2004年05月の思いつき


成功報酬で得をする人

年金スポンサーが運用機関に成功報酬方式を望む声は相変わらず高いです。
但し、成功報酬制を取り入れることが必ずしもコスト削減につながるわけではないこともよく理解しておく必要があります。
時価残高比例の固定料率という仕組み自体もまた資産額に応じて報酬総額が変動する成功報酬型であるわけです。
時価が増えれば取り分が増え、時価が減れば取り分も減る。これは固定料率であっても成功報酬料率であっても、変わることはありません。
また成功報酬によって時価の下落過程ではコスト削減効果があるように感じるかもしれませんが、運用報酬の下限はゼロであって、払い戻しはありません。一方時価の上昇過程では青天井で成功報酬が発生します。
成功報酬という仕組みは、スポンサーにとってではなく実は運用機関にとって最も利のある仕組みである、との見方もできるということに留意してください。

(2004.05.31)



慣れ…

自分のこととして。
イラクの人質事件が起きた時の衝撃が二度目の人質事件の時にはなかった。今回とうとう犠牲者がでた。でも初回の人質事件ほどの衝撃は受けなかった。更に、サウジでも被害があったかもしれない、との報道はほとんど聞き流した。
「慣れ」などという簡単な言葉で済ましてはいけないことだとは思う。でも、やっぱり慣れとは恐ろしい。

為替や株式市場の反応も恐らく私と似たり寄ったり…

最低限、自分のリスク感覚が次第にマヒしつつあるのだ、という自覚だけでも忘れないよう肝に銘じておきたい。

(2004.05.30)



年金改正と時間軸

年金改革法案の改正が遅れれば遅れるほど…

すごく単純な話。
昭和22年から昭和24年に生まれた第一次ベビーブーム世代は、男性だけでおよそ330万人ほどいます。
今、昭和22年生まれの方で、今年57歳です。
この330万人世代が掛け金を払っているうちに、掛け金の引き上げが出来るかどうかは、財政的には結構大きい。
330万人分の掛け金、年間1万円増で、なんと330億円です。
頭数の多いうちに、掛け金をすこしでも上げる。これ常識。

長期の視点は大切です。でも、時間軸も大切です。

(2004.05.28)



マネジメントと演技力

野球やバレーなどでチームの負けが込んでくると選手以上に落ち込んでいる監督をみると、かわいそうだなぁと思う反面、これじゃ勝てない、と思ったりします。

海外の運用機関のTOPとお目にかかる度に感じることは、自社の運用商品や人材に対する驚くほどの自信です。
結果がよかろうが悪かろうが、常に威風堂々。
具体的な運用の中身の話をしなくとも、相手を信用させる独特な雰囲気を持っています。

マネジメントには人を納得させる"演技力"も重要な資質なのではないでしょうか。

(2004.05.26)



儲けるべきか?儲けざるべきか?

日本郵政公社の決算が発表されました。公社化に伴い民間企業の決算に近い形での数字が公表されたようです。
単純に民間と比較して見れば、かなり経営効率が悪い組織であるということが浮かび上がってきた、というのが大方の見方でしょう。
ただ、こうした論調に私は少し違和感を持っています。郵便事業の利益率が民間の宅配業者の半分であることは悪いことでしょうか?郵貯の資金運用が国債投資中心で利鞘の取れる中小企業向け貸し出しをしていないことに何か問題があるのでしょうか?
民間でのデフレが進んだことにより、一般消費者向けのサービス価格として、現在郵政公社の商品性は民間商品に対し不当に割安であるとはいえなくなってきています。
公社のコスト意識の欠如による不当な廉価設定が民業を圧迫しているという点の解消と、公社が民間企業なみに利益効率をあげなければならない、という視点とでは意味が異なります。
公社事業は儲けなければいけないのか否か?民営化するのだから利益を上げなければならない、という論調は本末転等ではないかと感じます。

(2004.05.25)



銀行決算

銀行行政の意味不明さは、今に始まったことではないのですが、本当に分かりにくいです。
繰り延べ資産の計上にしろ、不良債権の分類にしろ、決算の度に基準そのものが変化しているように一般には見えます。
監査法人が、「国の方針が厳しくなったことを受け精査したところ…」などと言っていること自体、銀行決算の軸が定まっていないことの証左でしょう。
銀行に厳しくしているうちは、あまり批判の対象にはならないかもしれませんが、国と監査法人と銀行とのこうした裏での攻防は、日本の金融システムへの信頼を長期的には損ねていきます。
だから、大手5行が黒字転換し、旧経営人への退職慰労金を復活する、などという発表も、素直には受け取れなくなってしまうのです。

(2004.05.24)



グループ支援とブランド

本当に評判悪いです、小泉訪朝、ではなくて、三菱グループ主導の自動車支援。
いまさら、経済合理性や社会的責任にも合致した企業行動であるなどと説明しても、時既に遅しです。
ダイムラーの撤退が発表された直後に、間髪入れずグループ支援を発表した時点で、三菱に対する世間の評価は決まってしまったように感じます。
傍から見れば滑稽に思えるほどの、名門「三菱」というブランドへの執着が、そもそものリコール隠しを生む土壌を作る要因にはなりはしなかったのか?そんな企業風土を抱えながら、まだ身内で処理をしようとするのか?
今回の自動車支援が、グループイメージに与えたマイナス効果は計り知れません。

(2004.05.23)



マスタートラスト

信託銀行合併報道を見て、当該行が異なるマスタートラストに加入していることに気付き、思ったこと。
日本にマスタートラストは3つも必要だろうか?
3つのマスタートラストがことさら異なったサービスをしているわけでもなく、どこも単に信託事務のコスト削減に使われているだけならば、業界全体で一つ作れば充分なのではないか。
などと思ってしまうということは、マスタートラストに期待していることがいかに少ないか、ということで、スポンサーから見ても統合レポートがちょっとカラフルでタイムリーになったぐらいのありがたみしか感じていないような気がしているからです。
「日本年金信託決済機構」みたいなものに統合してしまう、なんていう案はないですか??

(2004.05.20)



何も変わらない何も決められない

運用機関で、合併などの資本関係の変化や、CIOの変更といった組織の変化があった際の常套文句に、
「運用哲学やプロセスには変化はなく運用上はこれまでと何も変りません」
というのがありますよね。
現実は何も変らないわけがなく、また本当にCIOが変っても何の影響もないほどCIOが形骸化しているのであれば、それはそれで問題でしょう。
営業の方が、「何も変らない」ことを強調すればするほど、こちらには「何も決められない経営の無能さ」が強調されているように聞こえるものです。
大切なのは、「何も変らない」という意思表明ではなく、「何を変えて何を変えないのか?変えずに維持するために何をするのか?」という意思表明だと思うのです。

(2004.05.19)



国のありよう

国家と国民との関係は時代の変遷とともに、かなり大きく変化するものです。
1970年台のオイルショック前後に松下幸之助翁が、「戦後30年間企業は必死にがんばって税金を収め国の再興を助けてきた。これからの30年は国が企業のためにお金を使い、我々を助ける番だ」というような内容を話しているインタビュー記事を読んだことがあります。
まさに翁が言ったとおりの30年がその後続き、そして国の財政が見事に枯渇したわけです。今となれば、経済活動への国の関わりはできるだけないほうがよい、というのが常識のように聞こえますが、こういった風潮が出てきたのはつい最近のことにすぎません。
これからの30年、国家と国民のありようはどのように変化するのでしょうか?
あるべき社会保障体制の姿もまた、その延長線上にあるのだと感じています。

(2004.05.18)



シニア資金と株式投資

証券会社の目下のターゲットとされるシニアマネー。
この老後の生活資金を株式投資に誘導することは、本当に市場活性化のために必要なことなのでしょうか?
各ライフプランセミナーで説明されているように、人生の先が長い40才代までは、株式などのリスクの高い資産で長期運用をし、退職が近づくにつれて運用リスクを低下させ元本確保の商品にシフトさせる、というのが基本です。つまり個人であっても、企業年金であっても、成熟度によってリスク資産特性を変化させるという考え方には、違いはないということです。
運用期間の短くなっている高齢者にとって、コアの資産は国債か預貯金で、株式投資はおまけ程度のものでしかない、という今の姿は非常に正常な形であるといえます。
若者に株式投資が根付かないから、高齢者に期待する、などという発想をしている限り、日本の証券業界の行く末には全く期待できません。

(2004.05.17)



発明と起業

米国経済が強くあり続けるための政策は「発明」と「起業」の推進である、との米国高官の言葉を聞いていて、我が国の将来、ではなく、年金の資産運用業界の将来を憂いました。
年金運用業界が、極めて「発明と起業」に程遠い業界のように思えたからです。
継続性を重視するあまり新しいものから目をそむけていないか。
トラックレコードを意識するあまり新規参入を阻害してはいないか。
そしてなによりも、顧客数や残高の維持に固執して、攻めることを忘れた組織になってはいないか。
こうした現象があり、もしそれが業界の発展を阻害しているとするならば、その非の多くはコンサルティング会社にもあるのかもしれません。
ヘッジファンドなどの異業種参入が活発化していく中、年金運用業界も「発明と起業」を受け入れることで更なる成長を目指していく時期が確実にきています。運用会社もスポンサーもそしてコンサルティング会社も、変化を恐れてはいけないと強く感じています。

(2004.05.16)



告白

なんと、今頃気付きました(汗)。
私にも過去3ヶ月間の年金未納期間がございました。
申し訳なく平に平に……

いや本当に、今朝の今朝まで全く思いあたりませんでしたね。
前の会社を退職して今の仕事になるまでの3ヶ月ぐらい、おそらく完全に空白です。
健康保険の継続加入の手続きに行った記憶はあるのですが、確かに区役所に行った記憶はない。
山のような退職手続きの書類の中に、オレンジ色の年金手帳があったことは覚えてます。でも何か手続きが必要だという認識はまったくもって”ゼロ”でした。別に威張れることはありませんが…

あぁかくして私も未納兄弟(姉妹)の仲間入り!
ところで、私の年金手帳が見当たらない。オレンジの手帳は今いずこ?????

(2004.05.13)



冷静に…

ここに来て10%以上下落しているのは、株式だけではないようです。
中南米諸国の株式。金。石油以外の資源。資源国の通貨。中国株式。欧米のREIT…
下がっていないのは、ドルと日本の債券と石油ぐらいでしょうか。
特に米国金利との感応度が高くないものまで、「利上げ」という言葉に反応しているところが気になります。
米国の金利水準だけの問題なら、長期金利は政策金利が1%上がるところまでは既に織り込んでいると言われています。
つまりここから利上げが行われたとしても米国の長期金利が売られる余地はもうあまりないということです。
各市場が見ているのは、金利水準ではなく恐らく、2001年来の流動性相場の終焉でしょう。言い方を換えれば各々の資産のフェアバリューを探し初めているのだと思われます。
各国の景気に力があれば、流動性相場の修正があったとしても、再び右肩上がりの市場が戻るはずです。過熱感の解消は長期的に見れば決して悪いことではありません。
しばらく荒っぽい地合が続くのでしょうが、あまりあわてずに様子を見てみたいと思っています。

(2004.05.12)



人材の育成

久々にバレーボールの話題です!
その道のプロの方に、何故女子は強くて男子は弱いのか、とお聞きする機会がありました。
答えは、背が高くて運動神経の良い男子が皆サッカー部に入ってしまったから。女子は未だ盛んなママさんバレーにくっついて、小さい頃からバレーに親しんでいる子供が多かったから。
15歳のJリーガーと15歳の女子バレー代表候補とが、時を同じくして話題になったのは、決して偶然ではなったわけですね。
今の戦力を決定付けているのは、実は今ではなくて5年10年前だった、というのは、ある意味怖いことでもあります。

将来を見据えた人材戦略は、その業界でも共通のテーマなのだと実感しています。

なにはともあれ、がんばれニッポン!
そうはいっても男子もがんばれ!

(2004.05.11)



株式投信の今後のために

この1年、個人向けの日本株投信の多くは、資産価値が20%以上上昇したにも関わらず、純資産額が増えていません。中には減らしたファンドもあります。
これほど、市場環境が改善し且つ個人が株式投資に興味を持っているといわれているにも関わらず、株式単体でも株式投信でも個人の資金は株式を買い越している訳ではないのです。この状況を証券会社や投信会社は、かなり深刻に受け止めるべきでしょう。
投信について言えば、パフォーマンスを通して個人の信頼回復を目指すのはもちろんですが、構造的にはやはり販売会社の手数料体系を販売報酬から残高に応じた管理報酬へ切り替えていくことを、業界として推進していく時期が来ているのだと思います。
長期で保有してもらうことを前提にすれば、証券や銀行などの販社としても、ファンドを選ぶ目が真剣になるでしょうし、債券型投信と組み合わせるなど顧客のリスクプロファイルを考慮した営業方針を立てざるを得なくなると思われます。
運用会社と販社と最終顧客との利害を一致させない限り、投信業界の発展はないと確信します。

(2004.05.10)



運用機関の古典的な営業

未だに、融資や株の持合などといった企業本体との関係を利用して運用受託額を増やそうとすることを止めない、多くの信託・生保・投資顧問の方にお聞きしたいことがあります。
一運用機関として企業を分析するとき、巨額な退職年金勘定を運用効率の検証なく特定の運用機関に長年委託しているような経営者を評価しますか?
「インデックス運用であればどこの運用機関に預けても大差ないのだから、当社にまとめてしまいましょう」などといっている営業担当の方、そのセールストークは自社の運用部隊に対する膨大な設備投資や人件費が無駄であると言っているのと同義語であるということに、気付きませんか?
資本主義社会です。奇麗事をいうつもりもありません。
でも、資産運用が本業であるという自覚とプライドがあるのなら、営業方針もおのずと自制されるのではないでしょうか。
そういった古典的な営業方針を改めない会社は、幾ら運用部門ががんばったところで、世の中から正当に評価すらされなくなるのです。

(2004.05.09)


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