カタカナ言葉
カタカナ言葉の言い換え案が発表されています。
「ポートフォリオ=資産構成」というのは、少し違うような気がするのですが。だからといって別の日本語を考えても、出てこないものです。
金融に関わる言葉としては「ガバナンス=統治」とか「デフォルト=債務不履行」とか、確かに言い換えたほうが判りやすいものもあります。
年金スポンサーの方々とお話する時や、運用委員会や代議委員会でお話する時は出来るだけ、カタカナを使わないようにしていますが、中には「ポートフォリオ」のように、どうしても適切な日本語が見当たらない例も少なくありません。
日本語表記の当てはまらないカタカナ言葉はその概念自体が日本社会にないものが多いということですから、そういった時は、無理に日本語をあてはめずに、その言葉の意味に出来るだけ注釈を付けて説明するようにしています。
(2004.06.30)
バイオバブル?
ベンチャーキャピタルの世界での今の話題は、「バイオバブル」というのだそうです。
98年から99年のITバブルで起きたことと似たような現象が、バイオ産業に見られることが、懸念されています。
99年当時はIT関連企業以外でベンチャーファンドを組成しようとしても、全く資金が集まりませんでした。逆に言えば、ITと名を付ければ内容の吟味もなく、個人法人を問わない資金を集めることができたわけです。
IT産業とバイオ産業の大きな違いは、スタートアップ時点での開発資金額の差です。ITバブルの時は企業の将来の収益を先取りする形で、必要以上の手元資金が企業家の手に入りました。バイオ産業は、平均20億円といわれる開発資金が実際に必要で、そのためにベンチャーキャピタルの資金が利用されます。ただ、その投資が開花するかどうかは数年先まで全く読めません。
ベンチャーキャピタリストにバイオ技術の真贋を精査できる能力が伴っているか、今後数年のベンチャー市場の成否がかかっています。
(2004.06.29)
利便性の対価
個人情報データの流出や、コンピューターウィルスの蔓延、キャッシュカードなどの磁気データのスキミングなど、我々の日常の安全が緩やかにしかし確実に侵食されています。
ITなどの技術革新は、消費者に「利便性の高い」サービスをより「廉価」で提供することを可能としてきました。デフレの進行も影響し、この10年、消費者も企業もより安い仕組み作りを求めて、人的関与を減らし、無駄をなくす努力をすることで、「便利で質のよいサービスを安く提供することが可能になった」のだと信じてきました。
しかし、それは一方で、便利であるということの裏側に潜む危険を日々増殖させていただけであるということに、我々はそろそろ気づかなければいけなくなってきているように思います。
その危険を排除するためのコストは、消費者が利便性の対価として認識べきものです。便利であること、質がよいこと、はそうでない事に対し「費用がかかる」はずのものであり、その費用は消費者が支払うべきものです。
「リターンとリスクのトレードオフ」は何も証券投資に限ったことではないということなのではないでしょうか。
(2004.06.28)
TOPIXの戦い
TOPIXの浮動株指数化が決定したようです。国際的な指数の潮流に合わせ、グローバルな投資対象としての地位と確立させたい、との東証の意図はわかります。
ただ、今回の改正によりTOPIXというものが、幾つもあるインデックス指数の一つに過ぎなくなった、というのもまた事実でしょう。
これまでのような調整のない「単純平均」であれば、そこに付加価値もない代わりに、その存在を脅かす対象もありえませんでした。東証1部の値動きだけをベンチマークとすることの是非はともかく、日本株ベンチマークとしてのTOPIXの絶対的な強みは恣意性を一切排除した客観性と単純さにあったといっても過言ではないでしょう。
浮動株調整後のTOPIXは、国内外の民間機関の算出するその他多くの日本株インデックス指標のなかでの厳しい生存競争に足を踏み入れることとなるのです。
我々の年金運用においても採用ベンチマークを見直す一つのきっかけとなるかもしれません。
(2004.06.25)
金利上昇時のヘッジ外債
当社がヘッジ外債への投資にあまり積極的ではない理由の一つが、海外金利上昇時に生じるレバレッジ効果です。
金利が上がれば原資産である債券価格が下落するのは当然として、金利の先高感によるヘッジコストの増大が収益を圧迫する可能性があるからです。
日本の短期金利がゼロという下限にあり、かつ海外での金融緩和が進行したこの数年は、ヘッジコストが歴史的な低水準となったヘッジ外債にとって過去例のない好環境であったわけです。
ですからこの数年の収益率をみて、ヘッジ外債の特性を議論することは、大変危険であると感じています。
ヘッジ外債という商品特性をどのように利用し、どのようにコントロールしていくのか、まだまだ議論が必要なのではないかと思っています。
(2004.06.24)
説明努力
国の年金改正がここまで混乱した一つの要因が、国の説明努力不足であることは否めません。
企業や総合の年金基金が、掛け金の引上げや給付の引き下げを行うためにしている説明会や、同意書をとるための作業にかけている、基金事務局の膨大なエネルギーの何分の1の努力を国はしているのでしょうか?
年金基金の事務局があれほどまでの努力をして、加入員に負担をお願いしているのは、それをしなければ基金の存続が不可能だからです。
納得して同意書をもらえなければ"強行採決"、というわけには基金はいきません。
単に統計資料を並べて当然のように掛け金や給付の改正を通そうとしても通らないのは、加入員が何千万人の国も、数千人の基金も同じです。
説明してもわからない、のではなく、わかるまで説明する努力が、まず国には求められていると思うのです。
(2004.06.23)
壊れる車
M社製のドラックが火を噴いたとか、走行中に部品が外れた、とかの記事を毎日のように見かけます。
あまりにも多いのは、記事にならなかっただけで、実はこれまでも毎日のようにトラブルを起こしていたということなのか、最近たまたまトラブルが頻発しているということなのでしょうか?
もっと深刻に考えるなら、これはM社製品に限ったことなのでしょうか?それともM社製品だけが新聞に載っているにすぎないのでしょうか?
車に詳しくない私には、走行中の車から(自転車からでも)部品が外れるとか燃えるとかが頻繁に起きていることなのかよくわかりません。少なくても「日本車」だけはそんなこととは無縁だと思い込んでいました。
世界に冠たる日本の自動車業界全体の信頼が少し揺らいでいるような気がしているのは私だけでしょうか?
(2004.06.22)
もう夏?
暑いです…
梅雨明けまでは必要かと片付けられないでいる毛布とか、トレーナーとかが、部屋の中で、ものすごく目障りで。
6月から冷房などかけたら異常気象を増幅させるだけだと、汗を流してやせ我慢をするのも、ちょっと限界。
そういえば去年は記録的な冷夏でしたね。
今年はなんだか台風が多い。
カレンダーと季節が年々ずれていったら、日本でもサンタがサーフィンしてたりして。そんなわけありません。暑さで頭が溶けてます…
株式市場は一足早いサマーラリー?
(2004.06.21)
ボーナス
今年の大企業のボーナスは、バブル期以降最高額となったそうです。
ただ、今回の大企業のボーナスをこれまでと同じ基準で比較することは少しミスリードかもしれません。
多くの大企業は定期昇給をなくし、業績連動型のボーナス比率を上げる方針を示しています。
一部には、固定報酬部分を一律カットしその分をボーナスで調整している会社もあります。
従って、今回のボーナスが高かったからといって家計の可処分所得が増えるということには繋がりにくい面があります。
また、年間所得の内、変動所得比率が増えてくることが、個人の消費パターンにどういった変化を起こすのかはまだ未知数です。家計を預かる主婦の立場からすれば、貰ってみなければ判らないボーナスは、はじめからあてにしないで生活しようと思うかもしれません。
今後の消費パターンを占う意味でも、今年のボーナス商戦が注目されます。
(2004.06.18)
議員年金は別物です
NHKのニュースで、議員年金の国庫負担と国民年金の国庫負担とを未だに同列に表現しているのを見て、ため息が出ました。
いわばサラリーマンの3階部分に相当する議員年金の問題は、"雇用主"である国(もしくは国民)が"被雇用者"である国会議員のために拠出する掛け金額の妥当性や、国会議員という"被雇用者"の私的年金の必要性を"雇用主"たる国民がどう判断するか、という制度そのものの議論です。
ちなみに民間企業の3階部分はほとんど100%雇用主負担です。
だから、国民年金の国庫負担が3分の1なのに、議員年金の国庫負担は75%… というロジックは全く意味のない文脈です。
こんなに毎日毎日年金報道をしていても、もしかしたら年金の基本的な仕組みはまだNHKさんにも理解されていないのか、と思うと、これからの選挙シーズンがなんだかとても思いやられるのです。
(2004.06.17)
SRIと消費者
社会的責任投資と株主利益の相反、という論点を解決するためには、「賢い消費者」の担うべき役割が大きいと思います。
企業アナリストにとって重要なことは、社会的ではないとみなされる企業行動があるかどうか、ではなく、その企業行動が実際の売上高に直接影響するかしないか、です。
例えば、何万件という個人情報の流出を起こした企業とは当面付き合わない、と思うか、起きてしまったことは仕方がないから忘れてしまうのか、によって、その事件そのものが企業株価に与える影響はまったく異なります。
海外の投資家からみて、日本の消費者は企業に対し大変寛大であると見えるようです。だから日本株投資の基準には社会的責任というファクターを組入れる必要はまだないのではないかと、いう意見もあります。
社会的責任投資、の成功には、消費者の意思と怒りの表明がもっと必要だということなのではないでしょうか。
(2004.06.16)
ベンチャー投資への覚悟
ベンチャーキャピタルの会社とのミーティングで常に話題となることは、「ベンチャー投資と時価」についてです。
国内外幾つかの会社とお話していて共通することは、ベンチャー投資に「フェアバリュー」という概念があまり適さないということでしょう。
金融市場で用いる「フェアバリュー」という言葉には、"公正で客観的な"価格、という意味合いが強く込められています。
公正であることは当然として、果たしてベンチャー投資に客観的な価格基準などありうるのか、という疑問をベンチャーキャピタル自身が持っています。
ベンチャーキャピタリストが皆さん言っている事は、「我々のファンドの時価は、我々の投資哲学に則り、我々が正しいと信じている基準に基づいて、再現性をもったルールで行っている。」ということで、「我々のルールが正しいかどうかを含めて、投資家に投資判断をして欲しい」ということです。
ベンチャー投資というものは、投資家自身に確固たる投資理念がなければ、成り立たないものなのではないかと、感じています。
(2004.06.15)
合併の法則
国内外の運用機関の合併を何軒かみてみると共通したパターンを見て取れます。
ステージ①合併発表後合併まで:ファンド生き残りをかけた緊張感の高まりから、ファンドパフォーマンスが急激に改善。
ステージ②合併後半年~1年:安定飛行
ステージ③合併後1年後:緊張感の低下から徐々にパフォーマンス低下
ステージ④戦乱期:内部抗争勃発。組織が疲弊しパフォーマンス急低下
ステージ⑤再構築:パフォーマンスの悪化と顧客離れを受け、旧経営陣の退任を含めた大規模なリストラ。
ステージ⑥新生:心機一転。ようやく新しい会社としての体制が整う。
非常に強いリーダーシップの下、ごくまれに③から⑤が省略されるケースもありますが、ほとんどの場合ここまでで、短くて3年、長くて5年程度かかっているように思います。
委託者からすれば、よけいなエネルギーを内部抗争に割くことなく、一刻も早く運用に集中して欲しいというのは言うまでもないことです。
(2004.06.14)
出生率
この話題にコメントをする資格が私にはないことを承知の上で、やっぱり書いてしまいます。
出生率1.2人台。東京1人割れ。
スウェーデンの社会福祉制度が国際的に有名になったのは、スウェーデン方式という年金制度からではなく、1980年台に始まった国を挙げての少子化対策からです。
対GDP比での社会保障費用が今でも日本の2倍あるスウェーデンではその多くを「養育・教育関連費用」に割いています。
スウェーデンの少子化対策の基本は、どんな家族形態で育つ子供であろうと必要最低限の養育費は国が保障する、という点にあります。子供は社会の財産であり、生活の心配をすることなく産んで欲しい、というメッセージがこめられているからです。
それでも、90年台半ばの経済危機の間はやはり出生率は明らかに落ちました。
日本における最近の出生率の低下にも、この15年の長期不況が影響していることは否めないでしょう。景気が安定軌道に乗ればおのずと子供も増えてくるかもしれません。ただ一つ言えることは、我が国は子供を増やすということについてあまりにも無策であったし、この部分の解決なしに年金制度だけをスウェーデン方針に改めても、所詮机上の空論であるということです。
(2004.06.10)
儲かっているうちに
ファンドオブファンズのゲートキーパーが、組入れヘッジファンドの解約を検討するタイミングの一つに、ファンド収益が事前の期待収益率から大きく上回った時、というのがあります。
そのヘッジファンドの採用している戦略からみて想定される収益率から実際のファンド収益が大きく乖離しているということは、ファンドが事前の約束とは異なった運用をしているか、その戦略が依存する市場に過熱感が出ているか、いずれかのリスクが生じている可能性が高いからです。
一般に儲かっている時にファンドの解約をすることは、委託者としても勇気のいる作業ですが、実はファンドマネージャーにとっても利益の上がっているファンドのリスクを落とすことは大変勇気のいることです。
利益を上げているファンドマネージャーが自主的にリスクコントロールをしてくれることが最も望ましいものの場合によっては委託者サイドが冷静に対応した方がよいこともあるのです。
(2004.06.09)
正常な金利上昇
日本の長期金利の上昇でご心配なスポンサーの方々も多いと思います。
ここでも何度も申しあげていることですが、全ての資産で儲けようと思うのは間違いです。
株式と債券・円貨と外貨、これらがシーソーであることを前提とするから、年率で20%以上ものボラティリティがある株式資産を大切な年金資金で保有することができるのです。
これまでの日本のように金利が下限に張り付き株価の下落に反応できなかったり、デフレの進行が止まらず株式が上昇しても金利はビクとも動かなかったり、といった経済状況は、非常に異常なことです。
あまりに長く異常な環境に身をおいていたため、どうしても過敏に反応しがちですが、投資家一人一人の過剰反応で思いもよらないオーバーシュートを招かないためにも、今の金利上昇は将来の金利低下への発射台作りとの割り切が必要です。
(2004.06.08)
フリーター不況
払い込み期間40年、平均月額30万円、というモデルケースで、基礎年金部分の国民年金だけと報酬比例部分が加算される厚生年金とでは、年金の受取額が年100万円以上も異なります。
いわゆるフリーターと呼ばれるパート従業員の多くは、この報酬比例部分がありません。
一般のサラリーマンの生涯賃金が2億円内外と試算される中、フリーターの生涯賃金は5000万円程度と想定されるそうです。
生涯所得が4分の1以下で且つ予想年金受取額が100万円以上少ない労働層が確実に増えています。
パート従業員の年金加入に反対し、コストの安いパート従業員に依存している企業は、将来の日本国内の購買力の芽を自ら摘んでいることになりはしないのでしょうか?
今の企業利益の追求が、30年後40年後の構造不況の種になるのではないかと危惧します。
(2004.06.07)
ロナルドレーガン
レーガン大統領の時代はイギリスのサッチャー首相の時代と重なり、後半はゴルバチョフの時代と重なります。
超タカ派と言われるレーガン・サッチャー政権が結局は冷戦の終焉を演出することになったことは、時代の皮肉だったのでしょうか。
大国自身が経済的負担に耐えられない、という切羽詰った経済環境だったからこそ実現した冷戦の終結は、その後のグローバル経済発展への大きな第一歩となりました。
グローバル経済にとっての主役はもはや"国家"ではなく"企業"です。
必要なのは強い国家ではなく強い企業を支える安定した政府です。
強いアメリカの象徴であったロナルド・レーガン氏の死が、アメリカという国を「強くあらねばならぬという呪縛」から解き放ち「普通の国になる」努力を始めるきっかけとなることを期待します。
(2004.06.06)
過去のパターン
前回米国で本格的な金利の引き上げがあったのは1993年、すでに10年以上前の話になります。1999年にも小規模な利上げはありましたが、短期間で終わってしまいました。
今回の米国金利引上げをめぐる市場の混乱は、債券だけでなくあらゆる金融市場の市場参加者の経験不足によるところが多いのではないかと感じています。
金融業界での10年というのは非常に長いタイムスパンです。特にまだ若いヘッジファンド業界にとっては、ほとんど"有史以前"といってもよいでしょう。
経験不足をカバーするために、1993年当時のマーケットパターンを現在にあてはめてリスクコントロールをしようというマネージャーもいます。しかし経済環境だけでなく、金融技術の革新やデリバティブの台頭といった市場環境もまた10年前と今とでは大きく異なります。
経験不足からくる過剰反応と、パターン化されたリスク管理とが、利上げパニックを増幅させているように感じています。
(2004.06.04)
健全なウォールストリートルールを
よい企業の株を買い、悪い企業の株を売る。株式を売買することで企業の評価をすることを「ウォールストリートルール」と言います。
不祥事を起こした企業、社会的信認を失った企業の株価は市場で売られることで、その痛みを経営陣に突きつけ、最悪の場合は退場勧告をする、というのがウォールストリートルールにおける社会的責任追求の姿です。
最近、日本でも海外でもこのシンプルな手法があまり機能していないような気がしてます。
株式を保有し続けることを前提に株主価値の最大化を働きかけるコーポレートガバナンス投資であっても「最終的には株式の保有を止める」という覚悟を持たずしては意味がありません。パッシブファンドで絶対に売却しないとわかっている投資家の発言力にどれほどの効果があるのでしょう。
社会的問題が明らかになった企業に対し、全容が判明する以前に関係先が資金援助を申し出てしまえば、株価は反応しきれません。
絶対に売らないこと、絶対につぶさないこと、を前提とした株価形成はどこかおかしいと思うのです。
(2004.06.03)
インデックスのゆがみ
ボトムアップで銘柄選択をするグローバル株式ファンドで、ここ2年以上米国株式がアンダーウェイトとなる傾向が続いているように思います。成長株スタイルでも割安株スタイルでも、この傾向はあまり変わらないようです。
通常のKOKUSAIインデックスでは米国株式の比率は約60%ですが、少ないところでは40%近くまで米株比率が落ちているところも目にします。
個別企業の競争力を国際比較した結果として米国株式が5割以下しか入らない、というのが実態なのであるなら、インデックス構成とおりの地域配分で投資をしているパッシブファンドにはかなりの潜在損失があるということになるのかもしれません。
本来パッシブ運用というのは、採用するインデックスの妥当性や優位性を検証した上で行うべきものであるということを、やはり忘れてはいけないのでしょう。
(2004.06.01)