三万円近く払っている携帯などの通信費用も、低いエンゲル係数の恩恵があったからこそ成り立っていたのかもしれません。
デフレが終わり「物価が普通」に戻っただけで、我々の生活はどれ程のダメージを受けるのでしょう?
家計の基礎的条件の変化が、日本経済全体の基礎的条件に与える影響を慎重に考える必要がありそうです。
(2008.08.05)
強気一筋
政府や日銀の発表する、景気拡大・減速、という言葉の意味とタイミングにひどく違和感を覚えます。
以前は株式市場は景気の波を半年先取りすると言われていましたが、株式市場が先取りしているのではなく、政府判断が単に遅すぎるだけなのではないかと感じます。
98年の日銀政策決定会合の議事録が公表されましたが、実際の金利政策判断にではなく、「景気減速」を示唆する言葉の使い方一つにこだわる政治家の感覚というものは、10年経った現在でも似たようなものなのでしょう。
本当に景気が悪化してから、本当に市場が壊れてからしか、現実を認めないから、政策がいつも後手後手になるのです。
強気を言うのが仕事、という意味では、政治家も株の運用者も同様かもしれません。
(2008.08.04)
再 再 再生 ?
青山ブックセンターを経営する企業が二度目の会社更生法を申請しました。多田建設は3度目の更正法の申請です。
海のむこうでは、GM・フォード・クライスラー各社の格付けが引き下げられると発表されています。
最近、企業再生案件が頓挫するケースが増えてきているようです。
公的資金を投入された金融機関の業績が今ひとつ改善しないのも気になります。
景気の波にうまく乗れた場合は別として、地道に企業を再生させるのは、思いのほか難しいのかもしれません。
(2008.08.01)