売るのに厭きた?
FOMCで予想通り利上げされ、米国の景気が緩やかに減速過程に入ったことが指摘され、当面の利上げが一旦終了したとの思惑で、世界中の資産価格が上昇しています。
株も債券も新興国通貨も石油も金も銅も買われています。下がっているのは牛と豚ぐらい…(←本当です)
理屈ではなく、どちらかというとお祭りですね。
売るのにも厭きてきた頃ですし。
売る材料が一つ消えたというものの、買う材料が増えたわけではないと思うのですが。
(2006.06.30)
公人の報酬
「公」の仕事の報酬は「私」の仕事の報酬と比べ、高くあるべきなのか、低くあるべきなのか、同等であるべきなのか。
「公」の仕事について「私」の仕事と同様の成功インセンティブを与えることは可能なのか。
そもそも「公」の仕事にとっての、成功や失敗とは何を意味するものなのか。
今、国や地方の公務員や知事や国会議員など、公にいる人達の報酬を削減すべきだと声が高まっているようです。
国の財政を立て直すために、組織や人材の無駄を見直すことは必要なことです。ただ、「公僕」だから、「国民の税金」だから、安い給料で一生懸命働くべきだ、というような短絡的な発想はやめたほうが良い。
安い給与で役に立たない官僚を沢山抱えるぐらいなら、民間に負けない給与を出して優秀な人材を集めた方がいい。
「公」というものに対する尊敬が、すでに回復不可能なレベルまで低下してしまっている現状において、せめて「お金」で釣ってでも優秀な人材を集めないと、「公」の質はどんどん低下します。
小さくてもいいから、質の高い「公」を作る努力は日本の未来にとって絶対に必要なことだと思うのです。
(2006.06.29)
監視か取締か
今年2月よりスタートした米国のSECによるヘッジファンド登録の義務付け規制が、違法であるという司法判決を受け、制度の見直しを迫られています。
ヘッジファンド業界の人達の意見を見聞きする限り、この法律の評判が芳しくなかったことは確かですが、その理由は「規制されたくない」のではなく、「登録という形式要件が鬱陶しい」というところにあるように思います。
登録、つまり特定の行政組織の監視下に置こうが置くまいが、インサイダーなどの金融犯罪は取り締まることができます。現に、米国だけでなくイギリスやそして日本においても、司法当局によるファンドの摘発という事例が増えてきています。
わざわざ莫大な事務経費をかけて登録という形式を整えなくても、取締りを強化すれば済む話なのではないか、との意見は少なくないのです。
ヘッジファンド登録の義務付け制度の見直し議論は、「登録して監視する」という旧来の金融行政の伝統的手法が既に時代遅れになってきているということを示唆しているのかもしれません。
(2006.06.28)
ユーロの強さ
ユーロが強いです。
通貨ユーロ創設後の2年間は、金融市場からの信認が取れずに苦労しましたが、その後は対ドルに対しても対円に対しても中期的には一貫して上昇しています。
99年を起点として、対ドル・対円共に、約10%の上昇幅というところです。
この間、金利差では米国が、金融資産のフローでは日本が有利であったはずですし、経済成長力格差でみても欧州優位には見えかなったはずですが、結果はユーロの一人勝ちです。
緩やかではあるものの非常に強いトレンドを持って上昇を続けているユーロのグラフをみていると、ドル単一基軸通貨制があきらかに融解を始めているのを実感します。
(2006.06.27)
時差を読む
イギリスで、個人破産が増加しているそうです。金融機関の不良債権増加率の約半分が個人破産によるものだと書かれています。
イギリスの不動産市場は先進国の中で先行して上昇し、先行して調整をした市場です。
2003年の11月には既にBOEが不動産市況の沈静化を目的とした利上げを開始しており、それは2004年の8月まで続きました。
イギリスの不動産価格の本格的な調整は利上げ終了後の2004年後半から2005年初頭まで。
そして、不動産市況の悪化と高止まりした金利が個人破産に波及してきたのが2006年6月。
大方、1年ずらしのサイクルで物事が動いているのが判ります。
何度も書いていますが、金融政策が実体経済へ影響を与えるのには、1年以上の時差があります。
逆に言えば、1年後の経済を読むための材料は、既に存在しているということです。
米国は利上げ開始から2年目に入ります。
そして日本は今年がスタート地点。
先を読むことはできなくても、時差を読むことはある程度できるのではないでしょうか。
(2006.06.26)
お疲れさまでした
4時に起きてしまいました。目覚ましをかけたわけではなく、勝手に目が覚めた!
にわかサッカーファンもここまでくれば立派と自画自賛。
画面を眺めながら、組織の弱点というものは、頭でわかっていても、そう簡単に修正できるものではないんだなぁとか、スポーツって国民性がでるものだなぁ、とか、ぼんやり思っていたり。
こんなよけいなことを考えて応援しているから負けるのか…
(2006.06.23)
損保株と社会的責任
加入者から掛金をもらっておきながら、保険金を意図的に支払わない行為というのは、単なる詐欺なのではないか?金融庁による行政処分の対象で済む問題ではないだろう。
と思ってしまう私は何か間違っていますか?
この程度は業界の常識として割り切ってしまう大人の投資家達は、処分を受けた損保会社の株を売ることもないのでしょう。
損保会社は保有資産の株式比率が多いため、TOPIXとの価格連動性の高い株式として有名です。
これだけ厳しい行政処分が業界に続いても、きれいにTOPIXに連動している損保株を見ていると、本当に情けなくなります。
社会的責任投資というものが如何に幻想かが身にしみる、国内株式市場です。
(2006.06.22)
小さいけど気になる話題
4~6月期の法人企業景気予測調査は、大企業で前期比4.3ポイント低下の1.8となり、2期連続で悪化。⇒短観への影響が気になります。
「真珠商法」をめぐり、「十分調査をせず詐欺的商法をしている会社を加盟店にした」として、信販会社2社に訴訟。⇒多発する詐欺商法に対する信販会社の責任論が再び浮上。
「NTTカードソリューション」が運営する電子マネーサービス「ネットキャッシュ」のIDが流出し、既に不正使用。⇒E-マネーの前途は未だ多難。
フォード株13年以上ぶりの安値。GMより経営状態は悪いとの思惑から。S&Pとムーディーズ、GMの格付けをさらに引き下げ。ムーディースの格付けは「Caa1のネガティブウォッチ」。⇒いよいよX-DAY???
夕張市、闇起債か。⇒はぁ???
世の中、色々起きています。
(2006.06.21)
ちょっと苦言
ヘッジファンド運用などの年金スポンサーへの提供が始まった当初は、運用機関の中で商品性を理解している人は少数派でした。その分お客様への説明や資料の作り方などにも、その商品の責任者の目が行き届いていたように思います。
最近は、一つの運用機関で扱うファンドの数も増え、オルタナティブ商品の取り扱いにも慣れが出てきているのか、以前とくらべ資料や説明が雑になってきているような印象があります。
あたりまえですが、オルタナティブ運用が珍しいものではなくなったからといって、運用商品そのもののリスク特性が変わったわけではありません。
気が緩んだ商品設計をしていると、その内大きな穴にはまりますよ。
(2006.06.20)
儲けて悪いことはない
週末のテレビを見ていて、非常にイライラしていました。
別にサッカーのせいではなく、日銀の福井総裁を巡るコメントについてです。
海外のメディアで解説されているように、中央銀行総裁たるものが市場の信頼を失いかねない投資行動をとっていたことへの非難はあってしかるべきです。
だからといって、1000万円もの投資をする貯蓄があったこととか、それで結果論として利益がでたこととかを、マスコミがこぞって論う姿は醜いとしか言いようがありません。
90年のバブル崩壊の過程で、リクルート事件の余波の残る政財界は、株式投資にかかわることは罪悪だとでも言うほどの剣幕で財テクを否定しました。その結果、株式市場が急落する局面を自業自得と放置し、その後の金融危機の芽を作ることになったのです。
こんなことを繰り返していたら、日本の金融市場は化石になって地層に埋まってしまいます。
(2006.06.19)
感謝
当社の業務開始間もない1999年からコンサルティング契約をさせていただいていた年金基金様が企業本体の再生計画の中で先日解散をしました。
お任せのバランス型からガイドラインを決め、株式が絶不調の時は外債を増やしてしのぎ、頭が固くて岩のように動かない既存運用機関のバランス型に見切りをつけて特化にし、収益の安定化のためオルタナティブの導入を開始し、ようやく目指す形が見えてきた矢先での解散でした。
採用したい、のではなく、しなければならない、運用機関が両手で数えられないほどあるなど、制約条件の本当に多い環境でしたが、事務局の方達は本当にいつもいつも前向きで、今やれること、やらなければならないことを淡々と実行してこられました。
今日の当社のコンサルティング手法の多くが、この基金様を通して得られた貴重な経験を基礎とさせていただいています。
基金様にお渡しするため作成した過去の資産運用の歩みを製本しながら、心からの感謝の気持ちとともに、これから更に当社が進歩していくことがお世話になった基金様への恩返しだと、思いを新たにしています。
(2006.06.16)
運用機関の変遷と安定性
ある作業のために1998年から今までの運用機関の変遷を眺めていて、年金の運用自由化からここまでの9年間は、市場環境だけでなく日本の運用機関にとって本当に激動の時代だったことを、改めて実感しました。
金融再編の嵐の中で、傘下の運用機関もまた意図せざる統合や合併を繰り返さざると得なかった9年間です。
現在の日本の信託・投資顧問の中で1998年当時の組織がそのまま温存されている会社は、皆無に近いのかもしれません。
年金の運用で重視されるプロセスの一貫性には組織や人材の安定性が必須です。組織が流動的で運用のあるべき姿が描けていない運用機関からはパフォーマンスも期待できません。
こうしてみると、日本の運用機関のパフォーマンスが芳しくなかったのは、しかたのなかったことなのかもしれません。組織の変遷も一段落し、運用機関としての本領が発揮されるのはこれからだと大いに期待していたいと思っています。
(2006.06.15)
今はどこにいるのか?
相場を見ていて、落ち着きどころが判らなくなった時、過去の長い価格推移のグラフを眺めます。
(->図へ)
途切れることなく続く過去の歩みから今を振り返ることで、今自分が立っている位置を確認したいからです。
先人達の作った長い歴史は、過度な楽観も過度な悲観も戒めてくれるような気がします。
(2006.06.14)
物価に集中?
あっ…脱力。サッカーと一緒に株式市場も腑抜け。
頭がまとまらないので、材料の整理。
今晩(13日)米国の卸売物価。
明晩(14日)米国の消費者物価。
6月28・29日 FOMC
金利も為替も株式も米国の物価指数に興味集中。
逆に言えばその他あまり材料はない、ということです。
個人的には、バーナンキンさん初め、各国の中央銀行は、この10年ばら撒き続けたお札を今度こそ回収しようと、強い決意のもとで協同歩調をとっているように見えるので、実は物価指数に関わらず利上げが継続するリスクが高いのではないかと思っています。
緊張感はまだまだ継続。脱力している場合ではありません。
(2006.06.13)
トラブルの芽
数年前、ある大手メーカーの社長が売上目標未達の原因をアナリストに問われた際、「従業員が働かないからだ」と答え大ひんしゅくをかいました。その社長さんは「経営者は目標を立てる役割で、実行するのは従業員だ」とも言ったそうです。
その後その企業は製品トラブルが続き、一時期信用不安がささやかれる程にまで業績が悪化しました。
もちろん、危機感なく働いていた従業員も悪いし、危機感を共有しようという努力もなく数値だけ押し付けた経営者も悪い。もっと言うなら、短期的な成果を求めた株主も悪い。
数字合わせがバレタ社会保険庁、安かろう悪かろうのエレベーター業者を使っている公団。数値目標を立てるだけで中身のフォローのない政治家と、数字さえあわせればいいと思っている役人と、超短期な国民やマスコミ。
官をめぐるトラブルは、まだまだ続きそうな嫌な予感がしています。
(2006.06.12)
米国の楽観主義
米国の住宅バブルが崩壊したら、米国経済は失速するのか?と米国からファンドマネージャーが来るたびに聞いてみます。
皆さん、楽観的ですね。
日本の不動産バブルの時は、不動産をレバレッジとして株式市場もバブルになったのに対し、今の米国は不動産バブルは不動産の中だけで完結していると考えられているようです。
個人消費に与える影響も、不動産バブルがはじけて雇用に影響が出ない限りは、心配していないという答えが一般的です。
金融機関への影響についても、住宅ローンの証券化が進んでいるため、例え貸し倒れが発生したとしても、日本の金融機関にあったような不良債権化は起きないというのが市場の見方のようです。
金融引き締めの効果で、不動産価格やREITの価格の下落はあったとしても、その損失をカバーできるだけの基礎体力は、今の米国経済には備わっているということなのでしょうか。
(2006.06.09)
日本独歩安
今年の1月を起点として、現地通貨ベース・ドルベースともにマイナスリターンに転じた主要株式市場は、日本・韓国・中東(エジプトやトルコ)・米国ナスダック、です。当落線上にいるのが、インド・タイ・旧東欧・メキシコ、あたりと、それほど多くはありません。
世界同時株安と言われていますが、今のところドルベースで二桁マイナスとなっているのは、中東と日本の小型株、あと南米のコロンビア等だけです。
市場変動幅が大きく、流動性に問題のありそうな市場から順番に換金されている傾向が見られます。
韓国市場は、元々外国人投資家にはあまり人気がなかった市場なので、お金が引くのも早かったのでしょう。
いち早く年初来の安値を更新した日本市場については、そろそろ海外勢の売り物は一巡する頃です。
あとは、変な強気を引っ張っている国内勢が一旦投げれば、あく抜けるのですが…
(2006.06.08)
利上げはできるか?
年初インドの中央政府高官に日本の経済回復がアジア経済に与える影響を尋ねたところ、「景気回復に伴い日銀が量的緩和解除を行なった場合の、国際的な資金フローが心配だ」、という返事が返ってきたと、いう記事を目にしました。
記者の問いの目的は、日本経済の回復がインドなどの産業活動にどのようにプラスになるかを聞きたかった、ということなのですが、返ってきた答えは全く意外なものだったようです。
今起きている国際的な資産価格の下落のきっかけは、日本の超低金利政策の転換であると見ている人が少なからずいる中、日銀が更にゼロ金利解除まで踏み込めるのか、かなり懐疑的になってきているのが現状です。
米国の景気サイクルが緩やかに下落を始め、日本の企業活動もおそらく今年がピークであると考えられる中、今利上げをしなければ、日本は再びゼロ金利の闇を彷徨うことになってしまいます。たとえ株価や商品価格がもう一段下がるきっかけになったとしても、ここは勇気をもって利上げを断行すべきだと私は思います。
(2006.06.07)
えっ、プロ?
村上ファンドのムラカミさん。お願いですから、自分のことを株式運用のプロ中のプロ、とか言わないでください。
企業経営についてはよくわかりませんが、少なくても金融商品を扱う者として、私はあなたをプロだとは全く思いません。
ムラカミさんが、プロを自認すればするほど、日本における「ファンド」の一般的なイメージは悪くなり、海外から見た日本市場の後進性が強調されます。
アクティビストファンドの今後を本当に願うのなら、今回の件をプロの犯罪だと言うべきではありません。
(追伸:ファンド運用者が不正行為によって得た利益の弁済義務を負った場合、ファンド財産にも弁済義務があるか否かが、議論になっています。灰色のファンドから得た利益は、紙に書いた餅になる危険があるということを、投資家はよく認識しておくべきでしょう)
(2006.06.06)
ファンドの機能停止
ファンドマネージャーなど特定の個人に、ファンド運用の実権が集中しているような事象を、キーマンリスクと言います。その人が退職や病気などの理由でファンド運営に携われなくなるとファンドの継続そのものに支障が出るからです。
株式投資などで、特定の銘柄に投資を集中させてていたり、発行済み株式の10%以上を保有していたり、超小型株市場での売却が難しい株式への投資比率が多いような事象を、流動性リスクと言います。投資家の解約が集中したさいに、迅速な現金化に支障が出るからです。
法的に黒ではないが灰色に近い投資手法を行なうファンドには、リーガルリスクがあります。灰色が黒になるか白になるかは、法解釈の違いでどちらサイドにも転がる可能性があるからです。
キーマンリスクと流動性リスクとリーガルリスクを全て完全に排除しろとは言いません。しかしキーマンリスクがあるなら、後の2つはクリアする、流動性リスクがあるなら一人の個人に権限を集中させない、灰色な投資には流動性を担保する、といったことぐらいは、他人の資金を預かるファンドなら、当然のリスク管理だと思います。
ファンドが機能停止をしたら何が起きるのか。村上ファンドの今後からは、私達が学ばなければいけないことがきっと沢山出てきます。
(2006.06.05)
ブリッジの終わりと正常化
不良債権処理や企業再生には投資判断が早くリスクの取れる「ファンド」が役に立った。
ボーナスがカットされ住宅ローンの支払いに窮する人々には「消費者金融」役に立った。
貸し剥しや貸し渋りに苦しむ中小企業の経営者には「政府系金融機関」が役に立った。
全く動かなくなった不動産市場を再稼動させるには「不動産ファンド」が役に立った。
瀕死の日本経済を浮上させるための繋ぎ役として活躍したモノ達は、どこかしら行儀が悪く、リスク管理に問題を抱えていました。
それを百も承知の上で、大企業も政府も彼らを利用し、そして日本経済は復活しつつあります。
このところ、こうしたブリッジ役への監視があきらかに厳しくなりました。「村上ファンド捜査」と踊る活字を眺めながら、ブリッジ機能としての「彼等」の役割の終焉と、これも又日本経済正常化の一つの証であるのかもしれないと感じています。
(2006.06.02)
しなやかに賢く冷静に
当社がこの半年の国内株式市場の水準に懐疑的であるといっても、相場が下がってうれしいということはありません。
お客様のポートフォリオには、それでも数10%の国内株式ウェイトがあるわけですから、上がるにこしたことはないのです。
上がることが嫌なのではなく、反動で下がることが嫌なだけです。
と、前置きした上で申し上げると、それにしても世の中の株式市場関係者のコメントが強気一辺倒なのはどうしても気に入らない。
ある基金の理事の方に、4月に専門家の10人の内10人が国内株は強いといったから配分を増やしたのに、何故下がっているのか?と聞かれたと、同僚が言っていました。
答えは簡単で、全員が強いと言ったから相場は下がっているのです。市場参加者が冷静さを失っているからこそ、専門家が全員同じ方向を向いてしまっているのです。
「しなやかに賢く冷静に」。判ってはいても実践はむずかしい、相場と付き合う鉄則です。
(2006.06.01)