老人ホームとゴルフ場
介護付老人ホームの仕組みを見ていると、どうしても預託金が還らず倒産したゴルフ場を連想してしまうのは、考えすぎでしょうか?
何千万円もする一時金は単なる施設利用権に対する対価であって、その施設の不動産等の区分所有権ではありません。
多くの場合は、施設の運営会社そのものですら不動産を所有しているわけでもありません。
万が一、施設の運営会社が破綻したら、その運営会社に預けているお金は還らず、使うべき施設もなくなるということになるのでしょうか?
ゴルフ場なら、プレーができなくなるだけです。
老人ホームでは…
考えただけでゾットします。
(2006.11.30)
ヒグマの首の鈴
Too Big to Fail 大きすぎて、つぶせない。
財務や経営に問題があっても、外部環境に与える影響が甚大すぎて、処理することができない状況のことをいいます。
金融危機の際の邦銀や、最近では米国の自動車業界などをめぐり、よく使われた言葉です。
思い返せばユーコスの脱税容疑あたりから気配はあったロシア政権への不信は、とうとう暗殺疑惑にまで発展してしまいました。
これまでは、見て見ぬ振りをしていた諸外国も、さすがに自国で放射能を撒き散らされては黙っているわけにもいかないでしょう。
大きすぎて誰もつつけなかったヒグマの首に、鈴をつけに行く役回りとなってしまったイギリスの前途は多難そうです。
(2006.11.29)
与信の厳格化と個人消費
以前、消費者金融の貸出し基準が厳格化され、パチンコの売上が落ちたという話を書きました。
最近は、信販会社の与信基準が厳格化され、宝石や着物といった高額商品の売上が落ちているようです。
年金収入しかない高齢者に、高額な信販契約を結ばせていた事例などが多数発覚し、販売会社だけでなく信販会社の審査責任を問われるケースが増えてきたことや、上限金利の引下げで信販会社自身の財務体質がやや悪化してきたことなどが、原因のようです。
ただでさえ伸び悩んでいる個人消費の頭を打つ要因が、また一つ増えています。
(2006.11.28)
勧誘電話
当社のような小企業にかかってくる勧誘の電話には、面白いようにトレンドがあります。
商品相場から始まり、IPOの最盛期には中堅の証券会社から、不動産ファンドの最盛期にはREIT業者から、IP電話がでると通信プロバイダーから、そして最近の流行は転職採用関連会社からの電話が増えています。
当然のことながら業界内に会社が乱立し行き詰ってくると、電話の本数が増え、質が悪化してきます。
何度断っても、同じ会社から別の担当者が入れ替わり電話をしてくるのも、特徴です。
こういった営業が始まると、大概その業界はピークをつけて、早晩淘汰が始まります。
鬱陶しいことこの上ない勧誘電話ですが、時代を見るには役に立つこともあるのです。
(2006.11.27)
雷の落ちる場所
都道府県知事や知事経験者を巻き込む刑事事件が続いています。
まだまだ続きそうな気もします。
特に経済事件については、ある種のカテゴリーに属する事件が連鎖的に摘発されるというのは、日本に限ったことではありません。
一時期、猛威を振るっていた、ニューヨーク州での金融関連訴訟の雷雲は、最近少し静かです。
ストックオプションを廻る会計疑惑についても、思ったよりも静かに処理されています。
ここ数年ヘッドラインリスクに弱くなっている株式市場では、危ないカテゴリーに近づかない為の選択眼も必要です。
(2006.11.24)
養殖でがまん?
まぐろの漁獲制限がさらに厳しくなるといわれています。
海に囲まれ、魚食文化を持つ日本へのいじめだという憤りの声も聞こえてきます。
鰹節の旨味を感じる味覚すら持たない肉食文化の人間に何がわかる、と私も思います。
ただ、一つ思うことは、我々の食が野性の動物の肉で賄えなくなって、すでに長い年月が経っているということです。人間の数の増加は、自然の恵が賄える限界を超えてしまっているという事実です。
この事実が海洋生物にだけあてはまらないと思うのは、やはり都合がよすぎるのかもしれません。
魚屋さんに「天然」という文字が消える日がくることを、やはり覚悟しておくべきなのでしょう。
(2006.11.22)
相場は正直
相場は正直です。
安倍政権になってからの日本株式は明らかに元気がありません。
小泉政権の終盤の下げは、米国などの海外株式の下落の影響もありましたが、安倍政権になってからは、独歩安です。
もちろん安倍さんのせいだけではありませんし、日本株のバリエーションの高さが基本的な原因ではあります。
ただ、安倍政権が小泉政権に比べ、経済・金融への興味を失っているように見えるのも確かです。
日本の経済や金融は、政府が楽観しているほど、順風ではないということを、株式市場は警告しているのかもしれません。
(2006.11.21)
バカ殿戦略の飛び火
ライブドアの堀江氏の裁判を称して「バカ殿戦術」というらしい。
投資事業組合など名前すらしらない、経理や金融は素人で何もわからない、など等、「戦術」だか「本当の…」かはどうでもよいし興味もありません。
ただ、しかし、そうは言っても。
おそらく昨年までは日本の新興市場で最も有名だった経営者から、「CEOというのは流行だったし、カッコよかったからやってみた。経営には全く興味なかった云々」のような発言が公然と出てくることに、金融市場にかかわる人間として、猛然と腹が立ちます。
新興3市場の底が完全に抜けてしまっているのにも、このバカ殿発言は無縁ではないでしょう。
日本の新興企業の経営者が、こんなバカモノばかりだと、海外投資家に誤解されていないことを、本当に願います。
(2006.11.20)
マーケットニュートラルの不振
日本株のマーケットニュートラル運用の不振が続いています。
昨年良かったファンドは今年は驚くほど悪く、昨年驚くほど悪かったファンドは今年やや復活しつつあるとはいえ、昨年の損失を取り返すほどの利益になっていません。
当然スポンサーからは、現金にしていたほうがまだましだったとの厳しい声が聞こえてくる一方で、当初約束していた3年程度は我慢すべきなのか、という質問も多く受けます。
昨年度と今年度の勝ちパターンが全く異なることからもわかるように、相場の上下ではなく市場の歪みだけをとりにいくタイプの運用には、パフォーマンスにある種の周期性が発生します。負け続ける、もしくは勝ち続ける、ということはあまりありません。3年や5年といった周期を保有し続けることが、投資効率上よいのは確かです。
ただ、スポンサーが我慢してそのファンドを持ち続けるには、持ち続けられる環境を作ってあげることが、ファンド提供者にとっては重要なことです。単月で年間収益を吹き飛ばすような大きな損失を出したり、負けている理由をきちんと説明できなかったり、といった収益以外のストレスが加わると、スポンサーとしては受託者責任の観点からいっても、持ち切ることが難しくなります。
環境が悪いときでも、お互いに持ち堪えることのできるようなリスク管理とコミュニケーションが、今の日本株のマーケットニュートラルには求められているように思えます。
(2006.11.17)
見られてこそ強くなる
女優は見られることで美しくなります。
スポーツ選手は見られることで強くなります。
もちろん観衆側の選択眼の正さが必要不可欠ではあります。
チャラチャラしていると非難されようが、ゴールデンタイム20%以上の視聴率を背負って戦っている女子バレーは、それなりに強くなっていくのでしょうし、60億のプレッシャーを抱えた松坂もきっと成長するのでしょう。
日本の運用機関の成長が遅いのは、日本社会が運用機関というものにあまりにも興味がないからなのかもしれません。
(2006.11.16)
社会基盤整備とファンド
世界の資本市場で今年後半に話題となった事象の一つに、電力・ガスやダム鉄道など、社会基盤産業の資本の流動化というものがあります。
インフラストラクチャーファンド、という名称で昨年末ぐらいから、日本の年金市場にも一部商品が提供されるようになっていたので、耳にした方もいらっしゃると思います。
最近では、欧州の電力会社が国を超えた買収合戦を展開し、欧州株式のパフォーマンスに大きな影響を与えているのもその一例です。
これまで、社会基盤整備をまかなってきた、国や地方自治体に財政余力がなくなってくる中、世界大戦後60年を超え欧州のインフラ設備に更新時期が到来しています。需要の明確なプロジェクトに対する資金不足という構造問題に、潜在的な収益の可能性を感じたファンドと、資金不足の国との利害が一致しているようです。
それでも、国民の生命線であるインフラ設備である以上、各国とも無制限に域外や国外の資金を受け入れているわけではないようです。ファンドを利用するにしろ、外資をあてにするのではなく、まずは自国内での解決方法を探るのが優先であるということは、言うまでもありません。
(2006.11.15)
ぼやき?愚痴?
昨日、ある運用機関の方々から、
「いつもあのコラム読んでます。あの、"本日のぼやき"」
「違いますよ。"つぶやき”ですよ」と他の方。
ぼやいたり、ぶつぶつとつぶやいたり、の毎日なのかと、軽く反省です(笑)。
"本日の愚痴"と言われないように、もう少し前向きな意見を書くように努力しないと、青島幸雄になりそうです(古い…古すぎる)。
(2006.11.14)
バブルのスケールダウン
街の不動産屋さんと話していて。
「景気いいです!1億前後の建て売り分譲が2ヵ月で完売しました!」
と言われ、バブル崩壊前を知っている世代と知らない世代の格差を改めて実感しました。
我々の感覚での景気がよい、というのは1億の家が右から左に売れることで、2ヵ月もかかるような状況ではありません。
そう考えると、昨年までのヒルズ族バブルは99年のITバブルよりずっと小粒で90年の不動産バブルには比べようもなく小規模のものだったことに気付きます。
日本の経済のスケールが徐々に小さくなっているようで、少し寂しくも感じます。
(2006.11.13)
後始末の一年
米国中間選挙も終わり、今年の大きなイベントにも出尽くし感があります。
12月末のファンド決算に向って、海外投資家の手仕舞いも加速するでしょう。
今年は、昨年の波乱の後始末をしているうちに一年が終わってしまいそうです。
昨年上がりすぎたものは下がり、動かなかったものは動き、ドタバタしていたようで、それほど特筆すべき事象が見当たりません。
あとは年末まで、来年花開く芽を探すことに費やしましょうか。
(2006.11.10)
バーゼルⅡの飛び火
「バーゼルⅡ」というものがあります。
バーゼル銀行監督委員会というところの出している金融機関に対しての自己資本規制改正案のことです。
銀行を対象している規制ですから、年金や事業法人などには関係のない話のように思われますが、思いもよらない飛び火がきています。
バーゼルⅡによって、中身の開示のないファンドや、格付けのとることのできない信用リスク商品へ、銀行が投資することは非常に難しくなります。
その結果、それまでそういった商品を銀行に売っていた証券会社のターゲットが、自ずと規制対象ではない年金や事業法人そして個人投資家へシフトしてくるのです。
銀行などプロの投資家が主な投資家として存在してきたリスク商品を、彼らが買えなくなったからといって、セミプロや個人市場に持ち込むという流れが、正しい選択だとは思えません。
最近証券会社からの電話が増えたと感じている年金スポンサーの皆さん。ね・ら・わ・れ・て、います。
(2006.11.09)
都心の朝は少し怖い
最近、電車のトラブルや遅れが増えているような気がします。
私の利用する東急線でも、始発駅から40分程度の都心に着くころには10分以上の遅れが出ていることが珍しくなくなりました。
車両故障などのトラブルも増えていますが、単に混雑による遅延というアナウンスをよく聞きます。神奈川.千葉.埼玉といった近郊から都心へ通勤する人口の増加が、輸送可能限度を越えてしまっているのです。
それでも、沿線の大規模マンション建設や、新たな宅地造成は続いています。
積み残した乗客でホームがあふれるのも時間の問題かもしれません。
(2006.11.08)
西部劇の保安官
米国の中間選挙が始まります。
政策の是非以前の問題として、「フセインのクビをとったぞ」的なブッシュ大統領の演説は、質の悪い西部劇のようで趣味がよいとはいえません。
今のところ、ブッシュ率いる共和党の負けは市場では織り込み済みといわれています。
万が一、共和党が巻き換えすようなことがあると、かえって米国市場は下落するかもしれません。
(2006.11.07)
風が止ると桶屋も…
帝国データバンクの日刊誌に、貸金業法改正によって、パチンコ店の売上が減少するかも、との声が出ていました。実際8月のパチンコ1台あたりの売上は前月比6.3%減だったそうです。
パチンコ依存症の人と、消費者金融との切っても切れない関係が、法律によって切れてきた、ということでしょうか。
過剰融資が不動産バブルを産み、信用という証券融資が個人の株バブルを産むように、投機の裏には必ずそれを助長する資金の流れがあるものです。
手軽に借りることのできた消費者金融のバルブが閉まって先細りになるのはパチンコ業界だけでしょうか?
個人の株式投資資金が消費者金融に依存していないことを願います。
(2006.11.06)
国内債券需給
幾つかの外資系運用機関で円債運用強化の方針を打ち出しているようです。
ゼロ金利から脱出し、日本でも債券ファンドの可能性が広がってきたというコメントが多く見られます。
日本国債の発行残高は先進国国債全体の約3割を占め、米国を抜いて世界一の市場です。グローバルな分散投資の対象として外すことはできない規模であるものの、ゼロ金利という異常事態が長く続いていたため、世界の多くの投資家は必要最小限の保有にとどめていたと見られています。
海外の運用機関が円債チームの強化を図るということは、すなわちグローバルな機関投資家の興味が円債に向かい始めたことを意味します。
金利水準はともあれ、需給面だけでみると、国内債券市場の堅調さはまだまだ続きそうな気がします。
(2006.11.02)
消化不良
最近、四半期報告の原稿棒読みがまた増えてきたように感じます。
運用商品の数が増えてきていること、運用内容が複雑化していることなどで、営業やRM担当の方の準備が追いつかなくなってきているのかもしれません。
窓口の方には、文句を言いつつも少し同情します。
新商品開発もいいですが、社内の消化不良の治療も並行させないと、顧客が食中毒を起こしそうです。
(2006.11.01)