隠蔽の指示
企業不祥事に関し、経営者が事実の隠蔽を指示したとの報道を見て最近感じること。
対外的に隠蔽工作をせざるを得なくなるまでの間に、社内の担当レベルから役員レベルまでのそれぞれの階層において、大小を問わない隠蔽がどれほど多く積み重ねられてきたのだろう。
小さなトラブルの積み重ねが大きなトラブルの素。
小さな嘘の積み重ねが大きな嘘の素。
担当者の手に負えないことも部長だったら解決できるかもしれない。
課長にとっては大問題も会社レベルでは些細なことかもしれない。
抱え込まない。
抱え込ませない。
言うは易し行なうは難し…
(2005.05.31)
国民投票という政治手法
フランスの国民投票において欧州憲法の批准が否決されました。
EU大統領とか、EU財務大臣、などという呼称が、フランスというよく言えば独立心の強い、悪く言えば唯我独尊タイプの国で受け入れられるのは、それはそれは難しいことであることは容易に想像が付きます。
政策者からみれば欧州憲法が発布されることで、フランスとドイツの圏内での地位、さらには世界経済全体での欧州連合の地位の強化に繋がる、と国民を説得する努力はしたものの、力及ばずという結果になりました。政策者の言う理屈は正しかったかもしれないとしても、国際政治経済学の集大成のような判断を一般の国民の50%以上に理解させることは、あまりにも無謀な試みであるようにも見えます。
それでもあえて国民投票という形式にこだわりながら先に進むことを選択し続ける欧州各国の政治手法が、国民との対話を初めから放棄しているわが国の政治とあまりにもかけ離れていることに、政治の成熟度の違いを感じずにはいられません。
多難ではあるものの、少し羨ましい気もします。
(2005.05.30)
今さらですが、運用機関の皆様へ
運用報告の場などで信託さんや運用機関さんとお目にかかると、「何故うちの会社にはヒヤリングに来てくれないのですか?」聞かれることがあります。
当社では1年に1度とか2度とか丸1日運用機関にお邪魔して、全てのファンドのお話を聞く、といった類の調査は行っていません。もちろんそうした形態を運用機関さんが特に望まれる場合は、喜んでお邪魔いたしますが、こちらからそれを積極的にお願いすることはしていないです。特にポイントを絞らない形式的なヒヤリングは、毎年ご提出いただいている調査票と月次データで代替できると考えています。
そのかわり、運用機関の方が運用内容や商品の説明に当社にお出でになることについては、スケージュールがどうしても合わない場合を除いて、お断りすることは100%ありません。なかには世間話しをしにいらっしゃる方もいますが、それもまたそれで有意義な時間だと思っています。
少なくても当社に関しては、ジーと待っていても、たぶん何もおきないとご認識くださいませ。
(2005.05.27)
何のための銀行か?
大手銀行の不良債権比率が2002年のピーク時から半減しました。これに伴い金融担当相が金融再生プログラムの終了を宣言し、バブル崩壊以降の金融リストラが表面的には完了したことを意味します。
伊藤金融担当大臣の「関係者の血のにじみでるような努力によって目標を達成できた…」とのコメントに鼻白む思いを感じたのは私だけではないでしょう。
金融再生の原動力は銀行関係者の努力ではなく、有形無形の税金投入であり、信用収縮によって立ち行かなくなった企業であり、その従業員の雇用です。
今の銀行が行っているビジネスは、ノンリコースローンと名前を変えただけの不動産担保融資や、『サラ金』に軒先を貸しただけの小口金融や、ファンド会社に軒先を貸しただけの金融商品の販売です。
金融機関本来の『信用創造』ではなく、『信用仲介』しかしないような金融機関を7行も残すために、我々は10年間も我慢してきたわけではないでしょう。
一民間企業である銀行に、税金をつぎ込み体力を回復させた本来の目的は、正常で健全な信用創造を再び担わせるためであるということを、国も銀行自身も、十分自覚していただきたいものだと強く思います。
(2005.05.26)
出生率と雇用の安定
出生率がさらに低下したそうです。
ホワイトカラー主体の経済社会において、出生率というのはある種景気のバロメーターになっているような気がします。
実際少子化対策に成功したといわれる北欧諸国においても、90年代の深刻な経済危機のせなかでは、回復し始めた出生率が一端低下に転じています。
終身雇用が崩壊し、大幅な賃金カットがされ、新卒の採用が凍結されたこの4・5年は、子供を増やすには明らかに逆境だったといえます。そもそも学ぶことも働くこともしないニートや、若年層の失業率が急増している社会環境において、出生率だけが上がっている状況というのか歓迎できるものかどうかは、むずかしい判断だと思います。
抜本的な少子化対策はもちろん必要ですが、まずは家計の改善と雇用の安定が第一なのではないかと感じています。
(2005.05.25)
前向きな情報・後ろ向きな情報
日本が情報にお金を払わない国だという認識は、古くて新しい問題です。
特に資産運用関連の情報提供会社は日本でビジネスを成功させることの難しさを未だに痛感しています。
不思議なことに、日本では後ろ向きの情報にはお金を払う傾向があります。例えばファイナンシャルプランナーへの相談件数で一番多いのは節税と保険料の低減です。いかに資産を増やすかではなくいかに出費を減らすかにはフィーを払います。
支出を減らすという行為では足元で確実に現金が生まれるが、収入を増やすという行為はやってみないとわからない不確実なものだというのは正しいのでしょうか?
企業でも個人でもリストラをして支出を減らすという行動が、将来にどのような影響を与えるのかは、やってみないとわかりません。今の情報の確実性は将来でなければ検証できないというのは、全ての情報に共通した現実です。
いや別に運用コンサルタントという仕事がいかに儲からないかと嘆いているわけではありません。決して…。
(2005.05.24)
何故そのルールがあるのか?
ルール通りにしておけば問題ない。
ルール違反さえしなければ問題ない。
表現は異なっていますがこの2つは同じ意味で間違っている、と思います。
ルールというものは、何かの意思の表れです。
一つのことを禁止するのには、禁止する理由があります。但しルールブックには大概の場合この理由は明記されていません。
ルールを決めた当事者が組織の中にいる場合はまだしも、外部で決められたものや、過去に決めて時間がたっているものなど、紙に書かれた言葉の裏にある意思には誰も注意を払わないケースが多いように感じます。
顧客ガイドラインにしろ、社内ルールにしろ、業法にしろ、何故そのようなルールが設定されたのかを意識した解釈や運営が必要なのではないでしょうか。
(2005.05.23)
人格を変えるネット
4月5月に中国や香港に行った何人かの人と話すと、反日デモで報道されるような危険な雰囲気はほとんど感じなかった、という感想を聞きます。
当然その場に居合わせたかどうかによって、状況は大きく変わると思いますが、その他の要因としてインターネットという特殊な環境下で流布される意見が一人歩きしているような気がしています。
例えば、日本でもいわゆる『掲示板』と呼ばれるインターネットサイトに書き込まれる匿名の文章には、異常としか言いようがないほど過激な表現が、ごく普通に使われています。匿名性によって本音が出ている、という次元ではなく、日常では絶対に使えない、使わないような言葉やフレーズを書き込むことで、非日常性を楽しんでいるように感じます。
こうした仮想人格によるある種の言葉遊びが、突然現実世界とリンクしてしまう怖さは、今回の反日行動だけではなく、ネット投資家による株式売買などでも十分に認識しておく必要があるのでしょう。
(2005.05.20)
石油価格の価格転嫁
原油高騰の影響が、今頃になって一般消費者のところまで到達してきたようです。
日本では、車のガソリン以外で個人が燃料を直接購入するケースが少ないので、原油価格の高騰が末端価格に転嫁されるまでのこの1年は、ほとんど生活レベルでの実感がなく、原油が歴史的な高値にいたことを知らなかった人も多いようです。
ガソリン価格が10年来の高値を更新し、テレビのニュースなどで取り上げられ、石油価格の上昇が事実として世間に認知されるようになると、これまで我慢していた価格転嫁が便乗値上げを含めて一斉に解禁されそうです。
原油価格は既に反落を始めている今になって、1周遅れの石油危機が実態経済の不安心理を増幅させています。
(2005.05.19)
金融商品の広告
新聞の一面広告で、リスク特性の全く異なる商品の表面利率を棒グラフで並べるようなことを、どうしてするのだろう?
小さい字で、外貨リスクがあります、などど書いていても、巨大な棒グラフが視覚に訴えるインパクトが、どれほど個人投資家をミスリードすることか。
当然、広告を打つほうからすれば、そんなことは承知の上での確信犯なのでしょう。
ただでさえ、銀行の店頭で売られるものは、元本が確保されていると勘違いしているお年寄りはまだまだ多いのです。その勘違いを増幅させるような広告を平気でだす神経が私には全く理解できません。
このような広告に名前を連ねられている運用会社にも、販社管理の責任を問いたいと強く思います。
(2005.05.18)
宴の終わり方
グリーンスパン氏が来年の1月をめどに退任することを表明したことは、米国の金融市場にとって2005年が大きなターニングポイントとなる1年であろうことを、市場関係者に改めて認識させたのではないでしょうか。
年初から特段の理由もなく下げ続ける新興国市場やナスダックが意味していたのは、流動性が低く換金に時間のかかるポートフォリオをパニックが来る前に徐々に解している投資家が既にいたということです。
また多くのヘッジファンドは昨年来の収益低迷を受け、レバレッジを下げリスク量を減らしてきています。儲からない時はリスクをとらず儲かり始めるとリスク量を増やす、という彼らの順バリ指向が、今回はプラスに働いているようにみえます。
台風と同じで来ると判って備えていても、被害ゼロとはいきません。ただ今回の米国金融市場の変調は、今のところ比較的冷静に処理がされているように見えます。
(2005.05.17)
タイミングは難しい
市場や企業業績などに対し将来起きることを予想するタイミングは、早すぎても遅すぎても役に立たないものです。
ある会社の財務リスクについて半年も前から予想し、ポジションを落としていたファンドが、実際に市場が反応して株価が売られると値ごろ感で買ってしまいその後の暴落で痛い思いをしたり、業績の回復を予想して早くから買っていた株に、実際の材料がでて上昇し始めると早々に売ってしまったり、ということは、本当によくあることです。
市場の後追いはよくない、ということはよくわかるのですが、一方で正しい企業分析だけでは、市場に勝つことが難しいということも又事実です。
(2005.05.16)
運用スタイルにそった運用報告を
個別銘柄のボトムアップでの結果をリスクファクターモデルで説明したり、同一業種内での個別企業の相対評価でロング-ショートを作っているのに個別株の勝ち負けでパフォーマンスを説明したりと、運用の内容と報告の内容とがちぐはぐなケースがまだ多く見られます。
そういった運用報告資料を見て我々が感じることは、
①四半期報告を軽視している?
②営業担当者に運用知識がない?
③運用者自身がプロダクトのリスクや性格をよく理解していない?
のいずれかです。この中で当然③のケースが最悪です。
運用者自身が運用報告に出ることが一概に良いとは言えませんが、少なくとも自分の運用結果がどのような形式で顧客に説明されているか、事前に資料に目を通すぐらいのことは必要でしょう。
それでも資料の内容が変わらないのであれば、ケース③と判断せざるを得ないということですね。
(2005.05.13)
噂の解説
ある企業が深刻な経営危機に陥っているとしましょう。
その企業の債券利回りは信用力の低下によって上昇し、満期3年で10%にまで到達しました。
その企業の株式は価格は下落しているものの市場での取引は活況です。
さて、こうした状況において一般的なヘッジファンド戦略とは……
債券を買って10%の金利を貰い、倒産リスクを回避するために株式を空売りします。債券保有者は株式保有者より債務の優先権があるため、仮に企業が倒産したとしてもなんらかの残余財産を得られる可能性が高いからです。
3月に起きた信用不安以来、米国のGM社の債券と株式にはこのような類の取引が多く見られたと言われています。4月は順調だったこの戦略ですが、5月にGM株に大口投資家が参入したため株式は急騰。一方の債券は格下げ懸念が継続しているため下落が継続。
ということで、GM株を空売りし信用を買っていた一部のヘッジファンドに大きな損害が出ているとの噂が駆け巡ることとなっています。
(2005.05.12)
京都議定書のたたり?
トヨタの好業績がハイブリッド車のためだけではないでしょうが、米国内で日本車の躍進と米国車の凋落の原因を環境対策技術開発の差に求める論調があるようです。
思い起こせば、現ブッシュ政権が国際社会からの孤立化を表明しはじめたのは、京都議定書の批准拒否からでした。
自国産業の競争力を優先させ国際社会に背を向けた政策が、環境技術開発への取り組みを後らせ、それが結果的に自動車産業の衰退のきっかけになったのであるとするなら、大変に皮肉なことです。
(2005.05.11)
2007年問題
いわゆる団塊の世代が定年を迎えるのに伴い労働人口が急激に減少することを、2007年問題と言うらしい、です。リスクや危機という言葉は、想定外の悪影響に対して用いるもので、この問題のような事前に十分に予想のついた当然の帰結は危機でもリスクでもない、と私は思います。いまさらリストラの規模が大きすぎたとか、技術の継承に問題があるなどという言葉を経営者からも聞きたくないし、ましてやリストラの進捗状況で企業評価をしていた株式アナリストからも聞きたくありません。
JR西日本の年令構成が50歳台と35歳以下に偏っていることが、それによる現状の風通しの悪さもさることながら、その50代が定年後の人材不足が安全な運行に影響を与えないのかも心配です。
一端流動化した人材が理屈通りに適材適所に再配分されるのか、かなり怪しいと私は思っています。
(2005.05.10)
国内債券運用のあり方
国内債券のアクティブマネージャーというのはつくづく割りの悪い商売だと思っています。
国内株式や外国株式で、ベンチマーク対比3%や5%平気で劣後されているスポンサーからみると、国内債券が年間0.5%や1%という幅でベンチマークから劣後することのポートフォリオに与える影響はかなり軽微です。
一方で、標準偏差が2%程度しかないベンチマーク対比の世界での1%の損失は、向う3年は整理ポスト入り、というほどの大きなダメージをそのファンドとファンドマネージャーに与えます。
顧客がファンドを通して負う心理的な負担と運用者が負う心理的な負担とがこれほど乖離しているプロダクトは珍しいのではないでしょうか。
国内債券でリスクをとるなとは言いません。ただ、そのリスクの取り方が、どれほどの顧客満足度につながっているのか、プロダクトの将来に本当に必要なリスクの取り方なのか、よく考えていかないと、日本の債券運用のパッシブ化をさらに加速させるだけのような気がするのです。
(2005.05.09)
そういえばミサイルが…
連休ボケもあり、「北朝鮮が日本海にミサイル発射」という文字を目にしても何も感じず、会社へ来ました。
株式市場が売られて始まったのを見て、改めて状況を認識したしだいです。
ボケているのは連休のせいなのか、恒常的にもめている東アジア情勢にアンテナが弛緩してしまったせいなのか??
米国でのテロのリスクは9.11以降最低水準にまで低下したと米国政府は発表しています。
だからといって、日本の地政学リスクまで一緒に低下したわけではないのですね。なんていう当たり前のことを突然思い出している大型連休中日です。
追伸:私よりボケている永田町に大笑い
『政府は1日、米国から北朝鮮のミサイル発射情報が寄せられたのを受け、外務、防衛両省庁を中心に慎重に事実確認を進めた。ただ、小泉純一郎首相と町村信孝外相、大野功統防衛庁長官の担当閣僚がいずれも外遊で国内不在のため、政府としての対応決定は、大型連休明けの6日以降になる見通しだ。-時事通信』
(2005.05.02)