2006年05月の思いつき


強風注意報

債券市場というのはゴムひものついているような市場です。どんなに暴騰しても暴落しても、所詮時間が経てば100円に戻ってしまう証券の集合体です。
だから比較的理論値のコンセンサスが取りやすいと言えます。

一方、株式市場は糸の切れた凧のような市場です。個々に勝手に彷徨っている個別株の集合体に過ぎないからです。
だからTOPIXの理論値というもののコンセンサスを取るのは大変に難しいのです。

教科書的に言えば、債券は金利の期間構造の集合体、株式は独立してランダムに動く個別証券の集合体、ということになります。

安定した空気の中ではユラユラ彷徨っているタバコの煙に、息を吹きかけると煙は一方向に流れます。
今の株式市場は、誰かのクシャミに吹き飛ばされたタバコの煙のようです。

(2006.05.31)



何度でも言います

何度言っても判ってもらえないので、もう一度書きます。

年金資産は投資一任免許のない会社とは運用契約ができません。
ファンドを買うのではなく、資産を預けるのです。

資産を預けた先の一任業者が自らの責任において、海外籍ファンドなどを買い付けることはあります。この場合も、年金基金と海外籍ファンドとの間には法的なつながりは全くありません。

万が一、海外籍ファンドに何かトラブルがあったとしても、年金基金が法的措置を取ることができるのは、契約同時者の一任会社であって、その先のファンドではありません。

だから、年金基金にファンドを「売りに」こないでください。
年金基金が探しているのは、資産を預かり、自らの責任で運用してくれる、信頼できる「パートナー」だけです。

こんなあたりまえの話を何度繰り返しても理解してもらえないようなビジネスモデルしかもっていない金融グループとは、本当に縁を切りたいと思っている今日この頃です。

(2006.05.30)



天につばする

ご主人の定年退職後間もない方とお話していて、退職金の運用でさっそく騙された、と聞かされ、悲しい気持ちになりました。

詳細はお聞きしていないので、本当に詐欺にあったのか、単に損をしただけなのかはわかりませんが、ご当人達が「騙された」と感じていることだけは確かなようです。「これからは増やさなくていいから減らさない様にしないと」という言葉に、業界の片隅にいる人間として申し訳けなく残念に思います。

団塊世代の退職金と年金の払い出しのために、企業や年金基金では今後継続的に金融市場に現金化の圧力がかかり続けます。一旦退職者に対し払い出された現金を再び取り込む努力をしなければ、我が国の金融資産残高はネットで減少していきます。

老後資金の運用で、最初に躓いた人は恐らく二度とリスク資産には戻りません。ゼロ金利が解除され預金金利が多少でも付く様になれば尚更です。

節度のない営業や商品企画は、自分達の市場発展を阻害するだけだとそろそろ本気で気付くべきです。

(2006.05.29)



無知もまた罪

この半年日本経済を騒がせた耐震強度偽装事件やライブドア事件が、司法の場に舞台を移しつつあります。

新聞等の解説を読んでいる限りでは、「違法性の認識の有無」が争点になっているようですが、私には論点がずれているような気がします。

金融商品の販売でも同じことですが、専門性の高い商品の取り扱いにおいての無知は罪です。
上場企業の経営者にとって、企業会計への無知もまた罪です。

無知な当事者の暴走を止められなかった周囲の専門家の責任が大きいのは言うまでもありません。
ただ、問題が起きてから自分は素人だからと開き直るような責任者を許してしまってはいけないと強く思うのです。

(2006.05.26)



トイレットペーパー狂想曲?

製紙会社の家庭用紙の卸価格が7月から25%値上げされると発表されました。ティッシュペーパーなどの原料になる素材だそうです。

実際に小売価格にどれだけ反映されるかは未定ですが、長期にわたる原油価格の高騰が、末端の物価にいよいよ影響を与えてくるという意味では、象徴的な事象かもしれません。

70年台のオイルショックでトイレットペーパーの買占めが起きた時、石油が上がると紙がなくなるということが、さっぱり理由はわからなかったものの、事実として頭に刷り込まれました。
子供の頃のこういった経験は、省エネということの重要性を認識するには貴重なことだったように思います。

石油は有限である、エネルギーは大切に、と100回教えるよりも、身近なものが買えなくなったり、値段が倍になったりといった、体験を実感させる方が、よっぽど有益なような気がします。

デフレに慣れきった今の子供達に物の価値を教えるには、トイレットペーパーミニ狂想曲ぐらいの刺激があってもいいのかもしれません。

(2006.05.25)



雑誌と風説の流布

雑誌や新聞などの、個別銘柄名を挙げての推奨記事を取り締まる法律というのは、どこにもないのかと、疑問に思っています。

事前に自己で購入している株を、雑誌で推奨して、読者が買ったら自分で売り抜けるという、古典的な芸当がそうそう上手くいくとは思いませんが、風説の流布と何が違うのか、よく理解できません。

株価が下がる可能性のある不確定情報の伝達は犯罪で、株価が上がる方向の不確定情報は大目に見られるというのもおかしな話です。

『株券等の相場の変動を図る目的をもって、虚偽の情報等(風説)を流布することは、そうした情報等を信頼して投資判断を行った投資家に損害を被らせ、また、市場の信頼性・健全性を阻害するものであり、証券取引法により禁止されています。』(東証)
というのが風説の流布の基本概念であるなら、いまどきの週刊誌は軒並みアウトだと思うですが。

(2006.05.24)



手仕舞う準備

1年遅れといわれた米国の金融引き締め効果と、非常にシンボリティックな意味を持つ日本の量的緩和解除によって、世界的な投資資金の過熱感に、逆回転が始まることは、恐らく誰しもが予想していたことです。市場参加者が予想し切れなかったことは、それが何時来るかであり、その時がくれば即座にポジションを手仕舞うだけの準備は、行なわれていたと見るのが自然です。

手仕舞う準備をいうのは、トレンドの変化を察知した段階で、資産を売却しても、これまでの利益が残ることが計算されているということで、利が薄くなればなるほど売却スピードは加速します。

2006年の収益を見る限り、アジア株式市場のパフォーマンスはドル安効果も含め、昨日急落したインド株でもまだ数%のプラスが残っています。ネットでマイナスになっているのは日本のジャスダックぐらいです。

そういった意味では、アジア市場株を売れば利益を確定できる投資家が、まだ沢山いるということです。これは、目先の需給的にはあまりよいことではありません。

下げ始めたアジア市場の動向には、今後しばらく注意が必要です。

(2006.05.23)



今日の日記

温泉に行った。

円錐形のおばちゃまが沢山いた。

円錐形の集団は、とにかくよく食べ、よく喋り、よく笑う。

とてもハワイアンなおばちゃまたちを見ながら、日本の亜熱帯化に一層の確信を持った。

(2006.05.22)



ある景気調査

帝国データバンクの公表している景気動向調査によると、企業の景況感にピークアウト感が出始めているようです。

この調査は、回答企業の96%が非上場企業であるため、主に大企業を中心にした日銀の短観や、景気動向指数などとは、若干傾向の異なった数値が出ます。
月次調査であるという影響もあるのでしょうが、景気の山谷のメリハリが強く出るのが特色です。

内閣府の発表する景気動向指数では、2002年以降日本の景況感は一本調子での回復過程を描きますが、帝国データバンクの景気動向調査では2004年の8月をピークに2005年の2月まで明らかに景気は減速していますし、国が踊り場脱却宣言を出す半年前の2005年の3月にはすでに指数は上昇を始めています。(->図へ)

この4月の調査では、原材料価格の高騰と円高の悪影響を懸念し先行きの業績を厳しく見る企業が増えているようです。大企業だけを見ていると見えてこない景気実態があるのかもしれません。

(2006.05.19)



今回こそ『ヘッジ』ファンド

昨年の10月に、ほぼ全ての市場が急落した時を起点とし一斉に上昇を始めた金融・商品市場は、この4月を天井とし今度は足並みを揃えて下落を始めました。

個々の下落幅そのものは、この半年の上昇幅に比べれば、それほど大きなものではないのですが、全ての市場が同時に下落していることが、投資家の苦痛を倍増させています。

特に日本は、為替の円高がこの傾向に拍車をかけていること、更に4月が期初であるため決算年度が高値スタートになってしまったことなど、悪いことが重なっているのが現状です。

そうした中、唯一救われるのは、ヘッジファンドやCTAなど株や債券などとの収益相関がないと謳われていた運用手法が、今回の下げにおいてはどうにか保っている点でしょう。
昨年の10月の急落場面ではその役割を果たせなかったヘッジファンド達が、今回こそ『ヘッジ』機能を果たしてくれることを、心から期待しています。

(2006.05.18)



ムラカミさんの功績

ホリエモンが暴れて、国内のファンド規制が強まり、ムラカミさんが海を渡って、海外ファンドへの規制のありようにようやく議論が向き始めました。

これまで海外ファンドが日本市場で自在に闊歩しても、どこか他人事だった当局が、マスコミを引き連れて派手に動き回る人が国内に出てきてくれたお陰で、ようやく我が事として動ける大義名分ができたように見えます。

日本の金融制度がこれまで外圧でしか動かないように見えていたのは、それだけ国内のアクティビティが緩慢だった証だったのかもしれません。
行政の怠慢は民間の怠慢と表裏一体なのだという、よい例といえそうです。

(2006.05.17)



ペットの値段

3年ぐらい前の、このコラムを読み返すと、自分自身の消費意欲がかなり高まっていたことが見て取れます。

トイプードル(犬です…)が半年で倍の値段になったとか、デジタル家電が欲しいとか、そんな言葉が沢山でてきてました。

ちなみに、そのころ40万円台までしていた茶色のトイプードルがこの間15-6万円で売っていました。
一インチ1万円が目標とされていた液晶・プラズマテレビも、その水準はとっくにクリアされています。

長い不況と技術開発の谷間で、抑圧されていた消費意欲が爆発し始めたのが2003年ごろとするならば、そろそろ買いたいものが一巡してしまってもおかしくはありません。

ペットの値段が、消費の先行指標だというつもりはないのですが。

(2006.05.16)



値ごろ感は禁物

現状のTOPIXの水準は、2005年の12月末に近づいています。
随分下落している様に感じているかもしれませんが、たいして下がっていないということです。
ジャスダックなど小型株は、もう少し調整が進み、昨年の11月末あたりの水準に戻っています。

いわゆる「買い安心感」と表現されるものがなくなってきているので、価格変動幅以上に市場センチメントが悪くなっていることが想像されます。
市場センチメントの悪化は、ヘッジファンドなどの空売りを招き入れます。

大きな水準訂正をした為替市場同様、国内株式市場もまだしばらくは要注意です。下手な値ごろ感は禁物でしょう。

(2006.05.15)



市場の不安定化とヘッジファンド

ヘッジファンドが全般的に活気づいています。
昨年度(この1ー3月まで)については、パワートレードの様相が強く、相場の方向性についていくだけ、といった展開でしたが、4月以降は市場や銘柄の方向性にもバラツキが出てきており、ヘッジファンド本来のスキルに依存する収益を生み出し易い環境になりつつあるようです。

その一方で、日本株や資源株や新興国など特定の市場のリスクをとってきたヘッジファンドの中には、損失が出ているものも出始めているのには注意が必要です。

ヘッジファンド戦略の本来の姿である、相場の変動のなかで安定した収益を稼げるかどうか、市場の不安定度が増す中で、ヘッジファンド個々の能力が試される一年になりそうです。

(2006.05.12)



数字とイマジネーション

私は算数が苦手です。威張って言うことではありません…
ただ、数字の間違いを見つけるのは得意です。

我々の扱う数字には、なんらかの意味があります。数字を単なる文字としてみている限り、数字の間違いは見つけられません。数字を文章としてみると間違いは結構見つかるものです。

数字の間違いをなくすために、いくら注意深く作業をしても、エラーはなくなりません。単純作業の素材として数字ほど扱いにくいものはありません。
だから、数字を扱う時は、ストーリーを持ってイマジネーションを働かせる必要があります。

四半期報告で、数字の束に埋もれている社内をみながら、そんなことを思っている今日この頃です。

(2006.05.11)



未知との遭遇

日本の政策金利が最後に上がったのは、1990年のことです。この時の利上げは、日本の資産バブルの鎮静化と湾岸戦争に伴う原油高騰から起きたインフレ懸念に対応した、きわめて緊急性の高い急激な利上げでした。
その前の利上げは、1985年のプラザ合意に伴う国際協調利上げです。
実は、日本で債券先物が上場し、債券市場が今のように整備されたのは、1985年のことです。
こうしてみると、日本の債券市場が、通常の景気サイクルの中で通常の利上げを経験するのは、今回が初めてということになります。
過去の日本の利上げ局面から、現在の債券市場を予想するのは環境の差が大きすぎます。
だからといって、昨年来の米国をモデルにするのも、無理があります。しいていうなら、90年半ばにSL危機と呼ばれた深刻な不況を乗り越えたあとの、米国の債券市場あたりが、参考市場でしょうか?

債券市場参加者も政策当局の担当者にとっても、これから先は未知との遭遇に入るのだということを、しっかり頭に入れて行動すべきでしょう。

(2006.05.10)



キャリートレード

非常に単純に表現するなら、金利の低い国の短期債券を空売りして、金利の高い国の短期債券を買い、金利差を稼ぐことを為替のキャリートレードといいます。
このキャリートレードが有効である条件の一つは、充分な金利差があること。もう一つは為替のボラティリティが低いことです。

市場が金利差に注目し、高金利の通貨への投資意欲が高い最中は、為替も外部環境に反応しにくくなり、キャリートレードが成り立ちやすくなります。
一方、一旦市場が金利差ではなく、外部環境に反応しやすい状態になると、金利差が為替の変動幅を吸収しきれなくなり、これまで潜んでいた為替のキャリートレードのリスクが顕在化し始めます。
今度は逆に為替が不安定になればなるほどキャリートレードの巻き戻しが加速するので、これまで買われていた高金利通貨の下落が進みます。
この下落は、再び市場が金利差の魅力に回帰するまで続きます。

為替市場というものは、投げ手が下手で軌道の安定しないブーメランのようなものなのかもしれません。

(2006.05.09)



大きく産んで厳しく育てる?

REITや不動産証券化商品などに対する、行政の監視が厳しくなるとの、新聞報道が目につくようになりました。

そもそも、立ち上げからここまでの数年間については、官製市場と揶揄したくなるほどの、イケイケドンドン状態だったわけで、さすがにそろそろ市場としての正常化を目指してもらわないと、話になりません。

折りしも、全国地価の合計額が15年ぶりに前年度比プラスに転じたと、今日の朝刊に出ています。
地価下げ止りの救世主として不動産ファンドの乱立を容認し、効果が出たところで規制に入る。
大変よくできたシナリオにも見えますが、海外勢に「やはり日本はダブルスタンダードだ」と思われないか、少し心配です。

(2006.05.08)



お休み

ゴールデンウィークだし。
引越しで疲れたし。
親知らず抜いたし。
外は嵐だし。
ドル安とまらないし。
株が買われている理由わからないし。

だから、きょうはおやすみ。

(2006.05.02)



引っ越しました

本日より新事務所へ移転しました。

東京のシャンゼリゼ!!に面してします。

どうぞ、お立ち寄りください。

東京都港区三田1-4-28 三田国際ビル3階 
03-5439-7850

(2006.05.01)


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