2006年01月の思いつき


カリスマ組織の難しさ

スターファンドマネージャーやカリスマ経営者など、特定の個人が意思決定プロセスの根幹を握るような組織では、意思決定の早さと引き換えに、組織としてのモラルリスクが高まるように思えます。

決定権を持つ人間に評価されるべく周囲のモチベーションが高まるという前向きの循環と、決定権のある人間に評価されようと顔色を伺うという後ろ向きの循環が紙一重だからです。

さらに、組織の方向性に対する意思決定権と、人事評価権が、一致してしまうと、この組織は間違いなく崩壊していきます。

これは、ファンドマネージャーとアナリスト・経営者と役職員・総理総裁と国会議員、全てに当てははまる法則のように思えます。

蛇足ですが、次期総裁候補と言われている皆さん。今、誰の顔色を見て仕事をしていますか?ちゃんと国民の方をみていますか?

(2006.01.31)



時価取得と年金資産

年金資産がプライベートエクイティや不動産投資をするにあたっての最大の問題は、時価取得が出来にくい、という点にあります。現状年金資産は全ての資産において例外のない時価会計となっており、PEや不動産だけを例外とする根拠が見当たらないからです。また年金には非継続基準と呼ばれる、解散価値の算定基準があることも、時価取得の難しい資産への投資を難しいくしている一因です。

こうした問題は、今話題の投資事業組合やSPCを使った仕組でも同様です。投資事業組合が法的に時価開示をする必要のない枠組みであったからといって、それを年金商品に組入れるさいに、まったくディスクロが必要ないということにはなりません。それは海外法人であるSPCでも同じことです。

年金資産で組入れる商品である以上、年金ルールに従って組成して欲しいと思いますし、年金スポンサー側にもモラル管理を意識したファンド選択をして欲しいと思っています。

(2006.01.30)



アイボ~

ソニーが娯楽用ロボット事業から撤退するそうです。犬型ロボットのアイボも人型ロボットのキュリオもなくなってしまうらしい。

アイボは開発された時点から、とんでもない赤字商品だったと、聞いたことがあります。
業績回復が急務とされているソニーさんにとっては、仕方のない決断なのかもしれません。

さびしいですね。ソニーの遊び心の象徴のような存在だっただけに。こういったお金にならない作業から、ヒット商品が生まれるほど、時代は甘くないということなのでしょうか。

でも、ソニーの商品が段々と無機質になり、消費者から遠くなっているように感じているのは、私だけですか?

(2006.01.27)



がんばれ金融庁

三井住友銀行が行った「融資先への優先的地位を利用してたデリバティブ商品の勧誘」を摘発したのは、公正取引委員会でした。
ライブドアの証券取引法違反を摘発したのは、警察・検察でした。

何故、金融庁ではなかったのか?という疑問は、既に幾人もの人が指摘しているとおりです。

金融庁長官などが「だから金融サービス法の早期施行が必要です」といった内容の発言を繰り返していますが、現行法の中で出来ること、なすべきことは、やはりまだ沢山あるように思えます。
証券取引等監視委員会の検査対象は、いつまでたっても金融コングロマリット系列と外為ブローカーばかりです。相対的にみれば順法精神の高い大手の重箱の隅をつつく時間があるなら、順法精神とは何かすら理解できていないような会社を探し出して指導する方が先なのではないでしょうか。

物事がうまくいかなくなると、外箱を変えればいいという発想は、この国の本当に悪いところです。

(2006.01.26)



海外に目を

日本がライブドアと牛肉問題一色の中、国際情勢はかなりきな臭い様相になっています。
イランの核開発問題に端を発して中東情勢は緊迫化しており、原油価格は再び65ドルを超えてきました。
米国でのテロ予告も再燃しています。

こういった種類の材料にもっとも反応しやすい為替市場はドル安となっていますが、日本の株式市場では話題にすらなりません。

個人投資家の売買動向にプロが一喜一憂するのは大概にして、経済環境の変化に目配りをしたポートフォリオ運営をぜひお願いしたいと思います。

(2006.01.25)



新聞報道に思う

ライブドアという上場企業の代表が逮捕されたことで、上場企業に関わるマスコミ報道のありようというものを、改めて考えさせられました。

家宅捜索後から逮捕に至るまでの間、新聞やテレビでライブドアが行ってきた金融取引の手口について、非常に細かい解説が行われてきました。こうした手法の詳細やその危うさについては、おそらく市場関係者だけでなく多くのマスコミで既に充分認識されていたことであると考えられます。それが、グレーであるのかブラックであるのかの判断は、今後の司法判決に委ねるべきものであり、逮捕されたから違法だと決まったというものではありません。

問題はむしろ、一歩間違えば違法になる可能性の強い経営手法をライブドアという企業グループが行ってきた、という実態をこれまで新聞もテレビもほとんど伝えてこなかったことにあるのではないでしょうか。
上場企業に対するマスコミ報道というものが、風説の流布や名誉毀損の損害賠償と紙一重のリスクを負っていることは理解できます。ただ、それを恐れるあまり、事件や事故がおきるまで、見て見ぬ振りをするという姿勢が、本当に正しいとは思えないのです。

個人投資家の株式市場への参入が本格化した現状において、上場企業への報道姿勢とはどうあるべきなのか。ライブドアは大きな課題を残したと感じています。

(2006.01.24)



セミナーお礼

先週の金曜日に、年金スポンサー様向けのセミナーを開催させていただきました。多数の皆様のご参加を感謝いたします。
恒例通り、前半で経済環境と資産配分のお話をさせていただいた後、今回の後半部分では、「ヘッジファンド運用と投資適合性」という題目で、ヘッジファンドへの投資をするのに必要な基礎知識の整理をさせていただきました。

自動車を運転するのに、自動車を作る技術は必要ありません。自動車を整備するほどの知識もいりません。ただし、自動車を構成している部品の名前と役割ぐらいの知識は、必要なのではないかと思うのです。私のような自動車オンチの人間は、アクセルとブレーキ以外の部品の名前はほとんど知りません。それでも運転はできるのですが、いざ不具合が起きた時の対処方法は全くわからないです。ヘッジファンドという自動車を運転するには、自動車がどういった部品の組合せで動いているのか?といった知識は最低でももっておいた方がよさそうです。

部品を組み合わせると難しそうに聞こえるもののも、部品一つ一つの仕組は、それほど難解なものではありません。
「先物」や「オプション」といった部品一つにつき1時間、説明を聞く、説明をする努力さえすれば、もっとヘッジファンドがわかりやすく身近なものに感じられると思っています。

(2006.01.23)



十把一絡げ

何か金融関連の事件がある度に思うのですが、何事も十把一絡げで解説されることの弊害は、この国の金融市場の発展をひどく阻害しているような気がします。

「投資事業組合」という仕組みが悪いのではなくて、投資事業組合を利益操作に使うのが悪いのです。
「デリバティブ」が悪いのではなくて、デリバティブで過大なレバレッジを掛けることが悪いのです。

こういうものの言い方は、殺傷事件があるのはそこに刃物があるからだ、と言っているのに近いものを感じます。

金融部品という道具が、有益なものとなるか有害なものとなるかは、それを使う側の意思一つです。
金融のプロ達の自覚のなさで事件や事故が一つ起きる度に、この国の金融部品の使い勝手が悪くなる一方です。

(2006.01.20)



24時間市場の要として

24時間という時間の流れでみると東京市場は、NY市場とロンドン市場の中間にあります。
今は、NYの18:00が東京の8:00、東京の17:00がロンドンの8:00となり、ロンドン・NYの深夜を東京市場がカバーしている状態になっています。

東京市場というのは、ニクションショックが起きた為替市場でも、ブラックマンデーの米国市場の直後でも、市場を閉鎖することなく、取引所機能を果たしてきました。
欧米の深夜という時間的地位と、困難な局面でも市場決済機能を停止することがなかったという実績こそ、東京をそして円という通貨が、グローバルな市場経済の一角に居続けられてきた源泉でもあるのです。

今回、どんな理由であれ東証が取引を停止したことは、東京市場がこれまで担ってきたグローバル市場の一角としての地位そのものを揺るがしかねないほど、大きなことです。
海外投資家にとって、この東京市場の脆弱性がどのように映るのか心配なところです。

(2006.01.19)



下り坂の雪だるま

登り坂で雪だるまを転がしているときは、一生懸命押しても雪だるまは少しずつしか大きくなりません。下り坂で雪だるまを転がすと、雪だるまは勝手に勢いをつけて、巨大化します。
レバレッジの恐さは、ここにあります。
プラス局面では自分の意志で膨らませていたはずのものが、マイナス局面ではコントロールが効かなくなるのです。
企業の財務レバレッジにしろ、ヘッジファンドにしろ、個人の信用取引にしろ、損失過程でレバレッジを落とすということは、下り坂の雪だるまという運命からのがれることはできないのです。
個人の株式投資にかかっていたレバレッジの行方が気になります。

(2006.01.18)



虚業

ライブドアに強制捜査が入ったと聞き、正直何も感じません。あっそう。っていう感じでしょうか。
今の日本経済の象徴だとが言われているようですが、日本経済が彼らによって何か変わったとは全く思っていないからかもしれません。

所詮経済活動を円滑化するための道具にすぎない、メディアを含めた情報通信というものが、経済活動の方向性を決められるわけはないのです。
それは、所詮経済活動の資金フローを流す媒体にすぎない、金融市場が、経済活動の本質を握ることはできないし、握らせてはいけないと思っていることと同様です。

虚業に振り回されない、実業の力が、今の日本には求められているのではないでしょうか。

(2006.01.17)



お年玉はがきの確率

お年玉年賀はがきで、切手以上が当たった経験は、私も社長も小学生の頃のはがきセット一回きりです。二人合わせて90数年の人生において、この確率は悪すぎる。
と思って、会社にいただいたお年賀状で検証してみました。

相変わらず、切手シートだけですが、確率3%ということで、100枚につきあたり番号3つ、という発行確率と一致。特に我々のくじ運が悪いということではなさそうです。

ただ、毎年不思議に思うのは、はずれではあるものの、特定の2桁の数字に偏る傾向があることです。今年は『48』が何故か多い。

ランダムな数値の結果に、不思議な規則性がでてくるのは、大変面白いことです。

(2006.01.16)



ヘッジファンド戦略と日本株

各種ヘッジファンドインデックスによると、2005年通期でのヘッジファンド収益率はドルベースで5%前後から7-8%程度となったようです。この間の$の短期金利が4.5%程度ですので、短期金利対比ではほとんど収益が上がらなかった1年となってしまったようです。
それでも、1年間で0%近辺だった米国株式市場や債券市場と比べると、米国投資家にとっては相対的には満足される結果となったようです。
唯一年間で2桁収益となった戦略が、グローバルマクロであり、その中でも日本株の貢献度(日経225先物のロング)が高かったと、インデックスを算出しているヘネシー社はコメントしています。また、現状多くのマクロ戦略が、金と商品と日本株のロングポジションを保有しているとも指摘されています。

伝統的資産において日本株ウェイトが潜在的に高い日本の投資家にとって、ヘッジファンド戦略が日本株に傾斜していくことは、あまり好ましいこととは思えません。昨年パフォーマンスがよかったファンドオブファンズについては、戦略の中身をよく聞き、本当に伝統的資産との分散が効くかどうかを確かめてみることをお勧めします。

(2006.01.13)



年金制度という隠れ蓑

昨年末から今年にかけて、フォード関連の格下げが続き、金融子会社の売却報道などで一旦小休止したかのように見えるGM関連のニュースも、また大きく取り上げられるようになりました。

米国の自動車産業が危機的状況に追い込まれた主因を社会保障負担という言葉で括ってしまうことに、違和感を持っています。

日本のように年金の制度設計が国の指導で決められたわけではなく、経営戦略の一環として『年金や健康保険』を『福利厚生費用』として『資金効率よく』利用し、『従業員を囲いこもう』とした経営判断の是非。
巨大な金融子会社を使って、低金利キャンペーンに代表されるようなダンピングを湯水のように続けたことによる様々な弊害。

車が売れないのを円安のせいにし、財務内容の悪化を社会保険制度のせいにし、未だに全米値下げキャンペーンなどと言っている、業界の体質そのものに、そもそも問題を感じます。

年金制度を経営戦略の失敗の隠れ蓑に使うのは、いずこも同じということでしょうか。

(2006.01.12)



昨日の続き、金融引き締めの影響

石油価格の高騰や、米国の金融緩和で、金融市場をうごめく資金量が拡大している最中は、新たな投資先のために何かを売る必要はありません。だから、株も債券も商品も不動産も、従来の相関は関係なく全てが上昇する、ということがありえます。

一方、投資資金に新たなキャッシュフローが起きなくなると、魅力的な投資先のためには相対的に魅力的ではない資産を売却せざるを得なくなります。もしくは、儲かっている資産を売却し利益を確定した上で、次の投資案件に向かいます。

世界の投資資金が湯水のように増えていく、という昨年までの環境はおそらく今年は終わるでしょう。資金が回収されるというところまではいかないにしても、何かを買うためには何かを売らなければならない、という普通の環境に戻る可能性は十分にあります。

株式市場では久々に米国株式市場に注目が集まりつつあります。クレジット市場では欧州企業が人気です。とりあえず、日本市場からは一旦撤退というファンドの影が、日本株の売りを呼んでいます。

(2006.01.11)



金融政策のタイムラグ

1990年に日本の金融引き締めが本格化し短期金利が8%を超えた時、私は世の中が崩壊すると思いました。でもお昼休みに外を歩いてみると、人々はいつもと変わらず、街の色も風景も昨日と同じであることにひどく違和感を持ちました。

毎日飽きもせず金利の0.01%の変動で売買されている債券市場と異なり、金融政策変更が実体経済に影響を与えるのには、おそらく半年から1年以上のタイムラグがあるのだと気がついたのは、それからずいぶん時間がたってのことです。

米国の利上げが最終局面を迎えています。米国の利上げによって吸い上げれた資金フローの影響が出てくるのは、おそらくこれから後のことになるのでしょう。
グリーンスパン氏の最後の大仕事が正解であったのかどうかは、氏の引退後に結果がでます。

(2006.01.10)



東海道中休話

歴史的な寒波です。東京も、とんでもなく寒いです。東京は雪がないだけありがたいと思わないといけないのですが、口から出る言葉は「さむい」のみ。
ねこを飼っている同僚に、ねこは元気?と聞いて返った答えは、「うん、ふかふかで暖かい」???
皆様風邪などひかないようくれぐれもご自愛ください。

(2006.01.06)



外交的緊張と株式市場

日本人は、外交問題に弱い。これは政治家に限ったことではなく、経営者も金融市場の参加者も含めてのことです。

外交問題に弱いということは、他国でおきていることの分析力がないということ以外に、自国が他国からどう評価されているかという認識力が薄いということでもあります。

豊富な国内資産を抱え、他国からの資金流入に頼らずに成り立ってきた日本においては、地理的・外交的リスクを株式市場と結びつけて捉えたことはあまりなかったかもしれません。
しかしながら、昨年来の株高を演出している足の速い外国人投資家にとって、外交リスクというものは日本人が考えているより大きな意味あいを持っています。

今年の日本株式の最大のリスク要因は、量的緩和解除でも米国景気でもなく、アジア外交の失敗なのではないかとも思っています。

(2006.01.05)



謹賀新年

あけましておめでとうございます。

良いにつけ悪いにつけ先行きを読むことが難しい時代だからこそ、今自分のなすべきことを日々愚直に行っていくことの重要さが増しているような気がしています。

大きく振れるヤジロベイも、軸さえずれなければ必ず元に戻ります。

激動する市場環境の中、AMC印のヤジロベイは皆様の羅針盤となるべく、今年もオットトドッコイショと平衡感覚を磨いて精進していきます。

本年が皆様にとって幸多き年となりますようお祈り申し上げます。

(2006.01.04)


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